2025年度の全国企業倒産件数は1万425件と2年連続で1万件を超え、負債額5000万円未満の倒産が比較可能な2000年度以降で最多となるなど、中小零細規模の倒産が目立ちました。また、2026年2月時点の価格転嫁率は42.1%にとどまり、コスト上昇分を十分に価格へ反映できていない企業も少なくありません。物価高・人件費高騰・金利上昇が続くなか、設備の老朽化や生産性の低迷を感じつつも、更新投資に踏み切れない事業者もいるのではないでしょうか。
出典:帝国データバンク「倒産集計 2025年度報(2025年4月~2026年3月)」、帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2026年2月)」
こうした都内中小企業を後押しするため、公益財団法人東京都中小企業振興公社は令和8年度(2026年度)から「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業」の業務改善コースをスタートさせました。既存事業の「深化」「発展」に取り組む都内中小企業に対して、対象経費の2/3以内・上限600万円を助成する制度です。
この記事では、業務改善コースの対象者、助成率、対象経費、令和8年度の申請スケジュール、申請の流れを解説します。
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この記事の目次
業務改善コースとは?既存事業の深化・発展を最大600万円で支援する助成金
業務改善コースは、経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業の3コースの1つで、既存事業の「深化」「発展」に取り組む都内中小企業に対して、対象経費の2/3以内・上限600万円を助成する制度です。賃上げ計画の策定が不要なため、賃上げ重点コースと比べると準備すべき項目は少なく、まず自社の既存事業を強化したい事業者にとって候補になりやすいコースです。
・正式名称:経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(業務改善コース)
・実施:東京都・公益財団法人 東京都中小企業振興公社
・助成上限額:600万円
・助成率:対象経費の2/3以内
・対象取組:既存事業の「深化」「発展」に係る取組
・公募回数:年4回
・申請方法:Jグランツによる電子申請(GビズIDプライム必須)
・問い合わせ:経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業事務局 TEL:03-4405-0707
業務改善コースの対象者|都内中小企業等の要件
業務改善コースの対象者は、直近決算期の営業利益が前期比で減少している、または損失を計上している都内中小企業等です。直近決算期の営業利益が前期比で減少しておらず、損失も計上していない場合は、対象要件を満たしません。
対象者の要件
業務改善コースの対象者は、以下の要件をすべて満たす必要があります。個人事業主・法人のいずれも対象となります。
- 東京都内に本店または支店等の登記があり、実質的に事業を行っている中小企業者等
- 中小企業基本法に規定する中小企業者に該当すること
- 直近決算期の営業利益が前期比で減少している、または損失を計上していること
- 事業税・都民税等の税金を滞納していないこと
- 暴力団関係者、風俗営業等の事業者でないこと
- 令和8年度中小企業収益力強化サポート事業のハンズオン支援に申請中、または決定通知を受けていないこと
なお、中小企業者の規模要件は業種によって異なります。製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下が基本要件です。
重複申請は不可
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業では、業務改善コース、賃上げ重点コース、新市場・新分野進出コースの3コースを重複して申請することはできません。他コースに申請中の場合や、すでに交付決定を受けている場合は申請できないため、取組内容に合う1コースを選ぶ必要があります。
「深化」「発展」に該当する取組の具体例
業務改善コースで対象となる取組は、既存事業の「深化」または「発展」を目指すものに限定されます。「深化」は既に営んでいる事業そのものの質を高める取組、「発展」は既存事業を基に新たな事業展開を図る取組を指します。
| 区分 | 取組例 |
