2026年度の最低賃金は、全国の加重平均で1,177円に引き上げられます。国の補助金では、最低賃金の引き上げに関する支援を行っています。ただし、「業務改善助成金」は最低賃金の発効日前日(または11月30日の早い日)を申請期限としているなど、急ぐべき制度もあります。本記事では、最低賃金の引き上げで利用できる補助金をご紹介します。
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この記事の目次
2026年度の最低賃金はいくら?企業への影響は?
2026年度の最低賃金は、以下のとおりです。
| 全国加重平均額 | 1,177円 |
|---|---|
| 引上げ額 | 56円 |
| 発効時期 | 10月1日以降(地域による) |
なお、都道府県ごとの最低賃金は以下の記事でご紹介していますのでご確認ください。
最低賃金引上げにおける人件費への影響
最低賃金引上げは、企業の人件費に影響します。具体的にどのような影響が起こるのか、一例をご紹介します。
たとえば、月120時間労働のパート10人がいた場合、以下のように人件費が増えます。
| 56円(引上げ額)×120時間(月の労働時間)×10名=67,200円 ※基本給の増加分 |
年間で換算すると、基本給だけで806,400円の負担増です。ここに、法定福利費も含めるとさらに負担が増加します。
最低賃金引上げに使える支援策は?【一覧表】
| 区分 | 制度名 | 所管 | 最低賃金に関する優遇 | 補助率・助成率 | 上限額 | 次の締切 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 補助金 | 新事業進出・ものづくり補助金 | 経済産業省 | 加点または補助上限額を引き上げ | 1/2(2/3) | 7,000万円(9,000万円) | 2026年10月30日(金)18:00 |
| 補助金 | デジタル化・AI導入補助金 | 経済産業省 | 審査時の加点対象 | 1/2(2/3) | 450万円 | 2026年9月29日(火)17:00 ※次回締切:10月30日(金)17:00 |
| 補助金 | 省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型) | 経済産業省 | 補助上限額の引き上げ | 一般型:1/2~2/3 カタログ型:1/2以下 |
一般型:8,000万円(1億円) カタログ型:1,000万円(1,500万円) |
一般型:2026年10月16日(金)17:00 カタログ型:随時受付 |
| 補助金 | 小規模事業者持続化補助金 | 経済産業省 | 補助上限額の引き上げ | 2/3(特例選択の赤字事業者は3/4) | 50万円(200万円) | 2026年12月15日(火)17:00 |
| 助成金 | 業務改善助成金 | 厚生労働省 | 設備投資費用を支給 | 3/4~4/5 | 600万円 | 都道府県の最低賃金発効日の前日または2026年11月30日(月)のいずれか早い日 |
| 助成金 | キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース・正社員化コース) | 厚生労働省 | 対象人数に応じた助成金を支給 | ー | 助成金:7万円/人 加算措置:最大40万円 |
随時受付 |
| 助成金 | 働き方改革推進支援助成金 | 厚生労働省 | 助成上限額の引上げ | ー | 500万円 | 2026年11月30日(月)17:00 |
| 税制 | 賃上げ促進税制 | 経済産業省および中小企業庁 | 法人税または所得税を減税 | ー | ー | ー |
| 融資 | 日本政策金融公庫の賃上げ貸付利率特例制度 | 日本政策金融公庫 | 借入後2年間の金利を優遇 | マイナス0.5% | ー | ー |
| 自治体 | 業務改善助成金の上乗せ、独自の賃上げ・設備投資支援 | 各自治体 | 国がカバーしきれなかった自己負担分を独自に補助など | 自治体による | 自治体による | ー |
※補助率・補助上限額の括弧書きは、賃上げ関連の特例適用時
補助金と助成金の主な違いは、管轄や目的、審査の仕組みが挙げられます。補助金は経済産業省が管轄し、政策目標の達成のために事業者を支援するもので、審査や採択があります。助成金は厚生労働省が管轄し、雇用維持や労働環境改善のために事業者を支援するもので、要件を満たせば原則支給されます。
補助率が2/3になる「最低賃金引上げ特例」の条件は?
