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最低賃金引き上げ対策!企業が使える5つの支援策

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10月1日から各都道府県で最低賃金が引き上げられます。今年の全国平均の引き上げ幅は過去最高の43円の増額で、時給の平均が1004円となりました。全国の最低賃金の平均が時給1000円を越すのはこれが初めてです。

賃金を引き上げることは、従業員のやる気を向上させ、業務の効率を上げる手段となり得ます。この効果により、企業の業績も向上する可能性があります。

とはいえ、賃金アップは自社の負担が増えるものであるため、資金面で余裕のない中小企業などでは実施が難しいケースもあるでしょう。

今回はそのような「賃上げを実施したいが資金的に厳しい」という中小企業向けに、賃金を引き上げることで、より自社へのサポートが強化される助成金や補助金制度を紹介します。

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この記事の目次

業務改善助成金

業務改善助成金とは、生産性向上に必要な設備投資など(機械設備やコンサルティング導入、人材育成・教育訓練)を実施すると同時に、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を各コースで定めた一定額以上まで引き上げた場合に、その設備投資などに投下した費用の一部を助成する制度です。

「事業場内最低賃金の引き上げ計画」「設備投資等の計画」を作成して申請し、交付決定後に計画に沿って事業を進め、その運用結果を報告することで、設備投資などに投下した費用の一部が助成金として支給されます。

対象事業者

・以下のAあるいはBを満たす中小企業や小規模事業者である

業種 A:資本金あるいは出資額 B:常時勤務する労働者数
小売業 5000万円以下 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他(農業・林業・漁業など) 3億円以下 300人以下

・事業場内最低賃金と地域別最低賃金(例年10月頃に改定する都道府県単位の最低賃金額)の差額が50円以内である
・解雇や賃金引き下げなどの不交付事由がない

※さらに2023年8月31日からの拡充によって、以下の要件を満たす事業者は「賃金引き上げ後の申請」が可能となりました。
・事業場規模が50人未満である
・2023年4月1日~12月31日に事業場内最低賃金を引き上げている

助成対象経費

対象経費 一般事業者 特例事業者の一部 助成対象経費の例
生産性向上に必要な設備投資など 【機器や設備の導入】
・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
【経営コンサルティング】
・国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し
【その他】
・店舗改装による配膳時間の短縮
生産性向上に必要な設備投資の中で、「定員7人以上あるいは車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車」「PCやスマホ、タブレットなどの端末および周辺機器の新規導入」 ×
関連する経費(広告宣伝費や汎用事務機器、事務室の拡大、机の増設など) × デリバリーサービスを周知するためのチラシ代

助成率および助成上限額

【助成率】

引き上げ前の事業場内最低賃金 900円未満 900円以上950円未満 950円以上
助成率 9/10 4/5 3/4
指定の生産性要件に該当した場合 - 9/10 4/5

【助成限度額】

コース区分 事業場内最低賃金の引き上げ額 引き上げる労働者数 助成上限額(事業場規模30人以上の場合) 助成上限額(事業場規模30人未満の場合)
30円コース 30円以上 ①1人
②2〜3人
③4〜6人
④7人以上
⑤10人以上
①30万円
②50万円
③70万円
④100万円
⑤120万円
①60万円
②90万円
③100万円
④120万円
⑤130万円
45円コース 45円以上 ①1人
②2〜3人
③4〜6人
④7人以上
⑤10人以上
①45万円
②70万円
③100万円
④150万円
⑤180万円
①80万円
②110万円
③140万円
④160万円
⑤180万円
60円コース 60円以上 ①1人
②2〜3人
③4〜6人
④7人以上
⑤10人以上
①60万円
②90万円
③150万円
④230万円
⑤300万円
①110万円
②160万円
③190万円
④230万円
⑤300万円
90円コース 90円以上 ①1人
②2〜3人
③4〜6人
④7人以上
⑤10人以上
①90万円
②150万円
③270万円
④450万円
⑤600万円
①170万円
②240万円
③290万円
④450万円
⑤600万円

