近年、生成AI・DX・脱炭素といった大きな環境変化を背景に、社員のリスキリング(学び直し)を進める企業が急増しています。厚生労働省の調査でも、企業の約6割が「人材育成の強化」を経営上の重要課題に挙げるなど、社内研修への投資意欲はかつてないほど高まっています。
一方で、研修費用や講師代、受講中の人件費は決して小さな負担ではありません。「新しいスキルを身につけさせたいが、コストが重い」――そんな悩みを抱える経営者・人事担当者に注目されているのが、厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。
この記事では人材開発支援助成金の対象者・6コースの内容・助成率・申請方法・2027年の見通しまでを、初めての方にもわかりやすく解説します。
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この記事の目次
人材開発支援助成金とは?対象者・目的をわかりやすく解説
人材開発支援助成金とは、雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための訓練を実施した事業主に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。厚生労働省が雇用保険を財源として運営しており、大きく6つのコースに分かれています。
机上研修(OFF-JT)と実地訓練(OJT)を組み合わせた人材育成を進める企業を後押しする制度であり、リスキリングやDX・GX対応など、企業の変化への対応を支える柱の一つとなっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 人材開発支援助成金 |
| 実施機関 | 厚生労働省・都道府県労働局 |
| 申請できる人 | 事業主(法人・個人事業主)のみ/従業員個人は申請不可 |
| 対象 | 雇用保険の適用事業所で、雇用する労働者に訓練を実施した事業主 |
| 助成内容 | 訓練にかかる経費(受講料等)+訓練期間中の賃金の一部 |
| 助成率の目安 | 経費:45〜75%/賃金:1人1時間あたり400〜1,000円 |
| 年間上限額 | コースにより30万円〜1億円 |
| コース数 | 6コース |
| 申請先 | 都道府県労働局(電子申請も可) |
| 申請期限 | 訓練終了の翌日から2か月以内 |
・人材育成支援コース
・教育訓練休暇等付与コース
・人への投資促進コース
・事業展開等リスキリング支援コース
・建設労働者認定訓練コース
・建設労働者技能実習コース
なお、かつて設けられていた「障害者職業能力開発コース」は令和5年度で廃止され、令和6年4月からは「障害者能力開発助成金」(申請先:高齢・障害・求職者雇用支援機構)へ引き継がれています。
人材開発支援助成金の対象者は?個人事業主・従業員は申請できる?
人材開発支援助成金の申請者は「事業主」に限られます。法人だけでなく個人事業主も申請できますが、従業員(個人)が直接申請することはできません。
「人材開発支援助成金 個人」という検索が多くありますが、本助成金は「事業主が従業員に訓練を実施したこと」に対して支給される仕組みのため、従業員自身が受け取ることはできません。パート・アルバイト・有期雇用の労働者を対象とした訓練でも、申請するのは雇用する事業主側です。
従業員個人が自分で活用できる類似制度としては、ハローワークの「教育訓練給付金」があります。雇用保険の被保険者(または離職から一定期間内の方)が指定講座を受講した場合に、費用の一部が支給される制度です。
令和8年度(2026年度)の主な改正ポイント
令和8年度は、令和8年4月8日改正と令和8年8月3日改正の2度にわたって制度が見直され、リスキリング支援の強化と、eラーニングを中心とした運用の適正化が同時に進められました。令和8年度の概算要求額は539億円で、引き続き大規模な予算が確保されています。
| 時期 | 改正内容 |
|---|---|
| 令和8年4月8日 | 事業展開等リスキリング支援コースに「設備投資加算」を新設(機器導入費の50%、最大150万円) |
| 令和8年4月8日 | 人材育成支援コースに「中高年齢者実習型訓練」を新設(45歳以上対象・経費60%) |
| 令和8年4月8日 | 人への投資促進コース/リスキリング支援コースの長期教育訓練休暇制度に「新規採用助成」「職務代行助成」(最大67.5万円)を新設 |
