2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円(前年度比56円増)となり、10月1日から12月2日にかけて順次発効しています。「最低賃金の引上げに対応したいが、原資が足りない」と悩む中小企業・小規模事業者が、真っ先に検討したいのが厚生労働省の業務改善助成金です。
業務改善助成金は、事業場内で最も低い時給を50円以上引き上げ、あわせて生産性を高める設備投資等を行うと、その費用の最大4/5(上限600万円)が助成される制度です。
ただし、令和8年度の申請締切は「事業場がある都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日」または「11月30日」のいずれか早い日です。2026年10月26日時点で、すでに34都道府県は受付を終了しており、まだ申請できるのは青森県・山形県・高知県・山梨県・徳島県・愛媛県・大分県・長崎県・佐賀県・京都府・岩手県・熊本県・沖縄県の13府県のみです。
本記事では、都道府県別の申請締切一覧を最初に示したうえで、対象者・助成額・対象経費・申請方法・提出先まで、令和8年度の最新の公式資料にもとづいてわかりやすく解説します。
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この記事の目次
業務改善助成金とは?対象者と助成額をわかりやすく解説
業務改善助成金は、「従業員の賃上げ」と「生産性向上のための設備投資等」をセットで行った中小企業・小規模事業者に、設備投資等の費用の一部を国が助成する厚生労働省の制度です。令和8年度は、1事業場あたり最大600万円が助成されます。
正式名称は「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金」です。厚生労働省の要綱や都道府県労働局の資料ではこの名称が使われることがありますが、内容は業務改善助成金と同じです。

上の図のとおり、賃上げだけ、設備投資だけでは対象になりません。2つを同じ事業場でセットで実施することが条件です。
| 令和8年度 業務改善助成金の概要 | |
|---|---|
| 正式名称 | 中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金) |
| 実施機関 | 厚生労働省(窓口は都道府県労働局) |
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者のうち、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満の事業場 |
| 条件 | 事業場内最低賃金を50円・70円・90円以上引き上げ+生産性向上に資する設備投資等 |
| 助成率 | 引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満は4/5、1,050円以上は3/4 |
| 助成上限額 | 30万〜600万円(コースと引き上げる人数による) |
| 申請期間 | 2026年9月1日〜地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日 |
| 申請先 | 事業場を管轄する都道府県労働局(紙・郵送)またはJグランツ(電子申請) |
申請は会社単位ではなく「事業場」ごとに行います。事業場とは、原則として工場・店舗・事務所など、1か所でまとまって業務を行う職場のことです。複数の店舗がある企業は、店舗ごとに申請書を作成します。
業務改善助成金はいつまで?都道府県別の申請締切一覧【令和8年度】
令和8年度の業務改善助成金の申請締切は、事業場がある都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日、または2026年11月30日のいずれか早い日です。全国一律の締切ではないため、自社の事業場がある都道府県で必ず確認してください。10月26日時点でまだ申請できるのは13府県
2026年10月26日時点で申請受付中なのは13府県です。最も早いのは10月28日(水)締切の青森県・高知県で、最も遅いのは11月30日(月)締切の岩手県・熊本県・沖縄県です。
締切が土曜・日曜に当たる府県では、窓口への持参や郵送の受付が直前の開庁日で締め切られる場合があります。たとえば愛媛労働局は、締切日の10月31日(土)に対し、来庁・郵送は10月30日(金)17時15分必着としています。Jグランツによる電子申請の扱いも含め、管轄の労働局で最終確認しましょう。
業務改善助成金は予算の範囲内で交付されるため、申請期間内であっても募集が終了する場合があります。締切直前の駆け込みは避け、書類がそろいしだい申請しましょう。
47都道府県の地域別最低賃金・発効日・申請締切一覧
47都道府県の令和8年度地域別最低賃金と、それにもとづく業務改善助成金の申請締切は以下のとおりです。締切は「発効日の前日」と「11月30日」の早い方で算出しています。
| 都道府県 | 地域別最低賃金(令和7年度→令和8年度) | 発効日 | 申請締切 | 10月26日時点 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,075円→1,131円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 青森県 | 1,029円→1,090円 | 10月29日 | 10月28日(水) | 受付中 |
| 岩手県 | 1,031円→1,090円 | 12月1日 | 11月30日(月) | 受付中 |
| 宮城県 | 1,038円→1,098円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 秋田県 | 1,031円→1,090円 | 10月14日 | 10月13日(火) | 受付終了 |
