2011年以降順調に増加していた訪日外国人数は新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に減少し、去年一年間での訪日外国人数は「年間4000万人」という当初の予測も空しい僅か411万人5900人という低水準で決着しました。
東京2020大会での不足を回避するため急速に供給を増加させていた宿泊施設等は、ここにきて一気に供給過多に陥り、観光需要の喚起のためにコロナ禍で立ち上げられた「Go To トラベル」についても、再三の中止や延期の影響によって、多くの方は既に興味すら失ってしまっているというのが現状です。※GoToトラベルは現在も全国停止中。
こうした状況の中、政府はインバウンド需要の回復も見込めず、GoToトラベルによる需要喚起も期待できない地域の宿泊事業者へ新たな支援を行うため、感染状況が落ち着いているステージ2相当以下と判断した都道府県が行う県内旅行の割引事業を財政的に支援する、「地域観光事業支援」の実施を決定しました。
この事業は、GoToトラベル事業が再開するまでの間、ステージ2相当以下と判断した都道府県が、同一県内での旅行に対し割引支援を実施する場合、一人一泊当たり5000円を上限として、国から当該都道府県に対し補助金を交付するというものです。
また、旅行への割引支援と併せてクーポン等で土産物屋、飲食店、公共交通機関などの地域の幅広い産業に裨益する支援を実施する場合には、旅行者一人一泊当たり2000円を上限に追加の補助を行います。
そこで、今回はこの「地域観光事業支援事業」の概要と、各都道府県がこの事業を利用してどのようなキャンペーンを実施しているかについて紹介します。
この記事の目次
地域観光事業支援事業
新型コロナウイルス感染症の影響で長らく再開が見送られている「GoToトラベル」に代わり実施されているもので、同一地域(都道府県)内での旅行を対象に割引などを行う各都道府県に対し、国がその負担を補助するというものです。
都道府県を跨いでの感染拡大を抑えつつ、観光需要の喚起を図ることによって、地域の宿泊事業者の経営回復を図ることを主な目的としています。
対象となる自治体
事業への参加を希望する都道府県のうち、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染状況が「ステージ2以下」と判断された都道府県が対象です。
支援内容
①都道府県に対し、国が一泊/1人当たり5千円、商品代金の50%を上限に支援。※日帰りは一泊と補助
②地域限定で旅行期間中に使用可能なクーポン券など、地域の土産物店、飲食店、公共交通機関などの地域の幅広い産業に裨益する支援策を併せて実施する場合は、一泊/1人当たり2千円を上限に追加支援。
※日帰りは一泊と同額補助
対象期間
原則5月31日まで※GoToキャンペーンが再開した場合には中止となります。
各都道府県の実施状況
この事業では国からの支援を受けてどのような制度設計を行うかは全て都道府県が独自に決定する仕組みとなっているため、割引の方法や追加で発行されるクーポンの有無、制度を利用するための方法などは、それぞれ各自治体によって異なっています。
また、参加を希望する都道府県は多いもののステージ3以上に該当する地域は事業を行うことが出来ないこともあり、現在実施が確認できるのは下記の6県のみとなっています。※和歌山県は間もなくスタート予定
秋田県
県内での宿泊や日帰り旅行の際に一人泊あたり最大5000円(補助率1/2)までの補助が受けられるキャンペーンを展開、利用者が直接補助対象となるため、利用する旅行業者や宿泊施設などに制限がないのが特徴です。
【補助内容】
・県内日帰り旅行、宿泊が対象
・一人泊あたり5000円を上限に旅行代金の50%割引き
・さらに利用一回あたり2000円分までの割引クーポン発行※50%OFF
「旅して応援!」あきた県民割キャンペーン
https://aki-wari.com/
山梨県
山梨県では県内の宿泊施設を利用する県民を対象に「やまなしグリーン・ゾーン宿泊割り」というキャンペーンを実施しています。
補助対象は旅行業者、宿泊事業者となるため、キャンペーンを利用するためには対応する事業者を通して予約を行う必要があります。
【補助内容】
・県内宿泊が対象
・一人泊あたり5000円以上で2500円割引
・一人泊あたり10000円以上で5000円割引
・さらに、一人一泊あたり一律2000円の地域限定クーポン券を付与
やまなしグリーン・ゾーン宿泊割りHP
https://yamanashi-syukuhakuwari.com/
福井県
これまで実施されていた「ふくいdeお得キャンペーン」の期間を再延長し、5月31日まで行うことを発表。県内宿泊施設に宿泊する県民を対象に一人泊あたり最大5000円(補助率1/2)の補助を行います。
またこのキャンペーンでは宿泊施設の利用する時期により土産品ふく袋や、3000円分のクーポン券の発行なども予定されています。
補助対象は旅行業者、宿泊事業者となるため、キャンペーンを利用するためには対応する事業者を通して予約を行う必要があります。
専用サイトなどはないため、利用する際は県内の宿泊事業者、旅行業者等に直接確認が必要です。
【補助内容】
・県内宿泊が対象
・一人泊5000円を上限に旅行代金の50%を割引き
・利用する時期に応じた追加の特典(土産品ふく袋またはクーポン3000円分)あり
鳥取県&島根県
鳥取県と島根県は合同で「WeLove山陰キャンペーン」という事業を実施しています。
「WeLove山陰キャンペーン」は、鳥取・島根の両県民が、同一県内の旅行で対象となる約470軒の宿泊施設を利用する際に、一人泊あたり最大5,000円(補助率1/2)の補助が受けられるというものです。
また、旅行代金が5000円以上の場合には1000円分のクーポン、10000円以上の場合には2000円分のクーポンが配布されています。
【補助内容】
・日帰り旅行、宿泊が対象
・一人泊5000円を上限に旅行代金の50%を割引き
・さらに、旅行代金5000円以上で1000円分、10000円以上で2000円分のクーポンを付与
鳥取・島根県民限定WeLove山陰キャンペーン
https://www.pref.tottori.lg.jp/294744.htm
大分県
大分県では「新しいおおいた旅割」というキャンペーンを実施し、宿泊旅行の場合は一人泊あたり最大5000円(補助率1/2)、日帰りの場合には最大2500円(補助率1/2)の補助を行います。
利用する際はキャンペーンに参加している宿泊施設にネット経由で予約をするか、インターネット専門旅行代理店を通して対象施設の予約を行う必要があります。※電話予約は対象外となります。
【補助内容】
・日帰り旅行、宿泊が対象
・一人泊5000円を上限に旅行代金の50%を割引き
・日帰りの場合は2500円を上限に旅行代金の50%を割引
・さらに、旅行代金5000円以上で1000円分、10000円以上で2000円分のクーポンを付与
新しいおおいた旅割HP
https://goto-travel-oita.com/
まとめ
今回は各都道府県が政府の「地域観光事業支援事業」による支援を受けて実施している県内旅行への補助事業について紹介しました。
GoToトラベルの中止を受けて実施されている支援事業であるため、各都道府県ともに制度の大まかな内容や利用方法などはこれまでのGoToトラベルを踏襲したものとなっているケースが多い印象です。
県内の旅行のみが対象ということで使いづらさを感じてしまう部分もありますが、予算は全体で3000億円と大きく、ゴールデンウィークでの需要喚起には一定の効果が見込めるのではないでしょうか。
対象地域にお住いの方は是非この機会にお得な県内観光をご検討ください。