以下の補助金では、「最低賃金引き上げ特例」を実施しています。
- 新事業進出・ものづくり補助金
- デジタル化・AI導入補助金
- 省力化投資補助金(一般型)
最低賃金引上げ特例は、最低賃金付近で働く従業員を一定割合以上雇用している事業者について、補助率を引き上げる仕組みです。
2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が、全従業員数の30%以上である月が3か月以上ある事業者は、最低賃金引上げ特例の対象となり、通常1/2の補助率が2/3に引き上げられます。
30%の判定方法
最低賃金引き上げ特例における30%の判定方法は、従業員全体のうち、低い水準で働く従業員の割合で考えます。
たとえば、従業員が10人の場合、対象となる賃金水準で働く従業員が3人以上いれば、30%以上の要件を満たします。なお、最低賃金引上げ特例を受ける場合は、賃金台帳・労働者名簿の写しが必要です。
最低賃金引き上げ特例における指定する一定期間は、2024年10月〜2025年9月です。当時の地域別最低賃金以上~2025年度改定の地域別最低賃金未満である必要があります。
【注意点2:適用除外】
これらの補助金において、当初から補助率が高く設定されている小規模企業・小規模事業者、再生事業者および大幅賃上げ特例を申請する事業者は「最低賃金引上げ特例」は適用されません。
【注意点3:返還リスク】
賃上げ目標が未達の場合、それだけで全額返還となるわけではありません。しかし、採択後の基本要件が未達になると、補助金の返還義務が生じる場合があります。返還ルールは、補助金や未達状況によって異なるため、それぞれの公募要領をご確認ください。
最低賃金の引上げで「加点」を受けるには?
最低賃金の引き上げで、加点の優遇措置を受けられる事業者は、以下の2種類です。
2. 一定期間、事業場内最低賃金を「全国目安で示された最低賃金の引上げ額」以上に賃上げする事業者
加点は、あくまでも優遇措置のひとつであり、採択を保証するものではない点をご理解ください。
なお、補助金の審査・採択においては「パートナーシップ構築宣言」も様々な補助金で加点されます。
最低賃金対応で使える「補助金」は?
最低賃金の対応で利用できる補助金として以下の4種類があります。
- 新事業進出・ものづくり補助金
- デジタル化・AI導入補助金
- 省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)
- 小規模事業者持続化補助金
それぞれの補助金における最低賃金対応の優遇をご紹介します。
新事業進出・ものづくり補助金
新事業進出・ものづくり補助金の最低賃金対応に関する優遇は以下のとおりです。
| 最低賃金に関する優遇 | 賃上げ特例:補助上限額の引き上げ 地域別最低賃金引上げ特例:補助率引上げ(1/2→2/3) |
|---|---|
| 対象と上限 | 革新的新製品・サービス枠:最大2,500万円(賃上げ特例適用で最大3,500万円) 新事業進出枠:最大7,000万円(賃上げ特例適用で9,000万円) グローバル枠:最大7,000万円(賃上げ特例適用で9,000万円) |
| 次の締切 | 2026年10月30日(金) |
| 注意点 | 賃上げ特例や地域別最低賃金引上げ特例では、要件未達の場合、返還義務あり |
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の最低賃金対応に関する優遇は以下のとおりです。本補助金は、デジタルを取り巻く時代の変化と国の中小企業支援における方針変換のため、「IT導入補助金」から「デジタル化・AI導入補助金」へと名称変更されました。
| 最低賃金に関する優遇 | ・補助率引上げ(通常型のみ) ・加点(通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠) |
|---|---|
| 対象と上限 | 通常枠:最大450万円 インボイス枠:最大350万円 セキュリティ対策推進枠:最大150万円 |
| 次の締切 | 2026年9月29日(火)17:00 ※次回締切:10月30日(金)17:00 |
| 注意点 | ・最低賃金近傍の事業者を示した事業者は補助率引上げの優遇 ・特例や加点を受ける場合は、賃金状況報告シートを提出 |
省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)
省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型)の最低賃金対応に関する優遇は以下のとおりです。
| 最低賃金に関する優遇 | 最低賃金引き上げ特例:補助率引上げ(一般型かつ中小企業のみ※) 大幅賃上げ特例:補助上限額の引き上げ(両型) ※小規模事業者等の補助率は、もともと2/3に設定されているため |
|---|---|
| 対象と上限 | 一般型:最大8,000万円(大幅賃上げ特例適用で最大1億円) カタログ型:最大1,000万円(大幅賃上げ特例適用で最大1,500万円) |
| 次の締切 | 一般型:2026年10月16日(金) カタログ型:随時受付 |
| 注意点 | ・一般型とカタログ型の特例種類は異なる(カタログ型は大幅賃上げ特例のみ) ・要件未達の場合、返還義務あり |
