近年、AI・DX化の波が加速するなか、「今の仕事を続けながら、新しいスキルを身につけてキャリアアップしたい」と考える方が急増しています。厚生労働省の調査によれば、転職者数は年々増加傾向にあり、特にデジタル・IT分野の人材需要は高止まりが続いています。一方で、「どの講座を選べばいいかわからない」「費用が高くて踏み出せない」という声も少なくありません。
そんな方に注目してほしいのが、経済産業省による「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」です。「リスキリング補助金」とも呼ばれるこの制度は、在職中であれば年齢・雇用形態を問わず利用でき、講座受講料の最大70%(最大56万円)の補助を受けながら、キャリアコンサルタントへの相談から転職支援まで一貫したサポートを受けられます。
本記事では、制度の概要から対象者・申請の流れ・注意点まで、わかりやすく解説します。費用を抑えてリスキリングしたい方、自分の市場価値を高めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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この記事の目次
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」とは?
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、経済産業省が推進する、在職者のキャリアアップ・転職を一体的に支援する国の事業です。リスキリング(新たなスキルの習得)と労働移動の円滑化を同時に進めることを目的としており、個人が費用を抑えながら学び直しに取り組める仕組みが整えられています。一般に「リスキリング補助金」「経済産業省 リスキリング」と呼ばれることも多い制度です。

出典:「転職をご検討の方 | リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」経済産業省
本事業は令和5年度にスタートし、これまで六次にわたって補助事業者の公募が実施されてきました。事業自体は令和8年度末(2027年3月末)まで継続される予定です。2026年4月現在、七次公募の詳細は未定ですが、採択済みの補助事業者を通じて引き続きサービスを受けることができます。
リスキリングとは
リスキリングとは、変化する社会や産業のニーズに対応するために、新しいスキルや知識を学び直すことです。単なる「勉強」ではなく、キャリアアップや転職を見据えた実践的な学びを指します。
特に近年は、AI・データ分析・DX推進といったデジタル分野のスキルに対する需要が急拡大しています。こうした需要のある分野でスキルを身につけることが、自分の市場価値を高めることに直結するのです。
本事業の仕組み
本事業は、国(経済産業省)が民間の補助事業者に対して補助金を交付し、その事業者が個人に対してサービスを提供する、という構造になっています。
国 → 補助事業者(民間企業)に補助金を交付
↓
補助事業者 → 個人に対してキャリア相談・リスキリング講座・転職支援を提供
↓
個人は、受講料が大幅に割引された価格で講座を受講できる
つまり、補助金は個人に直接支給されるわけではなく、事業者経由で受講料の負担が軽減される仕組みです。この点は、後述する「注意点」でも詳しく解説しますので、しっかり把握しておきましょう。
対象者と利用要件(条件)
「自分は対象になるの?」と思った方のために、対象者の条件を整理します。対象者
本事業の対象となるのは、以下の2つの条件を満たす方です。
- 企業と雇用契約を結んでいる在職中の方(正社員・契約社員・パート・アルバイトなど雇用形態は問わない)
- 雇用主の変更を伴う転職を目指している方
年齢制限はありません。20代の若手からミドル・シニア世代まで、幅広い方が利用できます。また、「転職しようか迷っている」という段階でも利用可能です。転職を検討しているすべての在職者にとって、間口の広い制度といえます。
一方で、現在無職の方・フリーランス・個人事業主は対象外となります。企業との雇用関係があることが前提です。
個人事業主・フリーランスは対象外?代替策は?
「個人事業主やフリーランスは使えないの?」という検索が多く寄せられています。残念ながら、本事業は企業との雇用関係が前提のため、個人事業主・フリーランス・無職の方は対象外です。
ただし、同様の目的で活用できる代替制度があります。
- 専門実践教育訓練給付金(ハローワーク):雇用保険の被保険者が対象。在職中でも離職後でも利用可能で、受講費用の最大70%(上限56万円/年)が給付されます。
- 特定一般教育訓練給付金(ハローワーク):雇用保険の被保険者が対象。受講費用の40%(上限20万円)が給付されます。
これらはハローワーク(公共職業安定所)で手続きでき、個人事業主として雇用保険に加入していない場合でも、過去の会社員時代の加入実績が活用できる場合があります。詳細はお住まいの地域のハローワークにご相談ください。
サービスの登録・相談タイミング
補助を受けるためには、補助事業者へのサービス登録時およびキャリア相談の初回面談時に在職中であることが条件です。退職後に申し込んでも対象にならないため、在職中に早めに行動することが大切です。
受けられる3つのサービス
本事業では、以下の3つのサービスを一体的に受けることができます。
| 受けられるサービス一覧 | |
|---|---|
| ①キャリア相談 | キャリアコンサルタント等の専門家に、これまでのキャリアの棚卸し・目標設定・自分に合った講座の検討などを相談できる。無料で受けられる。 |
