燃料の価格高騰や人手不足をはじめ、事業者にとって深刻な社会的課題が長期化してきました。
特に運輸業では、いわゆる2024問題を筆頭に、これまでの社会構造の持続性を揺るがすような問題が注目を集めています。コスト削減や業務効率化に加え、環境問題の改善にも対応しなくてはいけません。こうした取組には、補助金などの公的な支援策を上手に活用していきましょう。
今回は運輸業向けの補助金活用方法を、支援対象となる課題ごとにわけて紹介します。コスト削減や生産性向上のための、具体的な補助金をまとめました。
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この記事の目次
燃料費削減・輸送の効率化支援
燃料費を削減したり、運送を効率化したりすることは、人手不足やコスト削減に貢献する取組です。
ここでは、経済産業省の運輸部門エネルギー使用合理化・非化石エネルギー転換推進事業費補助金(トラック輸送省エネ化推進事業)に基づく国庫補助金を財源とする支援事業を紹介します。
令和6年度の公募はすでに終了しましたが、来年度の準備に役立てて下さい。
トラック輸送省エネ化推進事業(公募終了)
令和6年度「運輸部門エネルギー使用合理化・非化石エネルギー転換推進事業費補助金(トラック輸送省エネ化推進事業)」は、⾞両動態管理や予約受付等のシステムやダブル連結トラック等の導⼊に要する経費の⼀部を支援します。
輸送効率化を通じた消費エネルギーの削減効果を実証することを目的とした事業です。
対象事業 |
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本事業は、トラック事業者と荷主等とが連携して取り組むことを要件としています。対象となるのは、以下の設備や車両の導入です。 ①車両動態管理システム、予約受付システム等、配車計画システムおよびAI・IoTによるシステム連系ツール ②ダブル連結トラック及びスワップボディコンテナ車両 |
対象事業者 |
対象事業者は、以下のとおりです。 ・貨物自動運送事業者 ・第二種貨物利用運送事業者 ・自家用トラック事業者 ・荷主等 ・リース事業者 |
なお、事業者によっては「単独申請のみ」のものと「共同申請も可能」なものがあります。以下の図を参照してください。
出典:公募要領
補助率・額 | |
①車両動態管理システム | 【補助率】 1/2(定額) 【上限額等】 14万円/台×上限30台/事業者 なお、上限台数の緩和措置があります。 |
②予約受付システム等 ・予約受付システム ・ASNシステム ・受注情報事前確認システム ・パレット等管理システム ・パレタイズシステム |
【補助率】 1/2(定額) 【上限額等】 4,000万円/事業者 パレタイズシステムのみ、5,000万円/事業者 |
③配車計画システム | 【補助率】 1/2(定額) 【上限額等】 4,000万円/事業者 |
④AI・IoTによるシステム連系ツール | 【補助率】 1/2(定額) 【上限額等】 5,000万円/事業者 |
⑤ダブル連結トラック | 【補助率】 1/2(定額) 【上限額等】 上限額1,000万円/台×上限10台/事業者 |
⑥スワップボディコンテナ車両 | 【補助率】 1/2(定額) 【上限額等】 上限額1,000万円/台×上限10台/事業者(荷台は上限3基/台) |
【スケジュール】
参考として、令和6年度のスケジュールを紹介します。
■公募期間
1次公募 令和6年6月24日(月)10:00~7月5日(金)16:00
2次公募 令和6年7月19日(金)10:00~7月31日(水)16:00
3次公募 令和6年8月26日(月)10:00~9月6日(金)16:00
4次公募 令和6年9月30日(月)10:00~10月11日(金)16:00
令和6年7月下旬~順次 交付決定
電動車・クリーンエネルギー車導入支援
持続可能な社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの活用が広まっています。
運輸業において電気自動車やクリーンエネルギー車の導入を目指すときには、「商用車の電動化促進事業」や「低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業」の活用がオススメです。
それぞれの概要や補助率などを見ていきましょう。
商用車の電動化促進事業
2050年カーボンニュートラルおよび2030年温室効果ガス削減目標の達成に向け、商用車の電動化を推進する制度です。
トラック・タクシー・バスの電動化に対して補助を行い、普及初期の導入加速を支援することで、価格低減による産業競争力強化・経済成長と温室効果ガスの排出削減の両立を目指します。ここでは、トラックの公募について紹介します。
対象事業者 |
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対象事業者は、国で定める目標(目安)等に準じる非化石エネルギー自動車の導入計画を設定している事業者のうち、以下のいずれかに該当する者です。 ・貨物自動車運送事業者 ・自家用商用車を業務に使用する者 ・商用車の貸渡しを業とする者 ・地方公共団体 ・その他環境大臣の承認を得て、機構が適当と認める者 |
補助対象 |
①車両 補助対象となるのは、予め環境省の事前登録を受けた、以下のトラックです。 ・BEV 電気自動車 ・PHEV プラグインハイブリッド車 ・FCV 燃料電池自動車 ただし、以下の重量のものに限られます。 ・車両総重量2.5トン超の車両(事業用、自家用) ・車両総重量2.5トン以下の車両(事業用のみ) ②充電設備 ・普通充電器 ・急速充電器 ・V2H、外部給電器および高圧受電設備 |
上記の設備と、その設置工事費が補助の対象です。なお、設備は①の車両の充電に必要な充電設備で、一体的に導入するものに限られます。
そのほか、主な要件は以下のとおりです。
・事業所、営業拠点等に設置するものであること
・指定の認証を取得するなど、安全性が確保されていること
なお、高圧受電設備・設置工事費においては2030年導入計画に合わせた規模による申請が可能です。
補助率・額 | |
