東京商工会議所は、2020年10月に23区内の中小企業を対象にITの活用状況についての調査(※IT活用実態調査)を実施し、そこで得られた1259件の回答をもとにまとめた報告書を2021年の2月25日にHP上で公開しました。
これによると、中小企業の現在のIT活用状況は、経産省の「攻めのIT活用指針※下記参照」を基準として、レベル1が22.7%、レベル2が22.6%、レベル3が44.2%、レベル4が6.1%、無回答が4.3%という結果となっており、業務全般にITを活用している都内中小企業は現在もおよそ半数(レベル3+レベル4=50.3%)にとどまることが分かっています。
【経産省「攻めのIT活用指針」に基づくIT活用状況の基準】
レベル1「口頭連絡、電話、帳簿での業務が多い(IT導入前)」
レベル2「紙や口頭でのやり取りをITに置き換えている(置き換え段階)」
レベル3「ITを活用して社内業務を効率化している(効率化段階)」
レベル4「ITを差別化や競争力強化に積極的に活用している(発展的なIT活用)」
また、OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、日本の労働生産性は過去50年にわたり先進7ヵ国中最下位(OECD加盟国37ヵ国中21位)を独走している状況で、グローバル化によって外資系企業の国内参入も加速するなか、日系企業にとってはIT化による生産性の向上はまさに喫緊の課題ともいえる状況です。
そこで、今回は中小企業のIT導入に活用できる定番の補助金制度IT導入補助金(2021)について、現在判明している情報について紹介したいと思います。
この記事の目次
IT導入補助金2021の概要
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入)等に対応するため、生産性の向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入する場合に事業費等の経費の一部を補助する経産省(中小企業庁)の補助金制度です。
補助上限額や補助率はITツールがもつ機能(業務プロセス)やその数によって決定する仕組みで、本年度は通常枠のA・B類型と、低感染リスク型ビジネス枠C・D類型の計4種類の類型で実施される予定です。
【業務プロセスとは?】
ITツールがもつ機能のことでIT導入補助金では下記のような分類が設けられています。
1.顧客対応・販売支援
2.決済・債権債務
3.調達・供給・在庫・物流
4.会計・財務・経営
5.総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス
6..業種固有プロセス
7.汎用・自動化分析ツール
※7の機能のみ保有しているITツールだけでの申請は不可、その場合は1~6のいずれかの機能を有するITツールと抱き合わせて申請することによって交付申請が可能
通常枠【A・B類型】
どちらも生産性の向上に資するITツールの導入が補助対象ですが、補助額の上限が大きいB類型の申請では必要な業務プロセス数の要件がA類型よりも多く、下記の賃上げ要件も満たす必要があります。
【賃上げ要件】
①事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加(被用者保険の適用拡大の対象となる企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
②事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする・上記内容を交付申請前に従業員に表明する
補助率・補助額
【A類型】
業務プロセス1以上必要
補助額:30~150万円未満
補助率:1/2以内
【B類型】
業務プロセス4以上必要
補助額:150~450万円以下
補助率:1/2以内
低感染リスク型ビジネス枠【C・D類型】
新型コロナ対応の特別枠で、C類型は「複数のプロセス間で情報連携しプロセスの非対面化や業務の更なる効率化を可能とするITツール」であること、D類型は「テレワーク環境の整備に資するクラウド環境に対応し、複数プロセスの非対面化を可能とするITツールである事」がそれぞれ申請要件となっています。※C-2類型の申請についてはB類型同様「賃上げ要件」も満たす必要があります。
通常枠よりも補助内容が優遇されており、事務局に登録されたITツールに加え、導入するITツールを利用するうえで必要不可欠なハードウェア(パソコンやスマートフォン、ディスプレイ、プリンター等)のレンタル費用も特別枠では補助対象となるのが大きなポイントです。
補助率・補助額
【C-1類型】
業務プロセス2以上必要
補助額:30~300万円未満
補助率:2/3以内
【C-2類型】
業務プロセス2以上必要
補助額:300~450万円以下
補助率:2/3以内
【D類型】
業務プロセス2以上必要
補助額:30~150万円以下
補助率:2/3以内
主な申請要件(A~D類型共通)
・労働生産性計画数値は1年目3%以上、3年目9%以上で策定。
・労働生産性計画数値、給与支給総額、事業所内最低賃金の報告必須。
・事前にgBizIDとSECURITY ACTION宣言の取得が必要。
・補助金受給後、3年間にわたって労働生産性の効果報告が必須(年1回)
・1事業主あたり、1年間につき1交付決定のみ。不採択の場合は再申請可能。
・事業実施は「①契約・申し込み」「②納品」「③支払い」の手続きの一連の流れ。
※「①契約・申し込み」が一番最初に行われていれば②、③の順番は問わない。
・昨年のC類型では認められていた訴求申請は今回からNG
・必ず交付決定後に事業実施を行うこと。 など
登録ITツールについて
ITツールの登録は3月下旬ごろから始まる予定のため、具体的な対象製品が発表されるのはそれ以降となりますが、ITツールの登録要件には前年から大きな変更がないようなので、本年度も下記のような様々なITツールが補助対象として登録されることになる見込みです。
【RPAツール】
・定型業務の自動化によって人件費を大幅に削減
【勤怠管理システム】
・勤務における出勤・退勤を打刻、集計などを行うシステム
【WEB会議システム】
・複数同時参加、画面共有等の機能を備えるコミュニケーションツール
【情報共有システム】
・業務の必要資料をデジタル化し、一元管理することが出来るシステム
【在庫管理システム】
・在庫情報や入出庫情報等を管理し、在庫情報の共有が出来るシステム
まとめ
今回は4月上旬にも公募が開始する予定のIT導入補助金2021について紹介しました。
近年は外国企業に比べ、国内企業のIT化の遅れが顕著になっており、政府はこの課題の解決に向け、IT活用による製品・サービス開発の強化や、ビジネスモデル変革によって新たな価値の創出や競争力の強化を目指す中小企業のIT投資に対して、積極的な支援を行っています。
自社のIT化に取り組む事業者の方は、IT導入補助金の活用を是非ご検討ください。