|---|---|
| 既存事業の「深化」 | 高性能な機器・設備の導入による競争力強化/既存の商品・サービスの品質向上/高効率機器・省エネ機器の導入による生産性向上/自動化設備の導入による人手不足対応 |
| 既存事業の「発展」 | 新たな商品・サービスの開発/商品・サービスの新たな提供方法の導入/既存事業で得た知見等に基づく新たな取組 |
対象外となる取組
以下のような取組は業務改善コースの対象外となります。事業計画書の策定前に自社の計画が該当しないか必ず確認してください。
・申請者が営んできた事業内容との関連性が薄い、または全く無い取組
・法令改正への対応など、義務的な取組
・単なる老朽設備の維持更新など、競争力や生産性の向上に寄与しない取組
・既存事業に係る販売促進のみを目的とした取組(対象経費の「販売促進費」参照)
なお、新製品・新サービス開発と新市場・新分野への進出を同時に行う取組は、業務改善コースではなく新市場・新分野進出コース(助成上限1,000万円)の対象となります。取組内容によって適切なコースを選択してください。
助成対象経費と単独申請の可否|11経費区分を一覧解説
業務改善コースの対象経費は、以下の11区分です。一部の経費区分は単独申請ができないため、申請前に組み合わせの条件を確認する必要があります。
| 経費区分 | 単独申請 |
|---|---|
| 原材料・副資材費 | 可 |
| 機械装置・工具器具費 | 可 |
| 委託・外注費 | 可(うち市場調査費は不可) |
| 産業財産権出願・導入費 | 可 |
| 規格等認証・登録費 | 可 |
| 設備等導入費 | 可 |
| システム等導入費 | 可 |
| 専門家指導費 | 不可(他区分と組み合わせ必須) |
| 不動産賃借料 | 可 |
| 販売促進費 | 不可(他区分と組み合わせ必須/既存事業分は対象外) |
| その他経費 | 不可(他区分と組み合わせ必須) |
なお、対象経費のうち、販売促進費とその他経費には個別の上限額が設けられています。販売促進費は150万円、その他経費は100万円が上限です。これらの経費区分では上限額を超える部分は助成対象にならないため、経費計画を立てる際は注意が必要です。
令和8年度の申請スケジュール|業務改善コースは年4回
業務改善コースは年4回の申請機会が設けられています。令和8年度の第1回はすでに受付終了しており、第2回以降のスケジュールは以下のとおりです。受付は先着順ではなく、期間内であればすべての申請を受け付けますが、締切日の16時までに提出を完了させる必要があります。
| 募集回 | 申請受付期間 |
|---|---|
| 第1回 | 令和8年5月11日〜5月29日(受付終了) |
| 第2回 | 令和8年8月3日〜8月14日 |
| 第3回 | 令和8年11月2日〜11月13日 |
| 第4回 | 令和9年2月1日〜2月12日 |
申請の流れ|Jグランツ電子申請とGビズIDプライムの準備
業務改善コースの申請は、国(デジタル庁)が提供するJグランツによる電子申請のみで受け付けます。書類を郵送や持参で提出することはできません。申請にはGビズIDプライムアカウントが必須です。GビズIDプライムは、法人代表者によるオンライン申請の場合は最短で即日発行が可能ですが、書類申請の場合は令和8年7月以降、審査期間が最大1か月となります。申請予定がある場合は、早めに準備しておきましょう。
申請から助成金交付までの流れ
業務改善コースの申請から助成金交付までは、以下の流れで進みます。助成対象期間は交付決定日から1年間で、この期間内に契約・実施・支払まで完了した経費が助成対象となります。助成事業の完了後は、原則1か月以内に実績報告を行い、完了検査を受ける必要があります。
1.GビズIDプライムアカウントの取得(申請前)
2.Jグランツによる電子申請(受付期間内)
3.専門家による書類審査
4.面接審査(書類審査通過者のみ)
5.交付決定・通知
6.助成事業の実施(設備導入・システム構築等)
7.実績報告・完了検査
8.助成金額の確定・交付
申請書類の主な内容
申請時に提出が必要な主な書類は、申請様式、誓約書、直近決算期・前期決算期の損益計算書等、履歴事項全部証明書(法人)または開業届(個人事業主)、納税証明書などです。申請様式には、既存事業との関連性、深化・発展の内容、事業実施による効果が分かるように記載する必要があります。
業務改善コース(創意工夫チャレンジ促進事業)に関するよくある質問
業務改善コースと賃上げ重点コースは何が違いますか?
