キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、契約社員・パート・派遣社員などの非正規雇用労働者を正社員に転換した事業主に対して、中小企業で1人あたり最大80万円(重点支援対象者・有期→正規)を支給する厚生労働省の助成金制度です。
令和8年10月1日以降の正社員転換からは「賃金3%以上増額」の算定ルールが変更され、選択制の企業型確定拠出年金(DC)などの掛金が賃金に含まれなくなった点には注意が必要です。人材確保・定着に悩む中小企業にとって、活用しない手はない制度です。
本記事では、正社員化コースの2026年度・令和8年度版の支給要件・助成額・申請フローを、「条件」「必要書類」「就業規則の記載例」「不支給になるケース」まで含めてわかりやすく解説します。
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・【★本記事】正社員化コース
・障害者正社員化コース
<処遇改善支援>
・賃金規定等改定コース
・賃金規定等共通化コース
・賞与・退職金制度導入コース
・短時間労働者労働時間延長支援コース
あわせて読みたい:キャリアアップ助成金とは?2026年・令和8年度【全コース支給額比較表付き】
この記事の目次
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは?
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、有期雇用労働者・無期雇用の短時間労働者・派遣労働者などの非正規雇用労働者を正社員に転換した事業主に、1人あたり最大80万円(中小企業・重点支援対象者・有期→正規)を支給する厚生労働省の雇用系助成金です。キャリアアップ助成金の全6コースの中で最も利用件数が多く、令和8年度も引き続き人材確保・定着に効果的な制度として活用されています。
誰がもらえる助成金?【受給者は事業主】
正社員化コースを受け取れるのは、非正規雇用労働者を正社員に転換した事業主(会社・個人事業主)です。従業員本人が受け取る制度ではありません。「キャリアアップ手当」という各社独自の給与制度とされる場合がありますが、まったく別のものです。
支給には事前のキャリアアップ管理者の選定と、キャリアアップ計画の作成・労働局への提出が必要です。正社員転換を行う日の前日までに提出しなければならず、事後の提出では認められません。
令和8年度(2026年度)の変更点は?
令和8年度の正社員化コースの最大の変更点は、令和8年4月8日から新設された「情報公表加算(情報開示加算)」です。正社員転換等の情報を自社サイトまたは職場情報総合サイト「しょくばらぼ」で公表した場合、1事業所あたり20万円(大企業15万円)が加算されます。
また、令和8年10月1日以降の正社員転換からは、支給要件である「賃金3%以上増額」の算定ルールが変更されています。生涯設計手当などを原資とする選択制の企業型確定拠出年金(DC)・確定給付年金(DB)の掛金のうち、社会保険料の算定基礎(標準報酬)に含まれないものは、助成金上の「賃金」として扱われなくなりました。
| 変更点 | 詳細 | 加算額 |
|---|---|---|
| 情報公表加算(情報開示加算)【令和8年4月8日新設】 | 正社員転換等の情報を自社サイトまたは「しょくばらぼ」で公表 | 1事業所20万円(大企業15万円) |
| 賃金3%増額要件の算定ルール変更【令和8年10月1日以降の転換から】 | 選択制企業年金(DC・DB)の掛金のうち、社会保険料の算定基礎に含まれないものは「賃金」に含めずに3%増額を判定 | ー(支給要件の変更) |
これまでの「正社員転換等制度の規定に関する加算」「多様な正社員制度の規定に関する加算」に加えて、3つの加算をすべて満たせば、1事業所あたり最大80万円(大企業60万円)の加算が受けられるようになっています。
正社員化コースの支給額はいくら?【令和8年度】
令和8年度の正社員化コースの支給額は、「重点支援対象者」と「それ以外」の区分によって大きく異なります。重点支援対象者を有期雇用から正規雇用に転換した場合、中小企業なら最大80万円(40万円×2期)が支給されます。
| 企業規模 | 対象者 | 支給額 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 重点支援対象者 | 有期雇用→正規雇用:80万円(40万円×2期)/無期雇用→正規雇用:40万円(20万円×2期) |
| 上記以外 | 有期雇用→正規雇用:40万円(40万円×1期)/無期雇用→正規雇用:20万円(20万円×1期) | |
| 大企業 | 重点支援対象者 | 有期雇用→正規雇用:60万円(30万円×2期)/無期雇用→正規雇用:30万円(15万円×2期) |
| 上記以外 | 有期雇用→正規雇用:30万円(30万円×1期)/無期雇用→正規雇用:15万円(15万円×1期) |
重点支援対象者以外を対象とした場合は「1期のみ」の支給、重点支援対象者を対象とした場合は「2期制」となり、正社員化後6か月経過時点(1期目)と12か月経過時点(2期目)の2回に分けて申請します。
契約社員・パート・派遣社員を正社員にした場合の金額早見表
