「事業縮小で離職者が出てしまうが、その後が心配だ」「即戦力となる経験者を採用したいがコストが重い」「中途採用をもっと積極的に進めたい」――企業が直面する人材課題は、立場によって大きく異なります。こうした多様なニーズに応えるために国が用意した制度が、「早期再就職支援等助成金」です。
本制度には3つのコースが設けられており、企業の状況・取り組み内容に応じて活用できます。委託費用の最大4/5助成から、採用1人あたり最大40万円の一時金まで、幅広い支援が受けられる点が特徴です。
この記事では3つのコースそれぞれの概要・対象・助成額をわかりやすく解説し、自社に最適なコースを選ぶための判断基準をご紹介します。
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この記事の目次
早期再就職支援等助成金とは
「早期再就職支援等助成金」は、厚生労働省が提供する雇用関係助成金の一つです。もともと「労働移動支援助成金」「中途採用等支援助成金」として運営されていた複数の制度が統合・改編され、令和6年4月1日から現在の名称となりました。
本制度の目的は大きく2つです。一つは事業縮小等により離職を余儀なくされる労働者の早期再就職を支援すること、もう一つは賃金上昇を伴う中途採用の拡大など、企業の人材確保を経済的にサポートすることです。
申請窓口は事業所を管轄する都道府県労働局またはハローワーク(公共職業安定所)です。
3つのコースの全体像
早期再就職支援等助成金(令和8年度)は、以下の3つのコースで構成されています。| コース名 | こんな企業に向いている | 主な助成額 |
|---|---|---|
| ①再就職支援コース | 事業縮小等で離職者が発生し、再就職支援を実施した事業主 | 委託費用の1/2〜4/5(上限60〜80万円/人) |
| ②雇入れ支援コース | 離職を余儀なくされた方を早期に無期雇用で受け入れた事業主 | 通常30万円・優遇40万円/人(上限500人分) |
| ③中途採用拡大コース | 中途採用率を拡大し賃金を上昇させた事業主 | 通常20万円・加算10万円/人(上限20人分) |
各コースは独立した制度です。同一の取り組み・対象者に対して複数コースを重複受給することは原則できません。自社の状況に合ったコースを選ぶことが重要です。
①再就職支援コース:離職者の再就職をサポートした事業主に
事業縮小・希望退職募集・リストラ等で離職者が発生した、または発生する見込みがある企業。法的義務として「再就職援助計画」の作成・提出が求められる場合にも活用できます。
制度の概要
事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされた労働者に対し、①職業紹介事業者への再就職支援委託、②求職活動のための休暇付与、③職業訓練の委託のいずれか(または複数の組み合わせ)を実施し、対象者の再就職を実現させた事業主に助成されます。
主な支給要件
- 「再就職援助計画」の認定またはハローワークへ「求職活動支援基本計画書」を提出していること
- 申請事業主に1年以上雇用された雇用保険被保険者が対象であること
- 人員削減を行う組織において生産量等が対前年比10%以上減少、または経常利益が赤字(3年以内の赤字見込みも可)であること
- 助成対象期限(離職日翌日から6か月、45歳以上は9か月)以内に再就職を実現させること
主な助成額(再就職支援を委託した場合)
| 区分 | 中小企業(45歳未満) | 中小企業(45歳以上) | 中小企業以外(45歳未満) | 中小企業以外(45歳以上) |
|---|---|---|---|---|
| 通常 | 委託費×1/2 | 委託費×2/3 | 委託費×1/4 | 委託費×1/3 |
| 特例区分 | 委託費×2/3 | 委託費×4/5 | 委託費×1/3 | 委託費×2/5 |
上限は1人あたり60万円(訓練加算200時間以上の中小企業は80万円)。休暇付与支援は1日あたり中小8,000円・大企業5,000円(上限180日分)。職業訓練実施支援は委託費×3/4(上限15〜50万円)です。
関連記事:
離職者の再就職を支援した企業に助成!早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)の要件・助成額・申請の流れ【2026年】
②雇入れ支援コース:離職者を早期採用した事業主に
即戦力となる人材を採用したい企業。特に、再就職援助計画の対象者や雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇等による離職者)を早期に受け入れることで助成を受けられます。
制度の概要
