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労災保険が農林水産業の小規模事業主に強制適用へ|2031年度までの義務化スケジュールと使える補助金まとめ【2026年最新】

公開日:2026/8/3 更新日:2026/8/3
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2026年7月10日、参院本会議で改正労働者災害補償保険法(改正労災保険法)が可決・成立し、同7月17日に令和8年法律第60号として官報に公布されました。この改正で特に影響の大きい変更の一つが、農林水産業のうち小規模個人経営を対象外としてきた「暫定任意適用事業」の廃止です。この規定が施行されると、現在は任意適用となっている農林水産業の小規模な個人経営の事業の一部も、労災保険の適用事業になります。国会審議では、新たに労災保険への加入が必要となる個人経営体は約22万と説明されています。

農林水産業は、他産業と比べて死亡事故の発生率が高いにもかかわらず、労災保険に加入していない経営体が多いことが積年の課題でした。「家族経営を中心とする小規模な経営だから関係ない」「繁忙期にアルバイトを数人雇っているだけ」と考えている事業者も、施行後は雇用実態に応じた対応が必要になります。

この記事では、改正労災保険法の3つの柱と、農林水産業の小規模事業主が2031年度までに準備すべきことを整理します。あわせて、事業主自身も補償対象にできる「特別加入制度」の仕組みや、労災対応・労働環境整備に活用できる補助金・助成金を、企業向けにわかりやすく解説します。

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この記事の目次

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改正労災保険法(2026年成立)で何が変わる?主な改正ポイントと施行日

改正労災保険法(正式名称:労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律)は、2026年(令和8年)7月10日に参院本会議で可決・成立、同7月17日に令和8年法律第60号として公布されました。厚生労働省の概要では主な改正内容が5項目に整理されており、それぞれ施行日が異なります。

改正内容の全体像は?主な5項目を整理

厚生労働省が公表する改正の概要には、次の5項目が示されています。


【改正労災保険法の主な5項目】
  • ①遺族補償年金の見直し:夫の受給要件(妻死亡時に55歳以上)を撤廃し、男女差を解消。遺族が1人の場合の年金額は給付基礎日額の175日分に統一。
  • ②一部疾病の労災保険給付請求権の消滅時効を2年から5年へ延長:判断が容易ではない疾病について時効期間を見直し。
  • ③暫定任意適用事業の廃止:農林水産業のうち小規模個人経営を対象外としてきた暫定措置を廃止し、強制適用対象を拡大。
  • ④特別加入団体の要件法定化等:フリーランス等の特別加入拡大を背景に、特別加入団体の要件を法律に明記。業務改善命令や違反団体の保険関係消滅措置も導入。
  • ⑤不服申立て制度の見直し:社会復帰促進等事業に関する不服申立ての審査請求先等を見直し。

本記事では、このうち農林水産業の小規模事業主にとって影響が大きい「③暫定任意適用事業の廃止」を中心に、①の遺族補償年金と④の特別加入制度を掘り下げて解説します。

改正労災保険法の施行スケジュールはいつから?

改正内容ごとに施行日が異なる点に注意が必要です。農林水産業の強制適用は「公布の日(2026年7月17日)から5年以内の政令で定める日」から施行されるため、施行日は、遅くとも2031年(令和13年)7月までに政令で定められます。
出典:厚生労働省「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の概要」

改正内容施行日
遺族補償年金の男女差解消2027年(令和9年)4月1日
労災保険給付請求権の消滅時効の見直し2027年(令和9年)4月1日
特別加入団体の要件法定化2027年(令和9年)4月1日
不服申立ての審査請求先の見直し2027年(令和9年)4月1日
農林水産業の暫定任意適用事業の廃止(強制適用)公布日から5年以内の政令で定める日(2031年7月まで)

農業経営者にとって最も影響が大きいのは、強制適用の施行日です。施行日は今後、政令で定められます。厚生労働省や労働基準監督署からの通知に注意しておきましょう。

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そもそも労災保険とは?補償内容と保険料の基本

労災保険(労働者災害補償保険)は、労働者が業務中や通勤中にケガ・病気・障害・死亡等の被害を受けた場合に、必要な保険給付を行う国の制度です。労働基準法上、事業主は労働災害に対する補償責任を負いますが、労災保険で補償される範囲について事業主は責任を免れる仕組みになっています。

労災保険の主な給付にはどんなものがある?