「契約社員 正社員 助成金」「パートから正社員 助成金」「派遣社員を正社員にする 費用」といった検索が一定数あります。雇用形態別の支給額を早見表で確認できます。
| 正社員化前の雇用形態 | 中小企業(重点支援対象者) | 中小企業(左記以外) | 大企業(重点支援対象者) | 大企業(左記以外) |
|---|---|---|---|---|
| 有期雇用の契約社員・パート | 80万円 | 40万円 | 60万円 | 30万円 |
| 無期雇用(期間の定めなし)の社員・パート | 40万円 | 20万円 | 30万円 | 15万円 |
| 有期派遣社員 | 80万円 | ー | 60万円 | ー |
| 無期派遣社員 | 40万円 | ー | 30万円 | ー |
「重点支援対象者」とは?(80万円の対象になる条件)
重点支援対象者とは、「不安定な雇用状況にある労働者」として重点的に支援すべきと判断された非正規雇用労働者のことで、以下の①〜③のいずれかに該当する場合が対象となります。重点支援対象者に該当すれば、中小企業なら有期→正規で80万円(1期40万円×2期)の支給が受けられます。
②雇用期間が3年未満で、以下の両条件を満たす者(不安定雇用者)
・過去5年間の正規雇用期間が1年以下
・過去1年間、正規雇用の経験がない
③以下のいずれかに該当する者
・派遣労働者
・母子家庭の母等または父子家庭の父
・人材開発支援助成金に係る特定の訓練を修了した者
なお、雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者は、無期雇用労働者として扱われます。この場合は①の「3年以上の有期雇用労働者」には該当せず、支給額は「無期→正規」の区分が適用されます。中小企業の場合は原則20万円で、③(派遣労働者・母子家庭の母等または父子家庭の父・特定の訓練修了者)に該当するときに限り40万円となります。
正社員化コースの3つの加算措置(合計最大80万円加算)
正社員化コースには、通常の支給額に加えて3つの加算措置があり、すべて満たすと1事業所あたり最大80万円(大企業60万円)が上乗せされます。いずれも1事業所あたり1回のみ適用されます。
| 加算措置 | 支給額(1事業所あたり) |
|---|---|
| ①正社員転換等制度の規定に関する加算 | 20万円(大企業15万円) |
| ②多様な正社員制度の規定に関する加算 | 40万円(大企業30万円) |
| ③情報公表加算(情報開示加算)【令和8年度新設】 | 20万円(大企業15万円) |
①正社員転換等制度の規定に関する加算(20万円)
有期雇用労働者等を正規雇用労働者(多様な正社員を除く)へ転換する制度を、キャリアアップ計画期間中に就業規則等へ新たに規定し、実際に転換を行った場合に加算されます。1事業所あたり1回のみ、中小企業20万円・大企業15万円が上乗せされます。すでに転換制度が規定されている場合は対象外で、新たに整備した規定に基づく1人目の転換が加算の対象です。
②多様な正社員制度の規定に関する加算(40万円)
勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員のいずれか1つ以上の制度を新たに就業規則等に規定し、実際に転換を行った場合に、中小企業40万円・大企業30万円が加算されます。①の正社員転換等制度加算とは別の加算のため、両方を受けることも可能です。ただし、①は通常の正社員、②は多様な正社員への転換がそれぞれ必要で、同じ1人の転換で両方を受けることはできません。
キャリアアップ計画書に記載された同一のキャリアアップ期間中に、勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員のいずれかを新たに規定し、有期雇用労働者等を該当区分に転換した事業者が対象です。
③情報公表加算(情報開示加算)【令和8年4月8日新設】(20万円)
情報公表加算は令和8年4月8日に新設された加算措置で、正規雇用労働者等への転換等に関する所定の情報を、自社ウェブサイトまたは職場情報総合サイト「しょくばらぼ」に公表した場合に、1事業所あたり中小企業20万円・大企業15万円が加算されます。
「所定の情報」は、就業規則等に規定している転換・直接雇用のすべての制度について、次の3点すべてを公表する必要があります。
②直近3事業年度に、正社員へ転換または直接雇用した人数
③直近3事業年度の、雇入れ日から正社員転換・直接雇用までに要した平均期間と最短期間
なお、公表要件として、キャリアアップ計画期間中かつ支給申請日までに公表し、支給申請日から少なくとも支給申請日が属する事業年度の終了までは公表を継続することへの同意が必要です。
申請までの流れと必要書類
正社員化コースの申請までの流れは、「キャリアアップ計画の作成・提出」→「就業規則の整備」→「正社員転換」→「6か月分の賃金支払い」→「支給申請」の7ステップです。取組開始から助成金の入金までは、標準的には1年〜1年半程度を見込んでください。
申請までの7ステップ
正社員化コースの申請までの具体的なステップは以下のとおりです。各ステップに一定の順序と期限があり、順序を誤ると不支給になるため注意しましょう。
