競輪振興法人、オートレース振興法人である公益財団法人JKAは、その売り上げの一部を「競輪とオートレースの補助事業」として社会に還元しています。2023年度は新型コロナウイルスの感染拡大等による新しい生活様式など、社会情勢の変化によって生まれた課題の解決に向けた取組みを積極的に支援することが表明されました。
特に「公益事業振興補助事業」では、子供や高齢者、障がい者など、社会的弱者を支援する取組みや復興支援など、さまざまな社会的課題の解決を補助しています。
今回は競輪とオートレースの補助事業の公益事業振興補助事業について、まとめました。
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この記事の目次
競輪とオートレースの補助事業とは
競輪とオートレースの補助事業は、公益財団法人JKAの補助金と事業者の自己資金を原資として、社会的課題の解決に取り組む活動を支援する事業です。
1949年の競輪による国庫納付金を原資とした自転車産業振興を事実上の始まりとし、2011年には「東日本大震災復興支援補助」や「新世紀未来創造プロジェクト」を創設するなど、時代の変化にあわせた進化を続けています。
2023年度の補助事業
2023年度はこれまでの成果・効果とともに、社会的要請や社会環境の変化を踏まえて「チャレンジ」「チェンジ」をキーワードにした課題解決を図る取り組みを支援します。競技の普及促進等・競技施設の整備をはじめとしたスポーツに関わる事業のほか、国際交流や文化、いじめやジェンダー問題といった近年の社会的課題の解決も支援の対象になっています。
補助事業は「機械振興補助事業」と「公益事業振興補助事業」に分かれます。ここでは「公益事業振興補助事業」の内容を見ていきましょう。
公益事業振興補助事業
公益事業振興補助事業は、以下の①~④にわかれています。
①公益の増進
②社会福祉の増進
③復興支援
④研究補助
そのほか、非常災害等の支援にあたる「年度内要望」があります。
公益の増進
公益の増進の対象事業は以下の①~⑦です。
公益の増進 対象事業 | |
①自転車・モーターサイクル |
₋自転車競技の競技力向上等に資する事業 ₋自転車競技・モーターサイクル競技の普及促進および競技力の向上に資する事業 ₋自転車・モーターサイクルの安全利用等、人にやさしい健康で安全な社会づくりの推進および交通マナーや自転車の正しい乗り方などを啓発する事業 ₋自転車・モーターサイクルの活用による地域振興に資する事業 ₋自転車・モーターサイクルを活用したオンライン競技大会の開催に資する事業 ₋自転車・モーターサイクルの交通マナー対策に資する施設の建築 ₋自転車競技施設・モーターサイクル競技施設の建築 ₋競輪・オートレースの補助事業により建築整備された施設の補修事業 |
②障がい者スポーツを含むスポーツ |
₋国内スポーツ競技力向上のための事業 ₋全国的なスポーツ大会の開催 ₋国際相互理解の増進に資する事業 ₋スポーツの振興、セミナーおよび調査研究 等 |
③社会環境 | ₋警察・消防活動に協力中の事故被害者に対する支援活動 ₋地域社会および消費者の安全・安心に資する活動 ₋更生保護施設の建築 ₋競輪・オートレースの補助事業により建築整備された更生保護施設の補修事業 |
④国際交流 |
₋学術・芸術・文化などにおける国際交流の推進および人材の育成に資する事業 |
⑤医療・公衆衛生 | ₋検診車・移動診療車の整備 ₋健康や命を守る医療に関する普及啓発活動 |
⑥文教・学術文化 | ₋親と子のふれあい交流活動 ₋地域に根ざした自然・文化・遊び体験活動 ₋学術・文化の振興のための活動 ₋青少年の健やかな成長を育む活動 ₋豊かな自然と動植物を大切にする活動 ₋競輪・オートレースの補助事業により建築整備された社会教育施設の補修事業 |
⑦新世紀未来創造プロジェクト | ₋地域ふれあい交流活動 ₋実践的研究を通じた人間力育成支援活動 ₋社会福祉活動 |
社会福祉の増進
社会福祉の対象事業は以下の①~⑤です。
社会福祉の増進 対象事業 | |
①児童 |
₋子供とその親が幸せに暮らせる社会を創る活動 ₋虐待から子供を守る施設の建築 ₋児童福祉施設の建築 |
②高齢者 |
₋お年寄りが幸せに暮らせる社会を創る活動 |
③障がい児・者 | ₋障がいのある人が幸せに暮らせる社会を創る活動 ₋障がいのある人が地域活動をするための施設の建築 ₋障がいのある人のための施設の建築 ₋障がいのある青少年の健全育成のための施設の建築 ₋身体障がい者補助犬を広める活動 ₋補助犬の繁殖・訓練・ケア施設の建築 |