| ②リスキリング講座 | キャリア相談の結果を踏まえ、自分に合った講座を受講する。受講費用の最大70%が補助される。 |
| ③転職支援 | 転職に向けた伴走支援・職業紹介など。無料で受けられる。 |
キャリア相談と転職支援は無料です。費用が発生するのはリスキリング講座の受講料のみで、その費用も補助によって大幅に軽減されます。
補助金額の内訳|最大56万円のしくみ
本事業で受けられる補助の金額は、受講後の行動によって2段階に分かれています。
| 補助金額の内訳 | ||
|---|---|---|
| 補助のタイミング | 条件 | 補助額 |
| ①講座修了時 | 対象講座を受講し修了した場合 | 受講費用の1/2相当額(上限40万円) |
| ②転職・継続就業時 | 転職し、その後1年間継続して就業が確認できた場合 | 受講費用の1/5相当額(上限16万円) |
| 合計最大 | 56万円 | |
たとえば、受講費用が80万円の講座を修了して転職・継続就業した場合、①40万円+②16万円=合計56万円の補助を受けられます。受講費用が少額の場合は、それに応じた補助額になります。
補助額は「受講費用の○分の○相当額」で計算されます。56万円を受け取るためには、受講費用が一定額以上の講座を選ぶ必要があります。事業者ごとに受講費用や負担軽減額が異なりますので、申し込み前に必ず確認しましょう。
また、本事業の転職支援によって転職した方の60%以上が、転職前と比べて給与アップを実現しているという公式データもあります。スキルアップと収入増加の両立を目指せる点が、本事業の大きな魅力です。
対象講座の分野例と一覧の調べ方
本事業では、多様な分野のリスキリング講座が対象となっています。主な分野と講座の例を紹介します。
| 対象講座の主な分野 | |
|---|---|
| デジタル・IT系 | プログラミング、Webデザイン、AIの基礎・応用、データサイエンス、Webマーケティングなど |
| 経理・会計系 | 簿記・会計・財務、税務の基礎、管理会計など |
| 人事・労務系 | 人事労務管理、人材開発、キャリアコンサルティングなど |
| 経営系 | 経営戦略、DX戦略、プロジェクトマネジメントなど |
| 医療・福祉・保育系 | 介護・保育・医療分野に関する専門知識の習得など |
対象となる講座・事業者の一覧は、公式ポータルサイトの検索ページから調べることができます。職種や取得したいスキルから絞り込めるので、自分に合った講座を探してみましょう。なお、似た内容の講座であっても、対象外の事業者・講座では補助を受けられません。必ず公式ポータルで確認してから申し込むことが重要です。
申請の流れ|5ステップで解説
本事業を利用するまでの流れをステップごとに解説します。
| 申請の流れ | |
|---|---|
| STEP 1 | 対象者かどうか確認する 在職中であること・転職を目指していることが前提です。まず自分が条件を満たしているか確認しましょう。 |
| STEP 2 | 公式ポータルで講座・事業者を探す 経済産業省の補助事業者検索ページで、希望の職種・スキルから受講したい講座を提供する事業者を検索します。 |
| STEP 3 | キャリア相談を受ける(無料) キャリアコンサルタント等の専門家に、これまでの経歴・今後のキャリアゴール・自分に合った講座について相談します(無料)。 |
| STEP 4 | リスキリング講座を受講・修了する 決定した講座を受講し、修了後に補助を受けます。受講費用の1/2相当額(上限40万円)が軽減されます。 |
| STEP 5 | 転職・1年間の継続就業で追加補助を受ける 補助事業者の転職支援を経て転職し、1年間継続就業が確認できれば追加で受講費用の1/5相当額(上限16万円)の補助を受けられます。 |
公式サイトでは、最大4つの質問に答えるだけで自分に向いた職種を診断できる「カンタン職種診断」も提供されています。どの分野のリスキリングが自分に合うかわからない方は、まず試してみるのがおすすめです。
利用上の注意点
本事業を活用する前に、以下の注意点を必ず確認しておきましょう。
「転職するかどうか迷っている」という段階でも申し込みは可能です。ただし、対象者の条件として転職を目指していることが前提とされています。講座を修了した場合、転職の有無にかかわらず受講費用の1/2相当額(最大40万円)は受け取れます。転職まで踏み切れるか不安な方も、まずはリスキリング目的で参加することができます。
転職・継続就業による追加補助(最大16万円)は、講座を提供した補助事業者の転職支援(職業紹介等)を利用した転職のみが対象です。個人で転職活動を行った場合や、別の転職エージェントを使った場合は追加補助の対象になりません。転職まで視野に入れている方は、最初から補助事業者の転職支援を活用することが重要です。
補助を受けるためには、経済産業省の指定する補助事業者が提供する「対象講座」を受講する必要があります。内容が似た講座であっても、対象外の事業者・講座では補助を受けられません。必ず公式ポータルで事業者・講座を確認してから申し込みましょう。
本事業は令和8年度末(2027年3月末)まで継続予定です。2026年4月現在、採択済みの補助事業者を通じてサービスを受けることは可能ですが、七次公募の開始時期や詳細は未定です。利用できる事業者・講座は変動する場合があるため、公式ポータルで最新情報を確認のうえ、早めの申し込みをおすすめします。
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に関するよくある質問
現在パートタイムで働いていますが、対象になりますか?