対象取組(既存事業の「深化」「発展」)と助成上限額(600万円)は共通ですが、賃上げ重点コースは賃金引上げ計画の策定が必須で、代わりに助成率が3/4(小規模事業者は4/5)に引き上げられます。業務改善コースの助成率は2/3以内で、賃上げ計画の策定は不要です。賃上げ計画を策定・実行できる場合は賃上げ重点コースの方が有利になります。
業務改善コースは個人事業主でも申請できますか?
個人事業主も申請できます。中小企業基本法に規定する中小企業者に該当し、都内で実質的に事業を行っており、直近決算期の営業利益が前期比で減少している、または損失を計上している場合が対象です。ただし、個人事業主の場合は開業届の控えや納税証明書等の提出が必要となります。
老朽化した設備の更新は業務改善コースの対象になりますか?
単なる老朽設備の維持更新は対象外です。ただし、老朽設備を高性能な機器・設備に更新することで競争力の強化や生産性の向上につながる取組は、既存事業の「深化」として対象になる可能性があります。事業計画書には、更新後の設備によってどのような改善効果が見込まれるかを具体的に記載する必要があります。
直近決算期の営業利益が減少していない場合は申請できませんか?
申請できません。業務改善コースの対象者は、直近決算期の営業利益が前期比で減少している、または損失を計上している都内中小企業等に限定されています。業績が堅調な事業者向けの制度ではない点が特徴です。判定は直近決算期を基準に行われるため、詳細は募集要項でご確認ください。
GビズIDプライムの取得にどれくらいかかりますか?
GビズIDプライムは、法人代表者によるオンライン申請の場合、最短で即日発行が可能です。一方、書類申請の場合は、令和8年7月以降、審査に最大1か月かかるため、申請予定がある場合は早めに準備しておきましょう。
令和7年度の申請書は令和8年度でも使えますか?
使用できません。令和7年度「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」の申請書は、令和8年度の業務改善コースでは受け付けられません。制度名も「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業」に変更されているため、必ず令和8年度版の最新の申請書を東京都中小企業振興公社の公式ページからダウンロードしてください。
助成対象期間はどれくらいですか?
助成対象期間は交付決定日から1年間です。この期間内に設備導入・システム構築等の事業を実施し、完了報告を提出する必要があります。詳細な期間は募集要項でご確認ください。
不採択となった場合、次の回に再申請できますか?
不採択となった場合でも、次回以降の募集で再申請できます。業務改善コースは年4回の申請機会があります。申請内容や事業計画を見直したうえで、次回以降の申請を検討できます。ただし、業務改善コース以外のコース(賃上げ重点コース・新市場・新分野進出コース)と重複して申請することはできません。
中小企業収益力強化サポート事業と併願できますか?
令和8年度中小企業収益力強化サポート事業のハンズオン支援に申請中、または決定通知を受けている事業者は、業務改善コースを含む創意工夫チャレンジ促進事業には申請できません。両制度は東京都中小企業振興公社が実施する関連事業として位置付けられているため、支援内容や自社の課題に照らして、申請する制度を事前に見極める必要があります。
まとめ|業務改善コースで既存事業の生産性向上を実現しよう
業務改善コースは、既存事業の「深化」「発展」に取り組む都内中小企業を最大600万円・助成率2/3以内で支援する助成制度です。賃上げ計画の策定が不要で、3コースの中で申請ハードルが低い位置付けとなっており、まず自社の既存事業の生産性向上や品質改善に取り組みたい事業者にとって基本の選択肢となります。
令和8年度は年4回の申請機会があり、第2回は令和8年8月3日〜8月14日、第3回は11月2日〜11月13日、第4回は令和9年2月1日〜2月12日に予定されています。申請にはGビズIDプライムアカウントが必須です。取得に時間がかかる場合があるため、早めに準備しておきましょう。
賃上げ計画を策定できる場合は、助成率が3/4に引き上げられる賃上げ重点コース、新製品・新サービス開発と新市場・新分野進出を同時に行う場合は、助成上限1,000万円の新市場・新分野進出コースも候補になります。取組内容と賃上げ計画の有無に応じて、自社に合う1コースを選んで申請してください。
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