2021年10月、政府はエネルギー政策の基本的な方向性を示す「エネルギー基本計画」を策定しました。これは2050年までのカーボンニュートラルの実現と、2030年までの温室効果ガス排出削減を目指すもので、再生可能エネルギーの導入拡大を図ることなどが掲げられています。
特に太陽光発電については、国土面積あたりの設備導入容量が世界一となるなど、日本の再生エネルギーの主力であることが明言されました。政府は太陽光発電のさらなる導入拡大を目的に需要家主導による太陽光発電導入促進補助金を交付しています。
今回は需要家主導による太陽光発電導入促進補助金の概要や手続きについて、まとめました。
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この記事の目次
太陽光発電導入のメリット
日本全体の年間電力需要量に対する自然エネルギーの割合は、2020年には20.8%になりました。2019年の18.5%と比較すると、2ポイントも増加していることがわかります。特に太陽光発電は8.5%と、前年から1%以上上昇しました。
出典:特別非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所
太陽光発電は発電時に排出物が発生せず、騒音も起きないことから、ほかの発電方法と比べて導入が容易であることがメリットです。また屋根や空き地を利用しての設置が可能で、個人住宅にも設置が進められています。
ただし設置コストが高額になる場合もあり、まだまだ一般的に普及したとは言い難いのが現状です。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金の活用は、そうした予算面での問題を解決するために導入されました。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金とは
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金は、需要家が太陽光発電を導入する際に受けられる制度です。まずはその目的や対象となる事業、経費などの概要をみていきましょう。
【事業目的】
長期エネルギー需給の見通しや温室効果ガス削減目標のためには、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーのますますの活用が不可欠です。需要家主導による太陽光発電導入促進補助金は、太陽光発電設備の導入に要する経費の一部を補助し、再生可能エネルギーの自立的な導入拡大を促進することを目的としています。
【補助対象事業の要件】
補助対象となるには、次の①~⑦の要件を満たしていることが必要です。
①本補助金の交付規程等を理解・遵守して補助対象事業を実施することができるよう努めること、及び補助金の申請内容に対する虚偽または違反行為が認められた場合は氏名の公表に応じること。
②申請時、一般送配電事業者に対して、高圧及び特別高圧の補助対象設備については系統連系に係る接続検討申込・低圧の補助対象設備については系統連系申込を完了し、各回答を得ていること。
③補助対象設備が、認定を得た再生可能エネルギー発電事業計画に含まれないこと。
④令和5年2月28日までに運転開始するものとして新設される2MW 以上の設備であり、対象経費の単価が25万円/kW未満であること。
⑤需要家が8年以上にわたって、発電量の7割以上に相当する量の電気を利用すること。また、補助対象設備により発電された電気は専ら需要地に供給されるものであること。
⑥再エネ特措法に基づく「事業計画策定ガイドライン (太陽光発電)」に定める遵守事項等に準拠して事業を実施すること
⑦再生可能エネルギー発電事業を実施するにあたり、関係法令の規定を遵守すること
また、本事業における用語には以下の定義が公開されています。
【用語の定義】
・補助対象事業者
補助対象設備を所有し補助対象事業を実施する者のうち「補助事業対象者」の要件を満たし、国内において事業活動を営んでいる法人。
・小売電気事業者
電気事業法における小売電気事業者。
・需要家
再エネ電気を (小売電気事業の用でない目的で) 活用する者のうち、国・地方公共団体と関連団体、並びに集合住宅を管理する組合ではない者。
・需要地
本補助事業において、需要家が小売電気事業者から再エネ電気の供給を受ける事業所。
・補助対象設備
補助対象事業の用に供するために需要地外において新規に取得・設置され、専ら系統に接続供給する太陽光発電設備。
なお、本事業では住宅の屋根や敷地内に設置する設備、中古・リース・レンタルの設備は補助の対象になりません。
補助対象事業者
「用語の定義」では、補助対象事業者になるには別途要件があることが明記されています。その内容は、以下の①~⑪です。
① 国内において事業活動を営んでいる法人であること。
② 本事業を実施するために必要な経営基盤を有し、事業の継続性が認められる者であること。
③ 本事業により国内に設置する補助対象設備の所有者であり、その補助対象設備の処分制限期間を超えて、継続的に使用する者であること。
④ 本事業により取得した補助対象設備をJPEA が交付規程で定める取得財産等管理台帳に記載の上管理し、補助金の交付の目的に従ってその効率的運用を図る者であること。
⑤ 経済産業省から補助金等停止措置又は指名停止措置が講じられていない者であること。
⑥ 公的資金の交付先として社会通念上適切と認められない者でないこと。
⑦ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団又は暴力団員と関係がある者でないこと。
⑧ 政治団体、宗教上の組織又は団体でないこと。
⑨ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律により定める事業を実施する者でないこと。