例として、地域別の最低賃金が900円の場合を考えます。もし事業場内での最低賃金を910円から970円に引き上げると、助成率は4/5となります。この事業場で7人の労働者の最低賃金を引き上げる場合、60円の上昇分を考慮し、60円コースで7人以上を対象とすると、助成金の上限額は230万円となります。

仮に、設備投資の費用が300万円だった場合、その助成額は300万円×4/5=240万円と計算されます。しかしこの240万円は、助成の上限額230万円を超えているため、実際に支給される助成金は230万円となります。

助成金の詳細は「厚生労働省:業務改善助成金」をご確認ください。

事業再構築補助金

新分野展開や事業転換、業種転換、業態転換、事業再編などの思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する制度です。新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し当面の需要や売り上げの回復が難しい中、ポストコロナ時代の変化に対応する取り組みを推進する中小企業等を支援してくれます。

以下の枠から自社にマッチするものを選択します。

  • 成長枠
  • グリーン成長枠卒業促進枠
  • 卒業促進枠
  • 大規模賃金引上促進枠
  • 産業構造転換枠
  • 物価高騰対策・回復再生応援枠
  • 最低賃金枠

    補助対象要件

    下記①、②の両方を満たす必要があります。

①事業再構築指針に沿った3~5年の事業計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。
②補助事業終了後3~5年で付加価値額を年率平均3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上増加させること。または従業員一人当たり付加価値額を年率平均3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上増加させること。

①、②の他に、各事業類型毎に別途補助対象要件が設けられています。

【最低賃金枠の主な要件】
2022年10月から2023年8月までの間で、3か月以上 最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること。

【最低賃金額の補助金額】
中小企業者等、中堅企業等ともに
・従業員数5人以下:100万円~500万円
・従業員数6~20人:100万円~1000万円
・従業員数21人以上:100万円~1500万円

【補助率】
中小企業者等 3/4
中堅企業等 2/3

大規模賃金引上促進枠

大規模賃金引上促進枠は、成長枠またはグリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援枠です。そのため、大規模賃金引上促進枠の申請は、成長枠またはグリーン成長枠の申請と同時に行わなければなりません。補助金額は100万円~3000万円です。これにより、たとえば、成長枠は最大7000万円、更に一定の賃上げで上限額を最大3000万円引き上げることができます。

事業再構築補助金の賃上げ加点

さらに「事業計画期間終了までの間」に、事業場内最低賃金を以下の水準以上にすることで加点されます(水準が高いほど追加で加点される)。

  • 地域別最低賃金より+30円以上
  • 地域別最低賃金より+50円以上

詳細は「事業再構築補助金公募要領(第11回)」をチェックしましょう。

ものづくり補助金

今後相次いで発生する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するための補助金制度です。中小企業や小規模事業者等が、革新的サービスや試作品開発、生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させる設備投資等を実施した際に支援します。

基本要件

補助金の要件は、以下の通りです。

①3~5年の期間で、以下の要件を含む事業計画を策定すること。
・事業計画期間において、年間の給与支給総額を平均で1.5%以上増やす
・毎年、事業場内での最低賃金を、地域の最低賃金よりも30円高く設定する
事業者全体として、年間の付加価値額を平均で3%以上増やす

②以下の条件にも同意すること。
・申請時に、賃金引き上げ計画をすでに策定していること。計画が後から策定されていないことが判明した場合、受け取った補助金の返還が求められる
・補助金の返還額(財産処分や収益の納付を含む)は、補助金の総額を超えない。
・再生事業者である場合、目標が達成されなくても、補助金の返還は必要ない。

