内閣府は2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、年末までに5か年計画を策定することを表明しました。いま、スタートアップは日本の経済成長を実現するためのイノベーションの担い手として、注目されています。 参考:首相官邸
東京都が実施する「スタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援」は、スタートアップのビジネス展開における問題解決を支援する事業です。今回は、令和4年度スタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援の内容や、手続きについてまとめました。
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この記事の目次
スタートアップとは
経済の成長には、新たなビジネスや産業の創出が必要です。イノベーションの担い手であるスタートアップは、国内経済の発展に大きな影響を及ぼします。最初にスタートアップの概要について見ていきましょう。
スタートアップ支援が必要な理由
スタートアップとは、短期間で急成長する企業のことです。スタートアップは社会に新たな価値をもたらすイノベーションを起こし、経済成長のドライバーとなります。
しかしスタートアップは一般的にハイリスクとされ、これまでの日本企業の在り方や組織体質とは異なる成長の仕方を取ります。そのため優れたスタートアップが増加するためには、国が主体となってその環境を整える必要があるのです。
経済発展には、高い付加価値を生む成功モデルが必要です。内閣府は日本経済「第二創業期」を実現し、スタートアップを徹底的に支援することを表明しています。
スタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援とは
東京都が実施する、スタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援は、知財を武器に世界と戦える企業の創出を目指しています。まずは事業の流れや要件を確認しましょう。
概要
事業計画・経営戦略や知的財産の保護・活用の意識が十分でなく、様々な障壁が発生しているスタートアップを支援するのがスタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援の目的です。助成金のほか、最長3年間、専門家によるサポートが受けられます。
事業の流れ
採択事業者は支援の開始から約6か月経過後、支援チームのサポートを受けて策定した事業・知財戦略等を提出します。それを受けて審査が行われ、助成金の対象となるのです。(※助成金の利用は令和5年度以降を予定。別途審査あり。)
事業の流れのイメージは、以下の図も参照してください。
出典:スタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援【募集要項】
ハンズオン支援
本事業では、優れた技術・アイデアを有するスタートアップを募集し、採択された事業者には、最大3年間、ビジネスおよび知財両面に関する伴走支援が行われます。
伴走支援にあたっては事業者ごとにヒアリングが行われ、その内容をもとに、知財戦略アドバイザーや専門家と連携したチームか組織されます。事業者はチームの支援を受け、事業戦略・知財戦略を策定します。
また、公益財団法人東京都中小企業振興公社の中小企業支援を行う各部門および地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターとの連携など、支援効果の最大化が図られます。
助成金
助成金の申請や交付の詳細は、ハンズオン支援の採択者に別途通知されます。
助成金の限度額と助成率は以下のとおりです。
◆助成限度額…1,500万円
◆助成率…助成対象と認められる経費の1/2以内
【対象経費】
◆権利化までに必要な技術開発・改良に要する経費
◆知的財産権の出願等 権利化に要する経費
スタートアップ知的財産支援の申請要件
申請のための要件は、以下の(1)~(4)です。
要件 |
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(1)中小企業者 (2)創業後おおむね10年以内で、以下のいずれかを満たすこと -東京都内に開業届出がある、もしくは登記簿上の本店または支店がある -東京都内事業所で1年以上事業を行っている、または東京都内で創業し、引き続く事業期間が1年に満たない者 (3)支援事業の実施場所について、以下の条件を満たすこと -自社の事業所、工場等であること -東京都内、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県にあること (4)以下のすべてに該当するもの -事業税等を滞納していないこと -東京都および公社に対する賃料・使用料等の債務の支払いが滞っていないこと -過去に助成を受け、不正等の事故を起こしていないこと -過去に公社から助成金の交付を受けている者は、「企業化状況報告書」や「実施結果状況報告書」等を所定の期日までに提出していること -事業の継続性について不確実な状況が存在しないこと -事業の実施に当たって必要な許認可を取得し、関係法令を遵守すること -暴力団関係者または風俗営業者等でないこと -公的資金の支援先として適切でないと判断する業態を営むものではないこと |
支援対象事業
対象となる事業は、以下の(1)~(5)のすべてに該当するものです。
(1)研究開発要素があること
(2)原則として対象事業の核となる技術を自社で保有していること
(3)支援期間内に自社で保有する技術の権利化(特許化)を目指すこと
(4)事業化を目指す研究開発であること
(5)開発に関する情報を公社に開示できること
また、対象となる研究開発分野は以下のものです。
(1)新製品・新技術の研究開発
新しい機能を付加した製品や新しい製造技術等に関するハード面の研究開発のうち、試作品の設計、製作、試験評価および改良
(2)新たなソフトウエアの研究開発
システム設計等ソフト面の研究開発のうち、データ処理装置や情報処理プログラムの開発および改良
(3)新たなサービス創出のための研究開発
新たなサービスの提供による生産性の向上、高付加価値化を目的として、サービス関連業等が外部の技術を活用して行う技術開発
申請手続き
次に、申請の手続きについてです。申請手続きには、HPから事前に予約が必要になります。申請の流れや締め切りを見ていきましょう。
申請の流れ
申請の流れは以下のとおりです。
(1)申請予約
(2)申請書類の取得
(3)申請書類の作成
(4)申請書類の提出
申請期間
申請に関する期間は以下のとおりです。
【申請予約期間】
令和4年7月27日(水)~8月31日(水)
【申請書類提出期間】
令和4年8月24日(水)~9月14日(水)17:00必着
申請方法
申請にはメールか郵送にて、必要な書類を送付します。注意事項は以下のとおりです。
【郵送での申請の場合】
A4サイズ片面印刷で、書類ごとにクリップ留めしてください。
【メールでの申請の場合】
全てPDF形式のファイルを添付し、ファイル名は「提出書類一覧」に示す資料名にしてください。
提出書類
提出が必要な書類は、以下の表を確認してください。
出典:スタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援【募集要項】
このうち、すべての場合で提出が必要な書類は以下の(1)~(5)です (任意を含みます)。
(1)申請書
(2)補足説明資料
(3)申請前確認書
(4)申請者アンケート
(5)社歴(経歴)書
スタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援活用のメリット
世界各国と比較すると、日本のスタートアップは数や規模において大きく差が開いています。経済産業省によると、その要因は人材・事業・資金の各面での課題が絡み合っていることです。
参考:経済産業省 事務局説明資料(スタートアップについて)
新しい技術やアイデアによって急速に成長を遂げるスタートアップにとって、知的財産を活用することは重要な役割を果たします。世界と戦う企業となるためには、知的財産を生かして競争優位に立つことが必須だからです。
スタートアップ知的財産支援事業ハンズオン支援では、助成金だけでなく、知的財産に関する専門家の支援を受けられることが大きなメリットです。
まとめ
国内経済の成長には将来的な雇用や所得の増加など、さまざまな利点があります。その利点が社会全体の利潤となるためには、まずは優れたスタートアップが増えることが必要です。しかし現状では各面で課題が残り、スタートアップによる好循環が生まれていない状況になっています。
知的財産支援事業ハンズオン支援では、スタートアップが専門家と助成金の支援を同時に受けられます。世界での活躍を目指すスタートアップにはぜひ活用してほしい制度です。