ものづくり補助金は、革新的サービスの開発や生産プロセスの改善などに取り組む中小事業者などを支援する制度です。複数の枠が用意されているため、自社の状況にマッチする要件を選び活用することが大切です。
今回はものづくり補助金の中から、「通常枠」について補助金額や対象経費、要件などについて解説します。
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2023年ものづくり補助金
▶️ものづくり補助金(通常枠)とは?
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▶️ものづくり補助金(グローバル市場開拓枠)とは?
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この記事の目次
ものづくり補助金(通常枠)とは
ものづくり補助金とは、今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入)などに中小企業や小規模事業者等が対応するために、革新的サービスや試作品開発、生産プロセスの改善を行い生産性を向上させることを目的とした際の設備投資等を支援する制度です。
ものづくり補助金は複数の枠に分類されており、それぞれ対象事業者や要件が異なります。
- 通常枠
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
- グローバル市場開拓枠
今回解説する「通常枠」は、革新的な製品やサービス開発、あるいは生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備やシステムへの投資などを支援する枠です。
ものづくり補助金(通常枠)の補助上限額・補助率
【補助上限額】
・従業員数5人以下:100万~750万円
・従業員数6~20人:100万~1,000万円
・従業員数21人以上:100万~1,250万円
【補助率】
1/2
*小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3
ものづくり補助金(通常枠)の対象経費・対象者
対象となる経費を表にまとめました。
経費の区分 | 概要 | 備考 |
機械装置・システム構築費 *単価50万円(税抜)以上の設備投資が必須 |
①もっぱら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に必要な経費 ②もっぱら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に必要な経費 ③上記の①あるいは②と一体で行う、改良・修繕または据付けに必要な経費 |
・生産性向上に必要な、防災性能の優れた生産設備等を補助対象経費に含めることは可能 ・機械装置または自社により機械装置を製作する場合の部品購入に必要な経費は「機械装置・システム構築費」となる ・「借用」とはリース・レンタルをいい、交付決定後に契約したことが確認できるもので、補助事業期間中に発生した経費のみが対象 ・「改良・修繕」とは、本事業で新たに購入する機械設備の機能を高める、または耐久性を増すために行うもの ・「据付け」とは、本事業で新たに購入する機械・装置の設置と一体で捉えられる軽微なもの(設置場所に固定等)に限る。設置場所の整備工事や基礎工事は含まない ・生産性向上を伴うものであれば、製品やサービスのセキュリティの向上に必要な生産設備やソフトウェア等を補助対象経費に含めることは可能 ・同一代表者や役員が含まれている事業者、資本関係がある事業者を機械装置・システム構築費の発注先とすることはできない ・本事業で購入する機械装置等を担保に金融機関から借入を行う場合は、事務局への事前申請が必要 ・3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得している場合は、中古設備も対象になる |
技術導入費 *上限額=補助対象経費総額(税抜)1/3 |
本事業の実施のために依頼した専門家に支払われる経費 | ・知的財産権を所有する他者から取得(実施権の取得を含む)する場合は書面による契約締結が必要 ・技術導入費支出先には、専門家経費、外注費を併せて支払うことはできない |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等として必要な経費 | 購入時の機械装置の運搬料は機械装置費に含める |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 | ・もっぱら補助事業のために利用するクラウドサービスやWEBプラットフォームの利用費のみ ・具体的には、サーバーの領域を借りる費用(サーバーの物理的なディスク内のエリアを借入、リースを行う費用)、サーバー上のサービスを利用する費用等が補助対象経費となる。サーバー購入費・サーバー自体のレンタル費等は対象外 ・サーバーの領域を借りる費用は、見積書、契約書等で確認できるものであり、補助事業期間中に発生する経費のみ ・クラウドサービス利用に付帯する経費について、ルータ使用料やプロバイダ契約料、通信料等の補助事業に必要な最低限のものは補助対象 |
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料および副資材の購入に必要な経費 | ・試作品開発のために購入する原材料等の数量は必要最小限にとどめ、補助事業終了時には使い切ることを原則とする。補助事業終了時点での未使用残存品は補助対象外 ・原材料費を補助対象経費として計上する場合は、受払簿(任意様式)を作成し、その受払いを明確にするとともに、試作・開発等の途上において発生した仕損じ品やテストピース等を保管(保管が困難なものは写真撮影による代用も可)しておく必要がある |