【申請枠】

申請枠 補助上限額 補助率
通常枠 750万円~1250万円 1/2、2/3(小規模・再生事業者)
回復型賃上げ・雇用拡大枠 750万円~1250万円 2/3
デジタル枠 750万円~1250万円 2/3
グリーン枠 エントリー:750万円~1250万円
スタンダード:1000万円~2000万円
アドバンス:2000万円~4000万円
2/3
グローバル市場開拓枠 3000万円 1/2、2/3(小規模・再生事業者)

【大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例】
補助事業が終わった後、3~5年の間で賃金を大きく引き上げる事業者は、通常の補助上限に加えて、追加で100万円から1000万円の補助が受けられます。ただし、回復型賃上げや雇用拡大の補助はこの対象外です。

【賃上げ加点】
上限額については、給与支給総額を平均6%以上増加させたうえで「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にする」という加点要素を満たすと引き上げられます(次回の第17次公募より適用)。

詳細は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領」をチェックしましょう。

IT導入補助金

中小企業や小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツールの導入を支援する補助金です。対象となるITツールは、事前に事務局の審査を受けてHPに公開されているものに限ります。また、相談対応等のサポート費用やクラウドサービス利用料等も補助対象に含まれます。IT導入補助金には、以下の枠が設けられています。

なお補助金申請者は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請することが必要です。

【補助上限額および補助率】

申請枠 補助率および補助上限額
通常枠(A・B類型) ・A類型(補助率1/2以内)→5万円以上150万円未満
・B類型(補助率1/2以内)→150万円以上450万円以下
セキュリティ対策推進枠 サービス利用料(補助率1/2以内)→5万円以上100万円以下
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) ソフトウェア等(補助率3/4以内)→下限なし〜50万円以下
(補助率2/3以内)→50万円超〜350万円以下
ハードウェア等(補助率1/2以内)→30万円以下
デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型) 中小企業や小規模事業者等が申請する場合(補助率2/3以内)→下限なし〜350万円以下
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型) 基盤導入経費(補助率1/2〜3/4)→3000万円以下
事務費、専門家費(補助率2/3)→200万円以下

【賃上げ加点】
給与支給総額を年率平均1.5%増加させたうえで「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にする」という要素を満たすことで加点されます。

詳細は「IT導入補助金2023」でご確認ください。

キャリアアップ助成金

有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの「非正規雇用労働者」の企業内におけるキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に助成金を支給する制度です。具体的には以下の各コースに分かれます。

目的 コース名 概要
正社員化支援 正社員化コース 有期雇用労働者などを正社員化する
正社員化支援 障害者正社員化コース 障害のある有期雇用労働者などを正規雇用労働者等に転換する
処遇改善支援 賃金規定等改定コース 有期雇用労働者などの基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額する
処遇改善支援 賃金規定等共通化コース 有期雇用労働者などと正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定し適用する
処遇改善支援 賞与・退職金制度導入コース 有期雇用労働者などを対象に賞与、または退職金制度を導入して支給、あるいは積立てを実施する
処遇改善支援 短時間労働者労働時間延長コース 有期雇用労働者などの週所定労働時間を延長し、社会保険を適用する

【対象事業者】
以下の1〜4に加えて、各該当コースの支給要件に当てはまる事業主が対象です。今回は「共通要件の概要」を紹介します。

補助対象者
1.適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置した事業主である
2.適用事業所ごとに対象労働者のキャリアアップ計画書を作成し、管轄労働局長の受給資格認定を受けた事業主であり、かつ「キャリアアップ計画書」の内容と変更点が生じた際、取り組み実施日前日までに「キャリアアップ計画書(変更届)」を提出している
3.該当コースの措置に係る対象労働者の労働条件や勤務状況、賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明示できる事業主である
4.助成金の趣旨を十分理解し、当該趣旨に沿った取り組みを実施している事業主である

