「工場のボイラや工業炉が老朽化してきたものの、更新費用が大きくて踏み切れない」「脱炭素対応が求められているが、どの設備をどう転換すればよいのかわからない」——こうした悩みを抱える事業者に注目されているのが、省エネ・非化石転換補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型です。
本制度は、化石燃料を使用する設備から電気設備への転換や、より低炭素な燃料への切り替え、水素燃料の活用などを支援する補助金です。設備更新にかかる負担を抑えながら、脱炭素化と省エネを同時に進められる点が大きな特徴です。
この記事では、省エネ補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型について、対象となる企業や設備、補助率、申請要件、公募スケジュールまでをわかりやすく解説します。
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・工場等のボイラ・空調・生産設備更新で使える「工場・事業場型(Ⅰ型)」
・【★本記事】工場の化石燃料ボイラや工業炉を補助金で転換!「電化・脱炭素燃転型(Ⅱ型)」
・空調・冷蔵設備・制御機能付きLEDで使える「設備単位型(Ⅲ型)」
・エネルギー代が高いが何から始めれば?「エネルギー需要最適化型(Ⅳ型)」
合わせて読みたい:【2026年】省エネ・非化石転換補助金とは?2つの申請型と4つの事業区分をわかりやすく整理
この記事の目次
省エネ補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型とは
省エネ・非化石転換補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型は、化石燃料を使用する設備から、電気設備やより低炭素な燃料設備へ転換する取り組みを支援する制度です。
工場や事業場で使用しているボイラ、工業炉、給湯設備などを対象に、電化や脱炭素目的の燃料転換、水素対応改造などを行う場合に活用できます。設備更新そのものに加え、GX対応やエネルギーコスト削減を見据えた投資として注目されています。
| 省エネ補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型の基本情報 | |
|---|---|
| 制度名 | 省エネ・非化石転換補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型 |
| 対象 | 化石燃料設備からの電化、低炭素燃料への転換、水素利用対応 |
| 主な対象設備 | 産業ヒートポンプ、業務用ヒートポンプ給湯器、高性能ボイラ、高効率コージェネレーション、低炭素工業炉など |
| 1次公募期間 | 2026年3月30日(月)~4月27日(月)17時必着 |
| 事業区分 | 補助率 | 補助上限額 (事業全体) | 補助対象経費 |
|---|---|---|---|
| 更新・改造事業 | 1/2 | 3億円 ※電化の場合は5億円 | 設備費・工事費(中小企業のみ) ※電化の場合は付帯設備も対象 ※水素対応設備の場合は水素供給に不可欠な付帯設備も対象 |
| 新設事業 | 1/5 | 3億円 | 設備費・工事費(中小企業のみ) ※水素供給に不可欠な付帯設備も対象 |
この補助金で解決しやすい3つの課題
本制度は、単に設備を更新するための補助金ではありません。事業者が抱えやすい投資・移行・規制対応の課題をまとめて後押しする制度として活用できます。
設備投資の負担が大きく踏み切れない
化石燃料ボイラからヒートポンプや電気ボイラへの切り替え、工業炉のガス化や水素対応化などは、数千万円から数億円単位の投資になることもあります。特に中小企業では、必要性を感じていても更新費用が重く、後回しになりがちです。
本補助金では補助率1/2以内、電化事業では上限5億円という支援が受けられるため、設備投資のハードルを大きく下げられます。
何をどう転換すればよいのかわからない
脱炭素対応の必要性は理解していても、自社設備に対して具体的にどの移行ルートが適しているのか判断できない企業は少なくありません。
この制度では、電化、低炭素燃料への転換、水素対応という方向性が明確に整理されており、温度帯や設備用途に応じた導入イメージを描きやすいのが特徴です。
GX対応や規制強化に先手を打ちたい
本補助金はGX推進戦略とも関係が深く、申請時にはGX推進への意思表明が求められます。今後、CO₂排出量の把握や削減計画の提出、開示対応などが重要になるなかで、補助金を使いながら先回りして備えられる点もメリットです。
どんな企業が対象になりやすいのか
対象となる事業者は、公募要領上は設備や事業内容で判断されますが、実務上は温度帯×業種で整理するとわかりやすくなります。
| 温度帯・領域 | 想定される設備転換 | 対象になりやすい用途・特徴 | 該当しやすい業種 |
|---|---|---|---|
| 低温域 ボイラからヒートポンプへの転換 | 石油・石炭ボイラからヒートポンプへの更新 | 温水供給、給湯など比較的低温の熱需要がある事業者 | ・ホテル・旅館 ・病院・介護施設 ・食品工場 ・クリーニング工場 ・スポーツ施設・温浴施設 |
| 中温域 蒸気供給設備の燃料転換・電化 | 石油ボイラからガス焚きボイラや電気ボイラへの転換 | 蒸気を使う製造工程を持つ事業者 | ・食品・飲料メーカー ・製紙工場 ・繊維・染色工場 ・化学工場 ・ゴム・プラスチック製品製造業 |
