物価の高騰を受け、厚生労働省は生活保護の「生活扶助」に対する特例加算を、2025年度から2年間、1人あたり月額1500円に引き上げることを決定しました。この加算は、食費や光熱費など日常生活の支出を補うための措置です。本記事では、生活保護制度の基本情報と、この特例加算について紹介します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
生活保護制度とは
生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を支援するための制度です。ただし、誰でも受けられるわけではなく、以下のような状態の方が対象となります。
■活用できる資産がない人
不動産や預貯金、自動車など、生活のためにすぐに活用できる資産を持っていない人が対象です。ただし、不動産や自動車については、特別な事情があれば保有が認められることもあります(例:病気や障害などの理由で通勤等に車が必要な場合)。
■十分な収入がない人
働けない場合、または働いていても必要な生活費を十分に得られない場合。
■社会保障制度を活用しても生活が困難な人
年金や手当など、他の社会保障制度を利用しても、なお生活費が不足している場合。
生活保護を受けるための条件
生活保護は、世帯全体を対象に支援を行う制度です。そのため、世帯内のすべての資産や収入、労働能力などを最低限度の生活を維持するために活用することが前提となります。また、扶養義務者から援助を受けられる場合は、生活保護よりもそちらを優先することが求められます。
保護の要件等として、以下のように記されています。
1.活用できるものをすべて利用することが前提
資産の活用 | 預貯金や、使われていない土地や家屋がある場合、それらを売却して生活費に充てることが求められます。 |
能力の活用 | 働ける方は、その能力に応じて働き、収入を得る努力が必要です。 |
他制度の活用 | 年金や手当など、他の制度で受けられる給付は優先的に活用してください。 |
扶養義務者からの援助 | 親族などから援助が受けられる場合は、まずその支援を受ける必要があります。 |
2.そのうえで、保護の適用基準と照らし合わせる
世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、保護が適用されます。
このように、生活保護は、資産や能力、他の支援を最大限活用したうえで、なお生活が難しい場合に適用される「最後の手段」です。申請前に、これらの条件を確認することが重要です。
生活保護の申請方法
生活保護を受けるには、まずお住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当窓口で相談を行います。ここでは、生活保護制度の詳細な説明が行われ、生活福祉資金や社会保障施策など、他の支援制度が利用可能かどうかも検討されます。
生活保護の申請を行う場合、福祉事務所は支援を決定するために様々な調査を実施します。
たとえば、申請者の生活状況を把握するための家庭訪問や、預貯金や保険、不動産などの資産状況の確認、さらに扶養義務者による援助の可否、年金や就労収入の有無などが確認されます。また、申請者が働ける可能性があるかどうかも調査されます。
支援が決定すると、最低生活費から収入を差し引いた額が「保護費」として毎月支給されます。この金額は、厚生労働大臣が定める基準に基づき計算されます。受給中は、毎月収入状況を申告する義務があり、必要に応じて福祉事務所のケースワーカーが訪問調査を行います。
働ける可能性がある方については、就労に向けた助言や指導が提供され、自立に向けた支援が進められます。このように、生活保護の手続きは、申請者の状況を詳細に確認しながら、支援を提供する仕組みになっています。
支給される保護費と保護の種類
【保護費】
最低生活費から収入を差し引いた差額が、保護費として支給されます。
【保護の種類と内容】
以下のように、生活を営む上で必要なさまざまな費用に対応して扶助が支給されます。
生活を営む上で生じる費用 | 扶助の種類 | 支給内容 |
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱費等) | 生活扶助 | 基準額は、 (1)食費等の個人的費用 (2)光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。 特定の世帯には加算があります。(母子加算等) |
アパート等の家賃 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 | 教育扶助 | 定められた基準額を支給 |
医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払 (本人負担なし) |
介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払 (本人負担なし) |
出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
生活扶助の特例加算とは?
厚生労働省は、物価の高騰などを考慮して、生活扶助基準の特例として2023年と2024年に1人あたり月額1000円を一律で加算していましたが、2025年度からはさらに500円を上乗せし、加算額は月額1500円になります。
出典:財務省 令和7年度社会保障関係予算のポイント
厚生労働省によると、この特例加算によって生活扶助の基準額が引上げとなるのは、全生活保護世帯の約58%にあたる94万世帯と推計されています。なお、加算をした金額が基準額を下回る人に対しては、元の水準で据え置く措置を継続するということです。
参考:NHK NEWS WEB「生活保護の「生活扶助」 来年度から2年間 さらに500円上乗せへ」(2024年12月25日配信)
まとめ
生活保護制度は、生活に困窮する方々の最低限度の生活を保障し、自立を支援する重要な制度です。2025年度からの生活扶助特例加算は、物価高騰への一定の対応策として位置付けられており、受給者の生活を支える一助となることが期待されています。生活保護制度の詳細や申請については、お住まいの地域の福祉事務所にお問い合わせください。
参考:厚生労働省 生活保護制度