労災保険からは、被災した労働者やその遺族に対して次のような給付が支給されます。金額は給付基礎日額(原則として被災前3か月間の1日あたりの賃金)を基準に計算されます。

給付の種類支給内容
療養(補償)給付治療費・入院費・看護費・移送費など、治癒までの療養費用を原則無料で給付
休業(補償)給付休業4日目以降、1日につき給付基礎日額の60%(特別支給金と合わせて80%)を支給
障害(補償)給付障害等級(1〜14級)に応じて、年金または一時金を支給
遺族(補償)給付亡くなった労働者の生計を維持していた遺族に、年金または一時金を支給
葬祭料(葬祭給付)葬祭費用として、31万5,000円+給付基礎日額の30日分(または給付基礎日額の60日分のいずれか高い方)を支給
傷病(補償)年金療養開始から1年6か月経過しても治癒せず、傷病等級に該当する場合に年金を支給
介護(補償)給付障害・傷病年金の受給者で常時または随時介護が必要な場合に支給

労災保険の給付は、業務災害(業務中の事故)と通勤災害(通勤途上の事故)のいずれもカバーします。ただし、事業主本人や、労働者性が認められない家族従事者は原則として対象外です。もっとも、家族であっても勤務実態や指揮命令の状況、賃金の支払い、他の労働者との同一性等から労働基準法上の労働者に該当する場合は、労災保険の対象となり得ます。事業主本人や労働者性がない家族従事者は、後述の「特別加入制度」で任意加入することが可能です。

労災保険の保険料は誰が負担する?農業の保険料率は?

労災保険の保険料は全額を事業主が負担します。労働者からの徴収はありません。保険料は「賃金総額 × 労災保険率」で計算され、労災保険率は事業の種類ごとに定められています。

農業に適用される労災保険率は、原則として賃金総額の1,000分の13です。畜産業も同じ区分に含まれますが、水産業は事業の種類によって労災保険率が異なります。たとえば、繁忙期にアルバイトを3人雇い、年間の賃金総額が40万円だった場合、労災保険料は「40万円 × 13/1,000 = 5,200円」となります。この保険料は確定申告時に「農業経費」として計上できます。

農林水産業は一般に二元適用事業に当たり、労災保険と雇用保険の保険料申告・納付を別々に行います。労災保険料は、原則として毎年6月1日から7月10日までの年度更新で申告・納付します。労働保険事務組合に事務委託すれば、この手続きを代行してもらうことも可能です。
出典:厚生労働省「労働保険の成立手続」

小規模農業経営の労災保険義務化へ|対象事業主と手続き

改正規定が施行されると、現在は任意適用となっている農林水産業の小規模な個人経営の事業の一部も、労災保険の適用事業になります。施行日は、公布日の2026年7月17日から5年以内に政令で定められます。

「暫定任意適用事業の廃止」とは何を意味する?

暫定任意適用事業とは、労災保険が原則すべての事業に強制適用される中で、例外的に加入が任意とされてきた事業のことです。現行制度では、農林水産業のうち政令・告示で定められた小規模な個人経営が該当します。農業・水産業では常時5人未満の個人経営が基本の目安ですが、林業や漁業では作業内容・労働者の使用状況・船舶の規模等による例外があり、単純に「5人未満」と一括りにはできない点に注意が必要です。

農業は農繁期のみ短期雇用するなど労働者の実態が把握しにくいという事情から、制度創設当初から暫定的に任意適用とされてきました。しかし、労働者保護の観点から見直しが議論され、今回の改正で完全に廃止されることになりました。

強制適用の対象となる事業主は誰?

