「業績悪化により、やむを得ず人員削減を検討している」「事業の縮小に伴って離職者が発生するが、社員のその後が心配だ」――こうした状況に直面する企業の経営者・人事担当者は少なくありません。事業規模の縮小等を行う場合、事業主には離職者の再就職を援助する努力義務があり、一定規模以上の場合は「再就職援助計画」の作成・提出が法的に義務づけられています。
そのような企業が離職者への再就職支援を実施した場合に、費用の一部を国が助成する制度が「早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)」です。職業紹介事業者への委託費用、求職活動のための休暇付与、職業訓練の委託など、複数の支援メニューを組み合わせて活用できる点が大きな特徴です。
この記事では、令和8年度の情報に基づき、対象要件・3つの支援メニュー・助成額・申請の流れをわかりやすく解説します。
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この記事の目次
早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)とは
「早期再就職支援等助成金」は、厚生労働省が提供する3つのコースから構成される助成金制度です。その中の「再就職支援コース」は、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者に対して、再就職支援を実施した事業主に、委託費用等の一部を助成するものです。
事業主は、1か月以内に常用労働者が30人以上離職するような事業縮小等を行おうとする場合、労働施策総合推進法第24条に基づき「再就職援助計画」を作成してハローワークへ提出・認定を受けることが義務づけられています(30人未満でも任意で作成可能)。また、解雇等により離職する45歳以上70歳未満の労働者に対しては「求職活動支援書」の作成も求められています。
本コースはこれらの法的義務を果たす企業を国が経済的にサポートする制度であり、1年度1事業所あたり500人分を上限として助成が受けられます。
3つの支援メニュー
本コースでは、以下3つの支援メニューのいずれか1つ、または複数を組み合わせて実施した場合に助成の対象となります。
| メニュー | 内容 |
|---|---|
| ①再就職支援 | 民間の職業紹介事業者に再就職支援を委託し、対象者の再就職を実現させた場合 |
| ②休暇付与支援 | 在職中から求職活動を行えるよう、労働者に1日以上の有給休暇(年次有給休暇を除く)を付与した場合 |
| ③職業訓練実施支援 | 教育訓練施設等に委託して、再就職に資する職業訓練を実施した場合 |
3つの支援メニューと助成額
①再就職支援
再就職支援の助成額は、次の(ア)〜(ウ)の合計額です。なお、合計額は委託総額または60万円(中小企業で訓練時間200時間以上の場合は80万円)のいずれか低い方を上限とします。
(ア)再就職支援(通常)
| 企業規模 | 対象者が45歳未満 | 対象者が45歳以上 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 委託費用(※)×1/2 | 委託費用(※)×2/3 |
| 中小企業以外 | 委託費用(※)×1/4 | 委託費用(※)×1/3 |
※委託費用=委託総額から訓練加算・グループワーク加算額を差し引いた額
【特例区分】職業紹介事業者との契約に一定の条件を盛り込み、対象者が無期雇用かつ前職比賃金変化率8割以上で再就職を実現した場合は助成率が優遇されます。
| 企業規模 | 対象者が45歳未満 | 対象者が45歳以上 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 委託費用(※)×2/3 | 委託費用(※)×4/5 |
| 中小企業以外 | 委託費用(※)×1/3 | 委託費用(※)×2/5 |
職業紹介事業者が訓練を実施した場合:訓練委託費用×2/3(訓練時間数に応じた上限あり)
| 訓練時間数 | 10時間以上100時間未満 | 100時間以上200時間未満 | 200時間以上 |
|---|---|---|---|
| 中小企業(上限) | 15万円 | 30万円 | 50万円 |
| 中小企業以外(上限) | 10万円 | 20万円 | 30万円 |
職業紹介事業者が3回以上グループワークを実施した場合:中小企業のみ1万円(中小企業以外は対象外)
②休暇付与支援
| 区分 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 休暇付与支援 | 休暇付与1日あたり8,000円(上限180日分) | 休暇付与1日あたり5,000円(上限180日分) |
| 再就職加算 | 離職日翌日から1か月以内に再就職を実現させた場合、1人につき10万円を上乗せ | |
なお、労働日に通常支払われる賃金が8,000円または5,000円に満たない場合は、当該賃金額が1日あたりの支給額となります。
③職業訓練実施支援
| 訓練時間数 | 10時間以上100時間未満 | 100時間以上200時間未満 | 200時間以上 |
|---|---|---|---|
| 経費助成(中小企業)上限 | 15万円 | 30万円 | 50万円 |
| 経費助成(中小企業以外)上限 | 10万円 | 20万円 | 30万円 |
| 賃金助成 | 中小企業:960円/時間 中小企業以外:480円/時間 | ||
経費助成の助成率は訓練委託費用×3/4です。対象経費は入学料・受講料・受験料・教科書代等(受講に際して必要となる経費)です。
【中小企業の範囲】以下の「資本または出資額」か「常時雇用する労働者数」のいずれかを満たす企業が中小企業に該当します。
| 産業分類 | 資本または出資額 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
支給対象となる労働者の要件
本コースの支給対象となる労働者は、以下(1)〜(7)のすべてを満たす方です。