はい、対象になります。本事業は雇用形態を問わず、企業と雇用関係を結んでいる在職者であれば正社員・契約社員・パート・アルバイトを問わず利用できます。ただし、フリーランス・個人事業主は対象外です。
年齢制限はありますか?
年齢制限はありません。20代の若手から50代・60代のミドル・シニア世代まで、在職中であれば幅広い年代の方が対象です。定年後の再就職やセカンドキャリアを目指す方にも活用できます。
転職するかどうかまだ決めていないのですが、利用できますか?
はい、利用できます。対象者の条件は「転職を目指している方」ですが、転職を迷っている段階でも参加可能です。講座を修了すれば、転職の有無にかかわらず受講費用の1/2相当額(最大40万円)の補助を受けられます。
転職しなかった場合、補助は受けられませんか?
転職しなくても、講座を修了すれば受講費用の1/2相当額(上限40万円)の補助は受けられます。転職・継続就業による追加補助(最大16万円)は受けられませんが、リスキリング目的だけでも十分な支援を受けることが可能です。転職するかどうか決めていない段階でも積極的に活用しましょう。
現在無職(就活中)の場合は対象になりますか?
対象外です。本事業は企業と雇用関係を結んでいる在職中の方を対象としています。退職後や求職中の方は利用できません。在職中に申し込むことが重要です。なお、無職・離職中の方には、ハローワークの「専門実践教育訓練給付金」や「特定一般教育訓練給付金」など、別途活用できる制度があります。
個人事業主・フリーランスは利用できますか?
利用できません。本事業は企業と雇用関係にある在職者を対象としており、個人事業主・フリーランスは対象外です。代替策として、雇用保険の被保険者(または過去の加入実績がある方)であればハローワークの教育訓練給付金(専門実践教育訓練・特定一般教育訓練)が活用できる場合があります。詳しくはハローワークにご相談ください。
補助はいつ受け取れますか?
受講費用の負担軽減は、講座の申し込み・受講の段階で反映されます。補助事業者が国から補助を受けることで、受講者は割引された価格で講座を受講できる仕組みです。転職・継続就業に対する追加補助は、転職後1年間の就業が確認された後に適用されます。
自分で探した転職先に就職した場合も追加補助を受けられますか?
受けられません。転職・継続就業に対する追加補助(最大16万円)は、講座を提供した補助事業者の転職支援(職業紹介等)を利用して転職した場合のみが対象です。個人での転職活動や他の転職エージェント経由の転職は対象外となります。
どんな講座でも補助対象になりますか?対象講座はどこで確認できますか?
すべての講座が対象になるわけではありません。補助を受けるためには、経済産業省の指定を受けた補助事業者が提供する「対象講座」を受講する必要があります。対象講座の一覧は、公式ポータルサイト(https://careerup.reskilling.go.jp/worker/search/)の検索ページから、職種・スキル分野で絞り込んで確認できます。似た内容でも対象外の事業者・講座は補助対象にならないため、必ず公式ポータルで確認してから申し込みましょう。
キャリア相談や転職支援にも費用はかかりますか?
キャリア相談と転職支援は無料で受けられます。費用が発生するのはリスキリング講座の受講料のみですが、その受講料も補助によって最大70%(最大56万円分)負担が軽減されます。
この事業はいつまで申し込みできますか?
本事業は令和8年度末(2027年3月末)まで継続予定です。2026年4月現在、採択済みの補助事業者を通じてサービスを受けることは可能です。ただし、利用できる事業者や講座は変動する場合があるため、公式ポータルサイトで最新情報を確認のうえ、在職中のできるだけ早い時期に申し込むことをおすすめします。
補助を受けるために必要な書類はありますか?
各段階で必要な証明書類(講座の修了証明・雇用証明など)の提出が必要になります。具体的に必要な書類は、利用する補助事業者の案内に従ってください。
まとめ
経済産業省による「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」(リスキリング補助金)は、在職中の方が費用を大幅に抑えてリスキリングに取り組み、キャリアアップ・転職を実現するための国の支援事業です。
主なポイントを改めて整理します。
- 対象者:企業と雇用関係を結ぶ在職者(雇用形態・年齢不問)。個人事業主・フリーランス・無職の方は対象外
- 補助額:受講費用の最大70%(最大56万円)
- 受けられるサービス:キャリア相談(無料)・リスキリング講座・転職支援(無料)
- 事業継続期間:令和8年度末(2027年3月末)まで
- 転職しなくても講座修了で最大40万円の補助を受けられる
AI・DX化が加速する現代において、スキルアップは「あったらいい」ではなく「なくてはならない」ものになりつつあります。本事業を活用すれば、コストを大幅に抑えながら自分の市場価値を高められます。「いつかリスキリングしたい」と思っている方は、ぜひ在職中のうちに一歩を踏み出してみてください。
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