地震や台風などの自然災害は、いつ起こるかわかりません。直接的な被害のほかにも、停電や断水が長引くと人々の生活に大きく影響します。
こうした災害時の影響を最小限に食い止める備えを促進するため、令和4年度 災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金の二次公募が始まっています。この記事では、本事業の「災害時にも対応可能な天然ガス利用設備」についてまとめています。
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この記事の目次
災害時の備えに天然ガスを利用するメリット
経済産業省によると、世界的に見て、日本は停電の少ない国です。一方で、地震や台風などの自然災害に見舞われやすい国でもあります。諸外国と比べ、特に災害時の停電に対する備えが求められる国だともいえるでしょう。
出典・参考:産業エネルギー庁 あらためて学ぶ、「停電」の時にすべきこと・すべきでないこと
停電時に使えなくなるのは、電気製品だけではありません。停電によって浄水場のポンプなどが動かなくなると、生活用水が家庭まで届かなくなります。また、信号機が動かなくなれば交通機関も麻痺します。
そんなときでも使用できるエネルギーのひとつが、ガスです。なかでも環境にやさしいエネルギーとしても注目されている天然ガス設備を災害時の備えとして導入することは、人と地球の両方にとってメリットの大きい事業です。
災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金とは
近年多発する自然災害時には、停電による社会活動や市民生活への影響が問題視されています。災害時にも対応可能な停電対策として、天然ガス利用設備の導入等を支援するのが、災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金です。
まずはその概要や補助率などを見ていきましょう。
対象事業者
リース・エネルギーサービス等を含む全業種が補助の対象です。ただし、家庭用需要は除きます。
対象事業
補助の対象となる施設・設備・事業は以下のとおりです。
【補助対象施設】
◆災害時に避難所として活用される、国や地方公共団体の防災計画指定の施設
・福祉避難所を含む指定避難所
◆災害時に活動拠点等として活用される、国や地方公共団体の防災上中核となる施設
・地方公共団体施設
◆災害時に避難所として活用される、国や地方公共団体と協定を締結している(見込み含む)施設
・協定による避難所
・協定による避難場所への避難者にサービスを提供する施設
・帰宅困難者受入施設
【補助対象設備】
◆系統電力の停電時に、発電または空調を開始・継続できる設備
・空調設備、照明設備、換気設備等
【対象事業】
災害時の電力供給停止にも対応可能な停電対応型CGSおよび停電対応型GHPに対して常用の設備を設置し、費用対効果に優れているものが補助の対象です。要件は以下のとおりです。
1.天然ガスを主原料とするガスを燃料とした設備を導入・使用する
2.以下のいずれかのガス供給を受けること
①中圧導管による供給
※中圧…特にガス消費量が多い施設などを対象に、製造基地から送り出されたガスを中圧にて供給すること
②耐震性を向上させた低圧導管等による供給
※低圧…一般施設向けに、製造基地から送り出されたガスを低圧にて供給すること
参考:東京ガス 災害に強い設備づくりのために
3.系統電力の停電時に、発電または空調を開始・継続できる設備
4.導入後の対象設備に、運転状況を確認するために必要な専用の計測装置を取り付ける
5.災害時に地域住民に空間・情報等の提供を行うことが可能な施設に設置され、災害時の役割に寄与しているもの
ただし、以下のものは除く
①年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物
②「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金」を活用し、石油ガスを除く石油製品・タンク等を導入した施設
【補助対象設備の燃料】
導入した設備で使用する燃料は、次のいずれかであることが必要です。
・天然ガス
・液化天然ガス
・天然ガスまたは液化天然ガスを主原料するガス
対象経費
【設計費】
・設計費(補助対象設備導入の設計に要する経費)
【工事費】
・既存設備撤去費(補助事業の実施に必要な解体、運搬等に要する経費)※停電対応型の設備から更新の場合は対象外
・新規設備設置工事費(補助対象設備の設置に要する経費)
・敷地内ガス管敷設費(補助事業の実施に必要な敷地内ガス管の敷設に要する経費)
【機器費】
・新規設備機器費(補助事業の実施に必要な補助対象設備機器の購入に要する経費)
補助率・上限額
補助率と上限額は、エリアや対象設備によって異なります。
【補助率】
①地震対象エリア・大都市等のうち、中圧ガス導管でガスの供給を受けている施設…1/2以内
②上記以外の中圧ガス導管または低圧ガス導管でガスの供給を受けている施設…1/3以内
【補助上限】
①地震対象エリア・大都市等
停電対応型CGS…3億6,000万円(中圧ガス導管)・6,000万円(低圧ガス導管)
停電対応型GHP…1億円(中圧ガス導管)・6,600万円(低圧ガス導管)
②上記以外
停電対応型CGS…2億4,000万円(中圧ガス導管)・6,000万円(低圧ガス導管)
停電対応型GHP…6,600万円(中圧ガス導管)・6,600万円(低圧ガス導管)
※CGS…「ガスコージェネレーションシステム」。都市ガスを燃料として発電し、その際に発生する熱を冷房・暖房・給湯・蒸気などに利用するシステム
参考:東京ガス ガスコージェネレーションシステム
※GHP…「ガスエンジン・ヒートポンプ・エアコン」。室外機のコンプレッサーをガスエンジンで駆動し、ヒートポンプによって冷暖房を行う空調システム
参考:東京ガス GHP(ガスヒーポン)
申請方法
申請は原則、補助金申請システム jGrantsにより行ってください。
公募期間
二次公募令和4年7月15日(金)から令和4年8月25日(木)
申請の流れ
申請の流れは、以下のとおりです (太字部分が申請者の手続きです)。
・交付申請
・個別ヒアリングおよび審査
・交付決定通知
・事業開始
・中間報告
・事業完了
・実績報告
・確定検査
・支払確定通知
・精算払請求
・補助金受理
・燃料使用量等提出
必要書類
申請時に提出が必要な書類は以下のとおりです。
①交付申請書
②実施計画書
③発注計画書
④補助事業方式の設備に関する仕様
⑤補助事業の設備に関する図面等
⑥見積依頼書、見積書の写し
⑦会社情報
⑧避難所として協定している施設等であることを証明できる書類
⑨中圧導管、または耐震性を向上させた低圧導管等でガス供給を受けていることを示す書類
⑩その他に提出が必要な書類
なお、事業完了後には燃料使用量等データ報告が必要です。
災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金活用のメリット
災害時のスムーズな復興は、企業だけでなく、市民にとっても大きな課題です。停電で自宅や避難所の設備が使用できず、体調を崩す人も多くいます。インフラが安定することは、一刻も早い復興にとって重要なポイントとなるのです。
災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金は、平時から災害に備えるための設備導入を支援する制度です。地域住民にとっても財産となる設備導入に取り組むことは、地域とのつながりの強化にも貢献します。
まとめ
環境問題と災害への備え、企業としての成長を同時に目指すのは大変なことです。また、地域と連携した継続的な災害対策のためには、予算的な負担を減らす工夫も必要です。
災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金は、環境問題にも配慮した災害対策を目指す企業と地域を支援します。地域とともに成長し、持続可能な社会について考える企業に活用してほしい補助金です。
参考:災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金[災害時にも対応可能な天然ガス利用設備]
(令和4年度)