④地域共生型社会支援事業 |
₋児童、高齢者、障がいのある人等が相補的に関わることのできる地域共生型社会づくりを促進する活動 ₋地域共生を通しての少子高齢化社会の進展に伴う、人材不足等の改善を目指す活動 ₋上記の調査・研究等に関する事業 |
⑤幸せに暮らせる社会を創るための活動および車両・機器等の整備 | ₋福祉車両・就労支援車両等の整備 ₋就労支援機器の整備 ₋幸せに暮らせる福祉社会を創る活動および人材育成 ₋難病および希少難病をかかえる人への支援 ₋難病および希少難病について正しい理解を深める活動 ₋引きこもり・不登校等の若者の孤立・孤独対策への支援、LGBTQに関する活動への支援 ₋ジェンダー平等の実現に向けた支援活動 ₋子供などを、いじめ、暴力、事故、犯罪から守るための活動 ₋ギャンブル等依存症対策に関する支援活動 ₋福祉事業を行っている法人格を有さない団体に対して支援を行う活動 ₋競輪・オートレースの補助事業により建築整備された社会福祉施設および障がいのある青少年の健全育成のための施設の補修事業 |
復興支援
復興支援の対象事業は以下の①~⑦です。
復興支援の対象事業 |
①被災地域及び被災者受入地域における支援拠点、ネットワークづくり活動 |
②児童、高齢者、障がい者等を対象とした被災地域および被災者受入地域における生活支援活動 |
③被災地域において被災者や、その支援を行うボランティア等を輸送するための活動 |
④被災者や被災地域が行う復興活動 |
⑤被災者の自立支援、就業支援を目的とした活動 |
⑥被災地域の記録活動 |
⑦実態調査、現在・将来にわたるニーズ調査活動 |
研究補助
大学等研究機関に所属して当該組織の研究活動に実際に従事し、概ね15年以内にある若手研究者のキャリアアップとなる研究を支援します。対象となる研究の種類は、以下の①~④です。
研究補助 | |
①幸せに暮らせる社会を創るための活動に資する研究 (上限300万円) |
研究期間…1年 |
②ギャンブル等依存症に係る研究 (上限300万円) |
研究期間…1年 |
③女性のスポーツの機会の向上に係る研究 (上限300万円) | 研究期間…1年 |
④女性アスリートの競技力や社会的評価の向上に資する研究(上限300万円) |
研究期間…1年 ₋女性アスリートや指導者等、「身体・生理的課題」、「心理・社会的課題」もしくは「組織・環境的な課題」のいずれかに関わるもの |
年度内要望
年度内要望とは「公益の増進」「社会福祉の増進」「復興支援」に該当する事業が、事業年度開始後に対応する必要がある「非常災害等の支援」への支援を行うものです。
当該事業に関しては、「競輪とオートレースの補助事業」ホームページからご連絡ください。
補助事業の補助率・上限金額
各事業の補助率と上限額は、以下のとおりです。
【補助率】
2分の1~1分の1
【補助上限額】
100万円~1億5,000万円
詳細は以下の図も参照してください。
出典:2023年度 補助方針より抜粋(一部加工)
補助の対象者
各補助の対象者は以下のとおりです。
【新世紀未来創造プロジェクト以外】
- 社会福祉の増進、復興支援、特定非営利活動法人(NPO法人)
- 財団法人・社団法人
- 社会福祉法人、更生保護法人
- 商工会、商工会議所
- 私立特別支援学校を運営する学校法人
- 特別の法律に基づいて設立された法人
【新世紀未来創造プロジェクト】
- 国公立・私立の小学校・中学校・高等学校
- 特定非営利活動法人(NPO法人)
【年度内要望】
- 「振興事業補助」と「感染症に関する事業への支援」に該当する者
非常災害における災害等救助に関する事業については、さらに以下の事業を実施する者を対象とします。 - 災害等救助のために救援物資の購入、管理、輸送、供与または貸与を行う者
- 災害等救助、救援および復旧、復興活動、支援を行う者
補助対象経費
補助の対象となる経費は、以下のとおりです。
公益事業振興補助の対象経費 | ||
施設の建築及び補修 | ①建築 | ₋設計・監理費 ₋建築時に必要とされる付帯設備費 |
②補修 | ₋設計・監理費 | |
事業経費 | ①公益・社会福祉の増進 |
₋旅費 ₋物件費(物品購入費) ₋事業費(委員手当、謝金、研究員手当、車両借上料、機材・備品借上料、製作備品費、原稿料、翻訳料等) |
②新世紀未来創造プロジェクト | 一部を除き、「①公益・社会福祉の増進」に準じます。また、以下のものも対象です。 ₋事業費(消耗什器備品費、保険料) |
|