| 高温域 工業炉や焼成炉の転換 | コークス・重油使用設備から電気炉やガス炉への更新 | 高温加熱・焼成工程を持つ事業者 | ・鋳造・金属加工業 ・鉄鋼・非鉄金属メーカー ・セラミックス・窯業 ・ガラス製造業 |
| 水素対応設備 水素混焼・専焼への対応 | 既存設備の改造、新設設備の導入 | 水素混焼・専焼への対応を目指す事業者 | ・水素対応設備を導入したい企業 ・脱炭素型の新設設備を検討している事業者 |
省エネ・非化石転換補助金の全体像
省エネ・非化石転換補助金には複数の事業区分があり、その中の一つが(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型です。制度全体の中でどの位置づけなのかを把握しておくと、自社に合う枠を選びやすくなります。
| 省エネ・非化石転換補助金の主な区分 | ||
|---|---|---|
| 区分 | 事業区分 | 概要 |
| 工場・事業場型 | (Ⅰ)工場・事業場型 | 事業場全体での省エネ計画に基づく設備更新 |
| 工場・事業場型 | (Ⅳ)エネルギー需要最適化型 | EMS導入によるエネルギー管理の最適化 |
| 設備単位型 | (Ⅱ)電化・脱炭素燃転型 | 電化や脱炭素目的の燃料転換を伴う設備更新等 |
| 設備単位型 | (Ⅲ)GX設備単位型(トップ性能枠) | 特に省エネ性能が高い設備への更新・新設 |
| 設備単位型 | (Ⅲ)GX設備単位型(メーカー強化枠) | GX要件を満たしたメーカー設備への更新 |
| 設備単位型 | (Ⅲ)設備単位型(従来枠) | LED照明や空調など汎用設備の更新 |
このうち、本記事で解説するのは設備単位型の(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型です。
(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型の概要
(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型は、化石燃料から電気への転換や、より低炭素な燃料への切り替えを伴う設備更新を支援する制度です。大きく分けると、更新・改造事業と新設事業の2パターンがあります。
| 事業パターンの違い | ||
|---|---|---|
| パターン | 内容 | 補助率 |
| 更新・改造事業 | 既存の化石燃料設備を電気設備・低炭素燃料設備に更新、または水素対応仕様へ改造する事業 | 1/2以内 |
| 新設事業 | 新設事業所や新たな製造ラインで水素対応設備を新設する事業 | 1/5以内 |
なお、温水や熱の供給のうち、低温域では原則として電化のみが対象です。ただし、高効率コージェネレーションは例外として扱われます。
対象となる3つの事業類型
更新・改造事業では、主に次の3類型が対象となります。
電化に該当する事業
石炭・石油・ガスなどの化石燃料を使う設備から、電気を使う設備へ更新する取り組みです。
- 石油ボイラからヒートポンプへの更新
- 蒸気ボイラから電気ボイラへの更新
- コークス炉から誘導加熱式の電気炉への更新
脱炭素を目的とした燃料転換
石炭・石油などから、より低炭素なガス等の燃料へ転換する事業です。
- 石油ボイラからコージェネレーションへの更新
- 石油ボイラからガス焚きボイラへの更新
- 重油炉からガス燃料炉への更新
水素燃料の利用を目的とした既存設備の改造
既存のボイラや工業炉などを、水素専焼または混焼が可能な設備に改造する事業も対象です。水素利用を前提とする場合は、専焼または10%以上の混焼が可能な仕様であることが求められます。
新設事業について
新設事業は、水素燃料を活用する設備の新設に限定されています。たとえば、新たな工場を立ち上げる場合や、既存工場内で新製造ラインを新設する場合などが該当します。
ただし、更新・改造事業と比べると補助率は低く、1/5以内です。上限額も3億円となっており、更新・改造事業のような電化による5億円上限の引き上げはありません。
補助対象設備
補助対象となるのは、SIIが公表する指定設備のうち、主に以下の区分に該当するものです。
| 主な補助対象設備 | |
|---|---|
| 設備区分番号 | 設備区分名 |
| ② | 産業ヒートポンプ |
| ③ | 業務用ヒートポンプ給湯器 |
| ④ | 高性能ボイラ |
| ⑤ | 高効率コージェネレーション |
| ⑥ | 低炭素工業炉 |
また、その他SIIが認めた高性能設備のうち、電化・脱炭素燃転に資すると判断された設備も対象となる場合があります。
- 現在使用している設備の更新・改造であること
- 更新前後で使用用途が同じであること
- 兼用設備、将来用設備、予備設備でないこと
- 中古品でないこと
- 更新後の性能が既存設備より低くならないこと
補助率・補助金額
補助率と補助上限額は、更新・改造事業か新設事業かによって異なります。
| 更新・改造事業 | 新設事業 | |
|---|---|---|
| 補助率 | 1/2以内 | 1/5以内 |
| 上限額 | 3億円 電化する場合は5億円 | 3億円 |
| 下限額 | 30万円 | 30万円 |
特に電化を伴う更新・改造では、上限額が5億円まで引き上げられる点が大きな特徴です。
申請要件
更新・改造事業では、原油換算量ベースで次のいずれかの要件を満たす必要があります。
| 主な省エネ要件 | |
|---|---|
| 要件 | 基準値 |
