障害者雇用を検討しているものの、『初めてで何から始めればいいかわからない』『どんな配慮が必要なのか不安』とお悩みの事業主の方も多いのではないでしょうか。
そんな不安を軽減してくれるのが、国の障害者トライアル雇用助成金です。3か月〜最長12か月の試行雇用を通じて、企業と障害者の双方が適性を見極めながら、1人あたり最大36万円の助成金を受けられます。
本記事では、2026年版の最新要件を踏まえて、対象となる労働者、支給額、申請手続きまでをわかりやすく解説します。
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この記事の目次
障害者トライアル雇用制度の詳細とメリット
本制度は、障害者を原則3か月間試行雇用し、適性や能力を実際の業務を通じて見極めるための制度です。障害者雇用に対する不安が軽減されるだけでなく、障害者が実際の職場環境で自身の適性を確認できるので、双方にとってメリットがあります。
主なメリットは、以下が挙げられます。
障害者を「試行雇用」して適性を見極められる
原則3か月間(精神障害者は最長12か月間)の試行雇用期間中に、実際の業務を通じて障害特性や能力を確認できます。事業主側は「どんな配慮が必要か」「どの業務が適しているか」を見極めることができ、障害者側も実際の職場環境で働けるか判断できるため、双方にとってミスマッチを防げる仕組みです。
最大で1人あたり36万円~48万円の助成が受けられる
対象労働者1人あたり月額4万円(精神障害者の場合は初期3か月は月額8万円)が支給され、最大で総額36万円の助成を受けられます。短時間トライアルコースの場合は最長12か月間支給されるため、最大48万円となります。
2つのコースから雇用形態に応じて選べる
障害者トライアル雇用助成金には「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2種類があります。週の所定労働時間や対象となる障害の種類が異なるため、雇用する障害者の状況や企業の受入体制に合わせて選択できます。
障害者トライアルコースと障害者トライアルコースの違い
障害者トライアル雇用制度で受けられる助成金は、以下の2つのコースがあります。
■障害者短時間トライアルコース
一般的なトライアル雇用をするケースでは「障害者トライアルコース」、週の労働時間が10時間以上20時間未満であれば「障害者短時間トライアルコース」が該当します。
それぞれの主な違いを以下にまとめました。
| 項目 | 障害者トライアルコース | 障害者短時間トライアルコース |
|---|---|---|
| 対象障害 | すべての障害者 | 精神障害者・発達障害者のみ |
| 週所定労働時間 | 原則20時間以上 | 10時間以上20時間未満 |
| 期間 | 原則3か月(精神障害者6〜12か月) | 3〜12か月 |
| 助成額 | 月額4万円(精神障害者は初期3か月8万円) | 月額4万円 |
| 最大助成額 | 通常12万円/精神障害者36万円 | 最大48万円 |
自社で雇用する障害者の状況に応じて、どちらのコースが適しているかを確認しましょう。
障害者トライアルコースの詳細
障害者トライアルコースは、障害者を原則3か月間試行雇用する事業主を対象とした助成金です。週20時間以上の勤務が前提となり、すべての障害者が対象となります。
対象となる労働者
障害者トライアルコースの対象となるのは、障害者の雇用の促進等に関する法律第2条第1号に規定する障害者で、以下の要件を満たす方です。
まず、ハローワークや地方運輸局、一定の要件を満たす職業紹介事業者等に求職申込をしており、継続雇用を希望したうえで障害者トライアル雇用制度を理解し、同意していることが前提となります。
次に、以下のいずれかに該当する必要があります。
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 要件なしで対象 | 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者 |
| 要件を満たせば対象 | 紹介日において就労経験のない職業に就くことを希望する者/紹介日前2年以内に2回以上離職または転職を繰り返している者/紹介日前において離職期間が6か月を超えている者 |