③児童 | 一部を除き、「①公益・社会福祉の増進」に準じます。また、以下のものも対象です。 ₋事業費(消耗什器備品費、会場費) |
|
検診車等の整備 | ₋検診車 ₋診療車 |
|
福祉車両・就労支援車両等の整備 | ①対象となる車両 | ₋「普通自動車」に分類される新車車両が対象。 ₋法定の社会福祉施設を有する法人に限り、社会福祉施設利用者の無償の輸送のために使用する移送車両も対象。 ₋移送車は燃料車と HV 車のどちらかを選択。 ₋就労支援車両は障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型・B型、就労移行支援施設の利用者が使用する移動販売車両を対象。 |
②対象となる経費 | ₋消費税を含む、車両本体価格 ₋特別装備、盗難防止装置及びJKA指定の補助標識の表示に係わる経費 ₋新型コロナウイルス等感染症への対策経費 |
就労支援機器の整備 | ①対象となる機器 | ₋法人の所有する施設の利用者が、障がいの種類に応じて就労支援に必要な機器 (事業費総額が100万円以上1,500万円以下のもの) |
②対象となる経費 | ₋機器および建屋内設置場所までの搬送・据付、現地試運転調整等に関わる費用 |
なお、復興支援と研究補助、年度内要望の対象経費は以下のとおりです。
【復興支援】
・旅費
・物件費(建築費、物品購入費)
・事業費(専門業務謝金、事務局スタッフ人件費、臨時傭役費、借上料、運送料、印刷費、保険料、消耗什器、備品費、委託事業費)
【研究補助】
・旅費
・物件費(物品購入費)
・事業費(謝金、印刷費、委託事業費、その他(諸経費))
【年度内要望】
「施設の建築及び補修」から「復興支援」に準ずる。
補助事業の手続き
補助の内容を確認したら、次は手続きについて見ていきましょう。流れや締め切りをまとめました。
手続きの流れ
申請手続きの流れは以下のとおりです (太字が事業者の手続きです)。
①事業計画の作成
②要望申請
③審査・採否決定
④採否通知
⑤受諾手続き
⑥事業の実施
⑦実施内容の公表
⑧補助金の申請
⑨補助金の支払い
⑩自己評価(1回目)
⑪完了報告書の提出
⑫補助金確定調査
⑬補助金の確定
⑭自己評価(2回目)
なお採択された事業者には、補助事業事務手続説明会にて交付決定通知が交付されます (出席は必須です)。説明会は2023年4月に実施される予定です。
申請方法
「競輪とオートレースの補助事業」申請には、事前にホームページから事業者登録が必要です。そのうえでインターネットから申請し、別途書類を郵送してください。
申請期間
申請期間は以下のとおりです。
【機械振興補助事業・公益事業振興補助事業】
受付期間…2022年7月1日(金)10時~9月22日(木)15時
事業者登録…9月21日(水)15時まで
別途、10月3日(月)までに申請書類の郵送提出が必要です (17時必着)。
【公設工業試験研究所等・研究補助】
受付期間…2022年10月12日(水)10時~11月17日(木)15時
事業者登録…2022年11月16日(水)15時まで
別途、11月24日(木)までに申請書類の郵送提出が必要です(17時必着)。
【年度内要望】
詳細はHPよりお問い合わせください。
必要書類
申請に必要な書類は、以下の表を参照してください。
出典:公益事業振興補助事業の交付要望書作成の手引き
すべての場合で提出が必要な書類は、以下のとおりです。
①要望書類
・交付要望書
・事前計画/自己評価書
・事業者の概要 (1・2)
②関連書類
・補助事業の概要(事業の実施予定表)
③添付書類
・反社会的勢力でないことの誓約書
公益事業振興補助事業活用のメリット
社会的弱者への支援や復興への取組みは利益が得られにくく、ボランティアや企業の善意に依存しがちであるという問題を抱えています。また、教育や学術文化など、経済的な利益に還元しづらい分野に予算を振るのが難しいケースも多くあることも推測されます。
公益事業振興補助事業ではこれらの取組みのほか、ボランティアバスの運行など、収益を得られない事業にも補助を得ることができます。支援を必要としている人や未来に貢献する事業こそ、公益事業振興補助事業を活用してその資金を補填することで大きなメリットを受けられるのです。
まとめ
競輪とオートレースの補助事業は、事業で得た利益を社会に還元する取組みです。福祉や文化を担う事業は、単体では経済的利益を得られにくい場合があります。しかし、社会への貢献する事業は、健全な社会にはなくてはならないものです。公益事業振興補助事業は、そうした社会を支える事業に取組む団体に活用してほしい補助事業です。