参考:省力化投資補助金 資料ダウンロード(一般型)
参考:省力化投資補助金(カタログ注文型)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金の最低賃金対応に関する優遇は以下のとおりです。
| 最低賃金に関する優遇 | 賃金引上げ特例:補助上限額の引き上げ |
|---|---|
| 対象と上限 | 通常枠:最大50万円 賃金引上げ特例適用:最大200万円 |
| 次の締切 | 2026年12月15日(火)17:00 ※事業支援計画書(様式4)発行の受付締切:12月4日(金) |
| 注意点 | 賃金引上げ特例を選択した赤字事業者は補助率3/4 |
参考:小規模事業者持続化補助金 申請について
参考:中小企業庁 小規模事業者持続化補助金について
最低賃金対応で使える「助成金」は?
最低賃金の対応で利用できる助成金には、以下の3種類があります。
- 業務改善助成金
- キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース
- 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
それぞれの助成金における最低賃金対応の優遇をご紹介します。
業務改善助成金
| 最低賃金に関する優遇 | 以下、どちらか低いほうを適用 ・助成率引き上げ ・助成上限額の引上げ |
|---|---|
| 対象と上限 | 従業員の賃上げ+生産性向上の設備投資で最大600万円 |
| 次の締切 | 地域別最低賃金の発効日前日または11月30日のいずれか早い日 |
| 注意点 | ・助成上限額は、どのコース(50円・70円・90円)で何人引き上げるかによって異なる ・賃上げは、交付申請の後に実施する必要があるため、事後申請は認められません。 |
キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース
| 最低賃金に関する優遇 | 引上げ率に応じて助成金を支給 |
|---|---|
| 対象と上限 | 非正規雇用労働者における基本給の引上げ率に応じて以下を適用 3%~4%:4万円 4%~5%:5万円 5%~6%:6.5万円 6%以上:7万円 加算措置:最大40万円 |
| 次の締切 | 賃金規定等の改定後、6か月分の賃金を支給した日の翌日から2か月以内 |
| 注意点 | 賃金規定等を増額改定し、実際に非正規雇用労働者の基本給を引き上げる必要あり |
キャリアアップ助成金にはいくつかのコースがあり、「正社員コース」では、有期雇用労働者等を正社員転換した場合に助成(1人あたり最大80万円、別途加算措置あり)を受けられます。
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
| 最低賃金に関する優遇 | 一定以上の賃上げを実施した場合、助成上限額を引き上げ |
|---|---|
| 対象と上限 | 最大500万円 |
| 次の締切 | 2026年11月30日(月) |
| 注意点 | 予算上限に達した場合は、期限前に受付終了する場合あり |
「団体推進コース」は、業種別の事業主団体が、業界全体として傘下企業の生産性向上と労働者の賃金引上げを目的とした、商工会・組合の担当者向けの制度です。
個別の企業を対象にしたものやその他のコースには、以下のコースがあります。
| 業種別課題対応コース | 建設業、一般貨物自動車運送業(トラック)、病院・診療所、砂糖製造業などに特化して労働環境を改善するためのコース |
|---|---|
| 労働時間短縮・年休促進支援コース | 労働時間の短縮や有給休暇の取得を促進するためのコース |
| 勤務間インターバル導入コース | 従業員の健康を守るため、勤務間インターバルを新設・拡充するためのコース |
| 取引環境改善コース(2026年新設) | 荷主等により構成される集団を対象とした、運送事業者の荷待ち時間および荷役時間の短縮に効果を上げるためのコース |
参考:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
そのほか人への投資に使える助成金
人への投資に使える助成金はほかにもあります。代表的な助成金については、以下の解説記事や厚生労働省の案内ページを参考にしてください。
| 助成金名 | 解説記事 | 厚生労働省のページ |
|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 人材開発支援助成金【最新版】の全6コースを解説!最大でいくらもらえる? | 厚生労働省|公式ページ |
| 人材確保等支援助成金 | 【2026年度】人材確保等支援助成金とは?7コースの助成額・要件・改正点をわかりやすく解説|最大325万円 | 厚生労働省|公式ページ |
| 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援) | 産業雇用安定助成金【スキルアップ支援コース】とは|在籍型出向で従業員のスキルアップと賃金アップを支援 | 厚生労働省|公式ページ |
| 賃上げ助成金の全体像 | 賃金引き上げのための対応・助成金まとめ【2026年・令和8年】 | ー |
税制優遇・融資で賃上げを支える方法は?
