
「物流の2024年問題」への対応として、国は物流のDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進しています。国土交通省の令和7年度予算決定概要では、自動化・機械化機器の導入といった物流DXの促進が明記されました。これに伴い、令和6年度に実施された「物流施設におけるDX推進実証事業(物流DX化推進実証事業)」の公募も、引き続き実施される見込みです。(※2月時点では詳細未定)
今回は令和7年度公募に向けた準備として、物流DX化推進実証事業第三次公募の要領をまとめました。
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この記事の目次
物流DX推進実証事業とは?
国土交通省では物流施設における自動化・機械化・デジタル化の優れた取組を支援しています。物流DX推進実証事業は、実際にシステム構築・連携、DX機器の導入を同時に行い、実証を行う事業者が補助の対象になりました。その名の通り、物流施設における、DX化推進を目的とした事業です。
物流施設の自動化・機械化がもたらすメリット
物流の2024問題は、働き方改革の一環として、労働時間の見直しが行われたことに起因します。労働者の働き方を是正する動きは、これからの社会にとっても有益な取組です。深刻化する労働力不足に対応するには、これまでにない、新しい技術の活用が必要となります。
自動化・機械化による労働の負担軽減や作業時間の短縮は、人手不足の解消にもつながる取組です。またシステムによる作業の可視化や最適化によって、ムダの削減やミスの防止も期待できます。さらに作業の機械化は、施設の稼働率向上にも寄与します。
物流業界全体の生産性向上と持続可能なビジネスモデルの構築を目指す上で、物流施設の自動化・機械化には大きなメリットがあるのです。
事業の流れ
すでに物流DX推進実証事業の令和6年度の公募は終了していますが、ここからは参考として、第三次公募時の概要を見ていきます。事業全体の流れは、以下のとおりです。①申請事業者公募
物流施設における物流DXを推進する意欲のある事業者の募集が行われます。
②伴走支援
事務局による伴走支援を活用しながら、DX計画の策定に取り組みます。必要に応じて事務局が提案する項目について検討し、派遣される専門家協力して、計画を選定しましょう。
➂計画審査から採択
策定されたDX計画は、有識者によって審査されます。なお計画審査の結果、不採択となる場合もあります。
④交付申請から交付決定
計画審査の結果、DX計画が採択された場合には、交付申請手続きを行ってください。その後、事務局による必要な審査を経て、交付決定となります。
⑤補助事業実施から完了
補助事業を開始し、実施期間内に精算までを完了させます。効果検証・次年度に向けたフォローアップについても、伴走支援の活用が可能です。
⑥完了実績報告から補助金交付
補助事業の完了実績報告を事務局に提出してください。
事業全体の流れは、以下の図も参考にしてください。
出典:国土交通省 物流施設におけるDX推進実証事業 公募要領
補助金額、対象経費
補助率と補助条件は、以下のとおりです。
■補助率
1/2
■上限額
システム構築・連携:2,500万円
DX機器導入:1億1,500万円
なおシステム構築・連携とDX機器の導入は、同時に行うことが条件です。
【対象経費】
対象となる経費は、以下のとおりです。
①事業費
■業務費
・システム構築
・連携経費
・自動化・機械化
・機器導入経費
②事務費
■設備費
■事務費
・社会保険料
・賃金、報酬、給料、職員手当
・諸謝金
・旅費
・需用費
・役務費
・委託料
・使用料および賃借料
・消耗品費、備品購入
ただし、以下のものは補助対象外となります。
- 法令・条例等において、義務化されている設備等の導入に係る工事費
- 同一事業の経費において、国より別途補助金が支給されている場合
- 申請主体における経常的な経費
- 業務費および事務費には含まれないシステム・機器等の利用費
- 恒久的な施設の新設、用地取得等、本事業の範囲に含まれ得ない経費
- 営利のみを目的とした活動に関する経費
