原材料の入手困難、輸入コストの高騰、取引先の急な減産——。従業員に問題がなくても、外部環境の変化だけで仕事量が一気に落ち込むことがあります。そこで解雇や雇い止めに踏み切れば、採用・育成にかけたコストは水の泡です。景気が戻ったときに人が集まらない、という二次被害も避けられません。
雇用を維持したまま嵐をやり過ごす。そのための制度が「雇用調整助成金」です。休業・教育訓練・出向によって従業員の雇用を守った事業主に、国が費用の一部を助成します。
そして令和8年8月1日、1人1日あたりの上限額が8,870円から9,110円へ引き上げられました。厚生労働省によれば、令和7年度の平均給与額が令和6年度と比べて約2.7%上昇したことに伴う改定です。本記事では、令和8年8月1日現在の最新情報をもとに、支給要件・助成額の計算方法・申請手続きを整理して解説します。
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この記事の目次
雇用調整助成金とは?休業・教育訓練・出向で雇用を守る事業主への助成制度
雇用調整助成金とは、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を解雇せず「休業」「教育訓練」「出向」によって雇用を維持した場合に、その費用の一部が国から助成される制度です。雇用保険法に基づく制度で、厚生労働省が所管しています。申請窓口は各都道府県労働局またはハローワーク(公共職業安定所)です。
- 対象:経済上の理由で事業活動が縮小し、休業等を実施した雇用保険適用事業主
- 助成内容:休業手当・賃金・出向時の賃金負担額の一部を助成
- 助成率:中小企業2/3・大企業1/2(教育訓練実施率により変動あり)
- 支給上限:1人1日あたり9,110円(令和8年8月1日改定)
- 支給限度日数:1年間で最大100日分、3年間で最大150日分
- 所管:厚生労働省/窓口は都道府県労働局・ハローワーク
なぜ雇用維持が大切なのでしょうか。一時的な業績悪化を理由に人員整理を行えば、労使の信頼関係が崩れ、景気回復後の採用・訓練コストが膨らみます。一方、休業や教育訓練でしのげば、その時間を従業員のスキルアップに充てることもできます。雇用調整助成金は、この「雇い続けるインセンティブ」を制度として後押しするものです。
「雇調金」「雇用調整金」「一時帰休の助成金」は同じ制度?
いずれも雇用調整助成金を指す呼び方です。正式名称は「雇用調整助成金」で、実務では「雇調金(こちょうきん)」と略されることが多くあります。
| よく使われる呼び方 | 正式名称との関係 |
|---|---|
| 雇調金/こちょうきん | 雇用調整助成金の略称。実務・報道で最も一般的 |
| 雇用調整金・雇用調整給付金 | 誤記・通称。制度としては雇用調整助成金を指す |
| 雇用安定助成金 | 通称。雇用保険二事業の「雇用安定事業」に位置づけられることに由来 |
| 一時帰休の助成金 | 一時帰休(=会社都合の一時的な休業)に対して支給されるため、こう呼ばれることがある |
| 緊急雇用安定助成金 | 雇用保険被保険者でない労働者を対象としたコロナ特例の制度。令和5年3月末で終了済み |
なお「産業雇用安定助成金」は名称が似ていますが、在籍型出向やスキルアップ支援を対象とする別の制度です。雇用調整助成金の出向助成とは要件も助成額も異なります。
雇用調整助成金はいつまで申請できる?【令和8年度も継続中】
雇用調整助成金は令和8年度以降も継続している常設制度です。申請できる期間に「制度としての締切」はなく、要件を満たせばいつでも利用できます。新型コロナウイルス感染症の特例が令和5年3月31日で完全終了したため「もう終わった制度」と誤解されがちですが、通常制度は現在も稼働中です。
注意すべき期限は、制度の終了時期ではなく事業主ごとの手続き期限です。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 計画届の提出 | 休業等を開始する日の前日まで(初回は初日の2週間前が目安) |
| 支給申請 | 支給対象期間の末日の翌日から2か月以内(休業手当等の支払日以降に限る) |
支給申請の期限は支給対象期間の末日の翌日から2か月以内です。1日でも過ぎると受け付けてもらえません。また計画届は必ず休業前に提出が必要で、事前の届出がない休業は助成対象外となります。
雇用調整助成金が打ち切り・廃止される予定はある?