最低賃金引上げの対応に関する支援は、補助金や助成金だけではありません。ここでは、税制面での優遇や融資における優遇をご紹介します。
賃上げ促進税制
賃上げ促進税制は、従業員の給与を前年度より増やした企業が、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から控除できる制度です。
控除率は、以下のように企業規模や賃上げ要件によって異なります。
| 企業区分 | 賃上げ要件 | 基本控除率 | 認定上乗せ※ | 最大控除率 |
|---|---|---|---|---|
| 中小企業向け | 給与総額 前年度比+1.5%以上 | 15% | +5% | 20% |
| 中小企業向け | 給与総額 前年度比+2.5%以上 | 30% | +5% | 35% |
| 中堅企業向け | 継続雇用者給与 +4%以上 | 10% | +5% | 15% |
| 中堅企業向け | 継続雇用者給与 +5%以上 | 15% | +5% | 20% |
| 中堅企業向け | 継続雇用者給与 +6%以上 | 25% | +5% | 30% |
※認定上乗せは、くるみん・えるぼし認定で控除率が加算
本制度における「大企業」を対象とした控除は廃止されました。中堅企業向けの控除も、適用期限である令和9年3月31日までに開始する事業年度をもって廃止される予定です。
【大胆な投資促進税制】
2026年度の税制改正で創設された「大胆な投資促進税制」は、国内投資の拡大を通じて、賃上げを含めた好循環を形成するための措置です。なお、大企業がこの税制を利用する際は、賃上げ要件を満たさなければなりません。
日本政策金融公庫の賃上げ貸付利率特例制度
日本政策金融公庫の「貸付利率特例制度」は、賃上げに取り組む中小企業等に対して、金利負担を軽減し、賃上げを促進するための制度です。中小企業事業と国民生活事業が対象です。
| 条件 | 引き下げ幅 | |
|---|---|---|
| 中小企業事業 | ・雇用者給与等支給額が最近の決算期と比較して2.5%以上増加する見込みがある方 ※最近の決算期において既に増加している方も含む |
適用する特別貸付制度に定める利率から0.5%控除 |
| 国民生活事業 | ・新たに事業を開始後3ヵ月以上の事業者 ・雇用者給与等支給額の総額が最近の決算期と比較して2.5%以上増加する見込みがある方 |
各種融資制度に定める利率から0.5% ※下限は0.3% |
どちらの事業も、融資後2年間を対象としています。
参考:日本政策金融公庫|賃上げ貸付利率特例制度(中小企業事業)/同(国民生活事業)
賃上げの原資を確保するには?価格転嫁の支援策
最低賃金の引き上げにより、企業は人件費の負担が増えます。賃上げの原資確保に苦戦する事業者も少なくありません。中小企業庁などの公的機関は、「賃上げの原資は価格転嫁(値上げ)・取引適正化」であるとしています。そこで、国や中小企業庁では、相談窓口の設置やハンドブックの提供、法改正など、価格転嫁や取引適正化を進めるためのさまざまな支援をおこなっています。
なお、中小企業庁では「価格転嫁サポート窓口(よろず支援拠点)」を始めとした、さまざまな相談窓口を設置しています。
参考:中小企業庁|価格転嫁・取引適正化の支援ツール・相談窓口
中小受託取引適正化法
特に、2026年1月施行の『中小受託取引適正化法』では、名称・用語の変更によって、「下請」という上下関係のイメージを払拭し、対等なパートナーシップの実現と中小企業の利益保護・価格転嫁の円滑化を目指す内容となりました。
パートナーシップ構築宣言
さらに、価格転嫁や取引適正化を進める上では、「パートナーシップ構築宣言」をすることも重要です。社会的信用を得やすくなるほか、補助金の加点やサプライチェーンの安定化といったメリットもあります。
自治体の上乗せ支援・独自の賃上げ支援は?