「再就職援助計画」もしくは「求職活動支援書」の対象者、または雇用保険の特定受給資格者を、離職日の翌日から3か月以内に無期雇用(フルタイム)で雇い入れ、かつ前職比5%以上の賃金を6か月間維持した事業主に助成されます。令和8年4月8日以降の離職者が対象です。
主な支給要件
- 離職日の翌日から3か月以内に、雇用保険被保険者かつ期間の定めのない労働契約を締結する労働者として雇い入れること
- 雇い入れ後6か月間継続して雇用すること(支給基準日を超えて引き続き雇用)
- 雇い入れ後6か月間のすべての賃金支払日に、前職比5%以上の賃金上昇を維持していること
- 有期契約・紹介予定派遣後の雇い入れは対象外
助成額
| 区分 | 助成額(1人あたり) |
|---|---|
| 通常助成 | 30万円 |
| 優遇助成(成長性要件を満たす場合) | 40万円 |
| 年度・事業所あたりの上限 | 500人分 |
優遇助成の「成長性要件」は、①ローカルベンチマーク財務分析結果が「B」以上、または②直近2年度で給与等受給者一人あたり平均受給額を5%以上上昇させた場合に該当します。
関連記事:
「早期再就職支援等助成金の「雇入れ支援コース」の対象者・支給額を解説」
③中途採用拡大コース:中途採用を積極的に広げる事業主に
経験者・即戦力の採用を積極的に拡大したい企業。採用計画を事前に届け出たうえで中途採用率を引き上げ、採用者の賃金を上昇させることで助成を受けられます。
制度の概要
中途採用者の雇用管理制度を整備したうえで中途採用を拡大し、雇い入れた採用者の賃金を前職比5%以上上昇させた事業主に助成されます。雇い入れ前に「中途採用計画」を労働局へ提出することが必須です。
主な支給要件
- 中途採用計画を雇い入れの前日までに労働局へ提出していること(計画開始日の6か月前〜前日の間)
- 中途採用率を前年同期比で5ポイント以上引き上げる、または計画期間中の中途採用率が50%以上であること
- 雇い入れ後6か月間のすべての賃金支払日に前職比5%以上の賃金上昇を維持していること
- 6か月定着率が80%以上(離職率20%未満)であること
- 常時雇用300人超の企業は、中途採用比率の公表も必要
助成額
| 区分 | 助成額(1人あたり) |
|---|---|
| 通常助成 | 20万円 |
| 成長要件加算(ローカルベンチマーク「B」以上または平均給与5%上昇) | +10万円 |
| 最大助成額 | 30万円 |
| 年度・事業所あたりの上限 | 20人分 |
関連記事:
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)とは 中途採用者1人あたり30万円
自社に合うコースの選び方
3つのコースは目的が異なります。以下のフローで自社の状況に最適なコースを確認してください。
【STEP1】離職者を「出す側」か「受け入れる側」か?
▼ 離職者を出す側(事業縮小・リストラ等)
→ ①再就職支援コース
▼ 離職者を受け入れる側(採用する側)
→ STEP2へ
【STEP2】採用する人材の属性は?
▼ 倒産・解雇等で離職した方(特定受給資格者・再就職援助計画対象者)を採用する
→ ②雇入れ支援コース(離職後3か月以内の雇い入れが条件)
▼ 中途採用全般を積極的に拡大したい
→ ③中途採用拡大コース(事前の計画届出が必要)
申請時の共通注意点
同一の取り組み・対象者に対して他の雇用関係助成金を受給している場合は、本助成金を受給できません。どちらか一方を選択する必要があります。
②不正受給は厳禁
不正受給が発覚した場合、支給済み助成金の全額返還(年3%の利息加算)に加え、受給額の20%相当の違約金が請求されます。関係書類は5年間保管が必要です。
③事前手続きが必須のコースに注意
再就職支援コースは「再就職援助計画」の提出・認定が、中途採用拡大コースは「中途採用計画」の届出が、それぞれ支援実施・雇い入れの前に必要です。事後申請は受け付けられません。
④申請窓口
各コースの申請・問い合わせは、事業所を管轄する都道府県労働局またはハローワークへ。支給申請書等は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
早期再就職支援等助成金に関するよくある質問
3つのコースを同時に申請することはできますか?
同一の取り組みや対象者に対しての重複受給は原則できません。ただし、コースの目的が異なる場合(例:自社の離職者に再就職支援コースを使いつつ、別途中途採用を拡大して中途採用拡大コースを活用するなど)は、それぞれの要件を満たせば同時に申請できることがあります。詳しくは管轄の労働局にご確認ください。
中小企業でなくても申請できますか?