強制適用の対象は、労働者を1人でも雇用する農林水産業のすべての個人経営体です。これまで「常時5人未満の個人経営」で任意加入だった事業主が、原則としてすべて対象になります。


【強制適用となる主な事業主の例】
  • 繁忙期にアルバイト・パートを数人雇用している個人農家
  • 近隣の学生・主婦を短期雇用する果樹農家
  • 収穫期に外国人技能実習生を受け入れている畜産農家
  • 労働力を貸し合っている酪農家(労働者性が認められる場合)
  • 個人経営の林業事業者・水産業事業者(1人以上雇用の場合)

なお、法人経営の農林水産業事業者はもともと強制適用の対象です。また、家族従事者や事業主本人は原則として労災保険の対象外ですが、後述する「特別加入制度」で任意加入できます。

労災保険への加入手続きの流れは?

労働者を雇用する農林水産業の事業主が労災保険に加入する場合の基本的な流れは、次のとおりです。

1.労災保険の保険関係成立届を提出:新たに労災保険の適用事業となった場合は、原則として保険関係が成立した日の翌日から10日以内に、事業場を管轄する労働基準監督署へ「労働保険 保険関係成立届」を提出します。改正法の施行時点ですでに労働者を雇用している事業については、今後公表される経過措置や手続期限を確認してください。

2.労働保険概算保険料申告書の提出:保険関係成立の日から50日以内に、その年度の概算保険料を申告・納付します。

3.雇用保険の適用を確認:雇用保険の適用事業に該当し、加入要件を満たす労働者がいる場合は、労災保険とは別に、管轄のハローワークで保険関係成立届、雇用保険適用事業所設置届、被保険者資格取得届などを提出します。農林水産業は一般に、労災保険と雇用保険の手続きや保険料申告を別々に行う「二元適用事業」です。

4.労働保険事務組合への事務委託(任意):手続きが煩雑な場合、労働保険事務組合(商工会・農協・JA等)に事務委託することで、加入・申告・納付の代行を依頼できます。
出典:厚生労働省「労働保険の成立手続」

事務委託を行うと、事業主自身も労災保険の「特別加入制度」を利用しやすくなるメリットがあります。施行時点で労働者を雇用している既存事業者については、今後公表される政令・省令・行政案内を必ず確認して対応する必要があります。

農業補助金一覧【2026年・令和8年度】トラクター・倉庫・ハウス・ドローンに使える制度をまとめて解説


農業事業主自身も守る「労災保険 特別加入制度」の3つの枠組み


労災保険は本来、労働者を保護する制度であり、事業主本人や家族従事者は対象外です。しかし、農業のように事業主自身が現場作業に従事する業種では、事業主が労働者に準じて保護されるべきという考えから、「特別加入制度」が用意されています。特別加入は任意ですが、農作業事故は事業主自身にも起こり得るため、実務では加入を強く推奨されます。

特別加入制度の3つの枠組みとは?


農業関係者が利用できる特別加入制度は、次の3つに分かれます。加入手続きの窓口や補償範囲がそれぞれ異なるため、経営規模や作業実態に応じて選ぶ必要があります。

加入区分加入対象加入窓口
①中小事業主等労働者を雇用する事業主本人、家族従事者、法人役員労働保険事務組合(商工会・農協・JA等)
②特定農作業従事者年間の農産物販売金額300万円以上または経営面積2ヘクタール以上の農業者で、特定作業(動力機械の使用、高所作業、農薬散布等)に従事する者特別加入団体
③指定農業機械作業従事者指定された動力機械(トラクター、コンバイン、動力刈払機等)による作業に従事する自営農業者特別加入団体

改正労災保険法で農林水産業が強制適用になった後は、労働者を雇う小規模農業経営体では①「中小事業主等」としての特別加入が現実的な選択肢になります。労働保険事務組合への事務委託が前提条件です。

給付基礎日額と特別加入保険料の計算方法は?