最低賃金の引き上げ対応については、国の補助金だけでなく、自治体独自の支援もあります。ここでは、代表的な支援をご紹介します。
業務改善助成金に上乗せする自治体の例
| 名称 | 補助率 | 上限額 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 【北海道札幌市】 札幌市賃上げ応援補助金 |
国の業務改善助成金の1/5 | 120万円 | 2027年2月26日(金) |
| 【石川県】 業務改善奨励金 |
自己負担分の1/2 | 100万円 | 2027年3月10日(水) |
| 【香川県】 かがわ賃上げ環境整備応援補助金 |
自己負担分の1/2 | 100万円 | 2027年3月17日(水) |
このほか、全国のさまざまな地域で上乗せ支援を実施しています。さらに詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。
都道府県独自の賃上げ・設備投資支援の例
東京都の「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業【賃上げ重点コース】」では、既存事業の「深化」「発展」に取り組む事業者が「賃金引上げ計画」を策定する場合、助成率を通常の2/3から3/4(小規模事業者は4/5)に引き上げ、上限600万円まで助成しています。助成率が高いため、もらえる助成額も大きくなる点が特徴です。
重点支援地方交付金による「賃上げ環境整備」
国は重点支援地方交付金は、国が効果的と考える推奨メニューをもとに、自治体がそれぞれの課題をふまえて生活者と事業者の負担を軽減する仕組みです。国の推奨メニューのひとつに「賃上げ環境整備」があります。各自治体では、「価格転嫁の促進」により賃上げにつながる収益改善を支援したり、「最低賃金引上げ」を実施する企業に設備投資費の3分の2を補助したりするなどの取り組み例が挙げられます。
自治体における制度の探し方
自治体独自の制度は、自治体のサイトや商工会議所などで紹介されています。当サイト『補助金ポータル』においても、都道府県別の補助金情報を探せるページがあるため、ご活用ください。
自社はどの制度を使うべき?【ケース別・業種別】
最低賃金対応で利用できる補助金や助成金はさまざまあります。自社はどれを利用するのがよいのかわかりにくい感じるケースもあるでしょう。ここでは、ケース別に使える制度や業種別に使える支援に関する情報をそれぞれご紹介します。
ケース別
| ケース | 使える制度 |
|---|---|
| パート比率が高い小売・飲食業 | 業務改善助成金+省力化投資補助金(カタログ注文型)+キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) |
| 従業員5人以下の小規模事業者 | 持続化補助金(賃金引上げ特例)+業務改善助成金 |
| 事務作業を効率化したい | デジタル化・AI導入補助金 |
| 大型の設備投資・新分野に進出したい | 新事業進出・ものづくり補助金、省力化投資補助金(一般型) |
| 商工会・組合として業界全体で取り組みたい | 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース) |
省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金は、用途が似ていることもあり、どちらを選ぶべきか悩むケースも少なくありません。両補助金は、目的や対象設備、補助上限額に違いがあるため、より自社に合う補助金はどちらかをよく確認し、選びましょう。
なお、補助金を併用する際は、同じ経費で二重に受け取れないなど、併用に関するルールがある点にご注意ください。
業種別の業務効率化支援
そのほか、業種別の業務効率化支援に関する情報は、それぞれ以下で解説しています。
| 業種 | リンク先 |
|---|---|
| 観光・宿泊 | 観光・宿泊業向けの省力化・設備投資支援 |
| 医療 | 医療施設の生産性向上・設備投資支援 |
| 建設 | 建設業で使える補助金・助成金 |
| 運送・物流 | 運送・物流業で使える補助金・助成金 |
申請前に確認すべき注意点は?
