「中小企業等経営強化法」の規定に基づき「令和元年度中小企業・小規模事業者等に対する特定補助金等の交付の方針」が令和元年9月10日に閣議決定されました。今回はその内容についてみていきたいと思います。
この記事の目次
1、概要
中小企業・小規模事業者へ向けた研究開発費の支出拡大と研究開発成果の事業化支援のため平成11年度から毎年、特定補助金等の交付の方針を閣議決定しています。特定補助金等とは国等の研究開発予算のうち、中小企業・小規模事業者等が研究開発に活用でき、その成果を活用して事業を行えるものとして国が指定した補助金・委託費等のことです。今回交付の方針として定められた内容は以下の通りです。
①中小企業・小規模事業者等向け支出目標
②中小企業・小規模事業者等に対する特定補助金等の支出の機会の増大を図るための措置
③平成30年7月豪雨、平成28年熊本地震及び東日本大震災の被災地域の中小企業・小規模事業者に対する配慮
④中小企業・小規模事業者等による特定補助金等に係る研究開発成果を利用した新たな事業活動の支援措置
⑤方針の実施
令和元年度「特定補助金等の交付の方針」のポイント
①の中小企業・小規模事業者等向け支出目標は、過去最高であった昨年度と同額の460億円となるよう努める、としました。②の特定補助金等の支出の機会の増大を図るための措置としては、
・特定補助金等の交付に関する情報の提供等
・十分な事業実施期間の確保
・申請手続きの簡素化等
などが上がっていました。情報の提供に関して「中小企業技術革新制度特設サイト」から行うものとし、中小企業・小規模事業者等が活用できる施策の情報や活用事例などを掲載して利便性の向上に努めるとしています。
特設サイト「技術開発を支援する!SBIR(J-Net21)」
http://j-net21.smrj.go.jp/develop/sbir/index.html
また、十分な事業実施期間の確保については、できるだけ早期に公募を開始するなどして事業実施機関の確保に努める考えです。申請手続きの簡素化等については申請書類の記入例の提示のほか、令和元年度中に補助金電子申請システムの開発を進め、令和2年度以降複数の補助金申請等に活用が可能となるよう、申請手続き負担の軽減に取り組んでいく、としました。
④の研究開発成果を利用した新たな事業活動の支援として、
・特定補助金等の成果の利用を支援する機関への情報提供による投資促進
・中小企業・小規模事業者等を対象とした技術人材面での支援
・技術力のある中小企業・小規模事業者等の入札参加機会の拡大
などが上がりました。特設サイトの拡充を図り、特定補助金等の交付を受けた中小企業・小規模事業者等の研究開発内容やビジネスプラン等、当該企業の技術力を示す諸情報を発信できるようにしていく考えです。また、特定補助金等の交付を受けた中小企業者等への公共調達に関する情報発信の強化等の取り組みを進めていくことも上がりました。
2、まとめ
令和元年度「特定補助金等の交付の方針」によると、国等の研究開発予算における中小企業・小規模事業者等向け支出目標額が、過去最高であった昨年度と同額の460億円になることがわかりました。特定補助金等の支出実績額が支出目標額を下回っている状況を鑑みて、中小企業等の特定補助金等への制度の周知を進め、わかりやすく利用しやすい制度運用等を推進していくといった内容も盛り込まれています。また、研究開発成果を利用した新たな事業活動を支援するために、支援機関への情報提供や各府省間の連携などを進めていくとしました。
方針の実施に関しては、実施状況を毎年度把握し実効性を向上させるために必要な措置の検討を行うとのことで、現行の中小企業技術革新制度について令和元年度中に評価・検証を行い、速やかに必要な措置を講ずる、とありました。これからの中小企業・小規模事業者等の研究開発に対し、より一貫した支援が期待されます。
参考:経済産業省ニュースリリース
https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190910002/20190910002.html
令和元年度中小企業・小規模事業者等に対する特定補助金等の交付の方針
https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190910002/20190910002-1.pdf