新型コロナウイルスをきっかけとして、多くの企業でテレワークが導入されるようになりました。元々は「感染症の拡大防止」が主目的でしたが、テレワークの利便性が広まった現在では、「育児や介護を行う従業員の負担軽減のため」という点でも注目されています。
今回紹介する東京都の「育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金」は、育児や介護を行う従業員とその雇用企業をサポートします。この助成金を利用してテレワークを導入することにより、従業員の満足度が向上し、結果として離職率の低下や生産性の向上が企業の利益向上につながることが期待されます。
今回の記事を読んで、本助成金の概要や具体的な対象事業者、対象経費などをチェックし、自社でも活用できないかを検討してみてください。
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この記事の目次
育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金とは
出典:育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金 チラシ
「育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金」は、令和6(2024)年6月3日から申請受付を開始した、新しい助成金制度です。「育児・介護と仕事の両立支援」を目的に設立されました。都内中小企業等が、従業員の「育児・介護と仕事の両立支援」のためにテレワークを導入するにあたって、以下のような取り組みを行う際の費用の一部が助成されます。
・就業規則を見直す |
・テレワークに必要な機器を導入する |
・従業員向けに「育児・介護と仕事を両立させるための研修」を実施する |
・テレワーク制度を社内に周知する |
育児や介護をする従業員にとって、毎日のオフィス通勤はしばしば大きな負担になることがあります。状況を改善しないと、従業員満足度の低下や離職、休職のリスクが高まることも考えられます。「育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金」を活用することで、従業員の負担を軽減し、より働きやすい職場環境を提供することが可能です。
育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金の助成対象事業者
以下のような要件を満たす中小企業等が助成対象です。
主な要件 |
①都内で事業を営んでいる |
②2名以上の従業員を常時雇用しており、そのうち1名は6ヶ月以上継続して雇用している |
③東京都政策連携団体の指導監督等に関する要綱に規定する東京都政策連携団体や事業協力団体、東京都が設立した法人ではない |
④過去5年間に重大な法令違反等がない |
⑤労働関係法令について「従業員への賃金が就労地域の最低賃金額を上回っている」「法定労働時間を超えて従業員を勤務させる場合は36協定を締結している」などの指定要件を満たしている |
⑥都税の未納がない |
⑦支給申請日時点で社内にテレワークに関する規程がない |
要件の詳細は「育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金支給要綱 | p.3〜4」をご参照ください。
【ほかの助成金との併給について】
以下の要件に該当する助成対象事業者は、併給できないため、ご注意ください。
- 「助成金の支給事由と同一事由により支給要件を満たす各種助成金」の中で、国あるいは都が実施するものを受給している、あるいは受給した
- 「在宅勤務、モバイル勤務、リモートワーク等を可能とする情報通信機器等の導入による多様な勤務形態の実現のための環境整備」の助成金を受給した
- 「テレワーク機器導入事業の助成金」を受給した
- 「事業継続緊急対策(テレワーク)事業の助成金」を受給した
育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金の助成事業・対象経費
【助成事業】
上記の助成対象事業者が、「育児・介護と仕事の両立支援」を目的として実施した以下の事業が助成対象です。
助成事業の種類 | 概要 |
テレワークに関する規程の整備 | ・育児や介護を行う従業員のために柔軟な働き方を導入するため、公益財団法人東京しごと財団(以下、財団)が別途定めた研修を受講した ・3歳未満の子供の育児、あるいは介護を行う従業員の在宅勤務等を可能にするため、新たなテレワーク制度を整備し社内に周知した |
テレワーク機器等の整備 | 3歳未満の子供の育児、あるいは介護を行う従業員のために、在宅勤務等を可能とするテレワーク機器等を整備し社内に周知した |
【助成対象経費】
以下に該当しており、かつ財団理事長の認めた経費が助成対象です。
項目 | 概要 |
消耗品費 | ・テレワーク用の端末購入費 ・テレワーク用の業務ソフトウェア購入費 等 |
購入費 | テレワーク用の業務ソフトウェア購入費 |
委託費 | ・テレワーク用の端末等にかかる設置および設定費 ・システム機器等の保守委託等の業務委託料 |
賃借料 | テレワーク用の機器リース料やレンタル料 |
育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金の限度額・助成率
限度額および助成率は、「助成事業の種類」に応じて異なります。
整備内容 | 常用雇用労働者2~29人の企業 | 常用雇用労働者30~300人の企業 |
①テレワークに関する規程の整備 | 20万円(定額) | 20万円(定額) |
②テレワーク機器等の整備 | 上限30万円(助成率 2/3) | 上限80万円(助成率 1/2) |
【助成事業の流れ】
申請から助成金振り込みまでの流れは以下のとおりです。
①事業主が財団に助成金を申請する |
②財団が支給を決定したら、以下のような助成事業を実施する ・研修動画を視聴する ・テレワーク規程を整備する ・テレワークに必要な機器を導入する ・テレワーク規程および導入を社内に周知する |
③助成事業の実施後に財団へ実績報告を行う |
④助成金額が確定したら事業主が財団へ請求する |
⑤財団から助成金が振り込まれる |
育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金の申請方法
【申請期間】
令和6 (2024) 年6月3日 ~ 令和7 (2025) 年2月28日
【提出方法】
提出は電子申請または郵送で行います。
①電子申請の場合
「jGrants」に登録して申請
②郵送の場合
申請書類を以下の住所に郵送
〒102-0072
東京都千代田区飯田橋3-8-5
住友不動産飯田橋駅前ビル11階
公益財団法人東京しごと財団 企業支援部 雇用環境整備課 職場環境整備係 宛
郵送時は、封筒に必ず「育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金 申請書類在中」と記載します。レターパックや簡易書留など「追跡可能で記録の残る方法」で提出してください。
なお、申請書類の到着有無の問い合わせには応じられないためご注意ください。また、持ち込み提出は受け付けていません。
育児・介護との両立をサポートするテレワークの導入効果
新型コロナウイルスを契機として、テレワークは徐々に浸透しています。2024年3月時点の調査でも、都内企業のテレワーク実施率は「43.4%」となりました。ピーク時より低下したものの、現在でも半数近い企業がテレワークを実施しているとわかります。
このテレワークの流れを加速することは、「育児・介護と仕事の両立を目指す従業員」にとってもよい影響を与えます。先ほども解説したように、出社の負担が減少することで、より働きやすい職場が実現し、結果として従業員の定着率も向上する可能性が高まります。
また、従業員の負担を減らすことは、企業にもメリットをもたらします。従業員の定着率が改善されれば優秀な人材を確保できるため、「人材不足」が問題となっている現代でも、採用コストの削減や生産性向上などを実現可能です。
まとめ
育児・介護との両立のためのテレワーク導入促進助成金は、テレワーク導入を推進することで、「企業と従業員」の両方にメリットをもたらします。より快適な職場環境を整備し、働きやすさや生産効率の向上を実現したい企業は、こういった支援制度の活用をご検討ください。