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年収の壁への対応!キャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コース活用法

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令和5年度、全国の賃上げ水準は30年ぶりの高さを記録しました。地域別最低賃金額の全国加重平均は1004円となり、政府目標の1000円を超えています。

一方で、短時間労働者の「年収の壁」問題は、労働者の就労意欲を損なうことが指摘されています。政府は、より働きやすい環境を整えるために、「年収の壁・支援強化パッケージ」を設定しました。これはいわゆる「106万円の壁」や「130万円の壁」、配偶者手当の環境整備を目指すものです。

今回はこうした動きのうち、キャリアアップ助成金に新設された「社会保険適用時処遇改善コース」についてお伝えします。

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この記事の目次

キャリアアップ助成金 コース新設の背景

働き方の多様化や女性の活躍を推進するためには、短時間労働者の環境改善や労働時間の延長支援も欠かせません。しかし厚生年金保険や健康保険への加入は、労働者の負担を増やすことにもつながります。その結果、「労働時間を減らしたほうが収入は増える」という境目に位置する短時間労働者の労働意欲を損なうことになっているのです。

社会保険適用時処遇改善コースの詳細

短時間労働者が労働時間を増やし、新たに被保険者となる場合、収入を減らさないためには事業者側の配慮が必要です。キャリアアップ助成金では、こうした取組を行う事業者に対して助成を行う社会保険適用時処遇改善コースが新設されました。

社会保険適用時処遇改善コースの主な内容は、以下のとおりです。

■新たに被用者保険を適用するとともに、労働者の収入を増加させる取組を行う事業主を助成する
■一事業所当たりの申請人数の上限を撤廃
■対象となるのは、令和7年度末までに取組を行った事業主
■支給申請にあたって、事務負担が軽減された

社会保険適用時処遇改善コースには、「手当等支給メニュー」「労働時間延⾧メニュー」「併用メニュー」の3つが設定されています。それぞれのメニューの概要について、確認しましょう。

手当等支給メニュー

手当等により、労働者の収入を増加させる取組が対象です。各年の要件と1人あたりの助成額は、以下のとおりです。

なお、大企業の場合は助成額が3/4になります。

① 1年目
【要件】
賃金の15%以上分を追加支給する
【助成額】
20万円
② 2年目
【要件】
賃金の15%以上分を労働者に追加支給し、3年目以降、
以下③の取組を行う
【助成額】
20万円
③ 3年目
【要件】
賃金の18%以上を増額させる
【助成額】
10万円

1年目と2年目の賃金は標準報酬月額および標準賞与額、3年目の賃金は基本給です。

また1~2年目は取組から6ヶ月ごとに10万円を申請し、3年目は6ヶ月後に支給申請を行います。2年目に前倒して3年目の取組を実施する場合は、3回目の支給申請でまとめて30万円が助成されます。

労働時間延⾧メニュー

労働時間延⾧を組み合わせる場合に、対象となります。現行の、短時間労働者労働時間延⾧コースの拡充として設置されたメニューです。

週所定労働時間の延⾧時間ごとに、賃金の増額率が設定されています。

①週所定労働時間の延⾧が4時間以上
賃金の増額:要件なし
②週所定労働時間の延⾧が3時間以上4時間未満
賃金の増額:5%以上
③週所定労働時間の延⾧が2時間以上3時間未満
賃金の増額:10%以上
④週所定労働時間の延⾧が1時間以上2時間未満
賃金の増額:15%以上

1人あたり助成額は30万円 (大企業の場合は3/4の額) です。
なお、増額される賃金は基本給です。

併用メニュー

1年目に「手当等支給メニュー」の助成(20万円)を受け、2年目に「労働時間延⾧メニュー」の助成(30万円)を受けます。

助成金活用イメージ【手当等支給メニュー】

次は、実際に助成金を活用する際のイメージを見ていきましょう。

手当等支給メニューでは、3年目以降も継続的に給与の増額に取り組む必要があります。

時給1016円、労働時間20時間の者が、適用拡大により新たに被保険者となるケースのイメージは以下のとおりです。

出典:厚生労働省 「年収の壁」への当面の対応策

このケースでは、1年目と2年目は「一時的な手当」として約16万円を支給し、3年目は賃金を増額させることで、労働者の手取りが106万円になるように調整しています。この間、労働者は被保険者となり、額面の年収は3年目には約125万円 (保険料約19万円+手取り年収約106万円) です。

助成金活用イメージ【併用メニュー】

続いて、併用メニューの活用イメージを見てみましょう。

以下は時給1016円、週所定労働時間20時間の者が新たに被保険者となり、2年目にはさらに労働時間を増やしたケースです。

出典:厚生労働省 「年収の壁」への当面の対応策

このケースでは、1年目は「一時的な手当」支給で約16万円を支給し、2年目には賃金の増額を行っています。また、2年目に該当労働者は労働時間を増やし、手取り収入は109万円になりました。

この場合、2年目の助成金は30万円となります。さらに2年目以降、継続的な収入の増加に取り組むことが条件です。

労働者は年収の壁による収入の減額を気にすることなく、キャリアアップを目指しやすくなります。

年収の壁とキャリアアップ助成金。今後の展望と企業の対応策は?

社会保険適用時処遇改善コースは、令和8年3月31日までの暫定措置です。しかしこれは、短時間労働者の課題が数年の間で解決することを意味するものではありません。こうした問題は、国にとっても、企業にとっても継続的に取り組むべき課題のひとつです。

日本では2040年にかけて生産年齢人口が急減し、社会全体の労働力確保が問題となっています。さらにコロナ禍を経て、経済や人の動きが活発化してきた昨今では、労働現場の人手不足も深刻です。希望する労働者がキャリアアップを行い、長時間の労働がしやすい環境を整えることは急務となっています。

キャリアアップ助成金の現行制度(短時間労働者労働時間延長コース)では、令和6年9月30日までの暫定措置として、労働時間の延長や賃金の増額によって労働者が新たに被保険者となった場合に助成金が支給される仕組みでした。社会保険適用時処遇改善コースは、この暫定処置が令和6年3月31日までの短縮となることで新設されたコースです。
参考:雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案について(概要)

労働時間の増加に伴う年収の壁問題の解決には、現在も状況に即した制度が模索されています。労働人口は、突然増えるものではありません。労働者数の安定には、まだ時間がかかることが予想されます。企業においては、今いる労働者のスキルアップや定着に取り組み、労働者の質を高める行動が、将来的な成長のカギとなります。

そのためには、環境の整備や柔軟な働き方への対応も不可欠です。そうした改革は、新たな労働者の確保にもつながります。

時代の変化に合わせた改革は、今後はますます、企業の価値を高めていくでしょう。

まとめ

家庭環境やライフバランスの見直しによって、短時間労働を選ぶ人が増えています。一方で、労働条件や収入が希望と合致すれば、キャリアアップを目指したいという需要も少なくないはずです。

キャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースは、年収の壁を気にして労働時間を調整していた労働者のキャリアアップを支援するものです。1人あたりの労働者の労働時間が延びれば、企業にとっては労働力の増加です。賃金の増額は企業の負担にもなりますが、新たに労働者を雇用するよりも、従来の労働の生産力をあげたほうが、全体の費用は少なく済みます。

キャリアアップ助成金をはじめとする国の支援を上手に使いながら、労働者にとって働きやすい環境整備を行うことが、これからの企業成長に大きな影響を与えることになりそうです。

参考:年収の壁・支援強化パッケージ

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