- (1)申請事業主が作成する「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の対象者であること
- (2)申請事業主に雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として継続して1年以上雇用されていた方であること(再就職支援委託日・休暇初日・訓練委託日の前日時点)
- (3)申請事業主の事業所へ復帰の見込みがないこと
- (4)再就職先が未定であること(または未定に準ずる状況)であること(各支援の実施時点)
- (5)職業紹介事業者によって退職勧奨を受けたと受け止めていない方であること
- (6)申請事業主によって退職強要を受けたと受け止めていない方であること
- (7)職業紹介事業者への委託による支援を受ける場合は、当該支援を受けることについて承諾している方であること
【注意】再就職が実現しても助成対象外となるケース
以下のいずれかに該当する場合は、再就職が実現しても助成対象となりません。
- 支給対象者が、職業紹介事業者の支援を全く受けずに自力で再就職した場合
- 支給対象者が、職業紹介事業者の支援開始前に再就職先の内定を得ていた場合
- また、再就職は助成対象期限(離職日翌日から6か月、45歳以上は9か月)以内に実現する必要があります
支給対象となる事業主の要件
本コースを受給するには、以下(1)〜(5)の要件をすべて満たす必要があります。
必須要件
- (1)雇用保険適用事業所の事業主であること
- (2)支給のための審査に協力すること(書類の整備・保管、実地調査の受け入れ等)
- (3)申請期間内(再就職実現日の属する月の末日の翌日から2か月以内)に申請を行うこと
- (4)人員削減を行う組織において、次の①または②に該当すること
- ①生産量・販売量・売上高等の事業活動を示す指標が対前年比10%以上減少していること(直前3か月の平均、直近1年平均、または今後3年以内に見込まれる場合も可)
- ②直近の決算における経常利益が赤字であること、または今後3年以内に赤字となる見込みがあること
- (5)中小企業以外の事業主は、職業紹介事業者への委託による再就職支援の対象者が30人以上であること
受給できない主な事業主
以下のいずれかに該当する場合は受給できません。
- 不正受給から5年以内に申請した事業主
- 過去の労働保険料を未納の事業主
- 支給申請日前1年以内に労働関係法令違反で送検された事業主
- 支給対象者の再就職先と資本的・経済的・組織的に密接な関係にある事業主
- 委託した職業紹介事業者から「退職コンサルティング」を受けた事業主(※)
- 退職コンサルティングを受けていた会社等と委託先の職業紹介事業者が連携していたことを承知していた事業主
- 風俗営業・性風俗関連特殊営業等を行っている事業主
- 倒産している事業主
(※)「退職コンサルティング」とは、再就職支援を受託する職業紹介事業者が、退職者が具体的に決定し計画をハローワークへ提出する日以前に、解雇・退職勧奨・希望退職募集等の人員削減に関して①実施の提案、②制度設計の支援、③実施方法のコンサルティングを行う働きかけをいいます。
申請の流れ(受給手続き)
本コースを受給するには、計画の届出から支援実施・申請まで段階的に進める必要があります。
STEP1:再就職援助に関する計画の届出
支援の実施前に、以下のいずれかを管轄のハローワーク(または労働局)へ提出します。
- 再就職援助計画(ハローワークへ提出し認定を受ける)
- 求職活動支援基本計画書(管轄労働局へ提出。求職活動支援書対象者がいる場合)
計画には、実施する支援の内容(職業紹介事業者への委託・休暇付与・職業訓練のいずれか)を記載し、労働組合等の同意を得ることが必要です。
STEP2:再就職支援の実施
計画の届出後に、職業紹介事業者への再就職支援の委託、休暇付与、または職業訓練の委託を実施します。
再就職支援を委託する職業紹介事業者は、対象者の希望を踏まえて複数から選定することが必要です(原則として有料職業紹介事業者を複数選定)。
STEP3:再就職の実現
助成対象期限(離職日翌日から6か月以内、45歳以上は9か月以内)に、支給対象者が雇用保険の被保険者として再就職を実現させます。
STEP4:支給申請
再就職が実現した日の属する月の末日の翌日から2か月以内に、管轄の労働局へ支給申請を行います。複数名をまとめて申請することも可能で、その場合は最後の支給対象者の再就職日の属する月末翌日から2か月以内が期限となります(申請は各月1回まで)。
| 申請タイムライン | |
|---|---|
| 計画の届出・認定 | 委託契約締結の前までに完了が必要 |
| 委託契約締結・支援開始 | 計画届出後(離職前からの実施も可) |
| 助成対象期限 | 離職日翌日から6か月(45歳以上は9か月)以内に再就職実現 |
| 支給申請期限 | 再就職実現日の属する月末の翌日から2か月以内 |
申請に必要な主な書類
全申請に共通して必要な書類
- 様式第3-1号:支給申請書
- 様式第4号:個別表(支給対象者ごとに作成)
- 様式第8号:支給申請額内訳
- (共通様式)様式第1号:支給要件確認申立書
- 生産指標の減少または経常利益の赤字を確認するための書類
- 再就職援助計画認定通知書(写)または求職活動支援基本計画書(写)等
再就職支援を申請する場合の追加書類
- 様式第3-2号:支給申請書・続紙(職業紹介事業者ごとに作成)
- 様式第5号:再就職支援証明書
- 委託契約書(写)および委託費用の領収書等(写)
- 賃金台帳・雇用契約書等(特例区分での申請の場合)
- 様式第6号:訓練及びグループワーク実施証明書(訓練加算・グループワーク加算申請の場合)
支給申請書等は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。審査内容によっては労働局から追加書類の提出を求められる場合があります。また、関係書類は5年間保管してください。
早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)に関するよくある質問
再就職支援コースはどのような企業が対象になりますか?
