物価高騰が続く中、ガソリン価格の上昇が家計や企業活動に与える影響はますます大きくなっています。こうした状況を受けて、政府は2025年11月より、ガソリンへの補助金を段階的に増やす方針を固めました。
その後、12月31日にガソリン補助金は終了し、税率廃止に切りかわります。
本記事では、新たに実施されたこの補助制度の内容や仕組み、支援額、価格への反映時期、今後の見通しなどについて解説します。
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この記事の目次
2025年11月よりガソリン補助金上乗せ 12月末で終了へ
政府は2025年11月13日以降、ガソリンへの補助金を段階的に増やし、12月11日には1リットルあたり15円安くなるようにする方針を固めました。これまでの1リットルあたり10円の補助金と合わせると、補助額は最大25円となります。
これは、暫定税率が廃止された場合と同様に、ガソリン代が1リットルあたり約25円分安くなる計算です。
本補助金は、暫定税率が廃止されるまでの「つなぎ」の措置となります。2週間ごとに補助金を5円ずつ増やし、4週間かけて計15円となる仕組みです。
12月11日に下がり切り、その3週間後の12月31日に補助金をやめて税率廃止に切り替わります。
参考:朝日新聞 ガソリン旧暫定税率、12月末での廃止が正式決定 6与野党が合意
燃料油価格定額引下げ措置とは?
政府は2025年5月22日から、ガソリン価格を1リットルあたり最大10円引き下げる「燃料油価格定額引下げ措置」を開始しました。具体的な補助額は以下のとおりです。- ガソリン・軽油:1リットルあたり最大10円
- 灯油・重油:1リットルあたり最大5円
- 航空機燃料:1リットルあたり4円(ガソリンの4割相当)
本制度では、補助金の導入による急激な価格変動が市場に混乱をもたらさないよう、段階的に補助額を引き上げていく設計が取られていました。11月以降、新たに上乗せされる補助金でも、同様の措置が取られます。
ガソリン補助金の段階的措置の背景と狙い
ガソリン補助金の段階的補助の背景には、急な値下げが引き起こす混乱(買い急ぎや渋滞、在庫不足など)を避ける狙いがあります。過去にも、2008年の暫定税率失効時や2024年の能登半島地震の際に、給油待ちの長蛇の列やスタンドの在庫切れが発生した前例があります。
今回はその教訓を踏まえ、緩やかな価格調整が意図されています。
ガソリン補助金はいつから?いつまで続く?
「燃料油価格定額引下げ措置」は、2025年5月22日から補助が適用開始されました。11月以降は、1リットルあたり最大25円まで補助を引き上げ、その後12月31日の暫定税率廃止により補助金も終了となります。
ガソリン価格は実際どれくらい安くなる?
政府の新たな支援策により、2025年10月の全国平均で166円前後だったレギュラーガソリンの価格が、最大で1リットルあたり151円程度まで下がる可能性があります。これは、2021年10月~11月頃の水準と同程度です。
ただし、価格の変化は一律・即時ではありません。ガソリンスタンドごとに在庫状況や仕入れ時期が異なるため、補助金の効果が小売価格に反映されるまでには、一定の時間差が生じます。
実際に価格がどの程度変動しているかは、石油情報センターが公表している「石油製品価格調査」で確認できます。
▶石油製品価格調査
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html
ガソリン補助金の効果は?車を使わない人にもメリットあり
ガソリン補助の恩恵は、車を使う人だけにとどまりません。燃料油は、私たちの生活に身近なモノの価格にも広く影響しています。
たとえば、物流に使われるトラックや配送車、農業機械、漁船、航空機などは、いずれもガソリンや軽油、重油、航空燃料を必要とするため、燃料価格が高騰すると、それらを通じて食料品や日用品の価格に波及します。
今回の補助では、ガソリン・軽油に加え、重油や灯油には1リットルあたり5円、航空機燃料には4円の定額補助が実施されることになっており、こうした生産・流通コストの一部が軽減されることで、最終的に消費者が購入する商品の価格抑制にもつながる可能性があります。
とくに原材料や食品を遠方から仕入れている地域や、農業・漁業が基幹産業となっている地域では、こうした補助による間接的な家計負担の軽減効果が期待できます。
燃料価格の安定は、移動や物流だけでなく、物価全体の安定にも関わる重要な要素です。
ガソリン補助金の課題
今回の燃料油価格定額引下げ措置は、物価高への緊急対応としての性格が強く、補助そのものはあくまで一時的な措置です。制度の終了時期は明示されていないものの、「当分の間税率(旧暫定税率)」の見直しが実施されるまでの経過措置と位置づけられており、今後の税制議論の進展次第で、制度のあり方そのものが変わる可能性があります。
また、補助によって価格を抑える政策は即効性がある一方で、価格変動の根本要因であるエネルギー供給構造や為替動向に対しては直接的な対応策とはなりません。中長期的には、エネルギー価格の透明性や価格転嫁の適正化、再生可能エネルギーの導入拡大などを含めた、構造的な対策が不可欠です。
特に、燃料費の上昇分を十分に価格に転嫁できない中小事業者の声も多く、国による価格転嫁支援策の強化や、元売り・販売現場への継続的支援の在り方も問われています。
今後は、補助による「抑制」だけでなく、制度全体の持続可能性や費用対効果をどうバランスさせるかが大きな課題となっていきます。
ガソリン価格の今後
ガソリン価格は、円安による輸入コストの上昇や中東情勢などの地政学的リスクを背景に、当面は高い水準が続くとみられています。ただし、長期的には世界的なエネルギー転換や国内の税制見直しにより、価格が緩やかに低下していく可能性もあります。
エネルギー需要の転換と国際要因
国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、原油需要は2030年頃までは緩やかに増加する一方で、2050年にかけては減少または横ばいに転じる見通しです。これは、脱炭素化の加速や電気自動車(EV)・水素燃料車の普及が進み、世界的にガソリン需要が縮小していくと考えられているためです。
出典:International Energy Agency(IEA) “World Energy Outlook 2024”
出典:IEA “Oil 2025: Analysis and forecast to 2030”
需要が落ち着き供給が安定すれば、ガソリン価格の下落も期待されますが、原油市場はOPEC(石油輸出国機構)や産油国の生産調整、政治情勢の変化などに左右されやすく、需給バランスが崩れれば一時的な高騰も起こり得ます。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の悪化、米国のハリケーン被害など、地政学的要因が世界の原油供給を不安定化させるリスクも引き続き警戒が必要です。
国内政策による影響
日本国内では、補助金制度やガソリン税制の見直しが価格に直接影響します。現在実施されている「燃料油価格定額引下げ措置」は、暫定税率の扱いが決まるまで継続される見込みです。
ガソリン価格の約40%は税金で構成されており、そのうち「旧暫定税率」が1リットルあたり25.1円上乗せされています。一方で、暫定税率を廃止した場合の財源確保が課題となっており、「走行距離課税」などの新たな課税方式の検討も報じられています。
自動車関連業界では、負担増への懸念や課税方法の公平性をめぐる議論が続いており、今後の政策判断が価格水準を大きく左右することになります。
まとめ
段階的に実施されるガソリン補助は、家計の負担軽減や物流コストの抑制など、生活・経済の両面にとって一定の効果がある支援策です。ただし、燃料価格の変動リスクを根本から解消するものではなく、税制やエネルギー政策の構造的な見直しが今後の焦点となるでしょう。
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