令和8年8月時点で、雇用調整助成金の廃止や打ち切りは公表されていません。厚生労働省は令和8年4月1日に支給要領を、同年8月1日に様式等を更新しており、制度は現役で運用されています。
「打ち切り」という言葉が検索される背景には、コロナ特例の段階的縮小(上限額15,000円→9,000円→8,355円と引き下げられ、令和5年3月末に終了)の記憶があると考えられます。縮小・終了したのは特例措置であり、通常制度そのものではありません。
なお令和8年8月現在、実施中の特例措置はありません。過去に実施された特例としては、新型コロナウイルス感染症特例と、令和6年能登半島地震・豪雨に関する臨時特例があります。
雇用調整助成金は1人1日いくらもらえる?上限額と計算方法
雇用調整助成金の助成額は「休業手当等の支払額×助成率」で算出し、1人1日あたり9,110円が上限です。助成率は中小企業2/3、大企業1/2が基本となります。
- 助成額 = 休業手当等の支払額 × 助成率(1人1日あたり9,110円を上限)
- 教育訓練を実施した場合は、さらに1人1日あたり1,200円を加算(上限額の計算には含まない)
- 休業・教育訓練は初日から1年間で最大100日分、3年間で最大150日分
上限額が9,110円に上がったのはなぜ?毎年8月1日に改定される仕組み
雇用調整助成金の上限額は、雇用保険の基本手当日額の最高額(45歳以上60歳未満の区分)に連動しており、毎年8月1日に改定されます。前年度の平均給与額の変動を反映させる仕組みです。
令和8年7月31日付の官報公布により、令和8年8月1日から基本手当日額の最高額が次のとおり引き上げられました。厚生労働省は、令和7年度の平均給与額が令和6年度と比べて約2.7%上昇したことを改定理由としています。
| 年齢区分 | 改定前 | 改定後(令和8年8月1日〜) |
|---|---|---|
| 60歳以上65歳未満 | 7,623円 | 7,830円(+207円) |
| 45歳以上60歳未満 | 8,870円 | 9,110円(+240円) |
| 30歳以上45歳未満 | 8,055円 | 8,270円(+215円) |
| 30歳未満 | 7,255円 | 7,450円(+195円) |
雇用調整助成金の上限に用いられるのは45歳以上60歳未満の区分であるため、8,870円→9,110円が今回の変更点です。判定基礎期間が改定日をまたぐ場合の取扱いについては、管轄の都道府県労働局にご確認ください。
助成率は?中小企業2/3・大企業1/2が基本
支給日数が累計30日に達するまでの助成率は、中小企業2/3、大企業1/2です。
| 企業規模 | 助成率 | 教育訓練加算額(1人1日) |
|---|---|---|
| 中小企業 | 2/3 | 1,200円 |
| 大企業 | 1/2 | 1,200円 |
支給30日到達後は教育訓練の実施率で助成率が変わる
累計の支給日数が30日に達した判定基礎期間の次の判定基礎期間から、その期間における教育訓練の実施率に応じて助成率と加算額が段階的に変わります。教育訓練をまったく行わないと助成率が下がる設計です。
| 教育訓練実施率 | 中小企業の助成率 | 大企業の助成率 | 教育訓練加算額(1人1日) |
|---|---|---|---|
| 10%(1/10)未満 | 1/2 | 1/4 | 1,200円 |
| 10%以上20%未満 | 2/3 | 1/2 | 1,200円 |
| 20%(1/5)以上 | 2/3 | 1/2 | 1,800円 |
教育訓練実施率とは、休業等の延日数のうち教育訓練を実施した日数の割合を指します。この仕組みは令和6年4月1日以降に開始した対象期間から適用されており、令和8年度もそのまま継続中です。単に休ませるだけでなく、その時間をリ・スキリングに充てることで、より手厚い助成が受けられます。
計算例:中小企業で6人が5日ずつ休業した場合
支給日数は「休業の延べ人日数÷対象労働者数」で計算します。1人でも休んだ日を1日と数えるわけではない点に注意が必要です。
- 対象労働者10人の事業所で、うち6人が5日ずつ休業
- 休業の延べ人日数:6人×5日=30人日
- 支給日数:30人日÷対象労働者10人=3日
