今回は、DR(デマンドリスポンス)(※)に対応可能な蓄電システムを導入しようとする法人・個人・個人事業主に対し、その蓄電システムを導入するのに必要な費用の一部を補助する「家庭・業務産業用蓄電システム導入支援事業」をご紹介します。
本事業では家庭用の蓄電システムと業務産業用蓄電システムのいずれかの導入を補助します。今回の記事では、住宅などに設置する蓄電池である家庭用蓄電システムの導入について解説します。
家庭用蓄電システムの場合、申請者と蓄電池の売買契約を締結する事業者(販売事業者)が申請代行者となります。 販売事業者は、蓄電池の選定から設置、そして補助金申請までをサポートしてくれるため、一般家庭は専門知識がなくても安心して導入を進めることができます。補助金を使った蓄電池導入にご興味のある方は、ぜひこの記事を参考にして、ご自身の家庭に合った蓄電池システムを選んでみてください。
電力需給に合わせて電気の使い方を調整する方法。電気代が安い時間に蓄電池に充電し、電気代が高い時間にその電気を使うことで、電気代を節約できる仕組み。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
なぜ家庭用蓄電システムに注目するのか?
業務産業用蓄電システムは、大規模な施設や工場などに設置される大容量の蓄電池システムです。一方、家庭用蓄電システムは、一般家庭などで利用できるよう、コンパクトで扱いやすい設計となっています。本記事では、近年、家庭において電気代削減や非常用電源確保の意識が高まっていることをふまえ、家庭用蓄電システムに焦点を当てて解説します。
蓄電池導入がすすめられる背景とは
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギーの導入が加速していますが、太陽光発電など天候に左右される再生可能エネルギーの出力は変動するため、蓄電池による安定的な電力供給が求められています。
また、電気料金の高騰が続く中、蓄電池を活用することで、電力料金の安い時間帯に電気を蓄え、高くなる時間帯に使用するなど、電気料金の節約も期待できます。
さらに、災害時や停電時にも蓄電池があれば非常用電源として活用でき、安心を確保することができます。こうした理由から、環境保護、コスト削減、エネルギーの安定供給という観点で、蓄電池の導入が重要とされているのです。
家庭・業務産業用蓄電システム導入支援事業のポイントと注意点
本事業は、導入する蓄電システムをDRに活用可能とするために、以下の2つのパターンのどちらかで申請をする必要があります。申請者および申請代行者は、自身がどちらの型で事業に参加をするのか事前に検討してください。
【アグリ型】
蓄電池アグリゲーター(本事業を通じて導入される蓄電システムを活用し、電力需給ひっ迫時や再エネ出力制御にあわせて需要家が所有している蓄電池に対してDRを行う事業者)とDR契約を行い、蓄電池アグリゲーターが、蓄電システムの遠隔制御や制御指示等を行うパターン。
【小売型】
小売電気事業者が提供するDRメニューに加入し、電力需給をコントロールするパターン。
補助対象事業と対象事業者
日本国内で、DRに活用可能なリソースとして、蓄電システムを新規で導入する事業が補助対象事業です。補助対象者は以下の要件を全て満たす者とします。
補助対象者の要件 |
日本国内で事業をしている法人、個人事業主、または国内在住の個人であること |
補助対象設備の所有者であること(リースの場合は、リース会社と共同申請) |
事業を継続できる経営基盤を持っていること(個人を除く) |
蓄電池アグリゲーターとDR契約を結ぶか、小売電気事業者が提供するDRメニューに事前に加入している者であること |
申請手続きを代行者を通じて行うことに同意できること |
個人申請者は、自分のメールアドレスを持ち、本人確認に同意できること |
DR実施状況や設備の使用状況について報告に応じられること |
経済産業省から補助金等停止措置又は指名停止措置が講じられていない者であること |
【補助事業期間】
開始日:補助事業の開始日は補助金交付が決定された日以降になります。交付決定前の費用は対象外です。
完了日:補助事業の完了日は、下記4つを全て完了させた日です。
①補助対象設備に係るDR契約の締結完了(アグリ型のみ)
②補助対象設備の試運転完了(家庭用は通電確認)
③補助対象設備の検収の完了
④補助対象経費の全額支払い完了
(最終期限は2025年1月15日)
補助対象設備と補助対象経費
ここでは、家庭用蓄電システムの要件を紹介します。
家庭用蓄電システムの要件 |
本事業の実施のために新規で導入される蓄電システムであること |