| 計画省エネルギー率+非化石転換率 | 10%以上 |
| 計画省エネルギー量+非化石使用量 | 1kl以上 |
| 経費当たりの計画省エネ量・非化石使用量 | 1kl/千万円以上 |
水素燃料を使う場合は、10%以上の混焼率で実稼働することも要件です。新設事業についても、水素混焼率10%以上が求められます。
補助対象経費
主な補助対象経費は設備費です。さらに、中小企業者等が実施する事業や、水素利用を目的とした改造事業では工事費も対象になり得ます。
| 補助対象経費 | ||
|---|---|---|
| 区分 | 対象可否 | 備考 |
| 設備費 | 対象 | 機械装置の購入に要する経費 |
| 工事費 | 条件付きで対象 | 中小企業者等または水素改造事業に限る |
| 設計費 | 対象外 | 補助対象にならない |
なお、補助対象経費は原則として3者以上の価格競争を行った結果の最低価格が上限になります。
以下の費用は補助対象外です。
- 既存設備の解体・撤去・移設費
- 建屋や外構工事にかかる費用
- 会議費などの諸経費
- 交付決定前に発生した費用
- 消費税・地方消費税
GX要件について
申請時には、GX推進への取り組みに関する意思表明が必要です。特に民間企業は、CO₂排出量の規模によって求められる内容が変わります。
| GX要件の考え方 | |
|---|---|
| 企業区分 | 求められる取組 |
| CO₂排出量20万t以上の民間企業 | Scope1・Scope2の削減目標設定、進捗管理、第三者検証、報告・公表など |
| CO₂排出量20万t未満の民間企業または中小企業 | 本事業の省エネ効果を含めた省エネ計画の提出で対応可能 |
また、石炭・石油からガス等への燃料転換など、継続して化石燃料を使う事業では、将来的な非化石エネルギーへの転換を検討・実施するコミットメントも求められます。
公募スケジュール・予算
2026年の1次公募スケジュールは以下のとおりです。
| 1次公募スケジュール | |
|---|---|
| 公募要領公開日 | 2026年3月25日(水) |
| 公募期間 | 2026年3月30日(月)~4月27日(月)17時必着 |
| 交付決定予定 | 2026年6月中旬頃 |
| 事業完了期限 | 2027年1月31日(日)まで |
(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型は年3回の公募が予定されています。1次公募の結果により、2次・3次公募の予算が変動する場合があります。
申請の流れ
申請から補助金受領までの大まかな流れは以下のとおりです。
- 3者以上の見積取得
- SIIホームページでアカウント登録
- 補助事業ポータルへの入力
- 申請書類の印刷・郵送
- 審査・採択
- 交付決定
- 事業実施
- 実績報告
- 確定検査・補助金支払い
省エネ補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型のよくある質問
どのような設備更新が対象になりますか?
石油ボイラからヒートポンプへの更新、蒸気ボイラから電気ボイラやガス焚きボイラへの更新、コークス炉から電気炉やガス炉への更新など、化石燃料設備の電化や低炭素燃料への転換を伴う設備更新が主な対象です。
中小企業でも活用しやすい補助金ですか?
はい。中小企業者等は工事費も補助対象になる場合があり、GX要件も比較的対応しやすい内容です。老朽設備の更新時期と重なれば、導入メリットは大きいといえます。
新設事業と更新・改造事業の違いは何ですか?
更新・改造事業は既存設備の入れ替えや改造が対象で、補助率は1/2以内です。一方、新設事業は水素対応設備の新設に限定され、補助率は1/5以内となります。
交付決定前に契約や発注をしても大丈夫ですか?
原則として、交付決定前に行った契約や発注は補助対象外です。見積取得は公募要領公開日以降であれば交付決定前でも有効ですが、正式な契約や発注は交付決定後に行う必要があります。
申請時に注意すべき実務ポイントはありますか?
3者以上の見積取得、補助事業ポータルへの入力後の書類郵送、既存設備の撤去、補助対象外経費の切り分けなどが重要です。特に、ポータル入力だけで申請完了と誤解しないよう注意が必要です。
まとめ
省エネ補助金(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型は、工場や事業場における化石燃料設備の更新を後押しする制度です。電化や燃料転換によって、エネルギーコストの見直しとGX対応を同時に進められる可能性があります。
特に、ボイラや工業炉の更新時期を迎えている事業者にとっては、投資負担を抑えながら脱炭素化を進める有力な選択肢になり得ます。申請を検討する際は、対象設備や補助率だけでなく、事業類型、GX要件、実務上の手続きまで含めて整理しておくことが重要です。
- 化石燃料設備の電化・燃料転換・水素対応が対象
- 更新・改造事業は補助率1/2以内
- 電化する場合は上限5億円まで拡大
- 中小企業者等は工事費も対象になり得る
- 交付決定前の契約・発注は補助対象外
- 申請はWeb入力だけでなく書類郵送まで必要
制度を有効に活用するためには、設備要件や省エネ要件の確認に加え、見積取得やスケジュール管理も欠かせません。申請前の段階から、補助対象になるかどうかを整理して準備を進めましょう。
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