なお、離職期間にはパート・アルバイト等を含む一切の就労をしていないことが要件となります。
支給額(精神障害者の特例含む)
障害者トライアルコースの支給額は、対象労働者が精神障害者かどうかで大きく異なります。
| 対象者 | 月額 | 支給期間 | 最大助成額 |
|---|---|---|---|
| 精神障害者以外 | 4万円 | 最長3か月 | 12万円 |
| 精神障害者(初期3か月) | 8万円 | 雇入れから3か月 | 24万円 |
| 精神障害者(4〜6か月目) | 4万円 | 最長3か月 | 12万円 |
精神障害者を雇用する場合は、初期3か月に月額8万円が支給されることで、最大36万円まで助成を受けることができます。
また、実際の就労日数が予定より少ない場合は、就労割合に応じて支給額が減額されます。
| 就労割合 | 通常の月額 | 精神障害者(初期3か月) |
|---|---|---|
| 75%以上 | 4万円 | 8万円 |
| 50%以上75%未満 | 3万円 | 6万円 |
| 25%以上50%未満 | 2万円 | 4万円 |
| 0%超25%未満 | 1万円 | 2万円 |
| 0% | 不支給 | 不支給 |
支給対象期間
障害者トライアルコースの支給対象期間は、対象者の障害の種類や勤務形態によって異なります。
| 対象者 | 支給対象期間 |
|---|---|
| 精神障害者以外 | 原則3か月(合意により1〜2か月に短縮可能) |
| 精神障害者 | 原則6〜12か月(合意により3〜5か月に短縮可能) |
| テレワーク勤務の場合(精神障害者除く) | 原則3〜6か月(合意により1〜2か月に短縮可能) |
障害者短時間トライアルコースの詳細
障害者短時間トライアルコースは、週20時間未満の短時間勤務からスタートし、期間中に労働時間を延長していくことを目指すコースです。障害者トライアルコースとは対象者や労働時間の設定が大きく異なるため、注意が必要です。
対象となる労働者(⚠️精神障害者・発達障害者のみ)
障害者短時間トライアルコースで対象となるのは、以下のいずれかに該当する方のみです。身体障害者や知的障害者は対象外となる点に注意してください。
| 対象者 | 内容 |
|---|---|
| 精神障害者 | 障害者雇用促進法第2条第6号に規定する精神障害者 |
| 発達障害者 | 発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者(精神障害者に該当する者を除く) |
発達障害者には、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などが含まれます。また、ハローワーク等に求職申込をしており、継続雇用を希望したうえで障害者短時間トライアル雇用制度を理解・同意していることが前提となります。
支給額
障害者短時間トライアルコースの支給額は、対象労働者1人あたり月額4万円で、最長12か月間支給されます。つまり、最大で48万円の助成を受けられる計算です。
| 区分 | 月額 | 支給期間 | 最大助成額 |
|---|---|---|---|
| 対象者1人あたり | 4万円 | 最長12か月 | 48万円 |
なお、実際の就労日数が予定より少ない場合は、障害者トライアルコースと同様に就労割合に応じて減額されます。
支給対象期間
障害者短時間トライアルコースの期間は、テレワーク勤務の有無にかかわらず3か月以上12か月以内です。雇入れ時の週の所定労働時間は10時間以上20時間未満とし、対象者の職場適応状況や体調に応じて、期間中に週20時間以上への変更を目指します。
事業主と対象者が合意すれば、最大12か月まで延長することも可能です。
事業主の支給要件
障害者トライアル雇用助成金を受給するためには、事業主側も以下のすべての要件を満たす必要があります。
・ハローワーク等の職業紹介により対象者を雇い入れること
・紹介前に雇入れに向けた選考を開始していないこと(選考は面接が必須)
・事業主または取締役の3親等以内の親族以外を雇い入れること
・出勤簿、労働者名簿、賃金台帳を整備・保管していること
・トライアル雇用期間中の賃金を支払期日までに支払ったこと
その他の要件
