「採用コストを抑えながら即戦力となる人材を確保したい」「中途採用を増やしたいが、何か使える支援策はないか」――こうした課題を抱える企業の経営者・人事担当者に注目されているのが、「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」です。
本制度は、中途採用者の雇用管理制度を整備したうえで中途採用を拡大し、採用した人材の賃金を雇い入れ前と比べて5%以上上昇させた事業主に対して助成するものです。採用した人材1人あたり最大30万円の支給が受けられる点が大きな特徴です。
この記事では、令和8年度の情報に基づき、支給要件・助成額・申請の流れをわかりやすく解説します。
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この記事の目次
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)とは
「早期再就職支援等助成金」は、4つのコースから構成される厚生労働省の助成金制度です。その中の「中途採用拡大コース」は、中途採用者の雇用管理制度を整備したうえで、賃金上昇を伴う中途採用の拡大に取り組む事業主を支援することを目的としています。都道府県労働局・ハローワーク(公共職業安定所)を通じて申請できます。
なお、同じ「早期再就職支援等助成金」には、離職を余儀なくされた方の早期再就職を支援する「再就職支援コース」や「雇入れ支援コース」も存在します。中途採用を積極的に拡大したい企業には「中途採用拡大コース」が該当します。
採用市場では即戦力となる経験者の獲得競争が激化しており、中途採用コストは年々上昇傾向にあります。そのような状況において、本助成金は採用活動の費用負担を軽減できる有効な手段といえるでしょう。
助成額と加算の仕組み
本助成金は「通常助成」と「成長要件加算」の2段階で構成されています。1年度1事業所あたり、支給対象者20人分を上限として支給されます。(1)通常助成
支給対象者(支給申請日前に離職した者、賃金上昇要件を満たさない者を除く)1人あたり20万円が支給されます。
以下の要件をいずれも満たす事業主が対象です。
- 「中途採用率の拡大」(イまたはロのいずれかを満たす)
- 「中途採用者の賃金上昇」(雇い入れ前と比べて5%以上上昇させた)
(2)成長要件加算
通常助成の要件を満たしたうえで、一定の成長性が認められる事業所(下記①②のいずれか)には1人あたり10万円が加算されます。
- ①ローカルベンチマークの財務分析結果(総合評価点)が「B」以上であること
- ②支給申請日の属する年度から遡って直近2年度を比較し、給与等受給者一人あたりの平均受給額を5%以上上昇させていること
※ローカルベンチマークとは、経済産業省が提供する企業の経営状態を把握するためのツールです。売上増加率・営業利益率等の6つの財務指標を入力することで、AからDの4段階で評価されます。
| 助成額のまとめ | |
|---|---|
| 通常助成 | 支給対象者1人あたり20万円 |
| 成長要件加算 | 支給対象者1人あたり10万円(条件を満たす場合) |
| 最大助成額 | 支給対象者1人あたり30万円 |
| 支給上限 | 1年度1事業所あたり20人分 |
主な支給要件(支給対象となる措置)
助成金を受給するには、以下(1)〜(8)の取り組みをすべて実施したうえで支給対象者を雇い入れる必要があります。
(1)中途採用計画の策定
以下のア〜ウをいずれも満たす中途採用計画を策定することが必要です。
- ア:中途採用者に適用される雇用管理制度(労働時間・休日・評価処遇制度・福利厚生等)が、新規学卒者と同じであること
- イ:計画期間内の中途採用の拡大について計画していること(採用予定職種・採用予定者数を定める)
- ウ:中途採用計画期間が6か月間または1年間であること((5)イを選択する場合は必ず1年間)
(2)計画書類の労働局への提出
中途採用計画を含む各種申請書類を、管轄の労働局へ提出していること。
(3)計画期間中の解雇等の禁止
計画期間中に採用した支給対象者を、支給決定日までに事業主都合により解雇等(退職勧奨を含む)していないこと。