残業させると助成額が減る「残業相殺」とは
休業等を実施しながら所定外労働や休日出勤をさせた場合、その時間分が休業等の延べ日数から差し引かれます。これを残業相殺といいます。突発的・一時的なやむを得ない残業であっても例外はありません。
- 所定労働時間1日8時間の事業所で、10人が10日ずつ休業(=100人日)
- うち4人が別の日に5日間、各日2時間の所定外労働を実施
- 所定外労働の延べ日数:4人×5日×2時間÷8時間=5人日
- 助成対象の休業延べ日数:100人日-5人日=95人日
出向の場合の助成額
出向の場合は、出向元事業主が負担した出向労働者の賃金額(出向前の通常賃金の概ね1/2が上限)に助成率(中小企業2/3・大企業1/2)を乗じた額が助成されます。1人1日あたりの上限は、雇用保険の基本手当日額の最高額に330/365および支給対象期の日数を乗じた額です。出向の場合は、最長1年の出向期間中に受給できます。
雇用調整助成金の支給要件は?満たすべき7つの条件
支給を受けるには、以下の7つの要件をすべて満たす必要があります。とくに生産量要件(売上高等が前年同期比10%以上減少)が最初の関門です。
| 対象事業主の主な要件 | |
|---|---|
| ①経済上の理由 | 「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由」により事業活動の縮小を余儀なくされていること。季節的変動・事故・法令処分による停止は対象外 |
| ②生産量要件 | 売上高または生産量等の最近3か月間の月平均値が前年同期比で10%以上減少していること |
| ③雇用量要件 | 雇用保険被保険者数と受け入れ派遣労働者数の最近3か月の月平均値が前年同期比で、中小企業は10%超かつ4人以上、大企業は5%超かつ6人以上増加していないこと |
| ④労使協定 | 休業・教育訓練・出向の実施について労使間で事前に協定し、その内容に沿って実施すること |
| ⑤雇用保険 | 雇用保険適用事業主であること(支給申請日・支給決定日時点で被保険者が存在する事業所) |
| ⑥書類整備 | 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿等を整備し、求められた際に提出できるよう保管すること |
| ⑦実地調査 | 労働局等の実地調査(事前連絡なしの現地調査を含む)を受け入れること |
- 例年繰り返される季節的変動によるもの
- 事故または災害により施設・設備が被害を受けたことによるもの
- 法令または司法処分により事業活動が制限されたことによるもの(事業主が自主的に行う場合を含む)
中小企業・大企業はどう判断される?
中小企業に該当するかどうかは対象期間の初日時点で判断します。期間中に資本金等が変動しても、企業規模の変更は行われません。
| 業種 | 中小企業の要件 |
|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下 |
| サービス業 | 資本金5,000万円以下 または 従業員100人以下 |
| 卸売業 | 資本金1億円以下 または 従業員100人以下 |
| その他の業種(製造業・建設業・運輸業等) | 資本金3億円以下 または 従業員300人以下 |
対象期間と支給限度日数、クーリング期間
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 1年間(休業・教育訓練は事業主が指定、出向は出向開始日から1年間) |
| 支給限度日数 | 1年間で最大100日分、3年間で最大150日分 |
| クーリング期間 | 前回の対象期間内の最後の判定基礎期間末日または支給対象期末日(いずれか遅い日)の翌日から起算して1年を超えていないと、次の対象期間を設定できない |
対象になる従業員・ならない従業員
対象となるのは、休業等を行った判定基礎期間の初日の前日(出向は出向開始前日)まで、同一事業主に引き続き6か月以上雇用保険被保険者として雇用されている労働者です。週20時間以上勤務するパート・アルバイトも、雇用保険被保険者であれば対象になります。
一方、以下に該当する方は対象外です。