補助金や助成金の申請前に確認すべき点は以下のとおりです。
- 賃金台帳の整備
- 賃上げ目標未達時の返還
- 就業規則・賃金規定の改定
- GビズIDプライムの取得
- 申請締切の厳守
それぞれの点について、解説します。
事前申請が原則
補助金や助成金では、申請や交付決定前に賃上げ・発注・設備導入などを行うと、対象外になる場合があります。
手続きのタイミングは制度によって異なるため、賃上げや設備投資などを実施する前に、公募要領や支給要領を確認しましょう。
賃金台帳の整備
補助金や助成金の申請では、賃金台帳の整備が必要です。特に、最低賃金引上げに関する優遇措置や特例を利用する場合、客観的な証拠として確認されるため、重要書類として認識しておきましょう。
賃上げ目標未達時の返還
賃上げが条件になっている補助金や助成金では、賃上げ目標が未達の場合、制度や未達の内容によっては、支給されない、または支給された補助金・助成金の一部もしくは全部の返還が必要になる場合があります。事前に賃上げ条件や返還ルールを確認し、確実に実行できるようにしましょう。
就業規則・賃金規定の改定
賃上げを条件とする補助金や助成金を利用する場合、原則として就業規則や賃金規定の改定が必要です。この場合、就業規則や賃金規定の写しの提出を求められるため、スムーズに対応できるようにしておきましょう。
GビズIDプライムの取得
補助金や助成金では、申請時にGビズIDプライムのアカウントが必要です。経済産業省の補助金では必須、厚生労働省の助成金では電子申請を利用する場合は必須です。GビズIDプライムアカウントの取得には、時間がかかる場合もあるため、余裕をもって準備しておきましょう。
申請締切の厳守
補助金や助成金は、申請締切日が設定されています。締め切りを過ぎてからの申請は認められませんので、ご注意ください。
| 最低賃金の発効日 | 2026年10月1日以降(地域により異なる) |
|---|---|
| 業務改善助成金 | 該当の「地域別最低賃金の発効日前日」または11月30日(月)のどちらか早い日 |
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 2026年10月30日(金) |
| デジタル化・AI導入補助金 | 2026年9月29日(火)17:00 ※次回締切:10月30日(金)17:00 |
| 省力化投資補助金(一般型・カタログ注文型) | 一般型:2026年10月16日(金) カタログ型:随時受付 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 2026年12月15日(火) ※受付開始は11月5日(木)から |
| キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース | 賃金規定等の改定後、6か月分の賃金を支給した日の翌日から2か月以内 |
| 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース) | 2026年11月30日(月)(予算上限に達し次第終了) |
どこに相談できる?
補助金や助成金に関する疑問は、以下の窓口で相談できます。
| 窓口 | URL |
|---|---|
| よろず支援拠点(生産性向上支援センター) | 全国の支援拠点一覧(公式) |
| 省力化ナビ | 公式サイト |
| 働き方改革推進支援センター(厚生労働省) | 公式サイト・全国の相談窓口一覧 |
| 商工会・商工会議所 |
全国商工会連合会 商工会議所検索(日本商工会議所) |
| 中小企業庁「賃上げ・最低賃金対応支援特設サイト」 | 公式特設サイト |
補助金や助成金に関する不明点や不安がある場合は、こうした相談窓口をご利用ください。
よくある質問
最低賃金の引上げ対応や補助金・助成金に関するよくある質問をご紹介します。
最低賃金が上がると補助金はもらえる?