①トラック | 補助額は、車両の事前登録により登録のあった車両を基に算出します。算出方法は、以下のとおりです。 【補助率】 ・BEV 2/3 ・PHEV 1/2 ・FCV 3/4 【基準額の計算式】 電動トラック車両価格−同規模・同等仕様の既存ディーゼルトラック車両等価格(標準的燃費水準車))×補助率 |
②充電設備 | 充電設備の価格と充電設備工事費の合計額が交付されます。 ただし、機器の機能や工事内容ごとに個別の上限があります。上限額の詳細は、以下の図を参照してください。 |
出典:リーフレット
【スケジュール】
令和6年3月8日(金)~令和7年1月31日(金)
参考:商用車の電動化促進事業
低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業
一般財団法人環境優良車普及機構(LEVO)では、中小トラック運送業者について燃費性能の高い低炭素型ディーゼルトラックの導入を支援しています。低炭素社会の創出を促進する事業です。
対象車両 |
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・車両総重量3.5t超の事業用車両(緑ナンバー) ・新車で令和6年4月1日から令和7年1月31日までに新車新規登録された車両 ・平成27年度重量車燃費基準を大型車は+5%以上、中型車及び小型車は+10%以上達成した車両 ・廃車は令和6年4月1日から令和7年1月31日の間にスクラップ処理され、直近まで稼働していた車両 |
対象事業者 |
トラック運送事業者またはトラック運送事業者に車両をリースする事業者が対象です。(いずれも中小事業者のみ) |
【補助率・基準額】
車型区分(車両総重量) | 2015年度燃費基準 | 基準額(廃車有) | 基準額(廃車無) |
大型(12t超) | +10%以上 | 75万円 | 50万円 |
大型(12t超) | +5%以上 | 50万円 | 37.5万円 |
中型(7.5t超〜12t以下) | +10%以上 | 42万円 | 28万円 |
小型(3.5t超〜7.5t以下) | +10%以上 | 15万円 | 10万円 |
【スケジュール】
令和6年6月10日(月)~令和7年1月31日(金)
生産性向上と災害対策支援
生産性の向上は、企業にとって大きな課題のひとつです。また近年、急増する自然災害への対策として、非常時の企業の役割が注目を集めています。
ここでは生産性の向上や災害対策支援に使える補助金・助成金をまとめました。
「働き方改革推進支援助成金」業種別課題対応コース(運送業)
働き方改革推進支援助成金では、「業種別課題対応コース」として、建設業・運送業・病院等・砂糖製造業の時間外労働の上限規制に対応する企業を支援しています。
生産性を向上させ、時間外労働の削減や週休2日制の推進などの環境整備に取り組む中小企業事業主が対象です。
対象事業 |
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以下のうち、いずれか1つ以上を実施してください。 ①労務管理担当者に対する研修 ②労働者に対する研修、周知・啓発 ③外部専門家によるコンサルティング ④就業規則・労使協定等の作成・変更 ⑤人材確保に向けた取組 ⑥労務管理用ソフトウェアの導入・更新 ⑦労務管理用機器の導入・更新 ⑧デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新 ⑨労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新 なお各取組では、指定の「成果目標」から1つ以上選択し、その達成を目指す必要があります。 |
対象事業者 |
主な要件は、以下のとおりです。 ・中小企業事業主であること ・労働者災害補償保険の適用事業主であること ・交付申請時点で、「成果目標」の設定に向けた条件を満たしていること ・年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること ・以下のいずれかに該当すること ア.建設業 イ.運送業 ウ.病院等 エ.砂糖製造業 |
補助率 | 3/4 |
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補助上限額 | 上限額は、成果目標ごとに定められています。成果目標の達成状況に基づいた金額および賃金加算額の合計額が交付されます。 なお、常時使用する労働者数が30人以下で、かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費が30万円を超える場合は、補助率は4/5になります。 |
【スケジュール】
申請は、令和6年11月29日(金)まで
参考:「働き方改革推進支援助成金」業種別課題対応コース(運送業)
物流施設における非常用電源設備の導入支援
災害時や電力不足時には、物流拠点における電源機能を維持し、迅速かつ円滑な物資輸送体制を確保し続けることが重要です。
しかし導入費用の高さ等を考慮すると、非常用電源設備の導入は、企業にとって大きな負担となります。本事業は、災害対応能力の強化を図るために非常用電源設備の導入を支援する制度です。
対象施設 |
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・倉庫業法に基づく許可を受けて営業される倉庫 ・貨物利用運送事業者、貨物自動車運送事業者の保管等施設 ・トラックターミナル ・物流不動産 |
補助対象設備 |
・非常用電源設備(発電設備または蓄電池) |
主な要件 |
・小規模施設(施設面積1000㎡未満)でないこと ・「大規模地震・津波災害応急対策対処方針」の考え方に適合する施設であること ・災害時における地方自治体への協力への意思表明等を行うこと |
対象事業者 |
・倉庫事業者 ・貨物利用運送事業者 ・トラックターミナル事業者 ・貨物自動車運送事業者、貨物軽自動車運送事業者 ・物流不動産開発業者 |
補助率・上限額 |
1/2、1000万円 |
【スケジュール】
10月10日(木)~11月8日(金) 17時必着
まとめ 持続可能な運輸業を目指して
近年、社会は大きく変わりました。巣ごもりや生活様式の変化を経て、運輸業の需要も高まっています。
一方で、人手不足や燃料費の高騰問題は解決の目途が立っていません。変化の時代にチャンスをつかむためにも、補助金や助成金を上手に使い、費用的な負担を軽減していきましょう。