- 解雇を予告されている者・退職を申し出た者・退職勧奨に応じた者(離職翌日に安定した職業に就くことが明らかな者を除く)
- 日雇労働被保険者、特定求職者雇用開発助成金等の支給対象となる者
- 在留資格等により国内で就労できない者
- 役員・同居の親族等、雇用保険被保険者になれない者(一定の条件による)
助成対象になる休業・教育訓練・出向の条件
休業として認められる条件
助成対象となる休業は、以下をすべて満たすものです。とくに休業等規模要件(中小企業1/20以上・大企業1/15以上)を見落としやすいので注意してください。
- 労使間の協定によるものであること
- 事業主が自ら指定した対象期間内(1年間)に行われるものであること
- 判定基礎期間における休業等の延日数が所定労働延日数の中小企業1/20以上・大企業1/15以上であること
- 休業手当の支払いが労働基準法第26条の規定(平均賃金の6割以上)に違反していないこと
- 所定労働日の所定労働時間内に実施されるものであること
- 全1日にわたるもの、または1時間以上の短時間休業であること
- 短時間休業は個人ごと・日ごとに1時間以上行われる必要がある
- 休業時間は30分単位で計算し、30分に満たない場合は切り捨て
- 休業日に自主的に出社した従業員の休業は、実態として休業と認められず助成対象外
教育訓練として認められる条件
助成対象の教育訓練は、職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とし、所定労働日の所定労働時間内に実施されるものです。OJT(通常の生産活動と区別がつかない業務内訓練)は対象外となります。
- 事業所内訓練:生産ラインまたは就労の場における通常の生産活動と区別して行われるもの
- 事業所外訓練:申請事業主以外の者が実施主体であるもの
- 短時間訓練は個人ごと・日ごとに2時間以上行われる必要がある
対象となる教育訓練の具体例は次のとおりです。
| 実施場所 | 具体例 |
|---|---|
| 事業所内 | 生産ラインを活用した安全操作確認・生産性向上訓練(通常の事業活動と区別して実施)/外部専門家を招いての業務改善ノウハウ、マネジメント研修、プレゼンテーション・問題解決手法の研修/双方向のやりとりができるオンライン講座(常態として講師が受講状況を視認できるもの) |
| 事業所外 | 官公庁や中小企業支援機関等が実施するDX・AI・GX活用、販路開拓、生産性向上に関する講習/教育訓練機関が実施する業務に必要な免許・資格取得・更新のための講習/独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構による在職者訓練・生産性向上支援訓練 |
- 職業スキル向上以外を目的とするもの(趣味・教養、意識改革研修、座禅等)
- 職業人として共通して必要なもの(接遇・マナー講習等)※法令遵守目的を除く
- 通常の生産・事業活動と区別がつかないもの(自社商品知識研修、QCサークル等)
- 講師・指導員が不在のまま行われるもの(自習、ビデオ視聴等)
- 入社時研修、法令で義務づけられている講習(資格取得・更新を除く)
- 教育訓練時間中に業務が行われるもの
- 過去に同一労働者に実施した訓練の繰り返し、海外で行われるもの、外国人技能実習生向けのもの
なお、教育訓練そのものの経費を助成する制度としては「人材開発支援助成金」があります。同一の教育訓練について両方を受給することはできないため、どちらを使うかの見極めが必要です。
出向として認められる条件
出向とは、労働者が出向元事業所の従業員たる地位を保有したまま、他の事業所で勤務する雇用調整の方法です。主な要件は以下のとおりです。
- 雇用調整を目的とするものであり、人事交流・経営戦略・業務提携・実習等を目的とするものでないこと
- 出向労働者の同意を得ていること
- 出向元事業主と出向先事業主の間に独立性が認められること
- 出向期間が3か月以上1年以内であり、出向元事業所に復帰するものであること
- 出向元事業主が出向労働者の賃金の一部(全部ではなく一部)を負担していること
- 出向前の賃金と概ね同じ額の賃金を支払うこと
原材料の高騰や中東情勢による減産でも雇用調整助成金は使える?