| 令和8年4月8日 | eラーニング・通信制訓練の経費助成上限を見直し(中小15万円/大企業10万円で一律) |
| 令和8年5月以降 | 支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必須化 |
| 令和8年8月3日 | 事業展開等リスキリング支援コースで受講回数の上限設定(1年度3回、うちeラーニング1回) |
| 令和8年8月3日 | DX・GX訓練の対象範囲を絞り込み(汎用的な概念理解のみの訓練は対象外に) |
| 随時 | 人材育成支援コース/人への投資促進コース/リスキリング支援コースで分割支給申請が可能に |
なかでも事業展開等リスキリング支援コースは、中小企業の場合に経費助成率が最大75%と手厚く、リスキリング推進の中核となる位置づけです。「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」は令和4年度〜令和8年度(2026年度)の時限措置のため、令和9年4月以降は再編される見通しです。活用を検討している企業は、早めに準備を進めましょう。
令和9年度(2027年度)は制度再編の方向性
令和8年8月末に厚生労働省が公表した令和9年度概算要求では、人材開発支援助成金の要求額は602億円(令和8年度当初予算539億円)と、前年度から約12%の増額が見込まれています。制度が縮小・廃止に向かう気配はなく、リスキリング支援の中核としての位置づけは令和9年度も継続する方向です。
一方で注目すべきは、概算要求資料に示されたコース体系が現行の6コースと異なる点です。要求段階の案ではありますが、「訓練実施コース」と「休暇制度導入コース」の2系統に整理し直す方向が示されています。
【令和9年度概算要求で示されたコース体系(案)】
| 系統 | メニュー | 1事業所・1年度あたりの上限額 |
|---|---|---|
| 訓練実施コース | 一般訓練 | 1,000万円 |
| 訓練実施コース | 特定訓練(非正規雇用労働者・中核人材) | 1,500万円 |
| 訓練実施コース | 団体訓練(新設) | 全体1億円 |
| 休暇制度導入コース | 教育訓練休暇制度 | 30万円(賃金要件等を満たす場合36万円) |
| 休暇制度導入コース | 長期教育訓練休暇制度 | 制度導入20万円(24万円) +新規雇用助成・職務代行助成 |
| 休暇制度導入コース | 教育訓練短時間勤務等制度 | ー |
なお、現行の事業展開等リスキリング支援コース(中小企業で経費75%・賃金1,000円/時間)に相当する助成率の枠は、要求資料上では確認できません。一般訓練の経費助成率は45%(賃金要件等を満たす場合60%)で示されており、DX・GX関連訓練の助成水準は令和9年度に見直される可能性があります。「最大75%」の枠組みで訓練を計画している企業は、令和8年度内の計画届提出を検討したほうが確実です。
参考資料:厚生労働省「令和9年度概算要求の概要(人材開発統括官)」
人材開発支援助成金の申請条件・要件
人材開発支援助成金の申請には、コース共通で満たすべき条件と、コース別の個別要件があります。まずは共通条件を押さえ、次に活用したいコース固有の要件を確認するのが基本の流れです。
- 申請者が事業主(法人または個人事業主)であること
- 雇用保険の適用事業所であること
- 訓練開始日の1か月前までに、都道府県労働局へ「訓練計画届」を提出していること
- 対象訓練がコースの要件(訓練時間・実施方法・対象者など)を満たしていること
- 賃金台帳・出勤簿・訓練実施状況を確認できる書類を整備・保管していること
- 支給申請を訓練終了の翌日から2か月以内に行うこと
コースによっては、正社員化要件・賃金引上げ要件・生産性向上要件(人事計画に基づく訓練など)が上乗せされます。「人材開発支援助成金 対象者」「条件」「要件」で検索している方は、まずコース共通の条件を確認したうえで、活用したいコースの詳細記事をご参照ください。
人材開発支援助成金は1事業者あたりいくらもらえる?コース別上限額・助成率
人材開発支援助成金の年間受給上限額は、コースにより30万円〜1億円と幅があります。事業展開等リスキリング支援コースは中小企業の経費助成率75%・年1億円が上限で、6コースの中で最も手厚い水準です。
| コース | 1事業所・1年度あたりの上限額 |
|---|---|
| 人材育成支援コース | 1,000万円 |
| 教育訓練休暇等付与コース | 定額30万円(賃金要件等を満たす場合は36万円) |