(4)計画期間中の雇い入れ
中途採用計画期間中に、支給対象者を雇い入れること。
(5)中途採用率の拡大(イまたはロのいずれか)
| 区分 | 要件 | 計画期間 |
|---|---|---|
| イ | 計画期間中の中途採用率から、計画開始日の前日から過去1年間(計画期間が6か月の場合は6か月間)の中途採用率を減じた値(中途採用率拡大目標値)を5ポイント以上とすること | 1年または6か月 |
| ロ | 計画期間中における中途採用率が50%以上であること | 1年のみ |
中途採用率拡大目標値=(ア 計画期間中の中途採用率)-(イ 計画期間の前年同期の中途採用率)
ア 計画期間中の中途採用率=期間中に雇い入れた中途採用者数 ÷ 期間中に雇い入れた雇用保険被保険者数 × 100
イ 前年同期の中途採用率=前年同期に雇い入れた中途採用者数 ÷ 前年同期に雇い入れた雇用保険被保険者数 × 100
【例】イを選択する場合:中途採用率を30%から40%にした場合は「10ポイント」上昇となり、要件を満たします。
【例】ロを選択する場合:計画期間中の中途採用率が50%以上であれば、前年比の差が5ポイント未満でも要件を満たします。
(6)6か月定着率
支給対象者のうち、雇い入れ日から6か月を経過する日までに離職した方の割合が20%未満であること。
(7)賃金の上昇
支給対象者について、雇い入れ前事業所の賃金と、雇い入れ後6か月間の各月の賃金を比較していずれも5%以上上昇させることが必要です。
ここでいう賃金とは「毎月決まって支払われる賃金」(基本給および諸手当)を指します。時間外手当・休日手当・通勤手当・家族手当などは含みません。雇い入れ後6か月間すべての月において5%以上の上昇(賃金上昇率1.05以上)が求められます。
前職の賃金の確認は、給与明細、離職票(雇用保険被保険者離職票-2)、雇用保険受給資格者証、退職時の証明、再就職援助計画対象労働者証明書などの書類(本人同意のある書類)で行います。
支給対象となる事業主の要件
本コースを受給するには、常時雇用する労働者の数が300人以内の事業主は要件(1)〜(8)、300人を超える事業主は要件(1)〜(9)のすべてに該当することが必要です。
| No. | 要件 | 300人以下 | 300人超 |
|---|---|---|---|
| (1) | 雇用保険適用事業所の事業主であること | ○ | ○ |
| (2) | 支給のための審査に協力すること | ○ | ○ |
| (3) | 申請期間内に申請を行うこと | ○ | ○ |
| (4) | 支給対象者への賃金を支払期日までに支払っていること | ○ | ○ |
| (5) | 出勤簿・賃金台帳・労働者名簿等の書類を整備・保管していること | ○ | ○ |
| (6) | 中途採用計画の提出日の前日から起算して6か月前の日から支給申請日までの間に、事業主都合による解雇等をしていないこと | ○ | ○ |
| (7) | 離職区分1Aまたは3Aとされる離職理由による離職者割合が雇用保険被保険者数に対して6%以内であること | ○ | ○ |
| (8) | 中途採用計画期間の初日の前日から起算して1年前の日において雇用保険適用事業所(かつ雇用保険被保険者が存在する)であること | ○ | ○ |
| (9) | 労働施策総合推進法第27条の2に基づき、中途採用により雇い入れられた者の割合を公表していること | - | ○ |
【300人超の企業:中途採用比率の公表義務について】
常時雇用する労働者が301人以上の企業は、直近の3事業年度の各年度における正規雇用労働者の中途採用比率を、インターネット等で公表することが義務づけられています。おおむね年1回、公表した日を明らかにして行います。
支給対象となる労働者の要件
支給の対象となるのは、以下(1)〜(5)の要件をすべて満たす中途採用者です。
- (1)申請事業主に中途採用として雇い入れられた方であること(新規学卒者・新規学卒者と同一枠組みで採用された方は対象外)