使えます。厚生労働省は、原材料の入手困難や価格高騰等に伴い事業活動を縮小し、休業等を余儀なくされた場合も、要件を満たせば支給対象になると明示しています。特別な特例制度に申し込むのではなく、通常制度の枠内で申請する形です。
たとえばナフサをはじめとする原材料価格の高騰、国際情勢を背景としたサプライチェーンの寸断、輸入部材の納期遅延による減産などは、いずれも「経済上の理由」に該当し得ます。判断のポイントは、事業活動の縮小が経済上の理由によるものかどうかと、生産量要件(最近3か月の月平均が前年同期比10%以上減少)を満たすかどうかの2点です。
厚生労働省の「雇用調整助成金の特例」ページでは、令和8年8月現在実施中の特例は掲載されていません。過去に実施された特例は、新型コロナウイルス感染症特例(令和5年3月31日終了)と、令和6年能登半島地震豪雨・半島過疎臨時特例の2つです。原材料高騰や国際情勢を理由とする休業は、特例ではなく通常制度で申請します。
一方で、地震や水害などで自社の施設・設備そのものが被害を受けたことによる休業は「経済上の理由」に当たらず、原則として対象外です。ただし被災地域の取引先が停止したことによる受注減など、間接的な経済影響であれば対象になり得ます。判断に迷う場合は管轄の労働局へ相談してください。
雇用調整助成金の申請の流れと必要書類
申請は「①計画届の提出 → ②休業等の実施 → ③支給申請」という順序で進みます。計画届の事前提出を忘れると1円も支給されません。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①雇用調整の計画 | 休業規模・対象者・教育訓練内容等を具体的に検討し、労使協定を締結する |
| ②計画届の提出 | 「休業等実施計画(変更)届」または「出向実施計画(変更)届」を労働局またはハローワークへ提出 |
| ③雇用調整の実施 | 計画に基づき休業・教育訓練・出向を実施する |
| ④支給申請 | 「支給申請書(休業等)」または「支給申請書(出向)」を提出 |
| ⑤審査・支給決定 | 労働局において審査・支給決定が行われる |
| ⑥支給額の振込 | 決定した助成金が指定口座へ振り込まれる |
計画届はいつまでに出す?
計画届は支給対象期間(支給対象期)ごとに提出します。提出期限は休業等を開始する日の前日までで、初回は休業等の初日の2週間前をめどに提出するのが実務上の目安です。提出が遅れた場合、提出翌日以降の休業等のみが助成対象となります。
郵送の場合も締切日必着です。簡易書留など配達記録が残る方法での送付を推奨します。提出先の労働局またはハローワークへ到着確認の連絡をしてください。
支給申請の期限は末日の翌日から2か月以内
支給申請も支給対象期間(支給対象期)ごとに行います。申請期限は支給対象期間の末日の翌日から2か月以内(休業手当等の支払日以降に限る)です。期限を1日でも過ぎると申請書を受け付けてもらえません。申請期限の末日が行政機関の休日にあたる場合は、その翌開庁日が締切日となります。
提出書類の一覧
| 書類(計画届) | 提出タイミング |
|---|---|
| 休業等実施計画(変更)届(様式第1号(1)) | 毎回 |
| 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書(様式第1号(2)) | 初回のみ |
| 雇用調整実施事業所の雇用指標の状況に関する申出書(様式第1号(4)) | 初回のみ |
| 教育訓練計画一覧表(様式第1号(3)) | 教育訓練を行う場合は毎回 |
| 休業協定書・教育訓練協定書 | 初回(失効した場合は再提出) |
| 事業所の状況に関する書類(生産指標・雇用指標確認書類等) | 初回のみ |
| 書類(支給申請) | 対象 |
|---|---|
| 支給申請書(休業等)(様式第5号(1)) | 休業・教育訓練 |
| 助成額算定書(様式第5号(2)) | 休業・教育訓練 |
| 休業・教育訓練実績一覧表及び所定外労働等の実施状況に関する申出書(様式第5号(3)) | 休業・教育訓練 |
| 出勤簿・タイムカード・賃金台帳等の実績書類 | 共通 |
| 教育訓練の受講を証明する書類(受講者アンケート・レポート等) | 教育訓練 |
様式は令和8年8月1日に更新されています。古い様式で申請すると不備で差し戻されるおそれがあるため、必ず厚生労働省サイトから最新版をダウンロードしてください。なお、提出した書類は支給決定日から5年間保存する義務があります。
電子申請にも対応している
雇用調整助成金は「雇用関係助成金ポータル」からの電子申請に対応しています。厚生労働省は令和8年4月1日版の電子申請マニュアルを公開しており、郵送・持参の手間を省きたい場合の選択肢になります。