| 建設労働者認定訓練コース | 賃金助成等の合計1,000万円 |
| 建設労働者技能実習コース | 経費・賃金助成等の合計500万円 |
| 人への投資促進コース | 2,500万円(うち自発的職業能力開発訓練は300万円/成長分野等人材訓練は別枠1,000万円) |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 1億円 |
コース別助成率の早見表(中小企業)
「人材開発支援助成金 いくら」「助成率」で検索している方向けに、主な訓練の経費助成率と賃金助成額を早見表にまとめました。中小企業の場合、事業展開等リスキリング支援コースが最大75%と最も手厚くなっています。
| コース/訓練 | 経費助成率 | 賃金助成(1人1時間) |
|---|---|---|
| 人材育成支援コース(人材育成訓練・正規雇用) | 45%(賃上げ等で+15%) | 800円(+200円) |
| 人材育成支援コース(有期実習型訓練・正社員化) | 75% | 800円 |
| 人材育成支援コース(中高年齢者実習型訓練) | 60%(+15%) | 800円 |
| 人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練) | 75% | 1,000円 |
| 人への投資促進コース(定額制訓練) | 60%(賃上げ等で最大75%) | ー |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 75% | 1,000円 |
※中小企業以外の助成率・賃金助成額は上記より低く設定されています。詳細は各コースの解説記事をご参照ください。
人材開発支援助成金 全6コースの内容・対象講座をわかりやすく解説
人材開発支援助成金は、目的や対象者に応じて6つのコースに分かれています。OJT(実務を通じた訓練)とOFF-JT(座学・集合研修)の組み合わせや、eラーニング・定額制サービス(サブスクリプション型)の活用可否など、コースごとに設計が異なります。
「人材開発支援助成金 対象講座一覧」で検索している方は、まずコースごとの対象訓練の全体像を確認したうえで、自社に合ったコースを選定するのがおすすめです。
①人材育成支援コース(10時間以上のOFF-JT等)

人材育成支援コースは、職務に関連した知識・技能を習得させるための幅広い訓練を助成する、汎用性の高いコースです。10時間以上のOFF-JTなどが対象で、令和8年4月8日改正で新たに「中高年齢者実習型訓練」(45歳以上向け)が加わりました。
| 区分 | 対象訓練 |
|---|---|
| 人材育成訓練 | 10時間以上のOFF-JT |
| 認定実習併用職業訓練 | 15歳以上45歳未満の中核人材育成のためのOJT+OFF-JTを組み合わせた6か月以上の訓練 |
| 有期実習型訓練 | 有期契約労働者等の正社員転換を目的としたOJT+OFF-JTを組み合わせた2か月以上の訓練 |
| 中高年齢者実習型訓練(令和8年新設) | 45歳以上の従業員が実践的スキルを習得するためのOFF-JT+OJTを組み合わせた2か月以上の訓練 |
経費助成率は最大75%(有期実習型訓練で正社員化した場合)、賃金助成は1人1時間あたり最大800円(+200円)です。
②教育訓練休暇等付与コース(定額30万円)

労働者の自発的な学び直しを促すため、有給の教育訓練休暇制度を導入・運用した事業主に定額30万円(賃金要件等を満たす場合は36万円)を助成するコースです。
制度導入型のため、他コースのように訓練内容や時間数を細かく設計する必要がなく、比較的取り組みやすい点が特徴です。
③人への投資促進コース(デジタル・自発的学習を後押し)

高度デジタル人材の育成、eラーニングを含むサブスクリプション型(定額制訓練)、労働者の自発的な訓練費用の負担、長期教育訓練休暇の導入など、「人への投資」を幅広く後押しする5メニュー構成のコースです。
| 訓練区分 | 経費助成(中小) | 賃金助成(1人1時間) |
|---|---|---|
| 高度デジタル人材訓練 | 75% | 1,000円 |
| 成長分野等人材訓練(大学院等) | 75% | 国内大学院1,000円 |
| 情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 60%(賃上げ等で最大75%) | 800円(賃上げ等で最大1,000円) |