外注費 *上限額=補助対象経費総額(税抜)の1/2 |
新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 | ・外注先が機械装置等の設備を購入する費用は補助対象外 ・外注先との書面による契約締結が必要 ・機械装置等の製作を外注する場合は、「機械装置・システム構築費」に計上する ・同一代表者や役員が含まれている事業者、資本関係がある事業者、過去1年間に令和元年度補正・令和2年度補正・令和3年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業で補助事業を実施した事業者を外注先とすることはできない ・外注先に、技術導入費、専門家経費を併せて支払うことはできない ・本事業で開発・導入した製品やサービスおよびシステム構築に係るサイバーセキュリティ対策のために、ペネトレーションテスト(侵入テスト)を実施するための費用や、アプリケーションやサーバー、ネットワークに脆弱性がないかを診断するセキュリティ診断も対象となる。ただし、市販のウイルスソフトの購入費は補助対象外 |
知的財産権等関連経費 *上限額=補助対象経費総額(税抜)の1/3 |
新製品・サービスの事業化に当たって必要となる、特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用、外国特許出願のための翻訳料等の知的財産権等取得に関連する経費 | ・補助事業の成果に係る発明等ではないものは、補助対象外。また、事業期間内に出願手続きを完了していない場合も補助対象外 ・知的財産権の取得に必要な経費のうち、以下の経費は補助対象外。 (1)日本の特許庁に納付する手数料等(出願料、審査請求料、特許料等) (2)拒絶査定に対する審判請求、または訴訟を行う場合に必要な経費 ・国際規格認証の取得に係る経費については補助対象外 ・本事業で発生した知的財産権の権利は、事業者に帰属する |
一方で、対象とならない経費もありますので、確認しておきましょう。
・補助事業期間中の販売を目的とした製品、商品等の生産に必要な機械装置・システム構築費以外の諸経費(ただしテスト販売費のうち、原材料費については補助対象)
・工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス等)の取得費用、およびこれらを作り上げる組み立て用部材の取得費用
・再生エネルギーの発電を行うための発電設備、および当該設備と一体不可分の附属設備(太陽光発電を行うためのソーラーパネルなど)
・設置場所の整備工事や基礎工事に必要な費用
・事務所等にかかる家賃や保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
・電話代、インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯経費は除く)
・商品券等の金券
・文房具などの事務用品等の消耗品代や雑誌購読料、新聞代、団体等の会費
・飲食や嗜好品、娯楽、接待等の費用
・不動産の購入費や自動車等車両*の購入費、修理費、車検費用(事業所や作業所内のみで走行し公道を自走できないもの、および税法上の車両や運搬具に該当しないものを除く)
・税務申告や決算書作成等のために税理士、公認会計士等に支払う費用、および訴訟等のための弁護士費用
・収入印紙
・振込等手数料(代引手数料を含む)および両替手数料
・公租公課(消費税および地方消費税額等)
・各種保険料
・借入金などの支払い利息、および遅延損害金
・報告書等の事務局に提出する書類作成・申請に係る費用
・汎用性があり、目的外使用になり得るもの(例えば、事務用のパソコンやプリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機)の購入費(ただし、補助事業のみに使用することが明らかなものは除く)
・中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が不明確な中古品の購入費(3者以上の中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを取得している場合等を除く)
・事業にかかる自社の人件費(ソフトウェア開発等)
・上記のほか、公的資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費
補助対象者
補助対象者は、日本国内に本社および補助事業の実施場所を有する以下ア~オのうち、いずれかの要件を満たすものに限ります。
ア:中小企業者(組合関連以外)
資本金または常勤の従業員数が下表の数字以下となる会社、あるいは個人である(「中小企業等経営強化法」第2条第1項に規定するものを指す)
業種 | 資本金 | 常勤の従業員数 |
製造業、建設業、運輸業、旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ、およびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業、または情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
イ:中小企業者(組合・法人関連)
(1)「中小企業等経営強化法」第2条第1項に規定するもののうち、以下の組合等に該当する
・企業組合
・協業組合
・事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会