SIIに事前登録された機器であること |
法令に準拠した設備であること |
DRに対応可能な設備であること |
住宅や店舗、事務所などに設置されること |
蓄電システム購入価格と工事費の合計が目標価格以下であること※2023年度は(設備費+工事費・据付費、税抜)14.1万円/kWh(蓄電容量) |
採用予定の蓄電システムのBMSメーカーなどが過去5年の実績で国際基準に違反していないこと |
家庭用蓄電システムに関する対象経費は以下のとおりです。
設備費 | SIIに登録されているパッケージ型番の範囲の設備費 |
工事費 | 家庭用蓄電システムを設置するのに必要最低限の工事費・据付費 |
【注意点】
- 事業計画の変更でDR対応不可の機器になった場合、その費用は対象外。
- 金融機関の振込手数料は対象外。ただし、振込手数料を取引先が負担しており、取引価格の内数になっている場合は補助対象に含められる。
- 国庫を財源としている補助金との併用は不可。ただし、補助対象設備が異なる場合や各地方公共団体の助成金等であれば併用は可能。
- その他、SIIが対象経費として認められないと判断した経費は補助対象外。
補助率・補助上限額
補助率および補助上限額は、以下のとおりです。
対象設備 | 補助金基準額(1台あたり) | 費用区分 | 補助率 | 補助金上限額(1申請あたり) |
家庭用蓄電システム | 3.7万円/kWh 初期実効容量 | 設備費、工事費 | 1/3以内 | 60万円 |
【蓄電システム評価による補助増額】
以下の項目における評価基準を満たす蓄電システムについては、補助金基準額に下記kWh単価が上乗せされます。複数項目の評価基準を満たす場合は、上乗せ分の重複が可能です。
項目 | 評価基準 | 家庭用増額 |
---|---|---|
ラベル | JIS C 4414規格に準拠し、ラベル表示があること(カタログやHPでも可) | 0.2万円/kWh 初期実効容量 |
類焼性 | 「蓄電池の類焼性について」の推奨項目を満たしている | 0.6万円/kWh 初期実効容量 |
レジリエンス | 故障や災害時の早期復旧体制や代替部品供給拠点が整っている | 0.1万円/kWh 初期実効容量 |
廃棄物処理法上の広域認定の取得 | 製造・加工・販売者が、蓄電池関連製品で廃棄物処理法上の広域認定を取得している | 0.1万円/kWh 初期実効容量 |
公募期間
2024年3月14日(木)~ 2024年12月6日(金)
補助金申請の合計額が予算に達した場合、申請受付期間中でも受付終了になります。予算の状況はSIIのホームページで確認できます。
申請から補助金受領までの流れ
補助金申請
まず、本人確認情報の登録をして、補助金の申請を行います。申請内容が審査基準を満たしていると判断された場合、補助金の交付が決定されます。
蓄電池の導入
補助金の交付決定後、蓄電池の発注、設置工事を行います。設備の通電確認、検収、支払い等を済ませて、事業の完了となります。
実績報告
事業完了後30日以内または実績報告提出最終期限(2025年1月15日(水))のいずれか早い日までに実績報告書をSIIに提出します。
補助金の請求と支払
実績報告書の審査が完了し、補助金の額が確定してから、補助金の請求手続きを行います。手続きが完了すると、指定口座に補助金が振り込まれます。
よくある質問
Q, 蓄電池アグリゲーターや小売電気事業者、DRメニュー、申請代行者はどこで確認できますか?
A, これらの情報はすべてSIIのホームページで確認できます。以下のリンクをご参照ください。
・蓄電池アグリゲーター一覧
・小売電気事業者一覧
・DRメニュー一覧
・申請代行者(販売事業者)検索
Q, 申請してから交付決定までの期間はどれくらいですか?
A, 申請内容に不備がないことが前提となりますが、家庭用蓄電システムの申請の場合、概ね2~4週間程度です。
Q, 家庭用の場合は、どのような蓄電システムが対象になりますか?
A, 蓄電システム製品一覧で確認できます。この一覧には、蓄電池アグリゲーター、小売電気事業者が自社のDRに活用可能な蓄電システムをSIIに申請し、認められたものが掲載されています。蓄電池アグリゲーター、小売電気事業者ごとに対象となる蓄電システムは異なります。
まとめ
今回は、家庭用蓄電池導入を最大60万円補助する「家庭・業務産業用蓄電システム導入支援事業」を紹介しました。
蓄電池の導入は、環境にも家計にも優しい選択肢です。また、災害時の備えとして、停電時にも蓄電池があれば、電力を供給することができます。今回紹介した補助金制度を活用して、家庭用蓄電池の導入をご検討ください。