特別加入者の給付基礎日額は、3,500円から25,000円の範囲で申請者が選択します。給付基礎日額を高く設定すれば給付額も増えますが、保険料も高くなります。

特別加入保険料の計算式は共通ですが、農業関係の特別加入は3つの区分ごとに保険料率が異なる点が重要です。営農実態に応じて最適な区分を選び、保険料を試算する必要があります。

加入区分特別加入保険料率
中小事業主等(農業)1,000分の13(1.3%)
特定農作業従事者1,000分の9(0.9%)
指定農業機械作業従事者1,000分の3(0.3%)


【特別加入保険料の計算式】

特別加入保険料 = 給付基礎日額 × 365日 × 特別加入保険料率



【計算例:農業の中小事業主等として加入し、給付基礎日額8,000円を選択した場合】

8,000円 × 365日 × 13/1,000 = 37,960円(年間)

月額換算:約3,163円



【計算例:指定農業機械作業従事者として加入し、給付基礎日額8,000円を選択した場合】

8,000円 × 365日 × 3/1,000 = 8,760円(年間)

月額換算:約730円


特別加入者の保険料は事業主本人の負担となりますが、支払った保険料は確定申告時に社会保険料控除の対象になります。所得税・住民税の負担軽減効果もあわせて考えると、加入コストは実質的にさらに抑えられます。

特別加入団体・労働保険事務組合を通じた申込方法は?


中小事業主等として特別加入する場合は、労働保険事務組合への事務委託が必要です。特定農作業従事者または指定農業機械作業従事者として加入する場合は、承認を受けた特別加入団体を通じて手続きします。

地域によっては、JAや農業協同組合が労働保険事務組合として認可されており、加入窓口を務めています。

申込時には次の書類・情報が必要です。

  • 特別加入申請書(区分ごとに様式が異なる)
  • 加入区分に応じて労働保険事務組合または特別加入団体から求められる書類
  • 加入時健康診断(一定の要件に該当する場合のみ)
  • 希望する給付基礎日額

最寄りのJA、農業協同組合、労働基準監督署に相談することで、加入までの流れをスムーズに進められます。

労災対応・労働環境整備に活用できる補助金・助成金


労災保険への加入義務化は、農林水産業事業者にとって新たな保険料負担が発生することを意味します。この機会に、労働環境の整備や労働災害防止対策とあわせて活用できる補助金・助成金を組み合わせるのが賢明です。以下、農業経営者が使える主な支援制度を目的別に紹介します。

農業経営者向けの主な支援制度は?


農林水産省が所管する農業経営支援策のうち、労働環境整備や雇用確保に活用しやすい制度は次のとおりです(令和8年度の公表内容による)。

制度名対象・内容所管
雇用就農資金(雇用就農者育成・独立支援タイプ)農業法人等が49歳以下の就農希望者を雇用し研修を実施する場合、年間最大60万円、最長4年間を助成(1経営体あたり毎年度5人まで、3人目以降は年間最大20万円)農林水産省・全国農業会議所
就農準備資金都道府県農業大学校や先進農家等で研修を受ける場合、月13.75万円(年間最大165万円)を最長2年間交付農林水産省
経営開始資金新規就農される方に、経営開始から経営が安定するまでの最大3年間、月13.75万円(年間165万円)を交付農林水産省
労働力確保体制強化事業他産業・他産地との連携による労働力確保、就労条件改善の取組を支援農林水産省
スマート農業技術活用促進総合対策AI・ICT等を活用した省力化・労働災害リスク低減設備の導入支援農林水産省

これらの制度は年度ごとに公募内容や補助率が変わるため、農林水産省や地方農政局、JA等の最新公募情報を確認する必要があります。年齢要件・研修計画・営農計画等の個別要件があり、農業者ならだれでも自動的に活用できるわけではない点にも注意しましょう。

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労働災害防止・働き方改革のための助成金は?