- (2)雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れられた方であること
- (3)期間の定めのない労働者(パートタイムを除く)として雇い入れられた方であること
- (4)雇い入れ日の前日から起算してその日以前1年間に、雇用関係・出向・派遣・請負・委任により申請事業主の事業所で就労したことがない方であること
- (5)雇い入れ日の前日から起算してその日以前1年間に、申請事業主と密接な関係にある事業主(親会社・子会社・代表取締役が同一・資本的経済的組織的に独立性が認められない事業主)に雇用されていた方でないこと
この他にも要件があります。詳細は「早期再就職支援等助成金ガイドブック(中途採用拡大コース)」をご確認いただくか、最寄りの都道府県労働局またはハローワークへお問い合わせください。
申請の流れ(受給手続き)
本助成金を受給するまでの流れは以下の通りです。
STEP1:中途採用計画の届出(雇い入れ前・必須)
中途採用計画の開始日の前日から起算して6か月前の日から、計画開始日の前日までに、以下の書類を管轄の労働局へ提出します。
- 様式第1号:中途採用計画(変更)届
- 様式第3号:支給要件確認書
- 様式第4号:中途採用率算定対象一覧(計画期間前)
- 採用規程・就業規則・賃金規程等(雇用管理制度が確認できる書類)
- 中途採用情報公表の確認書類(常時雇用300人超の事業主のみ)
STEP2:雇用管理制度の整備と採用の実施
中途採用者に適用する雇用管理制度(労働時間・評価制度・福利厚生等)が新規学卒者と同等であることを確認・整備したうえで、計画に沿って対象者を採用します。
STEP3:中途採用率の拡大と賃金上昇の達成
計画期間中に中途採用率の要件(イ:5ポイント以上上昇またはロ:50%以上)を達成し、採用した方全員について雇い入れ後6か月間すべての月で前職比5%以上の賃金上昇を実現します。
STEP4:支給申請
計画期間の終了日の翌日から起算して6か月を経過する日の翌日から2か月以内に、以下の書類を管轄の労働局へ提出します。
- 様式第7号:支給申請書
- 様式第8号:中途採用率算定対象一覧(計画期間)
- 様式第9号:支給対象者雇用状況等申立書
- 雇用契約書または雇入れ通知書(無期契約であることがわかる書類)
- 賃金台帳(雇い入れ日から支給申請日までのもの)
- 雇い入れ前事業所の賃金が確認できる書類(給与明細・離職票等)
- 成長要件加算を希望する場合は、ローカルベンチマーク結果書類または労働保険確定保険料申告書等
支給申請書等は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
計画期間別のスケジュールイメージ
| 計画期間 | 中途採用計画の届出期限 | 支給申請期間 |
|---|---|---|
| 1年間 | 計画開始日の6か月前〜前日 | 計画終了日の翌日から6か月経過後の翌日から2か月以内 |
| 6か月間 | 計画開始日の6か月前〜前日 | 計画終了日の翌日から6か月経過後の翌日から2か月以内 |
※計画期間が6か月の場合、中途採用率50%以上(ロ)の要件は選択できません。5ポイント以上上昇(イ)のみ対象となります。
本助成金を活用するメリット
中途採用には採用広告・人材紹介会社の利用・選考にかかる人件費など、多くのコストが発生します。採用人数が増えるほど負担は重くなり、「即戦力となる経験者を採用したい」と考えていても費用面の不安から踏み出せない企業も少なくありません。
本助成金を活用すれば、採用した人材1人あたり最大30万円の助成を受けることができます。複数名を採用すればその分だけ助成額も増えるため(上限20人分)、事業拡大のために即戦力を複数採用したい企業にとって、コスト負担を抑えながら人材獲得を進められる有効な制度です。
また、賃金上昇要件を満たすことで採用者の処遇改善にもつながり、定着率の向上や企業ブランド向上にも波及効果が期待できます。
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)に関するよくある質問
助成金はいくら受け取れますか?