| 定額制訓練 | 60%(賃上げ等で最大75%) | ー |
| 自発的職業能力開発訓練 | 45%(賃上げ等で60%) | ー |
| 長期教育訓練休暇制度 | 制度導入経費20万円(+4万円) | 1人1時間1,000円 |
令和8年4月8日改正では、長期教育訓練休暇制度に「新規採用助成」「職務代行助成」が新設され、代替要員を新規採用または既存社員に業務を代替させた中小企業は最大67.5万円を受け取れます。
本コースは令和8年度が最終年度となる見込みのため、活用予定の企業は早めに計画届を提出しましょう。
④事業展開等リスキリング支援コース(最大75%・年1億円)
事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業・DX・GX(グリーン・カーボンニュートラル)等の変化に対応するためのリスキリング訓練に、中小企業なら経費の最大75%+賃金1,000円/時間を助成する、令和8年度の目玉コースです。
令和8年4月8日改正で追加された「設備投資加算」と、令和8年3月2日改正で追加された「人事・人材育成計画に基づく訓練」の2点が近年の大きな拡充ポイントです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 経費助成率 | 中小75%/大企業60% |
| 賃金助成 | 1人1時間あたり中小1,000円/大企業500円 |
| 経費助成の上限(1人1訓練) | 10〜100時間未満:中小30万円/100〜200時間未満:中小40万円/200時間以上:中小50万円 |
| eラーニング・通信制の上限 | 訓練時間にかかわらず中小15万円/大企業10万円(令和8年4月8日改正) |
| 定額制サービスの上限 | 受講者1人1か月あたり2万円 |
| 賃金助成の上限時間 | 1人1訓練あたり1,200時間(専門実践教育訓練は1,600時間) |
| 設備投資加算(新設) | 導入費用の50%(中小のみ)/1人15万円・10人以上で最大150万円 |
| 年間受給上限 | 1事業所あたり1億円 |
令和8年8月3日改正では、1労働者あたりの受講回数が1年度3回(うちeラーニングは1回)に制限されたほか、DX・GX訓練でも概念理解や汎用的な内容のみの訓練は対象外となりました。計画届の提出前に、対象訓練の要件を必ずチェックしましょう。
⑤建設労働者認定訓練コース(建設業向け・認定訓練)
中小建設事業主等が能開法による認定訓練を実施、または雇用する建設労働者に有給で受講させた場合に助成が受けられるコースです。経費助成と、認定訓練を受講した労働者1人1日あたり3,800円(賃金要件等を満たす場合+1,000円)の賃金助成を受け取れます。
⑥建設労働者技能実習コース(建設業向け・技能講習等)
中小建設事業主が、雇用する建設労働者に有給で技能講習・特別教育・登録基幹技能者講習等を受講させた場合に助成するコースです。中小建設事業主以外は女性労働者のみが支給対象となる点に注意が必要です。
経費助成は最大3/4、賃金助成は建設キャリアアップシステム技能者情報登録者の場合、20人以下の中小建設事業主で1人1日あたり最大10,405円と、6コースの中でも手厚い水準です。
人材開発支援助成金の申請方法・電子申請の流れ
人材開発支援助成金は、コース共通で「訓練計画届の提出 → 訓練実施 → 支給申請 → 審査 → 受給」という4段階の流れで進みます。「人材開発支援助成金 電子申請」で検索している方向けに、電子申請の可否と注意点も整理します。
基本的な申請手続きの流れ
- ①訓練開始日の1か月前までに、都道府県労働局へ「訓練計画届」を提出
- ②計画に沿って訓練等を実施
- ③訓練終了の翌日から2か月以内に、労働局へ支給申請書類を提出
- ④労働局による審査
- ⑤助成金の受給
人材育成支援コース・教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースは、雇用関係助成金ポータルから電子申請が可能です。GビズIDプライムを取得すれば、計画届の提出から支給申請までオンラインで完結します。
ただし、令和8年度以降の改正内容(分割支給申請・新設加算等)については電子申請対応が順次拡充中のため、最新の対応状況は厚生労働省の公式ページでご確認ください。申請先は厚生労働省「助成金のお問い合わせ先・申請先」から確認できます。
人材開発支援助成金の申請期限はいつまで?