| 山形県 | 1,032円→1,092円 | 10月30日 | 10月29日(木) | 受付中 |
| 福島県 | 1,033円→1,094円 | 10月16日 | 10月15日(木) | 受付終了 |
| 茨城県 | 1,074円→1,136円 | 10月18日 | 10月17日(土) | 受付終了 |
| 栃木県 | 1,068円→1,125円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 群馬県 | 1,063円→1,120円 | 10月3日 | 10月2日(金) | 受付終了 |
| 埼玉県 | 1,141円→1,196円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 千葉県 | 1,140円→1,195円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 東京都 | 1,226円→1,280円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 神奈川県 | 1,225円→1,279円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 新潟県 | 1,050円→1,108円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 富山県 | 1,062円→1,119円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 石川県 | 1,054円→1,113円 | 10月3日 | 10月2日(金) | 受付終了 |
| 福井県 | 1,053円→1,112円 | 10月4日 | 10月3日(土) | 受付終了 |
| 山梨県 | 1,052円→1,113円 | 11月1日 | 10月31日(土) | 受付中 |
| 長野県 | 1,061円→1,117円 | 10月2日 | 10月1日(木) | 受付終了 |
| 岐阜県 | 1,065円→1,121円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 静岡県 | 1,097円→1,154円 | 10月15日 | 10月14日(水) | 受付終了 |
| 愛知県 | 1,140円→1,195円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 三重県 | 1,087円→1,143円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 滋賀県 | 1,080円→1,136円 | 10月3日 | 10月2日(金) | 受付終了 |
| 京都府 | 1,122円→1,180円 | 11月16日 | 11月15日(日) | 受付中 |
| 大阪府 | 1,177円→1,231円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 兵庫県 | 1,116円→1,172円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 奈良県 | 1,051円→1,107円 | 10月4日 | 10月3日(土) | 受付終了 |
| 和歌山県 | 1,045円→1,101円 | 10月3日 | 10月2日(金) | 受付終了 |
| 鳥取県 | 1,030円→1,090円 | 10月3日 | 10月2日(金) | 受付終了 |
| 島根県 | 1,033円→1,092円 | 10月10日 | 10月9日(金) | 受付終了 |
| 岡山県 | 1,047円→1,104円 | 10月2日 | 10月1日(木) | 受付終了 |
| 広島県 | 1,085円→1,141円 | 10月11日 | 10月10日(土) | 受付終了 |
| 山口県 | 1,043円→1,101円 | 10月8日 | 10月7日(水) | 受付終了 |
| 徳島県 | 1,046円→1,103円 | 11月1日 | 10月31日(土) | 受付中 |
| 香川県 | 1,036円→1,092円 | 10月1日 | 9月30日(水) | 受付終了 |
| 愛媛県 | 1,033円→1,093円 | 11月1日 | 10月31日(土) | 受付中 |
| 高知県 | 1,023円→1,086円 | 10月29日 | 10月28日(水) | 受付中 |
| 福岡県 | 1,057円→1,114円 | 10月4日 | 10月3日(土) | 受付終了 |
| 佐賀県 | 1,030円→1,095円 | 11月15日 | 11月14日(土) | 受付中 |
| 長崎県 | 1,031円→1,087円 | 11月2日 | 11月1日(日) | 受付中 |
| 熊本県 | 1,034円→1,092円 | 12月1日 | 11月30日(月) | 受付中 |
| 大分県 | 1,035円→1,096円 | 11月1日 | 10月31日(土) | 受付中 |
| 宮崎県 | 1,023円→1,085円 | 10月24日 | 10月23日(金) | 受付終了 |
| 鹿児島県 | 1,026円→1,090円 | 10月25日 | 10月24日(土) | 受付終了 |
| 沖縄県 | 1,023円→1,086円 | 12月2日 | 11月30日(月) | 受付中 |
出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金の答申状況」。発効日は異議申出の状況等により変更される場合があります。
最低賃金の改定額や発効日の詳しい解説は、以下の記事でまとめています。
締切を過ぎた都道府県の事業者はどうすればいい?
