「ワーケーションを認めたいが、就業規則の整備が追いつかない」──こうした声を、都内の中堅・中小企業の人事担当者から聞く機会が増えています。観光庁の調査によれば、従業員100名以上の企業におけるワーケーション制度の導入率は2022年度(令和4年度)で13.4%と、前年度の9.1%から着実に増加傾向にあります。
一方で、パーソル総合研究所の調査では、ワーケーション経験者の14.1%が会社に隠れて実施している「隠れワーケーション」の存在も明らかになっており、規定整備の遅れが労務トラブルにつながるリスクも指摘されています。
こうした中、都内の中堅・中小企業が「ワーケーション勤務を可能とする規定」を新たに整備し、従業員が実際にワーケーション勤務を実施することで1事業者あたり10万円を受け取れるのが、公益財団法人東京しごと財団の「令和8年度ワーケーション勤務導入奨励金」です。
この記事では、令和8年度ワーケーション勤務導入奨励金の支給額・対象事業者の要件・取組内容・申請スケジュール・申請方法までを、東京しごと財団の公式情報をもとにわかりやすく解説します。
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この記事の目次
ワーケーション規定の未整備で悩んでいませんか?都内中小企業が抱える3つの課題
ワーケーション導入を検討する都内中小企業が直面する主な課題は、「規定整備の負担」「労務管理の複雑さ」「導入コスト」の3点です。ワーケーションを導入している企業の53.1%が就業規則やテレワーク規程などの整備を行っているとの調査もあり、制度設計の重要性は高まっています。
しかし、中堅・中小企業にとっては、規定の新規整備に社会保険労務士への相談費用や社内調整の工数がかかり、優先順位を下げてしまいがちです。とはいえ、規定を整備しないまま従業員のワーケーションを黙認すると、労働時間管理や労災認定の場面でトラブルを招くおそれもあります。
そこで注目したいのが、東京しごと財団が2026年4月28日から公募を開始した「令和8年度ワーケーション勤務導入奨励金」です。ワーケーション勤務を可能とする規定を新たに整備し、対象者が実際に1回以上ワーケーション勤務を行うことで、1事業者あたり10万円が支給されます。規定整備をきっかけにテレワーク定着を進めたい都内中小企業にとって、活用しやすい奨励金です。
令和8年度ワーケーション勤務導入奨励金とは?10万円が支給される制度概要
令和8年度ワーケーション勤務導入奨励金は、都内の中堅・中小企業がワーケーション勤務を可能とする規定を新たに整備し、従業員に実際にワーケーション勤務を実施させた場合に、1事業者あたり10万円が支給される制度です。テレワークの定着を目的として、公益財団法人東京しごと財団が2026年4月28日から公募を開始しました。
・実施主体:公益財団法人東京しごと財団
・奨励金額:1事業者あたり10万円(定額)
・対象:都内の中堅・中小企業等(従業員2〜999人)
・取組要件:ワーケーション勤務規定の新規整備+対象者1人以上による1回以上の実施
・申請受付期間:2026年4月28日(火)〜2027年2月26日(金)
実施主体は公益財団法人東京しごと財団
本奨励金の実施主体は、公益財団法人東京しごと財団 企業支援部 雇用環境整備課 テレワーク定着支援係です。東京都の政策連携団体として、都内企業の雇用環境整備を支援する各種奨励金・助成金を展開しています。同財団は本奨励金のほか、サテライトオフィス勤務導入奨励金やテレワーク定着強化奨励金なども併せて実施しており、テレワーク定着に向けた包括的な支援体制を組んでいます。
奨励金額は1事業者につき10万円の定額支給
支給額は、1支給対象事業者に対して10万円の定額です。支給申請後に支給決定を受け、支給決定日から3か月以内に対象となる取組を実施します。その後、実績報告を経て、奨励金を受け取ることができます。申請は1事業者につき1回限りで、2025年度および2026年度に本奨励金を受給した企業、申請中の企業は重複申請できません。
対象となる事業者の要件
対象事業者は、申請日から実績報告日まで、募集要項に定める要件をすべて満たす必要があります。主な要件は以下のとおりです。
- 常時雇用する労働者が999人以下であること
- 都内に勤務する常時雇用する労働者を2人以上雇用していること
- 都内勤務者のうち1人は、申請日時点で6か月以上継続して雇用され、雇用保険の被保険者であること
- 法人は都内に本店登記または事業所があり、都内で事業を営んでいること
- 個人事業主は、都内税務署へ開業届を提出していること
- 支給申請日時点で「ワーケーション勤務を可能とする規定」がないこと
支給申請日時点でワーケーション勤務規定がすでに整備されていた場合、奨励対象外となる点に注意が必要です。これ以外にも要件は募集要項に記載されているため、申請前に必ず公式ページで確認しましょう。
ワーケーション勤務導入奨励金の対象となる取組内容とは?