【対象労働者】

コース名 対象労働者
正社員化コース ・正規雇用労働者等として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等ではない
・転換日あるいは直接雇用日前日から過去3年以内に、「当該事業主の事業所と密接な関係の事業主で正規雇用労働者等として雇用されたことがない」「請負や委任関係にない」「取締役、社員、監査役、共同組合の社団、もしくは財団役員ではない」に該当している 等
障害者正社員化コース ・支給対象事業主に雇用される労働者である
・就労継続支援A型事業における利用者でない 等
賃金規定等改定コース ・賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3ヶ月以上前の日から増額改定後6ヶ月以上の期間に、継続して支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等である
・増額改定した賃金規定等を適用され、かつ、増額改定前の基本給に比べて3%以上昇給している 等
賃金規定等共通化コース ・賃金規定等を共通化した日の前日から起算して3ヶ月以上前の日から共通化後6ヶ月以上の期間に、継続して支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等である
・共通化した区分に格付けされている、正規雇用労働者以上の区分に格付けされている者である 等
賞与・退職金制度導入コース ・賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3ヶ月以上前の日から増額改定後6ヶ月以上の期間に、継続して支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等である
・増額改定した賃金規定等を適用され、かつ、増額改定前の基本給に比べて3%以上昇給している 等
短時間労働者労働時間延長コース 週所定労働時間を延長した後、6ヶ月以上の期間継続して支給対象事業主に雇用される有期雇用労働者等である
・週所定労働時間を延長した日の前日から起算して過去6ヶ月間に社会保険の適用要件を満たさなかった者であり、かつ支給対象事業主の事業所において過去2年以内に社会保険に加入していない 等

詳細は「厚生労働省:キャリアアップ助成金」をご確認ください。

働き方改革や経営改善に向けた相談先

上記の補助金や助成金の活用も含め、働き方改革や経営改善に向けた施策に取り組みたい事業主は、以下の機関に相談することもオススメです。

①働き方改革推進支援センター
働き方改革推進支援センターでは、社労士等の労務管理専門家が、働き方改革や賃金引き上げに向けた取り組みを無料で支援してくれます。労務管理上の悩みを聞き、「就業規則の作成方法」「賃金規定の見直し」「労働関係助成金の活用」などを含めてアドバイスします。具体的な支援内容は以下の通りです。

  • 個別相談支援
    窓口や電話、メールなどによる相談、問い合わせを受け付けています。企業への直接訪問などを通じて、事業主が抱えるさまざまな課題についてコンサルティングを行います。また依頼等に応じて、商工会議所や商工会、中小企業団体中央会、市区町村等での出張相談会も開催可能です
  • 働き方改革セミナー
    「働き方改革関連法の周知」「36協定締結」「就業規則作成に当たっての手続方法」「その手法に合わせた労働関係助成金の活用」等について、企業向けのセミナーを随時開催しています

②よろず支援拠点
よろず支援拠点とは、中小企業や小規模事業者が抱える経営上のさまざまな相談に回答してくれる無料経営相談所のことです。以下3つのポイントを踏まえてアドバイスを行ってくれます。

  • 総合的・先進的な経営アドバイスの提供
    さまざまな分野の専門家から、⼀歩踏み込んだアドバイスを実施します
  • 課題解決チームの編成
    自社の経営課題に合わせた専門家チームを編成して課題解決に向けてアドバイスを行ってくれます
  • 企業の課題に合わせたワンストップサービス
    企業のさまざまな相談をワンストップで解決してくれます

まとめ

今回紹介した助成金や補助金制度は、最低賃金の引き上げに取り組む事業者を資金面でサポートしてくれるものばかりです。こうした制度を上手に活用することで、自社の資金負担を減らしつつ企業の労働環境整備につなげられるでしょう。制度ごとで補助対象要件や対象経費が異なるため、自社の現状と照らし合わせてマッチするものを選ぶことが大切です。

補助金ポータルでは、各種補助金、助成金活用のご相談を承っておりますのでお気軽にご連絡ください。「どの支援策が自社に合うのかわからない」「専門家に相談したい」という場合は、補助金ポータルでお近くの専門家を探すことができますので、ぜひご活用ください。

【士業検索】
https://hojyokin-portal.jp/professional

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