支給申請の期限は、訓練終了の翌日から2か月以内が原則で、年度末は3月31日が期限です。期限を過ぎると受給できないため、スケジュール管理が最重要ポイントです。
| タイミング | 申請期限 |
|---|---|
| 通常の場合 | 訓練終了の翌日から2か月以内 |
| 年度末の場合 | 3月31日(年度をまたぐ場合は次年度制度が適用される場合あり) |
| 分割支給申請(令和8年度〜) | 各支給対象期間の末日の翌日から2か月以内 |
| 賃金要件・資格等手当要件の割増分 | 要件を満たす賃金等を3か月間継続支払後の翌日から5か月以内 |
なお、令和8年5月以降の支給申請には「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の添付が必須化されています。すでに支給決定前の申請も対象となるため、該当する場合は労働局からの案内に従い、様式を厚生労働省の公式ページからダウンロードして添付しましょう。
人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の違い
助成制度の検討時によく混同されるのが、キャリアアップ助成金です。両者はどちらも人材育成・雇用環境改善を目的としますが、対象労働者と支援の切り口が大きく異なります。
| 対象労働者 | 支援の目的 | |
|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 主に正規雇用労働者(一部有期契約労働者含む) | 職業訓練を通じたスキルアップ・キャリア形成 |
| キャリアアップ助成金 | 有期契約労働者・パート・派遣社員等の非正規労働者 | 正社員化・処遇改善・待遇差解消 |
「訓練による能力開発」なら人材開発支援助成金、「非正規から正社員への転換や処遇改善」ならキャリアアップ助成金、という切り分けで検討するのが基本です。両制度を組み合わせて活用することも可能なので、目的に応じて最適な組み合わせを検討しましょう。
人材開発支援助成金を活用するときの注意点・デメリット
人材開発支援助成金は手厚い制度ですが、申請にあたって押さえておきたい注意点が3つあります。
- 助成金の支給・不支給は研修終了後の審査で決定される
- OFF-JT実施中は業務から離れるため、一時的な人手不足が発生しやすい
- 計画届・ジョブカード・支給申請書類など手続きが煩雑で、期限も厳しい
とくに気をつけたいのが、申請書類の煩雑さと、訓練終了翌日から2か月以内という短い申請期限です。書類不備や期限超過があると、支給決定に至らないケースもあります。
初めて活用する場合や、複数コースを組み合わせて設計したい場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することも検討しましょう。
人材開発支援助成金 よくある質問
人材開発支援助成金は個人(従業員)でも申請できますか?
申請できません。人材開発支援助成金は事業主(法人または個人事業主)が申請する制度です。従業員個人が直接申請することはできません。従業員が自分で活用できる類似制度としては、ハローワークの「教育訓練給付金」(雇用保険の被保険者が対象)があります。
個人事業主でも申請できますか?
個人事業主も、雇用保険の適用事業所であり、従業員を雇用して訓練を実施していれば申請可能です。ただし、事業主本人(および同居の親族のみを雇用している場合の親族)は対象労働者に含められません。
申請はいつまでにすればよいですか?
訓練終了の翌日から2か月以内に支給申請を行う必要があります。年度末は3月31日が期限です。また、賃金要件・資格等手当要件の割増分については、要件を満たす賃金等を3か月間継続支払後の翌日から5か月以内の申請が必要です。期限を過ぎると受給できません。
1年度に受給できる金額の上限はいくらですか?