本奨励金の支給を受けるためには、支給決定日から3か月以内に「(1)ワーケーション勤務を可能とする規定の整備」と「(2)対象者による1回以上のワーケーション勤務実施」の両方を実施する必要があります。いずれか一方だけでは対象になりません。
(1)ワーケーション勤務を可能とする規定を新たに整備する
1つ目の要件は、就業規則やテレワーク規程等に「ワーケーション勤務を可能とする規定」を新たに制定・施行することです。すでに整備済みの場合は対象外となるため、これから規定整備に着手する企業のみが対象となります。
規定には、①労働実態を踏まえたワーケーション勤務の定義、②申請手続方法、③労働時間の管理体制(就業時刻の把握方法)、④情報の取扱いを定める必要があります。既存のテレワーク規程を持つ企業は、ワーケーション特有の項目を追加する形で整備を進めるとスムーズです。
(2)対象者が1回以上ワーケーション勤務を実施する
2つ目の要件は、ワーケーション勤務対象者1人以上が、取組期間内に1回以上ワーケーション勤務を行うことです。対象者は、申請日時点で都内事業所に所属する常時雇用労働者から選びます。経営者は対象にできません。
また、整備した規定に基づき、定められた申請・承認手続きを経たうえで実施する必要があります。実施にあたっては以下2つの条件を満たす必要があります。
- 年次有給休暇等の休暇に連続して勤務を実施すること
- 普段の職場や自宅とは異なる場所で勤務を実施すること
「休日」と「休暇」の違いに注意
本奨励金の取組対象となるのは、「休暇」もしくは「休暇に連続する休日」の前後(または中間)に実施したワーケーション勤務です。休日と休暇は明確に区別されているため、以下の違いを押さえておきましょう。
| 区分 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 休日 | 労働契約上、もともと労働義務のない日 | 公休日、土日祝日、シフト制の休日 |
| 休暇 | 労働義務がある日(労働日)に、会社が労働義務を免除する日等 | 年次有給休暇等の休暇 |
したがって、公休日や土日祝日だけに連続して行うワーケーションは対象になりません。年次有給休暇等の「休暇」と組み合わせて実施することが必須要件です。
ワーケーション勤務を実施する場所の条件
ワーケーション勤務の実施場所は、「普段の職場や自宅とは異なる場所」であることが条件です。たとえば、旅行先の宿泊施設・地方のシェアオフィス・サテライト施設・観光地の滞在施設などが該当します。日常的にテレワークを実施している自宅は対象になりません。
支給決定前に、規定の制定・施行やワーケーション勤務を行うと奨励対象外です。支給決定後、まず規定を制定・施行し、その後に対象者がワーケーション勤務を実施します。両方の取組を支給決定日から3か月以内に終え、支給決定日から4か月以内に実績報告書を提出してください。
令和8年度ワーケーション勤務導入奨励金の申請受付期間と申請方法
本奨励金の申請受付期間は2026年4月28日(火)から2027年2月26日(金)までです。予算の範囲を超える申請があった場合、受付期間内でも早期に終了する可能性があるため、早めの準備をおすすめします。
郵送申請と電子申請で締切時刻が異なる
申請方法により、締切の扱いが以下のように異なります。
| 申請方法 | 締切 |
|---|---|
| 郵送申請 | 申請受付期間最終日(2027年2月26日)消印有効 |
| 電子申請(Jグランツ) | 申請受付期間最終日(2027年2月26日)23時59分まで |
なお、来所による持参提出は受け付けていません。郵送する場合は、配達状況を追跡できる記録が残る方法で送付する必要があります。
電子申請にはGビズIDプライムのアカウントが必要
東京しごと財団は電子申請の利用を推奨しています。電子申請は国(デジタル庁)が提供する「Jグランツ」を通じて行い、利用にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。GビズIDの発行には審査があり、時間を要するため、申請予定の企業は早めにアカウント取得を進めましょう。
なお、社会保険労務士等による代行申請は郵送申請のみで受け付けており、電子申請では申請企業の在籍者以外による代行申請はできません。
申請から支給までの流れ
申請から奨励金受給までの主な流れは以下のとおりです。
- Step1:支給申請書類の提出(郵送または電子申請)
- Step2:東京しごと財団による審査・支給決定
- Step3:支給決定日から3か月以内に取組(規定整備+ワーケーション勤務実施)を実施
- Step4:取組期間終了後1か月以内(支給決定日から4か月以内)に実績報告書を提出
- Step5:奨励額の確定通知・奨励金の支給
主な提出書類
主な提出書類は、支給申請書(様式第1号)、誓約書(様式第2号、署名必須)、そのほか募集要項に記載された各種書類です。実績報告時には実績報告書(様式第7号)を提出します。誓約書は電子申請の場合でも署名が必須となる点に注意しましょう。詳細は東京しごと財団の募集要項ページで確認できます。
令和8年度ワーケーション勤務導入奨励金に関するよくある質問
Q1. 常時雇用する労働者2人以上999人以下とは、パート・アルバイトも含みますか?