労働環境の改善や労働災害防止に活用できる厚生労働省系の助成金も、農業事業者が対象になります。

制度名対象・内容所管
働き方改革推進支援助成金労働時間短縮・年休取得促進・勤務間インターバル導入等の取組に対する助成。上限額はコース・成果目標・賃上げ加算等により異なる厚生労働省
エイジフレンドリー補助金60歳以上の高年齢労働者を雇用する中小企業等が行う労災防止対策を支援。補助上限額や補助率はコースによって異なり、設備改善や熱中症対策は上限100万円・補助率1/2、専門家によるリスクアセスメントは上限100万円・補助率4/5など厚生労働省
業務改善助成金設備投資による生産性向上と最低賃金引上げをセットで支援(コース・引上げ額により上限額が異なる)厚生労働省
両立支援等助成金育児・介護と仕事の両立支援制度の導入等に対する助成厚生労働省

これらの助成金は、労災保険料そのものを補助する制度ではなく、労働者数・賃上げの実施・労働者の年齢・導入する設備・申請時期など個別要件を満たす場合に活用できるものです。農業事業者が自動的に対象となるわけではない点に注意してください。詳細要件は厚生労働省・都道府県労働局の公式案内で必ず確認しましょう。

農業は他産業に比べて労働時間が長時間化しやすい業種でもあります。労災加入と同じタイミングで働き方改革を進めることで、労働者の定着率向上と経営リスクの低減を同時に実現できます。

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労災保険 農林水産業の強制適用に関するよくある質問





改正労災保険法はいつから施行されますか?


改正内容ごとに施行日が異なります。遺族補償年金の男女差解消・消滅時効の見直し・特別加入団体要件の法定化等は2027年(令和9年)4月1日施行です。農林水産業の暫定任意適用事業の廃止(強制適用)は、公布日(2026年7月17日)から5年以内の政令で定める日、つまり遅くとも2031年7月までに施行されます。




労働者を1人だけ短期雇用する場合も労災保険に加入する必要がありますか?


改正規定の施行後は、雇用期間や労働時間の長短にかかわらず、労働者を1人でも雇用する事業は原則として労災保険の適用対象になります。繁忙期だけ雇用するアルバイト・パートも対象です。ただし、施行時点ですでに労働者を雇用している事業の届出期限や経過措置は、今後公表される政令・省令・厚生労働省の案内を確認してください。




家族だけで農業を営んでいる場合も労災保険に加入する必要がありますか?


労働者性が認められる家族従事者や外部の労働者を一切雇用していない場合は、労災保険の強制適用対象にはなりません。ただし、同居の親族であっても、勤務実態や指揮命令の状況、賃金の支払い、他の労働者との同一性等から労働基準法上の労働者に該当すると判断される場合は、労災保険の対象となり得ます。判断は個別具体的な事情によるため、労働基準監督署や社会保険労務士に確認することをおすすめします。事業主本人・労働者性がない家族については、労災保険の「特別加入制度」を利用して任意加入することも可能です。




農業の労災保険料率はいくらですか?


農業(畜産・水産養殖を含む)の労災保険料率は、賃金総額の1,000分の13です。たとえば、アルバイト3人を雇い、年間の賃金総額が40万円だった場合、労災保険料は40万円 × 13/1,000 = 5,200円となります。保険料は全額事業主負担で、確定申告時に農業経費として計上できます。


出典:厚生労働省「労災保険率表」


労災保険の加入手続きをしないとどうなりますか?


強制適用事業となった後に労災保険の成立手続きを怠ると、労働保険料が遡って徴収され、追徴金が課されることがあります。未手続期間中に労災事故が発生した場合、行政機関から加入手続きの指導等を受けたにもかかわらず手続きを行わなかったときは「故意」と認定され、対象となる保険給付額の100%が事業主から費用徴収されます。指導等を受けていなくても、適用事業となった日から1年を経過してなお手続きを行っていなかったときは「重大な過失」と認定され、40%が費用徴収されます。費用徴収の対象は、原則として療養開始後3年間に支給される保険給付で、療養(補償)等給付と介護(補償)等給付は除かれます。また、事故の状況によっては、労働者や遺族から民事上の損害賠償を求められる可能性があります。


出典:厚生労働省「労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度」


遺族補償年金の男女差解消で何が変わりますか?