令和8年度の受付が終了した34都道府県の事業者は、令和8年度の業務改善助成金をこれから申請することはできません。次の選択肢を検討しましょう。
- 令和9年度の業務改善助成金に備える(厚生労働省は概算要求で上限額の引上げや申請期間の拡充を示しています)
- 最低賃金対応の賃上げを支援する、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)を検討する
- 設備投資そのものを支援する、中小企業省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金を検討する
- 都道府県・市区町村の独自の賃上げ支援を確認する
業務改善助成金の対象者は?対象になる3つの要件
業務改善助成金の対象は、①中小企業・小規模事業者であること、②事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であること、③解雇や賃金引下げなどの不交付事由がないこと、の3つをすべて満たす事業者です。
要件① 中小企業・小規模事業者であること
資本金(出資総額)または常時使用する労働者数のいずれかが、業種ごとの基準以下であれば中小企業に当たります。
| 業種 | 資本金または出資総額 | 常時使用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種(製造業・建設業など) | 3億円以下 | 300人以下 |
発行済株式の2分の1以上を同一の大企業が所有しているなど、大企業と密接な関係にある「みなし大企業」は対象外です。医療法人・社会福祉法人・NPO法人など資本金のない法人は、常時使用する労働者数だけで判定します。
要件② 事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満であること
申請時点の事業場内最低賃金(事業場で最も低い時給)が、令和8年度の改定後の地域別最低賃金を下回っている事業場が対象です。月給制の場合は時給に換算して判定します。
たとえば愛媛県の場合、令和7年度の最低賃金は1,033円、令和8年度は1,093円です。事業場内最低賃金が1,033円〜1,092円の事業場であれば、この要件を満たします。1,093円以上を支払っている事業場は対象になりません。
要件③ 解雇・賃金引下げ等の不交付事由がないこと
申請日前6か月以内に、事業場の労働者を解雇したり、時間当たりの賃金を引き下げたりしている場合は対象外です。労働保険の未加入や保険料の滞納がある場合、申請日前1年以内に労働基準関係法令の違反で是正勧告を受けている場合なども対象になりません。
賃上げの対象になる労働者の条件は?
令和8年度から、賃上げの対象として数えられるのは雇用保険の被保険者に限られます。原則として週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある労働者が該当します。パート・アルバイトでもこの条件を満たせば対象です。
業務改善助成金は個人事業主でも使える?
従業員を雇用している個人事業主であれば、法人でなくても業務改善助成金を利用できます。一方、従業員のいない1人親方やフリーランスは、「労働者の賃金を引き上げる」という前提を満たさないため対象外です。
個人事業主が申請する場合も、賃上げ対象の従業員が雇用保険の被保険者であることが必要です。家族従業員(親族)を対象に含める場合は、労働者性を説明する申立書の提出を求められることがあるため、管轄の労働局に事前に確認しましょう。
業務改善助成金はいくらもらえる?助成率と上限額
業務改善助成金の支給額は、「設備投資等の費用×助成率」と「助成上限額」のいずれか低い方です。助成率は引上げ前の事業場内最低賃金で、上限額は申請コースと引き上げる人数で決まります。
助成率は事業場内最低賃金1,050円が境目
引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5(80%)、1,050円以上なら3/4(75%)です。令和7年度の基準は1,000円でしたが、令和8年度から1,050円に引き上げられました。
| 引上げ前の事業場内最低賃金 | 助成率 |
|---|---|
| 1,050円未満 | 4/5(80%) |
| 1,050円以上 | 3/4(75%) |
助成上限額はコースと人数で決まる
助成上限額は、50円・70円・90円のどのコースで申請するかと、何人の賃金を引き上げるかの組み合わせで決まります。通常の上限は90円コース・8人以上の450万円で、特例事業者が10人以上を引き上げる場合に限り最大600万円になります。
| 引き上げる労働者数 | 50円コース | 70円コース | 90円コース |
|---|---|---|---|
| 1人 | 30(40)万円 | 40(50)万円 | 90(100)万円 |
| 2〜3人 | 40(70)万円 | 50(100)万円 | 150(240)万円 |
| 4〜5人 | 70万円 | 130万円 | 270万円 |
| 6〜7人 | 90万円 | 180万円 | 360万円 |
| 8人以上 | 110万円 | 230万円 | 450万円 |
| 10人以上(特例事業者のみ) | 130万円 | 300万円 | 600万円 |
カッコ内は事業場規模30人未満の事業者の上限額です。小規模な事業場ほど、少人数の引上げでも上限額が高く設定されています。
グラフのとおり、特例事業者の「10人以上」区分は、通常の「8人以上」と比べて上限額が20〜150万円高くなります。
「最大600万円」を受け取れるのはどんな場合?