・商工組合、商工組合連合会
・商店街振興組合、商店街振興組合連合会
・水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会
・生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
・酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会
・内航海運組合、内航海運組合連合会
・技術研究組合(直接あるいは間接構成員の2/3以上がアに該当するもの、企業組合、協業組合であるもの)
(2)該当しない組合や財団法人(公益・一般)、社団法人(公益・一般)、医療法人および法人格のない任意団体は補助対象となりません
ウ:特定事業者の一部
(1)常勤の従業員数が下表の数字以下となる会社、あるいは個人のうち、資本金額あるいは出資総額が10億円未満である
業種 | 常勤の従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 500人 |
卸売業 | 400人 |
サービス業あるいは小売業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 300人 |
その他の業種(上記以外) | 500人 |
(2)生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
(3)酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会
(4)内航海運組合、内航海運組合連合会
(5)技術研究組合
エ:特定非営利活動法人
(1)広く中小企業一般の振興・発展に直結し得る活動を行う特定非営利活動法人である
(2)従業員数が300人以下である
(3)法人税法上の収益事業(法人税法施行令第5条第1項に規定される34事業)を行う特定非営利活動法人である
(4)認定特定非営利活動法人ではない
(5)交付決定時までに補助金の事業に係る経営力向上計画の認定を受けている
オ:社会福祉法人
(1)社会福祉法第32条に規定する所管庁の認可を受けて設立されている法人である
(2)従業員数が300人以下である
ものづくり補助金(通常枠)の要件
ものづくり補助金の要件は「全枠共通」「通常枠のみ」の2種類を合わせたものになります。
【全枠共通】
以下の要件をすべて満たした「3~5年の事業計画」を策定することが必要です。
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が、制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・事業計画期間において、事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする
・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
また、以下に同意して事業計画を策定・実行することが必要です。
・申請時点で、申請要件を満たす賃金引き上げ計画を策定していることが必要。交付後に策定していないことが発覚した場合は、補助金額の返還を求められる
・財産処分や収益納付等も含め、補助金等の返還額合計は、補助金交付額を上限とする
【通常枠のみ】
・革新的な製品やサービス開発、あるいは生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備やシステム投資等
・交付決定日から10ヶ月以内(ただし、採択発表日から12ヶ月後の日まで)の補助事業実施期間内に、発注・納入・検収・支払いなどすべての手続きが完了する事業であること(原則、補助事業実施期間の延長はない)
ものづくり補助金(通常枠)の申請スケジュール
ここで申請方法について確認しましょう。ものづくり補助金の申請は「電子申請システムのみ」の受け付けです。入力は申請者自身が電子申請システム操作マニュアルに従って作業してください。入力情報については、必ず申請者自身が内容を理解し確認してください。
また、申請の際は「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。未取得の方は必ず事前に利用登録を行いましょう。アカウントは、事業者情報の再入力の手間を省くため、採択後の手続きでも活用します。
必要書類
(1)事業計画書(計10ページ以内で作成)
(2)補助経費に関する誓約書【様式1】
(3)賃金引上げ計画の誓約書【様式2】
(4)決算書等
直近2年間の賃借対照表・損益計算書・製造原価報告書・販売管理費明細・個別注記表
(5)従業員数の確認資料
法人の場合:法人事業概況説明書の写し
個人事業主の場合:所得税青色申告決算書、または所得税白色申告収支内訳書の写し
(6)労働者名簿
応募申請時の従業員数が21名以上で、上記(5)従業員数の確認資料における期末の従業員数が20名以下の場合のみ
申請スケジュール
第16次締切分のスケジュールは以下の通りとなっております。
公募開始:令和5年7月28日(金) 17時~
申請受付:令和5年8月18日(金) 17時~
応募締切:令和5年11月7日(火) 17時
また16次締切分補助金交付候補者の採択発表は、令和6年1月中旬頃を予定となっています。
まとめ
インボイス制度や賃金の引き上げなど、中小企業が対処すべき問題は山積みです。資金力のない事業者にとって、今後複数年にわたり実施されるさまざまな制度へ対応するのは簡単なことではありません。
今回解説したものづくり補助金のような、制度に対応するため前向きに行動する事業者を支援する制度も存在しているため、上手に活用することが大切です。