今年10月12日に上陸した台風19号によって各地では観測史上最大の大雨が発生し、土砂災害や洪水、河川の決壊などによる浸水被害は2万5千ヘクタール、家屋の被害は8万棟を越え、経済損失は2018年度の西日本豪雨を大きく上回りました。
政府は台風19号への対応に関し緊急の措置として今年度予算の予備費から7億1000万円を支出し、その後更に追加で5千億円の予備費を災害対策として投入する事を決定、現在も各種施策の最終的な調整が進められています。
今回はこの5000億円の予備費をもとに実施される災害対策の中から、12月上旬を目途に公募が予定されている「被災小規模事業者再建事業(持続化補助金)」について紹介したいと思います。
この記事の目次
本年度の大雨・台風で小規模事業者は甚大な被害に
十分な資金力のある大手の企業等は、一階部分に駐車場スペースのある店舗を構えたり、万全の災害対策が施されたショッピングモールへの出店等を行う事も可能ですが、個人の飲食業や小売業、サービス業などは集客が見込みやすい商業地域の路面に店舗を構えることが多いため、災害時には浸水被害も起きやすい傾向にあります。
また、商店街などは道路や鉄道を敷きやすい盆地で発展している事が多い為、雨量が下水道の限界をこえてしまった場合には下水の逆流なども起こり、飲食店や食料品を扱う店舗などでは絶望的な衛生面への被害も発生します。
台風19号では暴風によって商店街のアーケード等が倒壊しているケースなどもあり、事業再建の目途が立たず休業・廃業に追い込まれている小規模事業者の負担は甚大です。
全国の河川が氾濫し 被害額は4738億円(2011年の東日本大震災以降最大)※NHK
政府の台風19号被害事業者への支援策が間もなく公募開始
政府は復旧が進まず賑わいを失ったままの商店街の早期の復旧・復興を目指すため「被災小規模事業者再建事業(持続化補助金)」を12月上旬より実施します。
被災小規模事業者再建事業は、毎年6月初旬頃に公募が行われている小規模事業者持続化補助金の制度を利用した政府の災害対策で、補助対象は被災地域で罹災した小規模事業者に限定されています。
今年は台風15号での被災時にも公募が行われていた為、災害対策としては2度目の公募となります。
※台風15号分の公募は既に終了
被災小規模事業者再建事業(持続化補助金)
※中小企業庁HPより
被災小規模事業者再建事業は、通常の小規模事業者持続化補助金よりも補助額が大きく、事業の継続のために移転を行う場合の賃料や、被災した飲食店等が移動販売を行う為に購入する車両費にも活用する事ができます。
実質的には災害からの復旧を空を目的に実施されていますが、災害支援を速やかに行う為に既存制度(持続化補助金)の仕組みを利用しているため、申請を行う為には通常の持続化補助金と同様に「販路開拓などの取り組み等」を含む計画の策定が必要となります。
台風15号の際に行われた公募の採択事例では、壊れた設備等がある場合は修理ではなく高機能なものへ交換したり、店舗の修繕が必要な場合は付加価値をつけた改装を行ったりという工夫によって申請要件を満たしています。
【過去の採択事例(令和元年台風15号 佐賀県・千葉県災害対策型事例より)】
①生産性向上と売上拡大を可能とする設備導入(ベーカリー)
※設備の水没故障⇒より生産性の高い設備の導入
②大事な思い出の詰まった衣服を元のままに事業(クリーニング)
※設備の水没故障⇒より高機能な設備を導入し新たな事業を展開
③煙を気にしない焼肉店へ!店舗改装による販路開拓事業(焼き肉店)
※被災店舗に排煙設備の強化を加えた改修を行い、新たな顧客獲得へ
④顧客満足度を高める為の店舗改装及び接客スペースの確保(ハンコ屋)
※「販路開拓の為の」「生産性向上の為の」など、改装の理由については持続化補助金は寛容です。
⑤台風被害により損壊した駐車場看板修理による新規顧客獲得戦略(蕎麦屋)
※目的はあくまで被災事業者の支援なので、対象事業と言えそうな内容であれば吟味はされていません。
【制度の説明】
台風19号で被害を受けた小規模事業者の事業再建を支援する為の補助金制度です。
計画内容は相談員と申請者で相談をしながら決めていく事が出来る為、申請した計画が要件に
適合しないために不採択になるというケースはほとんどありません。
【公募期間】
12月上旬以降を予定しています。
【対象地域】
岩手県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都
神奈川県・新潟県・長野県・山梨県・静岡県
【対象者】
直接被害、又は売上の減少などの間接被害を受けた小規模事業者
【補助内容】
補助率:2/3以内※一定条件の下定額補助
上限額:100万円又は200万円(被害の大きい宮城・福島・栃木・長野は上限200万円)
【対象経費】
機械装置費、車両購入費、広報費、展示会等出展費、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、賃料専門家謝金、専門家旅費、委託費、設備廃棄等費、外注費など、計画の実施に必要と認められるもの。
「軽減税率対策補助金」で購入したレジが被災した場合は再度申請が可能です!
10月1日の軽減税率の導入をもって一度は終了した軽減税率対策補助金(レジ補助金)でしたが、政府は被災店舗でのレジの水没故障などを想定して、軽減税率対応レジが被災し、再度同様のレジを導入しなおす(買替・修理等)必要がある場合には、再度軽減税率対策補助金への申請を認める事としています。
申請期限は原則12月16日までとなっていますが、限られた期間で事業の再建を目指しながらレジの買い替えや修理などを行いつつ補助金の申請を行う事は困難なため、申請期限までにレジの導入や支払いが完了できない場合は、その事情を説明する書面(事情説明書)を申請期限までに補助金申請書に添えて提出することで、2020年3月末まで足りない書類の提出期限を延長する事が可能です。
【軽減税率対策補助金(レジ補助金)とは?】
複数税率に対応したレジシステム等を導入する場合に、必要な経費の3/4が補助される制度です。
【対象者】
既に軽減税率対策補助金を活用してレジシステムなどを導入している事業者が対象です。
新規の購入などでは申請を行う事が出来ませんのでご注意ください。
【申請期間】
通常12月16日まで(事情説明書を提出した場合は2020年3月末まで)
【補助額】
災害により使用不能となった軽減税率対応レジに係る補助金の金額が上限となります。
【お問合せ先】
特例的な措置のため、罹災状況の証明などが必要となる可能性がありますので、詳細な手続き方法等については補助金事務局にてご確認ください。
軽減税率対策補助金 事業HP
http://kzt-hojo.jp/
まとめ
今回の記事では台風19号の浸水被害などで経営が困難な状況にある小規模事業者の事業再建に活用できる「被災小規模事業者再建事業(持続化補助金)」と、軽減税率対策補助金(レジ補助金)の特例措置について紹介してきました。
2018年には西日本豪雨、2019年には台風15号・19号・21号の上陸によって、2年連続で記録的な水害が続いてしまっている日本ですが、政府は自治体や商店街組合、企業、一般家庭などを対象に、今後数か月に渡り集中的な支援制度を順次展開し、早期の地方経済の復旧・復興を目指しています。
災害対策のような緊急の制度は十分な告知が行われない事も多く、知らない間に使える補助金制度の申請期限が終了してしまっていたというケースはよくあります。
特に小規模事業者向けの補助金制度の情報は、地域の商工会等とのつながりがない個人事業者等には届きにくい傾向がありますので、被災で困っている方や、事業への投資を有利に行っていきたい事業者の方は、是非一度補助金ポータルまでご相談ください。