東日本大震災では、当時稼働中だった福島第一・第二原発、女川原発、東海第二原発が地震の揺れで自動停止し、福島第一原発に至っては津波による浸水で全電源が喪失したことにより、冷却機能を失った原子炉から大量の放射性物質が流出するという深刻な事態となりました。
近年は異常気象ともいえる大雨・台風の影響による大規模停電なども多発しており、政府が掲げる「官民一体となったDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」という目標の達成のためには、その基盤となる通信・電力インフラの更なる強靭化が必要不可欠です。
そこで、政府は2020年度で期限を迎える国土強靭化緊急対策について、5年の期間延長と、15兆円の予算の積み増しを行う「防災・減災・国土強靭化のための5か年加速化対策(以下:5か年加速化対策)」を閣議決定しました。
今回はこれまで進められてきた「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策(以下:3か年緊急対策)」、そして2021年から始まる5か年加速化対策について紹介いたします。
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この記事の目次
政府が取り組む「国土強靭化対策」について
政府は2011年に発生した東日本大震災の教訓を生かすべく、平成25年12月に強くしなやかな国民生活の実現を図るため、防災・減災等に資する「国土強靭化基本法」を施行しました。
翌年の平成26年6月には同法に基づき国土強靭化に係る国の他の計画等の指針となる「国土強靭化基本計画」が策定され、2018年には西日本豪雨や台風21号の被害を受け、特に緊急に実施すべき対策をまとめ「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」が閣議決定されます。
国土強靭化3か年緊急対策の概要
2018年度~2020年度までの期間で実施されている「3か年緊急対策」は、人命を守るための「I.防災のための重要インフラ等の機能維持」、「II.国民経済・生活を支える重要インフラ等の機能維持」の2つの観点から、特に緊急に実施すべきハード・ソフト対策として、下記の7つの柱からなる緊急対策160項目を、約7兆円の予算、3年の期間で集中的に実施しています。
I.防災のための重要インフラ等の機能維持
(1)大規模な浸水、土砂災害、自身・津波等による被害の防止・最小化【2.8兆円】
(2)救助・救急、医療活動などの災害対応力の確保【0.5兆円】
(3)避難行動に必要な情報等の確保【0.2兆円】
II.国民経済・生活を支える重要インフラ等の機能維持
(4)電力等エネルギー供給の確保【0.3兆円】
(5)食料供給、ライフライン、サプライチェーン等の確保【1.1兆円】
(6)陸海空の交通ネットワークの確保【2.0兆円】
(7)生活等に必要な情報通信機能・情報サービスの確保【0.02兆円】
具体的には公共事業や、補助金制度等による民間への支援を通し下記の様な取り組みが行われてきました。
・2000を超える河川の改修、整備
・1000か所のため池の改修、整備
・55万kWの分散型電源等の導入
・関西国際空港を含む6空港での浸水対策
・携帯電話基地局に関する緊急対策(停電時の予備電源の設置等)
防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策とは?
コロナ禍で行政手続きのオンライン化や、企業におけるリモートワークの普及など、官民のDX化が一気に加速するなか、国内における通信・電力インフラへの依存は今後もますます大きくなっていくことが予想されています。
「国土強靭化5か年加速化対策」では、これまで行われてきた公共建造物の老朽化調査等によって判明した「高度成長期以降に集中的に整備されたインフラの一斉老朽化への対応」や、「激甚化する風水害や大規模地震等への対策」等を軸に、国土強靭化のために追加的に必要となる様々な施策についても取り組みを進めます。
国土強靭化5か年加速化対策
「5か年加速化対策」は、下記の3つの柱に基づく123の対策を2021年度から5年間にわたり、およそ15兆円の予算で実行するものです。
I.激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策【12.3兆円:78対策】
(1)人命・財産の被害を防止・最小化するための対策
・流域治水対策(河川、下水道、砂防、海岸、農業水利施設の整備など)
・港湾における津波対策、地震時等に著しく危険な密集市街地対策
・医療施設や社会福祉施設等の耐災害性強化対策
・地域防災力の中核を担う消防団に関する対策 等
(2)交通ネットワーク・ライフラインを維持し、国民経済・生活を支えるための対策
・高規格道路のミッシングリンク解消及び4車線化
・市街地等の緊急輸送道路における無電柱化対策
・送電網の整備・強化対策、SS等の災害対応能力強化対策
・水道施設等の耐災害性強化対策、上水道管路の耐震化対策 等
II.予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策【2.7兆円:21対策】
・河川管理施設・道路・港湾・空港の老朽化対策
・老朽化した公営住宅の建替による防災・減災対策
・農業水利施設等の老朽化、豪雨・地震対策
・公立小中学校の老朽化対策
・国立大学施設等の老朽化・防災機能強化対策 等
III.国土強靭化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進【0.2兆円:24対策】
(1)国土強靭化に関する施策のデジタル化
・連携型インフラデータプラットフォームの構築等
・インフラ維持管理に関する対策
・無人化施工技術の安全性・生産性向上対策
・ITを活用した道路管理体制の強化対策 等
(2)災害関連情報の予測、収集・集積・伝達の高度化
・スーパーコンピューターを活用した防災・減災対策
・高度予測情報等を通じた気候変動対策
・線状降水帯の予測精度向上等の防災気象情報の高度化対策
・河川、砂防、海岸分野における防災情報等の高度化対策 等
まとめ
今回は内閣府から発表されている「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」について紹介しました。
近年国内では東日本大震災をはじめとする大規模地震や、大雨・台風などによる甚大な被害が各地で相次いでおり、政府や各自治体では更なる防災・減災対策の強化に向け地域計画の改定などが進められています。
社会環境の変化や産業技術の変革によって、防災・減災に必要な取り組みは日々アップグレードがもとめられています。事業者の方は政府の資料などを参考に、自社の災害対策が不十分でないか今一度見つめなおしてみるのはいかがでしょうか。
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