事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者が発生し、「再就職援助計画」または「求職活動支援書」を作成した事業主が対象です。加えて、人員削減を行う組織において生産量等が対前年比10%以上減少しているか、直近決算の経常利益が赤字(または3年以内に赤字見込み)であることが必要です。なお、中小企業以外の場合は再就職支援の対象者が30人以上であることも要件となります。
3つの支援メニューは組み合わせて申請できますか?
はい、再就職支援・休暇付与支援・職業訓練実施支援は複数を組み合わせて実施・申請することができます。例えば、職業紹介事業者への委託と求職活動のための休暇付与を同時に行う場合も、それぞれ要件を満たせば助成の対象となります。
休暇付与支援のみで申請することはできますか?
はい、可能です。職業紹介事業者への再就職支援委託を行わない場合でも、求職活動のための休暇付与や職業訓練を実施する場合は本コースを利用できます。
職業紹介事業者は1社だけを選んでもよいですか?
原則として、対象者の希望を踏まえた選択ができるよう、有料職業紹介事業者を複数選定する必要があります。ただし、すでに1社と契約している場合でも、基本的な内容のみの契約であり、労働組合等の合意によって2社以上を選定する場合や、対象者の希望に応じた事業者に委託する場合は申請できることがあります。詳細は管轄の労働局にご確認ください。
特例区分とは何ですか?通常より助成率が上がるのでしょうか?
特例区分とは、職業紹介事業者との委託契約に一定の内容(委託開始時の支払いが委託料の1/2未満、職業紹介事業者が訓練費用の一部を負担、無期雇用かつ前職比8割以上の賃金での再就職実現時の割増支払い等)を盛り込み、対象者が無期雇用かつ賃金変化率8割以上で再就職を実現した場合に適用される区分です。通常よりも助成率が優遇されます(中小企業・45歳未満で2/3、45歳以上で4/5)。
助成対象期限とはいつまでですか?
助成対象期限は、支給対象者の離職日の翌日から起算して6か月(支給対象者が45歳以上の場合は9か月)を経過する日です。本コースを受給するためには、この期限までに再就職支援を実施し、再就職を実現する必要があります。
再就職が実現した方について個別に申請することはできますか?
はい、可能です。各支給対象者の再就職実現日の属する月末の翌日から2か月以内に個別に申請できます。また、同一の再就職援助計画等の支給対象者全員または一部をまとめて申請することも可能です。まとめて申請する場合は、最後の支給対象者の再就職実現日の属する月末翌日から2か月以内が期限となります。なお、申請は各月1回まで行えます。
退職コンサルティングを受けた場合は申請できないのですか?
委託した職業紹介事業者(またはその関連事業者)から退職コンサルティングを受けた事業主は、本コースを受給できません。退職コンサルティングとは、退職者が具体的に決定し計画をハローワークへ提出する日以前に、再就職支援を受託する職業紹介事業者が解雇・退職勧奨・希望退職募集等の実施提案、制度設計支援、実施方法のコンサルティングを行う働きかけをいいます。
他の助成金と同時に受給できますか?
同一の訓練等に対して他の助成金を受給している場合は、原則としてこの助成金を受けることができません。どちらか一方を選択することになります。支給申請前に管轄の労働局へご確認ください。
申請窓口と問い合わせ先はどこですか?
申請窓口は、事業所を管轄する都道府県労働局またはハローワーク(公共職業安定所)です。再就職援助計画の届出はハローワークへ、求職活動支援基本計画書の届出は管轄労働局へ提出します(ハローワーク経由での提出も可)。支給申請書等は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
まとめ
「早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)」は、事業縮小等に伴い離職を余儀なくされた労働者への再就職支援を実施した事業主に対して、職業紹介事業者への委託費用・休暇付与・職業訓練の費用を助成する制度です。中小企業・45歳以上の対象者の場合は助成率が優遇され、特例区分ではさらに手厚い支援が受けられます。
人員削減はつらい決断ですが、離職者のその後をしっかりサポートすることは企業としての社会的責任でもあります。本助成金を活用することで、経済的な負担を抑えながら充実した再就職支援を提供できます。
申請にあたっては、支援実施前に再就職援助計画または求職活動支援基本計画書の届出を済ませておくことが必須です。早めに管轄のハローワーク・都道府県労働局に相談することをお勧めします。
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