最低賃金が上がっただけで、自動的に補助金を受け取れるわけではありません。賃金引上げとともに「設備投資」や「機器導入」など、各補助金・助成金で定められた要件を満たす必要があります。
補助率2/3特例の30%要件にパート・アルバイトは含まれる?
パート・アルバイトも、各制度で定める「従業員」に該当する場合は30%要件の算定対象となります。ただし、短期雇用者などが対象外となる場合があるため、申請する補助金の公募要領や指定様式をご確認ください。
最低賃金引上げ特例の対象期間はいつ?
2026年9月時点で、新事業進出・ものづくり補助金、デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金(一般型)における最低賃金引上げ特例の対象期間は「2024年10月~2025年9月」です。この期間中に、対象となる賃金水準で雇用している従業員が全従業員の30%以上となる月が3か月以上あることが要件です。今後の公募で対象期間が変更される可能性があるため、最新の公募要領をご確認ください。
補助金と助成金の違いは?
補助金と助成金の主な違いは、目的や管轄、支給の仕組みです。この記事で紹介している主な補助金は経済産業省系で、事業や設備投資などを支援します。一方、主な助成金は厚生労働省が管轄し、雇用や労働環境の改善、賃上げなどを支援します。補助金は審査や採択があるものが多い一方、助成金は定められた支給要件を満たして適正に申請することで支給対象となるものが中心です。
最低賃金の発効日を過ぎたら業務改善助成金は申請できない?
2026年度の業務改善助成金は、原則として自社の事業場がある都道府県の地域別最低賃金の発効日前日、または2026年11月30日(月)のいずれか早い日が申請期限です。そのため、地域別最低賃金の発効日を迎えた後は、原則として申請できません。
業務改善助成金とキャリアアップ助成金は併用できる?
併用できる場合があります。ただし、同一の労働者や同一の取組について、他の助成金との併給が制限される場合があります。業務改善助成金とキャリアアップ助成金ではそれぞれ支給要件が定められているため、申請前に最新の支給要領などをご確認ください。
最低賃金引上げ特例と賃上げ特例は併用できる?
原則として併用できません。たとえば、省力化投資補助金(一般型)では、最低賃金引上げ特例の対象事業者は「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ」の対象外です。新事業進出・ものづくり補助金でも、対象枠によって地域別最低賃金引上げ特例と賃上げ特例を同時に適用できない場合があります。申請する補助金・枠の公募要領をご確認ください。
個人事業主も対象?
個人事業主が対象となる補助金・助成金もあります。ただし、対象となる事業者や労働者の要件は制度ごとに異なります。個人事業主であればすべての制度を利用できるわけではないため、申請する制度の公募要領や支給要領をご確認ください。
賃上げが未達だとどうなる?
従業員の賃上げを条件とする補助金では、賃上げ要件を達成できなかった場合、補助金の一部または全部の返還が必要になる場合があります。返還の有無や範囲は、補助金や未達となった要件によって異なるため、公募要領の返還ルールをご確認ください。
価格転嫁を取引先に断られたらどこに相談する?
価格転嫁の協議に応じてもらえない、一方的に取引価格を決められたなど、取引先との価格交渉で困った場合は「取引かけこみ寺」や、よろず支援拠点の「価格転嫁サポート窓口」などに相談できます。
自治体の上乗せ支援はどうやって探す?
自治体独自の賃上げ支援や業務改善助成金への上乗せ支援は、都道府県・市区町村の公式サイトや商工会・商工会議所などで確認できます。当サイト『補助金ポータル』でも、都道府県別に補助金・助成金を検索できます。
▶検索画面はこちら:補助金ポータル
賃上げに使える低金利の融資はある?
日本政策金融公庫には「賃上げ貸付利率特例制度」があります。一定の賃上げ要件を満たす事業者は、融資後2年間、適用される貸付利率から0.5%の引下げを受けられます。対象要件や適用される利率は、日本政策金融公庫の最新情報をご確認ください。
まとめ
2026年度も最低賃金が引き上げられることにより、企業における負担増加は避けられません。国は、さまざまな補助金や助成金により、賃上げ対応の支援を行っています。人件費の負担増に悩む企業は、こうした支援制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
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