コースによって異なります。事業展開等リスキリング支援コースは1事業所あたり1億円、人への投資促進コースは2,500万円、人材育成支援コースは1,000万円、教育訓練休暇等付与コースは定額30万円(賃金要件等を満たす場合36万円)が上限です。
対象となる訓練・講座はどこで確認できますか?
コースごとに対象訓練の種類・要件が定められています。厚生労働省の公式サイトでコース別パンフレットが公開されているため、訓練計画届の提出前に必ず要件を確認しましょう。判断に迷う場合は、事業所所在地を管轄する都道府県労働局へ事前に相談することが推奨されます。
eラーニングや定額制サービス(サブスク)も対象になりますか?
対象になります。ただし、令和8年4月8日改正により、eラーニング・通信制訓練の経費助成上限は訓練時間にかかわらず中小15万円・大企業10万円で一律となりました。また、令和8年8月3日改正で、事業展開等リスキリング支援コースではeラーニングによる訓練は1労働者1年度あたり1回までに制限されています。定額制サービスは、修了した訓練の標準学習時間が10時間以上の労働者が対象です。
電子申請はできますか?
人材育成支援コース・教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース・事業展開等リスキリング支援コースは、雇用関係助成金ポータルから電子申請が可能です。GビズIDプライムを取得すれば、計画届から支給申請までオンラインで完結します。ただし令和8年度改正の一部内容は電子申請対応が順次拡充中のため、最新の対応状況を公式ページで確認してください。
令和8年度の主な改正ポイントは何ですか?
令和8年4月8日改正では、事業展開等リスキリング支援コースへの「設備投資加算」新設(機器導入費50%・最大150万円)、人材育成支援コースへの「中高年齢者実習型訓練」新設、長期教育訓練休暇制度への「新規採用助成・職務代行助成」追加、eラーニング上限の見直し(15万円/10万円)が実施されました。令和8年8月3日改正では、リスキリング支援コースの受講回数上限(1年度3回・eラーニング1回)とDX/GX訓練の対象範囲の絞り込みが行われています。
外国人労働者も助成対象になりますか?
雇用保険の被保険者であれば対象となる可能性があります。ただし、在留資格や雇用形態により例外もあるため、訓練計画届の提出前に管轄の都道府県労働局へ相談することが推奨されます。
人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の併用はできますか?
対象労働者・対象経費が重複しない範囲であれば併用可能です。例えば、有期雇用労働者を対象に人材開発支援助成金「人材育成支援コース(有期実習型訓練)」で訓練を実施し、その後キャリアアップ助成金「正社員化コース」で正社員転換する、といった組み合わせが典型的です。
まとめ
人材開発支援助成金は、雇用する労働者に対して職業訓練を実施した事業主に、訓練経費や賃金の一部を助成する厚生労働省の制度です。令和8年度は6コース体制で、最大の事業展開等リスキリング支援コースでは中小企業の経費助成率75%・年1億円まで受給できます。
制度活用のポイントを改めて整理します。
- 申請できるのは事業主のみ:個人(従業員)は申請不可。従業員向けには「教育訓練給付金」が別途あります
- 事前の訓練計画届が必須:訓練開始日の1か月前までに都道府県労働局へ計画届の提出が必要です
- 申請期限は訓練終了後2か月以内:年度末は3月31日が期限。期限を過ぎると申請不可
- 令和8年度が最終年度のコースあり:「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」は早めの活用が重要
- 令和8年8月3日改正に注意:リスキリング支援コースの受講回数上限(1年度3回・eラーニング1回)とDX/GX訓練の対象範囲絞り込みが加わりました
eラーニング・サブスクリプション型研修など、時間や場所を選ばない学び方への対応も進んでいます。生成AI・DX・脱炭素と、企業が対応すべき変化が加速するいま、人材開発支援助成金をうまく活用して、社員のスキルアップと会社の成長を同時に進めていきましょう。
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