上記の基本要件に加えて、過去の雇用履歴や事業所の種類についても以下の要件を満たす必要があります。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 過去の雇用履歴 | トライアル雇用開始日の前日から過去3年間、対象労働者と雇用・請負・委任・出向・派遣の関係にあったことがないこと。また、同一対象者に職場適応訓練を行ったことがないこと |
| 継続雇用移行率 | 過去3年間で、継続雇用へ移行しなかった労働者数と報告書兼支給申請書が未提出の労働者数の合計が3人を超え、かつ継続雇用へ移行した労働者数を上回っていないこと(自己都合離職や重責解雇など正当な理由による離職は除く) |
| 事業所の種類 | 就労継続支援A型事業所は対象外(対象者を利用者以外として雇い入れる場合を除く) |
障害者トライアル雇用制度の申請の流れ
障害者トライアル雇用制度の全体の流れは、以下のとおりです。

まずはハローワークに求人の申し込みを行い、求職者の選考等を行います。
障害者トライアル雇用を開始したあと、開始日から2週間以内に実施計画書、雇用終了から2か月以内に支給申請書を提出してください。
なお、トライアル雇用を延長した場合や、労働者の自己都合で離職した場合などは申請期限が異なります。その場合は紹介を受けたハローワーク等にお問い合わせください。
他のトライアル雇用助成金との併用
障害者トライアル雇用助成金は、条件を満たせば他のトライアルコースと併用できる場合があります。対象労働者が35歳未満または女性で、中小建設事業主に紹介される場合、障害者トライアルコース(短時間を除く)と若年・女性建設労働者トライアルコースの併用が可能です。
併用時は、障害者トライアルコースの支給を受けた後に、月額4万円(最長3か月)の助成を追加で受けられます。
| 併用の可否 | コース |
|---|---|
| 併用可能 | 障害者トライアルコース+若年・女性建設労働者トライアルコース |
| 併用不可 | 障害者短時間トライアルコース+若年・女性建設労働者トライアルコース |
合わせて読みたい:建設業者に上乗せ支援!若年・女性建設労働者トライアルコースとは?【トライアル雇用助成金】
なお、同じ労働者の雇入れを理由に、原子力災害対応雇用支援事業、事業復興型雇用事業、船員計画雇用促進助成金、漁業担い手確保・育成対策事業、「緑の雇用」現場技能者育成対策事業などの助成を受けている場合は、本助成金は支給されません。
テレワーク勤務での活用
障害者トライアル雇用助成金は、テレワーク勤務で雇用した場合も助成対象となります。テレワーク勤務とは、対象労働者が週の所定労働時間の2分の1以上(月平均で上回っていれば可)を情報通信技術で勤務する形態を指し、自宅での在宅勤務だけでなく、事業主が指定するサテライトオフィスでの勤務も含まれます。
テレワーク勤務で雇用する場合、精神障害者以外の障害者については雇用期間を通常より長く設定でき、当初3か月以上6か月未満の期間を設定したうえで、対象者と事業主の合意により最大6か月まで延長することが可能です。
| 対象者 | 通常の雇用期間 | テレワーク勤務の場合 |
|---|---|---|
| 精神障害者以外 | 原則3か月 | 原則3か月以上6か月以内 |
| 精神障害者 | 原則6か月以上12か月以内 | 同左(変更なし) |
障害特性により通勤が難しい方や、落ち着いた環境で力を発揮できる方にとって、テレワーク勤務は働きやすい選択肢です。事業主側も、通勤配慮や職場環境整備の負担を抑えつつ人材を確保できるメリットがあります。
障害者トライアル雇用制度の活用事例
障害者トライアル雇用制度は、障害者と事業主の両方にメリットがあります。実際の障害者トライアル雇用の活用事例を見ていきましょう。
①養鶏作業員としてのトライアル雇用
| ■障害者 |
|---|
| 男性40代 重度知的障害・難病の重複障害 障害特性:運動失調症状(歩行が不安定等)、言葉がうまく話せない 職歴:警備員8年、食品製造工6年、建築塗装工4年 |
| ■障害者の課題 |
| 近年になって重複障害となり、以前よりさらに手厚い支援体制の立ち上げを要する |
| ■事業者の課題 |
