近年の日本では、震災や豪雨などの大規模災害が多発しています。災害発生時に被災者を困らせる問題が、ライフラインの停止です。特に電気やガスが止まると、生命の維持に直結するため非常に危険です。
そんな状況を乗り切るため、LPガス災害バルクが注目されています。ライフラインが停止しても温かいご飯が作れたり、照明・通信機器に必要な電源が確保できたりと、とても重宝する設備です。
災害発生時の安全を確保するため、政府はLPガス災害バルクの補助金を実施しています。今回は、LPガス災害バルク等の補助金について、活用事例を交え詳しくご紹介します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
LPガス災害バルク等の導入事業費補助金とは
大規模災害が発生した場合、都市ガス・電力・水道の供給停止が懸念されます。そんな中で課題となるのが、医療施設や福祉施設などで多く生じやすい、自力避難困難者の安全確保です。
災害発生直後の3日間は、生命維持や救助体制のリミットを大きく左右する非常に重要な局面となるため、貯槽と供給装置(ガス栓・調整器など)が一体となったLPガス災害バルクが開発されました。
この設置費用が補助金の対象となります。導入費用の一部を補助することで、災害発生時のライフライン機能を確保し、避難生活を3日間以上維持させるのが狙いです。
補助対象施設
(1)災害発生時に、自力で避難場所へ移動するのが困難な者を、多数抱える施設
・医療施設(入院施設や人工透析クリニック)
・福祉施設(老人ホーム等、障害者施設、0歳児がいる保育所等)
※但し、医療施設のうち以下は除きます
・災害拠点病院
・災害拠点精神科病院
・へき地医療拠点病院
・へき地診療所
・救急救命センター
・周産期母子医療センター
(2)災害発生時に、地方公共団体が避難所として指定した施設(公的避難所)
・自治体庁舎
・公立学校
・公民館
・体育館等の公共施設
補助対象設備
補助対象となる設備は、対象施設に設置する以下の設備です。
・LPガス災害バルク貯槽またはシリンダー容器(貯蔵容器をシリンダー容器とする場合、シリンダー容器は必ずしも購入する必要はありません)
・LPガス発電機(コジェネレーション含む)
・空調機器(GHP等)
・燃焼機器(コジェネレーション、炊き出しセット、コンロ、炊飯器、ボイラーを含む給湯器、ガスストーブ、ファンヒーター)
補助対象経費は以下の通りです。
(1)LPガス災害バルク等の機器購入費
(2)LPガス災害バルク等の設置工事費
(3)上記設置工事に係る以下の経費
・設備工事に関わる足場や養生費
・対象設備の基礎工事費、防護柵、50㎏容器収納庫等(本来の用途以上に過剰性能であるもの、美観対策としてのものは除く)
なお、以下の経費は補助対象外となります。
・既存設備の撤去費用
・日常的に使用するガス配管(メーター含む)や電気配線
補助率
(1)避難困難者施設(医療施設・福祉施設等)
中小企業者に対しては2/3以内、それ以外は1/2以内
(2)公的避難所
1/2以内
前年度からの変更点
交付要件と交付申請について、前年度から変更となった点は以下のとおりです。
交付要件についての変更点
【変更点1:申請1件あたりの補助金交付限度額】
以下の2パターンで限度額に変更があります。
◆上限5000万円→上限3000万円に変更
・LPガス貯蔵容器&供給設備+発電機(コジェネレーション含む)
・LPガス貯蔵容器&供給設備+空調機器
・LPガス貯蔵容器&供給設備+燃焼機器
・LPガス貯蔵容器&供給設備+燃焼機器
◆上限1億円→上限5000万円に変更
LPガス貯蔵容器&供給設備+発電機(コジェネレーション含む)+空調機器
これにより、今回の補助金交付限度額(1申請あたり)は次のようになりました。
①LPガスを貯蔵する容器と供給設備のみの設置:1000万円
②上記①+補助対象LPガス設備(次の③を除く)を設置する場合:3000万円
③上記①+発電機(コジェネレーション含)+空調機器を設置する場合:5000万円
【変更点2:設置エリア】
前年度は施設の種類を問わず、以下の2点を満たす応募案件が最も優先されていました。
①国土強靭化地域計画(大規模自然災害に備え国土の強靭化を図る)を定めている市区町村へ設置する案件
②大規模地震対策特別措置法第3条等の規定により、指定された地震防災対策強化地域等に設置する案件
令和3年度補正予算で補助対象となっている医療施設・福祉施設に関しては、上記2点は必須要件でもなければ優先項目でもありません。なお、公的避難所は、上記2点のいずれかに該当するエリアが必須要件となっています。
【変更点3:機器の使用訓練】