1事業場で上限600万円が適用されるのは、特例事業者が90円コースで10人以上の賃金を引き上げる場合だけです。特例事業者でも引き上げる人数が9人以下なら、上限額は通常の表と同じです。
特例事業者とは、次のいずれかに該当する事業者です。
| 特例事業者の要件(いずれか1つ) | |
|---|---|
| 賃金要件 | 事業場内最低賃金が1,050円未満 |
| 物価高騰等要件 | 原材料費の高騰などの外的要因により、申請前6か月間平均の利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が前年同期と比べ3%ポイント以上低下 |
なお、同一事業主が複数の事業場で申請する場合、年度内の助成額の合計は事業主単位で600万円が上限です。A店で400万円の交付を受けた場合、B店で申請できるのは残り200万円までになります。
「引き上げる労働者数」は誰を数える?
事業場内最低賃金の労働者に加え、賃上げによって賃金額を追い抜かれる労働者も、申請コース以上の引上げを行えば人数に含められます。一方、引上げ後の事業場内最低賃金以上の時給をすでに受け取っている労働者は、算入できません。
たとえば事業場内最低賃金1,040円の事業場が70円コース(1,040円→1,110円)で申請する場合、時給1,060円の労働者も1,130円以上(70円以上)に引き上げれば算入できます。時給1,120円の労働者は、引上げ後の事業場内最低賃金1,110円以上のため数えられません。
支給額の計算例
支給額は「設備投資等の費用×助成率」と「助成上限額」の低い方です。厚生労働省のリーフレットの例で確認します。
・引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満→助成率4/5
・設備投資等の費用:600万円
・600万円×4/5=480万円
・90円コース・8人以上の上限額:450万円
→支給額は450万円(上限額のほうが低いため)
時給50円・70円・90円のどのコースを選ぶ?60円アップの場合は?
令和8年度のコースは50円・70円・90円の3つで、実際の引上げ額以下のうち最も高いコースを選びます。たとえば時給を60円引き上げる場合は50円コース、80円引き上げる場合は70円コースでの申請になります。
令和7年度にあった30円・45円・60円コースは廃止されました。「時給60円アップ」で申請できるコースはなく、60円の引上げは50円コースとして扱われます。
| 実際の引上げ額 | 申請できるコース |
|---|---|
| 50円〜69円 | 50円コース |
| 70円〜89円 | 70円コース |
| 90円以上 | 90円コース |
| 49円以下 | 対象外 |
地域別最低賃金の引上げ額との関係
令和8年度の地域別最低賃金の引上げ額は54円〜65円です。事業場内最低賃金が改定前の地域別最低賃金と同額の事業場は、法定の引上げだけで50円コースの水準に届きます。そこからあと10〜30円上乗せして70円・90円コースを選ぶと、上限額が大きく上がります。
たとえば2〜3人を引き上げる30人未満の事業場では、50円コースの上限70万円に対し、70円コースは100万円、90円コースは240万円です。上乗せ分の人件費と助成額の差を比べて、コースを選びましょう。
業務改善助成金の対象経費は?対象外になるものも解説
業務改善助成金の対象は、生産性の向上や労働能率の増進につながる設備投資等です。機械・設備の導入だけでなく、国家資格者による経営コンサルティングや、導入機器の操作研修の外部講師謝金なども対象になります。
| 経費区分 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 機械装置等購入費 | 機器・設備の購入、製作、改良 | POSレジ、食器洗浄機、業務用厨房機器、リフト付き特殊車両 |
| 経営コンサルティング経費 | 国家資格者等による経営コンサルティング | 中小企業診断士による業務フローの見直し |
| 謝金 | 外部講師による従業員向け研修・導入機器の操作研修(1回10万円・5回まで) | 新システムの操作研修の講師謝金 |