はい、中小企業以外でも申請できます。ただし、再就職支援コースでは助成率が中小企業よりも低く(委託費×1/4〜2/5)、かつ対象者が30人以上であることが条件となります。雇入れ支援コース・中途採用拡大コースは企業規模を問わず申請可能ですが、中途採用拡大コースは常時雇用300人超の場合に中途採用比率の公表が追加要件となります。
UIJターンコースはまだ使えますか?
UIJターンコース(東京圏からの移住者採用に係る採用活動費助成)は令和7年度をもって終了しており、令和8年度現在は新規申請を受け付けていません。令和8年度現在、本助成金で利用できるのは再就職支援コース・雇入れ支援コース・中途採用拡大コースの3つです。
雇入れ支援コースと中途採用拡大コースの違いは何ですか?
雇入れ支援コースは「倒産・解雇等で離職した特定の方」を離職後3か月以内に採用した場合に対象となる制度で、事前届出は不要です。一方、中途採用拡大コースは「中途採用率の拡大」を計画的に進める企業向けで、雇い入れ前に中途採用計画の届出が必須です。採用する人材の属性と、採用活動の計画性の有無が主な違いです。
再就職援助計画とは何ですか?
再就職援助計画とは、1か月以内に常用労働者が30人以上離職するような事業縮小等を行おうとする事業主が、労働施策総合推進法に基づいて作成・提出が義務づけられている計画書です。離職者に対する再就職援助の内容を記載し、ハローワークに提出して所長の認定を受ける必要があります。30人未満の縮小でも任意で作成できます。
中途採用拡大コースで、45歳以上の採用に特別な加算はありますか?
中途採用拡大コースでは45歳以上に特化した加算はなく、通常助成20万円に成長要件加算(最大10万円)が加わる仕組みです。45歳以上の採用特典は、雇入れ支援コースの助成率優遇(45歳以上の対象者は再就職支援コースの助成率が高くなる)に反映されています。
ローカルベンチマークとは何ですか?
ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)は、経済産業省がインターネット上で提供する企業の経営状態を把握するためのツールです。売上増加率・営業利益率等6つの財務指標を入力することで、AからDの4段階で総合評価が算出されます。雇入れ支援コースの優遇助成・中途採用拡大コースの成長要件加算において、総合評価点が「B」以上であることが要件の一つとなっています。
申請書類はどこから入手できますか?
各コースの支給申請書等は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。申請窓口は各事業所を管轄する都道府県労働局またはハローワークです。コースによって必要書類が異なりますので、事前に管轄の労働局に相談されることをお勧めします。
試用期間を設けて採用した場合でも対象になりますか?
雇入れ支援コースの場合、試用期間を設けても雇用契約が無期雇用であれば支給対象となります。ただし、試用期間を有期雇用とし、期間終了後に無期雇用に切り換える予定の場合は原則対象外となります。中途採用拡大コースの場合も同様に、無期雇用(期間の定めのない契約)として雇い入れられていることが必要です。
支給決定までにどのくらい時間がかかりますか?
助成金の支給に当たっては厳正な審査が行われます。確認項目が多いため、支給可否の決定までに相当の時間がかかる場合があります。また、書類の不備や追加確認が生じると、さらに時間がかかることがあります。申請にあたっては余裕をもって準備を進め、不明点は早めに管轄の労働局に相談することをお勧めします。
まとめ
「早期再就職支援等助成金」は、令和8年度現在、以下の3つのコースが利用できます。
| コース | こんな場面で活用 | 最大助成額 |
|---|---|---|
| ①再就職支援コース | 事業縮小等で離職者が発生し再就職支援を実施する場合 | 委託費×4/5(上限80万円/人) |
| ②雇入れ支援コース | 倒産・解雇等の離職者を3か月以内に無期雇用で採用する場合 | 40万円/人(上限500人分) |
| ③中途採用拡大コース | 中途採用率を計画的に拡大する場合(事前届出必須) | 30万円/人(上限20人分) |
自社の人材課題がどのフェーズにあるかを整理し、適切なコースを選択することが助成金活用の第一歩です。要件の確認や申請手続きに不安がある場合は、まず管轄の労働局・ハローワーク、または社会保険労務士に相談することをお勧めします。
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