前年度は機器の使用訓練を必要としていませんでしたが、定期的に実施するよう変更されています。
【変更点4:シリンダー容器の購入義務】
購入が義務付けられていたシリンダー容器ですが、前述のとおり、今年度は必ずしも購入する必要がありません。
交付申請書についての変更点
【変更点1:官公需適格組合からの燃料購入有無】
官公需適格組合からガス供給を受けているかどうかが、新たに追加されました。なおこの項目は、予算超過時に採択を決定する優先事項として、第二優先順位に定められています。
【変更点2:電気関係の添付書類】
災害時使用予定電気機器及び負荷リストの提出が不要となりました。ただし、定置式発電機の場合は出力計算書の提出が求められています。
【変更点3:役員名簿】
役員名簿の代わりに登記事項証明書での提出が認められます。ただし、登記事項証明書で全役員名が確認できない法人は、その旨が確かめられる自社作成の資料を提出してください。
【変更点4:燃料消費量計算書の記載内容】
前年度の燃料消費量は、バルク等の容量のうち50%が、災害発生時の消費量3日分以上に相当する残量であることが条件でした。しかし今年度では、残量確認を対応可能日数確認(3~7日間)へ変更しており、この範囲内でない場合は申請不可です。また「バルク等の容量」という表現を「貯蔵上限量」に変更しています。
なお、3~7日間は日常の日数ではなく、電気・都市ガス・水道すべての供給が止まった災害発生時に関しての目安です。記載可能な機器を間違えないよう、注意してください。
【変更点5:避難所の運用計画提出時期】
前年度の避難所に関する運用計画提出は、交付申請書と同じタイミングでした。しかし今年度は、交付決定後~実績報告書提出の期間中であれば、いつでも提出できるよう変更されています。ただし、未提出にならないよう注意が必要です。
申請手続きについて
(1)提出資料を作成
災害バルクホームページから申請書類をダウンロードし、提出資料を作成します。
(2)申請書類の提出
提出は、災害バルクホームページの補助金申請手続きから行います。ファイルのアップロード方法は、ホームページの「申請書の提出」リンク下に記載されている説明をご参照ください。
(3)申請書類提出後
振興センター内で申請書類の審査を行い、修正箇所がある場合は申請者・共同申請者・履行補助者へメールで要請します。修正依頼を受けた事業者は、修正後の必要書類をメールで提出します。修正前と修正後の書類が混ざらないよう、管理を徹底してください。また、振興センターの許可なく申請内容を変更しないでください。
【公募期間】
令和4年2月28日(月)~4月15日(金)
※3月23日(水)に公募説明会を予定しています。災害バルクホームページの「公募説明会」からお申し込みください。
LPガス災害バルク等の導入補助金活用事例
最後に、本補助金の活用事例を3つご紹介します。
【①平時・有事問わず万全な医療体制を確保】
熊本県人吉市の医療施設では、それまでディーゼル非常用発電機を1台設置していました。しかし、緊急時の対応に不安を抱いていたため、災害対応バルク・非常用LPガス発電機・停電自立型GHPを導入したところ、停電時でも人工透析や照明用電力が確保され、万全な医療体制が整いました。
【②停電時の充電サービス提供を構築」
宮城県気仙沼市のドコモショップでは、災害発生時の携帯電話利用に注力しました。バルク貯槽や発電機を設置することにより、停電時の充電サービス提供を構築できました。また、ガスヒートポンプも取り入れたことで、災害時の冷暖房供給にも貢献できるようになりました。
【③高齢者向け住宅で災害時3日間程度の電源を保持】
北海道札幌市では、これまで高齢者向け住宅やグループホームが、災害による停電を経験していました。中には携帯型酸素供給機を利用している方もいて、停電による影響は大きいものでした。また、寒暖差が激しい土地柄ということもあり、空調設備の維持も必要としていたことから、災害バルクを導入し、非常時の3日間程度の電源を確保することができました。
まとめ
今回は、自衛的な燃料備蓄のためにLPガス災害バルク等の設置にかかる経費を補助する「LPガス災害バルク等の導入補助金」についてご紹介しました。
災害は物的被害だけでなく、停電や断水など生活にも多大な影響を及ぼします。特に、高齢者や患者などを預かる施設では、電気と水の確保は必要不可欠です。LPガス災害バルクを設置しておけば、電気に加え空調や温かい食事も提供でき、緊急時の対応は万全です。
いつどこで大災害が発生してもおかしくない中で、日頃から備えを怠らないことが重要です。被災してから手遅れにならないよう、多くの人命を預かっている事業者は、LPガス災害バルク等の補助金制度を活用してみてはいかがでしょうか。