現行制度では、労災で亡くなった労働者の配偶者が遺族補償年金を受給する際、妻は何歳でも受給できる一方、夫は妻の死亡時に55歳以上であるか一定の障害があることが要件でした。2027年4月1日施行の改正により、この年齢要件が撤廃され、男女とも同じ要件で受給できるようになります。また、55歳以上の妻等に対する特別加算も廃止され、遺族が1人の場合の年金額は、男女や年齢等にかかわらず給付基礎日額の175日分に統一されます。




労災保険の特別加入制度と民間の傷害保険はどう違いますか?


労災保険の特別加入は、業務上のケガや病気について、療養・休業・障害・遺族・葬祭などの給付を受けられる公的制度です。ただし、通勤災害の補償範囲は加入区分によって異なります。中小事業主等は通勤災害も原則として補償対象になりますが、特定農作業従事者と指定農業機械作業従事者は、通勤災害の補償対象になりません。民間の傷害保険とは補償範囲や給付条件が異なるため、加入区分と作業実態を確認したうえで比較する必要があります。




労働保険事務組合への事務委託にはどんなメリットがありますか?


労働保険事務組合に事務委託すると、労働保険料の申告・納付、保険関係成立届等の各種届出、労災保険特別加入の手続き等を代行してもらえます。また、事務組合への委託は、事業主本人が中小事業主等として特別加入するための前提条件になります。保険料の分割納付が可能になるメリットもあり、小規模農業経営者にとって特にメリットが大きい仕組みです。委託先はJA・農業協同組合・商工会等から選べます。




労災保険と雇用保険は同時に加入する必要がありますか?


労災保険と雇用保険では、事業や労働者に対する適用要件が異なります。今回の法改正で廃止されるのは、労災保険における農林水産業の暫定任意適用です。一方、個人経営の農林水産業で常時使用する労働者が5人未満の事業は、雇用保険では引き続き暫定任意適用事業となる場合があります。雇用保険の被保険者は、現時点では原則として週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある人です。週所定労働時間の要件は、2028年10月1日から原則10時間以上に変更されます。


出典:厚生労働省「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の概要」厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律の概要」埼玉労働局「労働保険の適用と加入手続」


労災保険への加入や労働環境整備に使える補助金・助成金はありますか?


労災保険料そのものへの直接的な補助はありませんが、労働環境整備・労働災害防止・雇用確保に活用できる制度が複数あります。農林水産省の「雇用就農資金」「就農準備資金・経営開始資金」「労働力確保体制強化事業」、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」「エイジフレンドリー補助金」「業務改善助成金」等が代表例です。労災加入と同じタイミングでこれらを活用することで、労働環境改善と経営基盤強化を同時に進められます。





まとめ|改正労災保険法で農林水産業の労務管理は新たな段階へ


2026年7月10日に成立した改正労災保険法では、農林水産業のうち現在は任意適用となっている小規模な個人経営の事業の一部も、施行後は労災保険の適用事業になります。施行日は、公布日の2026年7月17日から5年以内に政令で定められます。

労働者を1人でも雇う小規模農家は、施行に向けて次の準備を進める必要があります。


【小規模農業経営者が施行日までに確認したいこと】
  • 雇用実態(アルバイト・パートを含む)の確認
  • 労働保険関係成立届など加入手続きの流れの確認
  • 労働保険事務組合(JA・農協・商工会等)への事務委託の検討
  • 事業主自身の労災保険 特別加入(中小事業主等区分)の検討
  • 労働環境整備・労働災害防止対策の見直し
  • 働き方改革推進支援助成金など活用可能な補助金・助成金の把握


加入義務化を単なる新たな負担と捉えるのではなく、労働環境整備・労働災害防止対策を進める好機として活用することで、労働者の定着率向上と経営リスクの低減を実現できます。補助金・助成金の活用や労働保険事務組合への事務委託を組み合わせ、無理のない体制で加入準備を進めていきましょう。

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