⑩ 補助事業の終了後、JPEA 又は経済産業省の求めに応じて、発電事業の状況等について報告できる者であること。
⑪ 会計検査院による現地検査等の受検に際し、事業者として会社単位で対応することが可能な者であること。
本補助金の申請は補助対象事業者が行う必要があり、電気を供給される需要家及び小売電気事業者は補助金の申請者になることはできません。ただし、需要家又は小売電気事業者が補助対象事業者を兼ねる場合はその限りではありません。
補助対象経費
補助対象となる経費は、以下のとおりです。
①設計費
設備導入に必要な設備等の設計に要する経費
②設備購入費
太陽電池モジュール、パワーコンディショナー、モニターシステム、架台、接続箱、受配電設備、遠隔監視・制御装置、その他の付属機器
③土地造成費
設備設置に必要な土地造成費
④工事費
基礎、設備の据付、電気配管及び柵塀 (柵塀の購入費を含む) に係る工事費
⑤接続費
送配電事業者の有する系統への電源線、遮断機、計量器、系統設備に対する工事費負担金
補助率
対象事業が「自治体連携型」かどうかで、補助率が変わります。予定している事業の補助率は、以下を確認してください。
①自治体連携型 (1、2のいずれかの事業):2/3以内
1.補助対象事業者・地方公共団体が所有する土地に設備を設置して、補助事業を実施する場合
2.地方公共団体が資本金の過半を出資する補助対象事業者・地方公共団体・地方公営企業が、当該地方公共団体内に需要地を有する者を需要家として補助事業を実施する場合
②自治体連携型以外:1/2以内
補助対象期間
補助の対象となるのは「事業開始日から事業完了日」です。
事業開始日は交付決定日とし、2023年2月28日までに支払いを含めたすべての事業を完了させる必要があります(事業完了とは、補助対象設備の運転を開始することを指します)。
事業スケジュール
では、需要家主導による太陽光発電導入促進補助金応募から交付までのスケジュールをみていきましょう。太字・下線の部分が、申請者が行う項目です。
①補助金応募
②採択決定通知
③交付受付
④交付決定通知
⑤補助対象事業の実施
⑥中間検査 (実地検査等)
⑦事業完了・実績報告
⑧確定検査(実地検査等)
⑨補助金の額の確定通知
⑩補助金支払請求
⑪補助金交付
応募受付期間・方法
応募の受付期間は2022年3月28日(月)~2022年4月22日(金)です。応募はJPEA のホームページから、電子申請のみで受け付けられます。
提出の必要な書類には、必須のものと、該当する場合のみ必要なものがあります。それぞれを以下にまとめました。
【提出必須書類】
・応募申請書
・補助事業に要する経費、補助対象経費及び補助金の配分表
・役員名簿
・誓約書
・実施計画書
・申請者情報 (発電事業者)
・関係者情報 (小売電気事業者・需要家)
・実施体制
・補助対象設備の整備計画 (総括表)
・補助対象設備による電気の利用の計画
・補助対象設備の設備構造図
・資金計画
・申請者の会社情報 (法人概要)
・申請者の決算書
・申請者の商業登記簿謄本の写し
・補助対象設備の系統連系に係る接続検討申込み (低圧設備については、系統連系申込み) が完了したことが判別できる書類結果の回答
・関係法令手続状況の説明資料
【該当する場合に必要なもの】
・借入金返済計画
・事前着手申請書
・地上設置の場合:補助対象設備を導入する土地全筆の地番リスト
・地上設置の場合:上記のリストにある土地と境界を接する土地全筆の地番リスト
・地上設置の場合:上記のリストにある全筆の記載がある公図
・地上設置の場合:上記の公図上に設備の設置図を追記した図面
・地上設置の場合:補助対象設備を導入する土 地の登記簿謄本、売買契約書又は賃貸借契 約書の写し
・建築物上設置の場合:補助対象設備を導入する建物の登記簿謄本、売買契約書又は賃貸借 契約書の写し
・補助対象設備を導入する場所の利用に関する承諾書等の写し
・補助対象設備の系統連系に係る接続検討の回答を得ていることを証する書類
・地方公共団体が所有する土地に設置することを許可されていることを示す賃貸契約等の書 類
・申請者の株式の過半数以上を地方公共団体が出資していることを証する書類
・脱炭素先行地域の選定に当たって自治体が提案した計画に位置づけられていることを証明 する書類
JPEAホームページに提出書類の作成に際しての留意事項や記入例が掲載されています。あわせてご確認ください。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金を活用するメリット
気候変動問題への関心やSDGsの取り組みなど、近年、環境に対する企業の態度はその評価に大きな影響を及ぼすようになりました。そのことは事業内容だけに留まらず、経営の方法やエネルギーの賄い方も企業イメージに直結します。「環境にやさしい企業」を目指すことは、経営面でも大きなメリットがあります。
とはいえ、太陽光発電をはじめとした再生エネルギーはまだまだコストがかかる電力です。特に中小企業では、自社の予算だけで太陽光発電を導入するのは難しい事情もあります。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金を活用すれば、少ないコストで「環境にやさしい企業」への第一歩を踏み出すことが可能になるのです。
まとめ
地球温暖化対策推進本部及び米国主催の気候サミットで明言された「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減」を達成するため、日本の再生化エネルギーの主力である太陽光発電の導入拡大は、今後ますます社会的需要が高まることが予想されます。
再生可能エネルギーへの投資は、未来への投資です。太陽光発電の導入コストに悩む中小企業や若い起業家こそ、企業と社会の未来に向けて、需要家主導による太陽光発電導入促進補助金を活用してください。