| 旅費 | 専門家の招へいにかかる公共交通機関の実費 | コンサルタントの交通費 |
| 借損料 | 機械器具等の借料・損料 | 機械装置のリース料 |
| 印刷製本費 | 導入機器に関するマニュアル等の作成 | 操作マニュアルの印刷 |
| 原材料費 | 設備導入に必要な資材の購入 | 設備の初期資材 |
| 造作費 | 機械装置の据付等 | 設備の設置工事 |
| 委託費 | システム開発会社等への委託(就業規則の作成・賃金制度の整備は除く) | 顧客管理・予約システムの開発委託 |
助成対象経費の合計は税抜10万円以上が必要です。契約予定額が税抜10万円以上の場合は、原則として同一条件の仕様で2者以上の見積書(相見積)を添付します。
令和8年度に助成対象外となった経費
令和8年度は経費区分が見直され、人材育成・教育訓練費、会議費、雑役務費が区分から外れました。外部講師による研修は「謝金」の範囲でのみ対象になります。また、次のような経費は助成対象外です。
- 自動車(定員7人以上または車両本体価格200万円以下の乗用・貨物自動車も含む。福祉車両など8ナンバーの特殊用途自動車は対象)
- 動線確保に伴うレイアウト変更
- 通常の事業活動に伴う経費(事務所の家賃、光熱費、清掃用品などの消耗品)
- 広告宣伝費・販売促進費
- 建築物の構築にかかる経費
- 太陽光発電など再生可能エネルギーにかかる経費
- 単なる経費削減や職場環境の改善のみを目的とする経費(LED照明への交換、エアコン設置など)
- 交付決定前に契約・発注・納品・支払いをした経費
端末と周辺機器は通常は対象外です。ただし、特例事業者のうち物価高騰等要件に該当する場合に限り、新規導入が対象になります(既存機器の入れ替えは対象外)。この場合は、就業規則等に「事業場内最低賃金が1,100円である」旨を定める必要があります。
業種別の活用イメージ
厚生労働省のリーフレットでは、POSレジシステムの導入で在庫管理の時間を短縮した例、リフト付き特殊車両の導入で送迎時間を短縮した例、国家資格者による業務フローの見直しで顧客回転率を高めた例などが紹介されています。
| 業種 | 設備投資等の例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 飲食店 | POSレジ、食器洗浄機、券売機 | 会計・洗い場の作業時間を短縮 |
| 小売業 | POSレジ・在庫管理システム | 棚卸しや発注の時間を短縮 |
| 介護・福祉 | リフト付き特殊車両、介護記録システム | 送迎・記録業務の時間を短縮 |
| 製造業 | 自動化機械、計量・検品装置 | 生産量の増加、検品作業の短縮 |
| 美容室・サービス業 | 予約・顧客管理システム | 受付・電話対応の時間を短縮 |
賃上げと設備投資はいつ実施する?タイミングの注意点
令和8年度は、賃金引上げは交付申請の後に、設備投資は交付決定の後に実施します。順序を誤ると助成対象外になるため、最も注意が必要なポイントです。
賃金引上げは「交付申請後〜発効日の前日」に行う
賃金引上げは、交付申請後かつ「地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日」までに実施します。申請前に賃上げを済ませてから申請する「事後申請」は認められません。複数回に分けた段階的な引上げも不可です。
令和7年度に設けられた「賃金引上げ計画の事前提出の省略」は令和7年度限りの特例で、令和8年度には引き継がれていません。
設備投資は「交付決定後」に契約・納品・支払う
設備の契約(発注)・納品・支払いは、すべて交付決定の後に行います。交付決定前に発注した設備は対象外です。交付申請から交付決定までは数か月かかる場合があるため、納期を含めて余裕のある計画を立てましょう。
引上げ後の賃金は就業規則に定める
引上げ後の事業場内最低賃金額は、就業規則等に定める必要があります。労働者10人未満で就業規則のない事業場は、「就業規則に準ずるもの」(引上げ後の事業場内最低賃金・引上げ日などを記載し、労働者代表の意見書を添付した書面)を作成します。労働条件通知書や雇用契約書では代わりになりません。