雇用調整助成金はいつ振り込まれる?振込名義は「職業安定局」
助成金の振込者名は「コウセイロウドウショウ ショクギョウアンテイキョク」です。通帳やネットバンキングの入出金明細に会社名や「雇用調整助成金」とは記載されないため、身に覚えのない入金と勘違いしてしまうケースがあります。平成29年7月から、雇用関係助成金の支給口座振込はこの名義に統一されています。
入金までの流れは、支給申請 → 労働局による審査 → 支給決定通知書の送付 → 指定口座への振込、という順です。審査に要する期間は労働局の混雑状況や書類の不備の有無によって大きく変わるため、資金繰り計画では余裕をもった見込みを立ててください。具体的な見込み時期は、管轄の都道府県労働局に問い合わせるのが確実です。
なお、雇用関係助成金の支払先口座は事業所につき1つを登録する仕組みです(「支払方法・受取人住所届」)。一度登録すれば、次回以降の申請で再提出は不要です。口座を変更する場合のみ、あらためて届出が必要になります。
雇用調整助成金のデメリットと注意点
雇用調整助成金は雇用維持に有効な制度ですが、活用前に押さえておくべき負担やリスクもあります。
| デメリット・注意点 | 内容 |
|---|---|
| 事務負担が大きい | 計画届と支給申請を判定基礎期間ごとに繰り返す必要があり、出勤簿・賃金台帳等の突合作業も発生する |
| 事前手続きが必須 | 計画届を出さずに休業すると、要件を満たしていても1円も支給されない |
| 資金繰りは先出し | 休業手当を先に支払い、後から助成される仕組みのため、当面の運転資金は自社で用意する必要がある |
| 残業で減額される | 休業期間中に所定外労働をさせると残業相殺により助成額が減る |
| 実地調査を受け入れる義務 | 事前連絡なしの現地調査を含め、労働局の調査に応じる必要がある |
| クーリング期間がある | 前回の対象期間終了後1年を超えないと、次の対象期間を設定できない |
「手続きが面倒だから」と申請をためらう事業主は少なくありません。とはいえ、中小企業が休業手当を月100万円支払った場合、助成率2/3なら約66万円が戻る計算です。労使協定書のひな形や様式は厚生労働省サイトで公開されており、社会保険労務士に依頼する選択肢もあります。
雇用調整助成金の不正受給には厳格な対応
厚生労働省・都道府県労働局は不正受給に対して厳格な対応を実施しています。
- 事前連絡なしの現地調査・立入検査を広く実施
- 不正が判明した場合は全額返還+20%相当の違約金+年3%の延滞金
- 支給決定取消日から5年間、雇用関係助成金が受給不可
- 不正受給した事業主名等の公表(支給取消額100万円以上の場合等)
- 悪質な場合は詐欺罪等による刑事告発
- 休業として申請したが、実際には出勤していた社員がいた
- 雇用関係にない者を含めて申請している
- 申請内容に誤りがあったが、そのままにしている
厚生労働省は、雇用調整助成金のページを模倣した偽サイトの存在を注意喚起しています。URLのドメイン(厚生労働省発行のものはmhlw.go.jp)や掲載内容をよく確認し、不審な点がある場合はアクセスしないようご注意ください。
雇用調整助成金に関するよくある質問
雇用調整助成金は1人1日いくらもらえますか?
1人1日あたりの上限額は9,110円です(令和8年8月1日改定)。助成額は「休業手当等の支払額×助成率(中小企業2/3・大企業1/2)」で算定され、この上限が適用されます。教育訓練を実施した場合は1人1日あたり1,200円(教育訓練実施率20%以上の場合は1,800円)が加算されます。上限額は雇用保険の基本手当日額の最高額に連動し、毎年8月1日に改定されます。
新入社員や入社6か月未満の従業員も助成対象になりますか?
対象外です。雇用調整助成金の対象労働者は、休業等を行った判定基礎期間の初日の前日まで、同一事業主に引き続き6か月以上雇用保険被保険者として雇用されている方に限られます。入社したばかりの新入社員は雇用期間が6か月に満たないため対象になりません。ただし、雇用期間が6か月を超えた時点以降の休業については、他の要件を満たせば対象になります。
パート・アルバイトも雇用調整助成金の対象になりますか?
雇用保険の被保険者であれば対象になります。週の所定労働時間が20時間以上などの要件を満たして雇用保険に加入しているパート・アルバイトは、正社員と同様に対象労働者としてカウントされます。一方、雇用保険に加入していない短時間勤務者や日雇労働被保険者は対象外です。なお、同一事業主に6か月以上雇用されていることも条件となります。
一部の従業員だけを休業させる場合も対象になりますか?