- コミュニティファンド等への初期投資、出資金
- 事業期間外におけるシステム等の構築や開発・カスタマイズ費用
- 事業期間外におけるシステム機器等のレンタル・リース費
- 親睦会に係る経費
- 振込手数料
- 国の支出基準を上回る謝金費用
対象事業者と要件
対象となる事業者や取組には、それぞれ要件が設定されています。次は補助金交付の対象となるための要件について、確認しましょう。
【補助対象事業者の要件】
補助対象事業者の主な要件は、以下のとおりです。
①必要な法律上の登録等を受けた、以下の事業者
・倉庫事業者
・第一種貨物利用運送事業者・第二種貨物利用運送事業者または許可を得たもの
・トラックターミナル事業者
・一般貨物自動車運送事業者
・特定貨物自動車運送事業者
・貨物軽自動車運送事業者
②物流不動産開発事業者
➂その他、上記の事業者と共同で事業を実施する事業者
なおシステムベンダー等の事業者が、単独で本事業の申請を行うことはできません。また、いずれも事業を行うための実績・能力・実施体制が構築されていることが前提となります。
ただし、次のいずれかに該当する事業者は対象外です。
- 国からの他の補助金を受けている
- 補助金等停止措置または指名停止措置が講じられている事業者
- 暴力団関係者等
【補助対象事業の要件】
採択された計画に基づき実施する事業のうち、補助対象となる事業は、以下の①②を同時に行う物流DX実証事業です。
①物流施設におけるシステム構築・連携事業
物流施設においてシステム構築・連携を行う事業
②物流施設における自動化・機械化事業
物流施設において優れた自動化・機械化機器の導入を行う事業
いずれも、物流施設を保有・使用する物流関係事業者が、トラックドライバーの荷待ち・荷役の削減、施設の省人化を図るための優れた取組が対象となります。対象となる取組の具体例は、以下のとおりです。
■人の作業を減らす・なくす
迅速かつ円滑な荷役作業と施設内の省人化を図る取組
・機器の管理システムと自動化・省人化機器(AGV等)の導入
・搬出入管理システムと立体自動倉庫の導入 など
■人の作業を見える化する
円滑な入庫と効率的な庫内作業による省力化・省人化を促進する取組
・情報の可視化と連携を促進するシステムと情報を収集する機器(IOLセンサー等)の導入など
■人の作業を助ける
自動化・省人化にとどまらない物流の効率化や最適化を目指す取組
・AI-OCR等を活用した業務の効率化
・Workforce Management(WFM)による最適化ソリューション など
申請方法とスケジュール
令和6年度の物流DX推進実証事業の第三次公募では、申請締め切りから交付決定までは約1か月でした。ここでは令和7年度に向けた参考として、昨年度のスケジュールを見ていきましょう。
【スケジュール(第三次公募)】
■申請事業者公募・締切
11月12日(火)~11月22日(金)17:00
■伴走支援
11月25日(月)~12月6日(金)
■計画申請・提出締切
12月9日(月)12:00
■有識者ヒアリング
12月10日(火)~12月11日(水)
■採択結果通知
12月13日(金)
■交付申請~交付決定
12月中
■事業実施期間
1月~2月
■効果検証、完了実績報告書提出
~3月上旬
■補助金支払い
~3月中旬
第一次・二次公募時のスケジュールは、以下の図を参照してください。
出典:国土交通省 物流施設におけるDX推進実証事業
【申請方法】
申請に必要な書類を事務局ホームページからダウンロードし、必要事項を記入の上、「物流施設における DX 推進事務局」へ提出します。
まとめ
物流DX推進実証事業は、物流施設の自動化・機械化を支援する補助金制度です。システム構築・連携とDX機器導入を同時に行うことで、最大1億1,500万円の補助を受けることができます。
申請には、事業者要件や対象事業の要件など、いくつかの条件を満たす必要があります。DX化計画の策定には伴走支援が受けられ、より高度で実用的な事業が実施可能です。令和7年度も、物流DXに関連した支援策が行われる見込みです。自社の物流DX化の方向性を検討し、必要な準備を進めておきましょう。