業務改善助成金の申請方法は?提出先と必要書類
業務改善助成金の提出先は、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局です。窓口への持参・郵送のほか、Jグランツによる電子申請にも対応しています。
提出先は管轄の都道府県労働局
紙で申請する場合は、事業場を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に提出します。本社所在地ではなく、申請する事業場の所在地で提出先が決まる点に注意してください。
持参の場合、予約制を取っている労働局もあります。たとえば愛媛労働局は、持参による申請を予約優先制としています。
Jグランツで電子申請する場合
Jグランツで申請する場合は、GビズIDプライムアカウントが必要です。令和8年度は事業場の所在地(都道府県)ごとに申請フォームが分かれているため、別の都道府県のフォームから申請しないよう注意しましょう。GビズIDプライムは発行までに日数がかかるため、早めに取得しておくと安心です。
交付申請の主な必要書類
交付申請では、交付申請書(様式第1号)に加え、事業実施計画書、設備投資等の見積書、賃金台帳の写しなどを提出します。
| 主な書類 | 内容 |
|---|---|
| 交付申請書(様式第1号) | 事業実施計画書・国庫補助所要額調書などの別紙を含む |
| 見積書 | 契約予定額が税抜10万円以上の場合は原則2者以上 |
| 賃金台帳の写し | 原則として申請前6か月分 |
| 特例事業者の申出書 | 物価高騰等要件で申請する場合に、利益率の低下を示す資料とあわせて提出 |
| その他 | 親族を対象に含める場合の申立書など、申請内容に応じた書類 |
書類は申請内容によって異なります。提出前に、厚生労働省の「交付申請時の添付資料チェックリスト」で確認しましょう。
申請から入金までの流れ
業務改善助成金は、交付申請→交付決定→事業の実施→事業実績報告・支給申請→入金の5ステップで進みます。

| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①交付申請 | 交付申請書と添付書類を労働局へ提出(紙またはJグランツ)。賃金引上げはこの後に実施 |
| ②交付決定 | 労働局の審査を経て交付決定。設備の契約・発注はこの後に実施 |
| ③事業の実施 | 賃金引上げ、設備の導入、代金の支払い。領収書・契約書は保管 |
| ④実績報告・支給申請 | 事業実績報告書(様式第9号)と支給申請書(様式第10号)を提出 |
| ⑤助成金の入金 | 審査を経て交付額が確定し、指定口座に振り込み |
事業完了期限と実績報告の期限はいつ?
事業完了期限は、交付決定を受けた年度の1月31日です。令和8年度に交付決定を受けた場合は、2027年1月31日までに設備の納品・支払いと賃金引上げを完了させます。やむを得ない理由がある場合は、理由書を添えて申請すると3月31日まで延長が認められることがあります。
事業実績報告書と支給申請書は、「事業完了の日から1か月を経過する日」または「翌年度の4月10日」のいずれか早い日までに提出します。
業務改善助成金の採択率は?不交付になるケース
業務改善助成金は、事業計画を点数で競う公募型の補助金とは異なり、要件を満たして書類が適正であれば交付される助成金です。厚生労働省は採択率を公表していませんが、不交付になる主な原因は要件や手順の誤りです。
次のようなケースは、交付されない、または交付決定後でも支給されない原因になります。
- 交付申請より前に賃金を引き上げていた
- 交付決定より前に設備を発注・納品・支払いしていた
- 賃上げ対象者が雇用保険の被保険者ではなかった
- 申請日前6か月以内に解雇や賃金引下げがあった
- 引上げ後の事業場内最低賃金を就業規則等に定めていなかった
- 単なる経費削減など、生産性向上との関係が説明できない設備だった
- 予算の上限に達し、募集が終了していた
令和8年度の業務改善助成金の主な変更点は?