対象になります。全従業員を一斉に休業させる必要はなく、部門や職種を限定した休業も助成対象です。ただし休業等規模要件があり、判定基礎期間における休業等の延日数が所定労働延日数の中小企業1/20以上、大企業1/15以上である必要があります。規模が小さすぎる休業は要件を満たさないため、事前に延日数を試算しておくことをおすすめします。
計画届を提出する前に休業を実施した場合はどうなりますか?
事前に計画届の提出がなかった休業等は助成対象になりません。初回の届出は休業等の初日の2週間前をめどに、それ以降は支給対象期間中の休業等開始日の前日までに提出する必要があります。提出が遅れた場合、提出翌日以降の休業等のみが助成対象となり、それ以前に実施した休業分は支給されません。事後提出による救済はないため、必ず休業前に手続きを完了させてください。
雇用調整助成金はいつ振り込まれますか?振込名義は何ですか?
振込者名は「コウセイロウドウショウ ショクギョウアンテイキョク」です。平成29年7月以降、雇用関係助成金の振込はこの名義に統一されているため、通帳に助成金名や会社名は記載されません。入金時期は、支給申請後に労働局の審査を経て支給決定通知書が届き、その後に指定口座へ振り込まれる流れです。審査期間は労働局の混雑状況や書類の不備によって変動するため、具体的な時期は管轄労働局にご確認ください。
教育訓練加算の1,800円はどのような場合に適用されますか?
累計の支給日数が30日に達した判定基礎期間の次の期間以降で、その判定基礎期間における教育訓練の実施率が20%(1/5)以上の場合に、1人1日あたりの教育訓練加算額が1,200円から1,800円に引き上げられます。教育訓練実施率とは、休業等の延日数のうち教育訓練を実施した日数の割合です。逆に実施率が10%(1/10)未満だと、助成率が中小企業1/2・大企業1/4に引き下げられます。
自然災害や労災による休業でも雇用調整助成金は使えますか?
事故や災害により自社の施設・設備が直接被害を受けたことによる休業は「経済上の理由」に該当せず、原則として対象外です。一方、被災地域の取引先が操業停止したことによる受注減など、間接的な経済影響であれば対象になり得ます。また労災による個人の休業は労災保険の休業補償給付の領域であり、雇用調整助成金の対象ではありません。判断に迷う場合は管轄の都道府県労働局にご相談ください。
設立1年未満の会社でも利用できますか?
雇用保険の適用事業所設置後1年未満の事業主は、生産指標を前年同期と比較できないため、原則として雇用調整助成金の支給対象外となります。生産量要件では、売上高または生産量等の最近3か月間の月平均値が前年同期比で10%以上減少していることを確認するため、前年同期3か月間において雇用保険の適用事業所として労働者を雇用していた実績が必要です。
雇用調整助成金と他の助成金を同時に受けることはできますか?
同一の教育訓練について他の助成金を受給している場合、または同一の賃金等の支出について他の助成金を受給している場合は、雇用調整助成金の支給対象外となります(併給調整)。たとえば人材開発支援助成金と同じ訓練で重複して受給することはできません。複数の助成金の活用を検討している場合は、どの経費にどの制度を充てるかを整理したうえで、事前に最寄りのハローワークまたは労働局の助成金窓口にご相談ください。
まとめ
雇用調整助成金は、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業・教育訓練・出向によって従業員の雇用を維持した場合に、その費用の一部を国が助成する制度です。令和8年度も継続しており、廃止や打ち切りの予定は公表されていません。
令和8年8月1日時点のポイントを整理します。
- 1人1日あたりの上限額は9,110円(令和8年8月1日に8,870円から引き上げ)
- 助成率は中小企業2/3・大企業1/2(累計支給30日到達後は教育訓練実施率により変動)
- 支給限度日数は1年間100日分、3年間150日分
- 計画届は休業等の前日まで(初回は2週間前が目安)に提出が必須
- 支給申請は支給対象期間の末日の翌日から2か月以内
- 原材料高騰や国際情勢による減産も、要件を満たせば通常制度で対象になる
- 様式は令和8年8月1日に更新済み。最新版を厚生労働省サイトから入手すること
厳しい経営環境のなかでも、人材を守り育てるための制度として雇用調整助成金を活用してください。申請内容や要件の詳細については、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークへお問い合わせいただくことをおすすめします。
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