通常助成として支給対象者1人あたり20万円が支給されます。加えて、ローカルベンチマークの財務分析結果が「B」以上、または給与等受給者一人あたりの平均受給額を直近2年度で5%以上上昇させた場合は、1人あたり10万円が加算され、最大30万円となります。なお、1年度1事業所あたり20人分が上限です。
中途採用計画はいつまでに提出すれば良いですか?
中途採用計画の開始日の前日から起算して6か月前の日から、計画開始日の前日までに管轄の労働局へ提出する必要があります。雇い入れ後の提出は受け付けられないため、採用活動を始める前に必ず準備を行ってください。
計画期間は1年と6か月のどちらを選べばよいですか?
中途採用率を5ポイント以上上昇させる(イ)を目標とする場合は、1年または6か月を選択できます。中途採用率50%以上(ロ)を目標とする場合は、1年間のみ選択可能です。自社の採用計画に合わせて選択してください。
中途採用率はどのように計算しますか?
計画期間中に雇い入れた中途採用者数を、同期間中に雇い入れた雇用保険被保険者(一般被保険者・高年齢被保険者)の総数で割り、100を掛けて算出します。前年同期との差が5ポイント以上、または計画期間中の中途採用率が50%以上であることが必要です。なお、転勤等による転入・転出者は計算の分母・分子に含めません。
賃金上昇の要件はどのように確認されますか?
雇い入れ後6か月間すべての月において、前職の賃金と比べて5%以上上昇していること(賃金上昇率1.05以上)が必要です。前職賃金の確認は、給与明細・離職票・雇用保険受給資格者証・退職時の証明書等(本人同意のある書類)で行います。なお、賃金には時間外手当・通勤手当・家族手当等は含みません。
パートタイム労働者は助成の対象になりますか?
パートタイム労働者は対象外です。所定労働時間が通常の労働者より短い方は対象となりません。期間の定めのない(無期契約)フルタイム労働者として雇い入れられた方のみが対象となります。
設立したばかりの会社でも申請できますか?
中途採用計画を提出するには、計画期間の初日の前日から起算して1年前の日において雇用保険適用事業所であること、かつ当該日に雇用保険被保険者が存在することが必要です。設立したばかりで1年未満の事業所は要件を満たさない場合がありますので、ハローワークにご相談ください。
300人を超える企業には追加の要件がありますか?
はい。常時雇用する労働者が301人以上の企業は、通常の要件(1)〜(8)に加えて、労働施策総合推進法に基づき中途採用比率を公表していることが必要です。直近3事業年度の正規雇用労働者の中途採用比率をインターネット等で公表し、計画届出時点で公表済みであることが求められます。
他の助成金と同時に受給できますか?
同一の支給対象者について他の助成金を受給している場合は、原則として本助成金を受けることができません。どちらか一方を選択することになります。また、同一事業所から期間が重なる複数の中途採用計画を同時に提出することもできません。
申請窓口と問い合わせ先はどこですか?
申請窓口は、事業所を管轄する都道府県労働局またはハローワーク(公共職業安定所)です。申請手続きはハローワークを経由して行うことができる場合もあります。支給申請書等は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。詳細な要件や書類については「早期再就職支援等助成金ガイドブック(中途採用拡大コース)」をご参照ください。
まとめ
「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」は、中途採用率の引き上げと採用者の賃金上昇に取り組む事業主に対して、支給対象者1人あたり最大30万円(年度上限20人分)を助成する制度です。
人材確保コストの負担が増す令和8年度においても、本助成金を活用することで即戦力となる経験者を迎え入れながら費用負担を軽減できます。まずは自社の中途採用率の現状を確認し、中途採用計画の策定から着手してみてはいかがでしょうか。
なお、雇い入れの前日までに中途採用計画を労働局へ提出することが大前提です。余裕をもって早めに最寄りのハローワーク・都道府県労働局に相談することをお勧めします。
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