令和8年度は、申請開始時期・コース・助成率の基準・対象経費などが前年度から大きく変わりました。令和7年度の資料をもとに準備していた事業者は、次の点を確認しましょう。
| 項目 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 申請期間 | 年度ごとに設定 | 9月1日〜地域別最低賃金の発効日前日または11月30日の早い日 |
| コース | 30円・45円・60円・90円の4コース | 50円・70円・90円の3コース |
| 助成率の基準 | 1,000円 | 1,050円 |
| 対象事業場 | 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内 | 令和8年度の地域別最低賃金未満 |
| 賃上げ対象者 | 雇用保険の要件なし | 雇用保険被保険者に限定 |
| 賃上げの時期 | 事前提出省略の特例あり(令和7年度限り) | 交付申請後に実施(事後申請不可) |
| 自動車 | 特例事業者は一般車両も対象 | 特殊用途自動車を除き対象外 |
| 物価高騰等要件の算定期間 | 最近3か月間のうち任意の1月 | 申請前6か月間の平均 |
| 年間上限 | 事業場ごと | 事業主単位で600万円 |
業務効率化・生産性向上に使えるほかの補助金・助成金との違いは?
業務改善助成金は「最低賃金に近い時給の引上げ」が前提の制度です。賃上げを伴わない業務効率化や、高額な設備投資には別の制度が合う場合があります。
| 制度名 | 向いているケース | 賃上げとの関係 |
|---|---|---|
| 業務改善助成金 | 最低賃金に近い時給の従業員がいて、数十万〜数百万円の設備投資をしたい | 事業場内最低賃金の50円以上の引上げが必須 |
| 中小企業省力化投資補助金 | 人手不足の解消のため、省力化設備を導入したい | 賃上げ目標の設定が求められる |
| デジタル化・AI導入補助金 | 会計・受発注・予約などのソフトウェアを導入したい | 枠・申請回数によって賃上げ要件あり |
| キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース) | 非正規雇用労働者の基本給を3%以上引き上げたい | 設備投資は不要 |
| 働き方改革推進支援助成金 | 労働時間の短縮や勤務間インターバルを導入したい | 賃上げで加算あり |
省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金の違いは、以下の記事で詳しく比較しています。
業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者は、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者として重ねて数えることはできません。併用を検討する場合は、対象者が重ならないように計画しましょう。
都道府県の上乗せ補助金も確認しよう
一部の都道府県・市区町村は、国の業務改善助成金の交付決定を受けた事業者に、独自の上乗せ補助を行っています。自己負担をさらに減らせる可能性があるため、地元の制度も確認しましょう。
令和9年度(2027年度)の業務改善助成金はどうなる?
厚生労働省は令和9年度予算の概算要求で、業務改善助成金に543億円を要求し、助成上限額の引上げや申請期間の拡充、助成率区分の見直しを検討する方針を示しています。ただし、現時点では概算要求の段階であり、令和9年度の制度内容は確定していません。
令和8年度の受付が終了した都道府県の事業者は、12月の政府予算案や、例年春以降に公表される次年度の制度概要を確認しましょう。概算要求の全体像は、以下の記事で解説しています。
業務改善助成金に関するよくある質問
業務改善助成金の令和8年度の申請はいつまでですか?
事業場がある都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日、または2026年11月30日のいずれか早い日までです。2026年10月26日時点で受付中なのは、青森県・高知県(10月28日締切)、山形県(10月29日)、山梨県・徳島県・愛媛県・大分県(10月31日)、長崎県(11月1日)、佐賀県(11月14日)、京都府(11月15日)、岩手県・熊本県・沖縄県(11月30日)の13府県です。予算の範囲内での交付のため、期間内でも募集が終了する場合があります。
業務改善助成金の申請はいつから始まりましたか?
令和8年度の申請受付は2026年9月1日に始まりました。令和8年度から、申請期間は9月1日から各都道府県の地域別最低賃金の発効日前日(遅くとも11月30日)までに変更されています。
業務改善助成金の対象者は?
中小企業・小規模事業者のうち、事業場内最低賃金が令和8年度の地域別最低賃金未満で、申請前6か月以内に解雇や賃金引下げなどの不交付事由がない事業場が対象です。中小企業の基準は、小売業が資本金5,000万円以下または労働者50人以下、サービス業が5,000万円以下または100人以下、卸売業が1億円以下または100人以下、その他の業種が3億円以下または300人以下です。
業務改善助成金はいくらもらえますか?