常時雇用する労働者には、正社員のほか、期間の定めなく雇用されている労働者、または一定期間以上継続して雇用されている労働者(パート・アルバイトを含む)が原則として含まれます。ただし、判定の詳細は募集要項で定義されているため、必ず公式の募集要項を確認してください。
Q2. すでにテレワーク規程はありますが、ワーケーションの項目がない場合は対象になりますか?
対象となる可能性があります。本奨励金の要件は「支給申請日時点でワーケーション勤務を可能とする規定が整備されていないこと」です。したがって、既存のテレワーク規程にワーケーションを可能とする条項がない場合、新たに規定を整備することで対象となる可能性があります。判断に迷う場合は、東京しごと財団に事前確認することをおすすめします。
Q3. 支給申請前に規定を整備してもよいですか?
支給申請日時点で規定が整備されていた場合、奨励対象外となります。規定の整備は、支給決定を受けた後、支給決定日から3か月以内に実施することが要件です。申請前に規定を制定・施行してしまうと対象外になるため、タイミングに注意しましょう。
Q4. ワーケーション勤務は何日間実施する必要がありますか?
対象者1人以上が1回以上ワーケーション勤務を実施すればよく、日数の明確な下限は概要ページに示されていません。ただし、「年次有給休暇等の休暇に連続して勤務を実施する」ことが条件のため、休暇と勤務日が連続する形で1回以上の実施が必要です。詳細は募集要項で確認してください。
Q5. 実施場所として自宅と同じ市区町村の宿泊施設は対象になりますか?
市区町村による制限は示されていません。同じ市区町村内でも、自宅や普段の職場とは異なる場所であれば、対象となる可能性があります。ただし、個別の実施場所が要件を満たすか判断に迷う場合は、事前に東京しごと財団へ確認してください。
Q6. 2025年度に別のテレワーク関連奨励金を受給した企業は対象外ですか?
2025年度または2026年度に本奨励金を受給した企業や、現在申請中の企業は申請できません。また、別の補助金・奨励金であっても、国・東京都・区市町村等の制度において、本奨励金と同様の取組が支給要件となっている場合は対象外です。制度名ではなく、対象となる取組が重複しているかで判断されるため、他制度を利用している場合は事前に東京しごと財団へ確認してください。
Q7. 電子申請にはどのような準備が必要ですか?
電子申請にはJグランツの利用が必要で、そのためにGビズIDプライムのアカウント取得が必須です。デジタル庁のGビズID運用センターによる審査があり、ID発行までに時間がかかるため、申請予定の企業は余裕を持って準備を進めましょう。ID発行が間に合わない場合は、郵送申請への切り替えを検討してください。
Q8. 個人事業主でも申請できますか?
本奨励金の対象は、常時雇用する労働者が2人以上999人以下の都内の中堅・中小企業等です。個人事業主の場合、従業員を2人以上常時雇用しているなど、対象事業者要件を満たす必要があります。詳細は募集要項で対象事業者の定義を確認してください。
Q9. 従業員1,000人以上の企業は対象外ですか?
本奨励金の対象は、常時雇用する労働者が999人以下の企業です。したがって、常時雇用する労働者が1,000人以上の大企業は対象外となります。都内の中堅・中小企業等をターゲットとした奨励金である点に注意してください。
Q10. 途中で取組を中止した場合はどうなりますか?
撤回届提出期限の翌日以降に取組を中止する場合は、速やかに「中止届出書」(様式第5号)を提出する必要があります。中止を行った場合、再度の申請はできない点に注意してください。また、支給決定以後に申請を撤回する場合は、支給決定通知受領後14日以内に撤回届出書(様式第6号)の提出が必要です。
まとめ|規定整備で10万円、テレワーク定着の第一歩に
令和8年度ワーケーション勤務導入奨励金は、都内の中堅・中小企業がワーケーション勤務を可能とする規定を新たに整備し、対象者1人以上が1回以上ワーケーション勤務を実施することで、1事業者あたり10万円が支給される制度です。
観光庁調査で従業員100名以上企業の導入率が13.4%(2022年度)と伸びる一方、規定整備の遅れによる「隠れワーケーション」も存在する現状において、本奨励金は規定整備の後押しとしてタイムリーな支援策といえます。
申請受付期間は2026年4月28日(火)から2027年2月26日(金)までですが、予算に達し次第、期間内でも早期終了となる可能性があります。支給申請日時点で規定が整備されていないことが要件のため、これから規定整備に着手する企業にとっては絶好の機会です。テレワーク定着の第一歩として、活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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