
「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」は、中途採用者の雇用管理制度を整備し、採用の拡大に取り組む企業に対して支給される助成制度です。制度の見直しを経て、現在は「45歳以上の人材の採用」や「中途採用率の向上」を条件とした支給要件が明確化されており、より幅広い事業者が活用しやすい内容となっています。
特に、経験やスキルを持つ世代の採用を検討している企業にとっては、人材確保と費用負担軽減の両面で有効な制度といえるでしょう。本記事では、令和7年度の情報に基づいて、対象要件や申請の流れなどをわかりやすく解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する

この記事の目次
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)の概要
「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」は、中途採用者の雇用管理制度を整えたうえで、中途採用を行った事業主に対して支給される制度です。助成の対象となるのは、次の2つのケースです。
(1) 中途採用率の拡大 過去3年間に比べて中途採用率を20ポイント以上引き上げた事業主 (2) 45歳以上の中途採用率の拡大 上記に加え、45歳以上の中途採用率を10ポイント以上高め、かつ採用した全員の賃金を前職と比較して5%以上引き上げた場合 |
主な受給要件
この助成金を受給するには、「中途採用率の拡大」または「45歳以上の中途採用率の拡大」のいずれかの取り組みを実施し、要件を満たす必要があります。受給にあたっては、採用活動の前段階から計画的に準備を進めることが必要です。
【共通の要件】
以下のいずれにも該当することが、共通の基本要件となります。
(1) 中途採用計画を策定・提出していること 採用方針や雇用管理制度の整備内容、採用人数、職種、評価方法などを明記した「中途採用計画」を作成し、対象者の雇い入れ前までに労働局へ提出する必要があります(提出期間:計画開始日の前日から起算して6か月前から当日まで)。 |
(2) 中途採用者に対する雇用管理制度を整備していること 労働時間、休日、評価・処遇、福利厚生などについて、新規学卒者と同等の制度が適用されている必要があります。 |
(3) 2人以上の中途採用者を計画期間中に雇い入れていること |
(4) 中途採用率を過去3年間と比べて20ポイント以上引き上げていること |
(5) 雇い入れた労働者の6か月定着率が80%以上(離職率20%未満)であること |
【45歳以上の中途採用率の拡大の要件】
45歳以上の中途採用率拡大の場合は、以下の要件もすべて満たす必要があります。
(1) 45歳以上の中途採用率を10ポイント以上引き上げていること |
(2) 該当者全員の賃金が、前職と比べて5%以上上昇していること |
なお、賃金の比較には、実際の給与明細や離職票、雇用保険受給資格者証などの証明書類が必要です。
対象となる事業主
「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」の対象となるのは、以下のいずれかに該当する事業主です。事業主の従業員規模により、満たすべき要件の数が異なります。
事業主の規模 | 満たすべき要件数 |
常時雇用する労働者が 300人以下 | 共通要件のうち 1〜9すべて |
常時雇用する労働者が 300人超 | 共通要件の 1〜10すべて |
【共通要件】
(1) 雇用保険適用事業所であること
支給対象となる事業所が、雇用保険の適用を受けている必要があります。
(2) 審査・調査への協力体制があること
必要な書類を整備・保管し、労働局からの求めに応じて提出・調査協力ができること。
(3) 支給申請期間内に申請を行っていること
(4) 賃金の支払いが期日までに行われていること
仮に期日を過ぎた場合でも、支給申請時点で支払済みであれば対象となります。
(5) 雇用に関する基礎書類が整備・保管されていること
出勤簿、賃金台帳、労働者名簿などの整備が必要です。
(6) 会社都合による解雇等が直近6か月間にないこと
中途採用計画の提出日から6か月前以降に、事業主都合での離職(解雇・退職勧奨等)がないこと。
(7) 離職区分1Aまたは3Aの離職者割合が6%を超えていないこと
特定受給資格者として離職した者の割合が、雇用保険被保険者数に対して6%以内である必要があります。
(8) 同一の取り組みにより、他の助成金を過去に受給していないこと
(9) 中途採用計画期間の開始日から起算して3年前時点で、雇用保険被保険者が存在していたこと
(10)(300人超のみ)中途採用に関する情報を公表していること
労働施策総合推進法に基づき、中途採用者の割合等の情報を公表している必要があります。
支給対象となる労働者
支給の対象となるのは、以下の要件(1)・(2)のいずれも満たす中途採用者です。
(1) 中途採用計画期間中に雇われたこと
事業主が届け出た計画期間中に、中途採用として雇い入れられていること
(2) 次の要件をすべて満たすこと
- 中途採用である(新卒や新卒扱いの採用でないこと)
- 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者である
- 期間の定めのない労働者(パートタイムは除く)
- 雇用前の1年間、当該事業主の事業所で就労していない
- 1年間以内に親会社・子会社や人的関係・資本関係のある事業所に所属していない
- 【45歳以上の中途採用率の拡大】に該当する場合は、雇い入れ時点で45歳以上であること
支給額
区分 | 支給額 |
中途採用率の拡大 | 50万円(1事業所あたり) |
45歳以上の中途採用率の拡大 | 100万円(1事業所あたり) |
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)申請の流れ
本助成金は、採用計画の提出から雇用、定着状況の確認、申請までを段階的に進めていく制度です。主な流れは次の通りです。(1) 中途採用計画の策定と届出
採用予定者の職種・人数・採用方法や評価方法などを記載した「中途採用計画」を作成し、雇い入れ前までに労働局へ提出します。計画期間は原則1年間です。
※常時雇用する労働者が300人を超える企業は、あわせて「中途採用情報の公表」も必要です。
(2) 雇用管理制度の整備と採用の実施
中途採用者に適用する労働条件(労働時間・評価制度・福利厚生など)が、新規学卒者と同等であることを確認し、制度を整備します。そのうえで、計画に沿って2名以上の採用を実施します。
(3) 要件の達成と6か月定着の確認
採用した労働者が6か月間在籍しているか、採用率が目標値を満たしているかなど、支給要件に基づいて確認を行います。
(4) 支給申請の手続き
計画終了日の翌日から起算して6か月経過後、2か月以内に労働局へ支給申請を行います。必要書類を添えて提出し、審査を受けたうえで支給が決定されます。
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)活用のメリット
中途採用に限らず、採用活動には多くのコストがかかります。採用人数が増えるほど負担も大きくなり、「経験豊富な人材を採用したい」と考えていても、費用面の不安から踏み出せない企業も少なくありません。
そのような場面で活用できるのが、早期再就職支援等助成金の中途採用拡大コースです。条件を満たすことで助成金の支給を受けられるため、採用にかかるコストを抑えることが可能です。特に「事業拡大のために即戦力となる人材を複数採用したい」といった企業にとって、有効な支援策といえるでしょう。
まとめ
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)は、「中途採用率の引き上げ」や「45歳以上の人材の採用」に取り組む企業に対して、経済的な支援を行う制度です。採用活動にかかるコストが重くのしかかる中、こうした助成金の活用により、負担を軽減しながら優秀な人材を迎え入れることができます。
経験と実績を備えた人材の採用を通じて組織の力を高めたい企業は、制度の内容を確認し、前向きに活用を検討してみてはいかがでしょうか。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する