設備投資等の費用に助成率(事業場内最低賃金1,050円未満は4/5、1,050円以上は3/4)を掛けた額と、助成上限額(30万〜600万円)のいずれか低い方が支給されます。上限額は50円・70円・90円のコースと引き上げる人数で決まり、最大600万円は特例事業者が90円コースで10人以上を引き上げる場合に限られます。
時給を60円上げる場合はどのコースで申請しますか?
50円コースで申請します。令和8年度は50円・70円・90円の3コースのみで、令和7年度の30円・45円・60円コースは廃止されました。実際の引上げ額以下で最も高いコースを選ぶため、50〜69円の引上げは50円コース、70〜89円は70円コース、90円以上は90円コースです。
業務改善助成金は従業員のいない個人事業主でも使えますか?
使えません。業務改善助成金は労働者の賃金引上げが条件のため、従業員のいない1人親方やフリーランスは対象外です。従業員を雇用している個人事業主であれば、法人でなくても対象になります。その場合も、賃上げ対象の従業員が雇用保険の被保険者であることが必要です。
業務改善助成金の提出先はどこですか?
申請する事業場の所在地を管轄する都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))です。本社所在地ではなく事業場の所在地で決まります。Jグランツによる電子申請も可能で、その場合はGビズIDプライムアカウントが必要です。令和8年度は都道府県ごとにJグランツの申請フォームが分かれています。
賃金引上げは申請の前と後のどちらに行いますか?
交付申請の後に行います。令和8年度は、賃上げ後に申請する事後申請は認められません。賃金引上げは交付申請後から、地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日までに、1回で実施する必要があります。
設備はいつ発注・購入すればよいですか?
交付決定の後です。交付決定前に契約・発注・納品・支払いをした設備は助成対象外になります。事業完了期限は交付決定年度の1月31日(令和8年度は2027年1月31日)のため、納期も含めて計画しましょう。
パソコンやタブレット、自動車は対象になりますか?
パソコン・スマホ・タブレット等の端末は原則対象外です。特例事業者のうち物価高騰等要件に該当する場合に限り、新規導入が対象になり、就業規則等に事業場内最低賃金1,100円を定める必要があります。自動車は令和8年度から、福祉車両など8ナンバーの特殊用途自動車を除き対象外です。
従業員研修の費用は対象になりますか?
令和8年度は「人材育成・教育訓練費」の区分がなくなりました。外部講師による従業員向け研修や導入機器の操作研修の講師謝金は、「謝金」として1回10万円・5回まで対象になります。
業務改善助成金の採択率はどのくらいですか?
厚生労働省は採択率を公表していません。業務改善助成金は事業計画を競う公募型の補助金ではなく、要件を満たし書類が適正であれば交付される助成金です。不交付の主な原因は、申請前の賃上げ、交付決定前の発注、雇用保険未加入の労働者を対象にしたことなどの手順・要件の誤りです。
過去に業務改善助成金を受給していても申請できますか?
申請できます。過去に利用した事業者も対象です。ただし、同一事業場の申請は年度内1回までで、同一事業主の年度内の助成額は事業主単位で600万円が上限です。
実績報告はいつまでに提出しますか?
事業実績報告書と支給申請書は、事業完了の日から1か月を経過する日、または翌年度の4月10日のいずれか早い日までに提出します。事業完了期限は交付決定年度の1月31日で、理由書を添えた申請により3月31日まで延長が認められる場合があります。
申請期限を過ぎてしまった場合はどうすればよいですか?
令和8年度の業務改善助成金は申請できないため、令和9年度の制度公表を待つか、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)、中小企業省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金、自治体独自の賃上げ支援などを検討しましょう。厚生労働省は令和9年度の概算要求で、申請期間の拡充を検討する方針を示しています。
まとめ
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上のための設備投資等を行う中小企業・小規模事業者に、費用の最大4/5(上限600万円)を助成する制度です。
令和8年度の申請締切は、地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日です。2026年10月26日時点で申請できるのは13府県のみで、青森県・高知県は10月28日、山形県は10月29日に締め切られます。対象地域の事業者は、賃上げは交付申請後、設備の発注は交付決定後という順序を守り、早めに労働局へ申請しましょう。
受付が終了した地域の事業者は、令和9年度の制度公表を待ちつつ、キャリアアップ助成金や省力化投資補助金など、ほかの賃上げ・設備投資支援もあわせて検討してみてはいかがでしょうか。
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