育児休業を取得する際、収入の減少に悩む人も多いはず。「育休手当」(育児休業給付金)は、そんな、働けない時期の収入を支える大切な制度です。
2025年4月から、育休手当の拡充が行われます。今回の制度変更では、休業前賃金の実質10割が支給となることも注目されました。
本記事では、育休手当の支給条件や支給日、さらに計算方法や計算ツールの使い方についてまとめました。
この記事の目次
育休手当(育児休業給付金)とは?支給条件と支給日について
いわゆる「育休手当」とは、「育児休業給付金」のことです。原則として1歳未満の子を養育するための育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすと支給を受けられます。休業は2回まで分割して取得が可能です。
なお出生後8週間の期間内に、合計4週間分(28日)を限度として産後パパ育休を取得した場合、要件を満たすと「出生時育児休業給付金」の支給を受けることができます。これら2つの制度をあわせて「育児休業給付」と呼んでいます。
出典:厚生労働省 育児休業給付の内容と支給申請手続
育休手当の支給条件
育休手当の対象となるのは、主に以下の要件を満たした場合です。
■1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得したこと |
■被保険者の申出に基づき、事業主が取得を認めた育児休業であること |
なお、産後休業(出生日の翌日から8週間)は育児休業給付金の対象外です。また、労働時間等に関しては、以下の要件を満たす必要があります。
■休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(または賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)月が、12か月以上あること |
■一支給単位期間中の就業日数が10日以下、80時間以下であること |
■養育する子が1歳6か月に達する日までの間に、労働契約期間満了しないこと |
要件を満たしていれば、パートなど、正社員でない場合も支給の対象となります。
育休手当の対象とならないケース
育休手当の対象となるのは、2回の育児休業(分割)までです。育児休業を複数に取得した場合、3回以降の育児休業では、原則給付金を受けられません。
出典:育児休業給付の内容と支給申請手続
3回目以降の育児休業は、原則給付金を受けられませんが、以下の事由に該当する場合は、この回数制限から除外となります。
■別の子の産前産後休業、育児休業、別の家族の介護休業が始まったことで育児休業が終了したが、その対象となった家族の死亡等で新たな休業が終了した場合 |
■対象の子の養育を行う配偶者が、死亡・負傷、婚姻の解消等でその子と同居しないこととなった場合 |
■対象の子が、負傷、疾病等で2週間以上の世話を必要とする状態になった場合 |
■保育所等での保育利用を希望し、申込みを行っているが、当面それが実施されない場合 |
また、育児休業の延長事由があり、かつ、夫婦交替で育児休業を取得する場合(延長交替)や夫婦同時に育児休業を取得する場合などに該当する場合、1歳~1歳6か月と1歳6か月~2歳の各期間中、夫婦それぞれ1回に限り育児休業給付金の対象となります。
振込のタイミングは?
育休手当は、原則として2か月分がまとめて支給される仕組みです。初回の支給は、育児休業が始まってから約3か月後が目安です。支給が決まると、ハローワークから支給決定通知書が送られ、その後1週間程度で指定した口座に振り込まれます。
育休手当10割はいつから?
2025年4月から、出生後休業支援給付が創設されます。これは要件を満たすと、育児手当に休業前賃金の13%分が上乗せされる制度です。給付率は総計で、現行の67%から80%へと引き上げられます。
出典:子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律が公布され、雇用保険制度が変わります
給付は非課税・育児休業中は社会保険料が免除されるため、80%へ引き上げられると、実質休業前の賃金の10割相当の給付となる計算です。80%引き上げが適用される要件は、以下のとおりです。
■男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に育児休業を取得すること |
■被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得すること |
ただし配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得は求められません。
なお、対象となるのは2025年4月1日以降に要件を満たした場合です。
育休手当の計算方法と計算ツールの使い方
育児手当は、休業前の賃金日額と支給日数から計算します。厚生労働省では育児手当の支給金額を計算するツールも公表されています。
育休手当の計算方法と、計算ツールの使い方を見ていきましょう。
支給額の計算方法
支給額の計算式は、以下のとおりです。
休業開始時賃金日額×支給日数×67%
なお、育児休業開始から181日目以降は、給付率が50%となります。出生時育児休業給付金が支給された日数は通算して数えてください。
また、支給金額と上限額(2025年7月31日まで)は以下のとおりです。
2,869円~15,690円
・支給日数が30日(給付率67%)の場合には、支給は57,666円~315,369円となります。
ただし、支給下限額は育児休業期間に賃金が支払われなかった場合の額です。育児休業中に支払われた賃金額によっては、この額を下回ることがあります。
月の給与が30万円の場合のモデル例は、以下のとおりです。
出典:育児休業給付等について
支給金額は約19万円となります。これは、休業前賃金の8割程度に相当する額です。
厚生労働省の計算ツール
厚生労働省が公表している計算ツールでは、出産予定日などを打ち込むだけで、受け取れる交付金や金額がわかるようになっています。
出典:働く女性の心と体の応援サイト
2025年12月1日に出産予定で、休業前賃金が額面30万円(交通費含む)だった場合、ツールでの計算結果は以下のようになります。
産休・育休を取得した場合の給付額(概算) |
■出産育児一時金(概算)50万円 |
■出産手当金(概算)65万3,333円 |
■育児休業給付金(概算)182万6,000円 |
ツールを使うと「産前休業期間」や「産後休業期間」、「育児休業期間」「育児休業の申出期間」も確認できます。
育休手当の申請方法
育児休業給付金の支給を受けるためには、被保険者を雇用している事業主が、受給資格確認手続を行う必要があります。
事業者は、以下の書類をハローワークに提出してください。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 育児休業を開始・終了した日、賃金の額と支払状況を証明できるもの
- 育児の事実、出産予定日及び出生日を確認することができるもの
なお、受給資格の確認の申請と初回の育児休業給付金の支給申請を同時に行うことも可能です。
まとめ
育休手当は、1歳未満の子を養育するための育児休業を取得した際に受けられる給付金制度です。給付金の支給は2か月ごとで、休業前賃金を基準に計算されます。
申請は、事業主を通じてハローワークに行います。支給金は支給決定から約1週間で指定の口座に振り込まれる仕組みです。
子育て世代が安心して働ける環境を整えることは、社会全体にとっても大きな利益をもたらします。制度を上手に活用し、若者と子どもの未来を支えていきましょう。