| ・小規模事業所であり、障害者の雇用経験がなく、障害者を雇用するノウハウがない。 ・障害者を雇用することに漠然とした不安がある。 |
| ■支援内容 |
| 地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所が連携したチーム支援を導入。職員が定期的に事業所を訪問し、助言することで、障害特性の理解や受け入れ環境の整備が進展した |
実際に作業する様子を事前に間近で見ることで労働能力を確認でき、障害者を雇用する不安を払拭することができました。またトライアル雇用終了後は、継続雇用に移行。障害者就業・生活支援センターが、引き続き支援を継続しています。
②病院でのトライアル雇用
| ■障害者 |
|---|
| 女性30代 精神障害(統合失調症) 障害特性:記憶力や集中力が不十分、臨機応変な対応や同時進行の作業は苦手 職歴:看護補助2か月、商品補充1か月、事務1年半 |
| ■障害者の課題 |
| ・精神障害のため作業進捗や単語を覚えていなかったり、何かに気を取られて注意散漫な時があったりする ・一つの作業をしている時に他の要素が加わると、混乱してしまう |
| ■事業者の課題 |
| ・精神障害者を雇用した経験がないため、キーパーソンの決定や社員への周知が必要 ・どのような仕事ができるかわからず、具体的な仕事の掘り起こしが課題 |
| ■支援内容 |
| トライアル雇用期間中に、ハローワーク等の職員が定期的に事業所を訪問。本人ができる仕事内容を具体的に掘り起こした。 また本人の障害特性を職場内でも共有し、休憩時間や通院日など、本人の健康面に留意した配慮を行った。 |
トライアル雇用期間中に支援者も実際の職場に入り、割り当てる仕事を掘り起こすことができました。トライアル雇用終了後は継続雇用に移行し、事務職として継続勤務中です。
よくある質問
障害者手帳がない発達障害者も対象になる?
はい、対象となります。精神障害者保健福祉手帳がなくても、主治医の意見書や医師の診断書で発達障害であることが確認できれば、障害者短時間トライアルコースの対象となります。
テレワーク勤務でも助成対象になる?
対象になります。週所定労働時間の2分の1以上を情報通信技術で勤務していれば、テレワーク勤務も助成対象です。精神障害者以外の場合、通常3か月のトライアル期間を最大6か月まで延長できます。
試用期間中に辞めてしまった場合はどうなる?
実際に就労した日数に応じて減額支給されます。就労予定日数に対する実就労日数の割合によって、月額4万円が3万円、2万円、1万円と段階的に減額されます。0%の場合は不支給です。
選考は書類選考でもいい?
いいえ、障害者トライアル雇用助成金の選考は面接が必須です。書類選考のみで採否を決定することはできません。
若年・女性建設労働者トライアルコースと併用できる?
障害者トライアルコースは併用可能ですが、障害者短時間トライアルコースは併用不可です。中小建設事業主が35歳未満または女性の障害者を雇用する場合、障害者トライアルコース(最大12万円〜36万円)に加えて、若年・女性建設労働者トライアルコース(最大12万円)を追加で受給できます。
就労継続支援A型事業所は利用できる?
就労継続支援A型事業所は、一般雇用とは区別されるため対象事業主とはなりません。ただし、A型事業所が当該事業所の利用者以外の障害者を雇い入れる場合は対象となります。
まとめ
障害者トライアル雇用助成金は、障害者を原則3か月間(精神障害者は最長12か月間)試行雇用することで、適性や業務遂行能力を見極めながら継続雇用への移行を目指せる制度です。特に精神障害者を雇用する場合は最大36万円、短時間トライアルでは最大48万円の助成を受けることができ、障害者雇用に初めて取り組む企業にとっても心強い支援となります。
障害者短時間トライアルコースは精神障害者・発達障害者に限定されている点や、選考時に面接が必須である点など、細かなルールを正しく理解したうえで活用することが重要です。また、テレワーク勤務にも対応しており、多様な働き方での障害者雇用を後押ししてくれます。
自社の受入体制や雇用する障害者の状況に応じて適切なコースを選択し、ハローワーク等と連携しながら計画的に活用しましょう。
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