①キャリアアップ管理者の選定
②キャリアアップ計画の作成・労働局への提出(正社員転換日の前日まで)
③就業規則等の改定(正社員転換制度の新設)
④就業規則等に基づき従業員を正社員化する
⑤正社員化後6か月分の賃金の支払い(前6か月比3%以上増額)
⑥支給申請(賃金支払日の翌日から2か月以内)
⑦支給決定通知書の受領・助成金振込
令和7年度からキャリアアップ計画書は事前認定が不要となり、「届け出のみ」に簡素化されました。ただし、正社員転換日の前日までに提出することは変わりません。支給要領では、前日が土日祝・年末年始などの行政機関の休日に当たる場合は、その休日の翌日が提出期限とされています。一方で、正社員転換日がキャリアアップ計画期間内に入っていなければ助成対象にならないため、期限ぎりぎりではなく余裕を持って提出しましょう。
正社員化コース 支給申請時の必要書類
正社員化コースの支給申請時には、指定の様式のほかに、雇用契約書・就業規則・賃金台帳・出勤簿などの添付書類が必要です。最新の様式は厚生労働省ホームページ「申請様式ダウンロード(キャリアアップ助成金)」から入手してください。
申請書類はキャリアアップ助成金の公式サイトよりダウンロードできます。また、「雇用関係助成金ポータル」を通じた電子申請にも対応しており、電子申請にはGビズIDが必要です。
正社員化コースの対象事業主・対象労働者
正社員化コースの対象事業主は、雇用保険適用事業所であり、かつキャリアアップ管理者の設置・キャリアアップ計画の労働局への提出を済ませていることが必須要件です。対象労働者は、非正規雇用労働者(有期・無期の短時間労働者・派遣労働者)で、正社員化前の6か月以上、正社員と異なる就業規則等の適用を受けていた者が対象となります。
対象事業主の主な要件
対象事業主に該当するには、以下のすべての要件を満たす必要があります。1つでも欠けると支給対象外となるため、事前に確認しておきましょう。
- 雇用保険適用事業所である
- 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている
- 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し管轄労働局長に提出している
- 対象労働者の労働条件・勤務状況・賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにできる
- キャリアアップ計画期間内に計画に記載した正社員化・処遇改善に取り組んでいる
上記に該当しても、暴力団関係事業者、風俗関連事業者、労働保険料を納入していない事業者は支給対象外です。
なお、助成金額は企業規模によって異なります。「中小企業事業主」の範囲は以下のとおりです。
| 業種 | 該当事業者 |
|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下または従業員50人以下 |
| サービス業 | 資本金5,000万円以下または従業員100人以下 |
| 卸売業 | 資本金1億円以下または従業員100人以下 |
| その他の業種 | 資本金3億円以下または従業員300人以下 |
あわせて読みたい:キャリアアップ助成金は誰がもらえる?対象事業主の要件とコース別の対象労働者を解説
対象労働者の要件(有期雇用・無期雇用・派遣)
対象労働者は、正社員化の6か月以上前から、正社員と異なる就業規則等の適用を受けて雇用されている非正規雇用労働者です。以下のいずれかに該当する必要があります。
- 支給対象事業主のもとで、正規雇用労働者と賃金額または賃金の計算方法が異なる雇用区分の就業規則等の適用を、通算6か月以上受けて雇用されている有期雇用労働者または無期雇用労働者
- 6か月以上継続して、派遣先事業所その他の派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者
- 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練(人材開発支援助成金〔人材育成支援コース〕によるものに限る)を修了した有期雇用労働者等
さらに、以下の追加要件をすべて満たす必要があります。
・正社員化の前日から過去3年以内に、当該事業主または関連事業主において正規雇用労働者として雇用されていた者、請負・委任関係にあった者、取締役・役員等であった者でないこと
・支給申請日において、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていないこと
・正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化日から定年までの期間が1年以上であること
対象外となる労働者(親族・新規学卒者など)
以下に該当する労働者は、要件を満たしていても正社員化コースの支給対象外となります。特に事業主・役員の3親等以内の親族と新規学卒者で雇入れから1年未満の者は、不正受給防止の観点から明確に除外されているため要注意です。
- 事業主・役員の3親等以内の親族(配偶者・子・父母・兄弟姉妹・祖父母・孫・叔父叔母・甥姪等)
- 新規学卒者で、雇入れ日から起算して1年未満の者
- 離職者や定年を迎えた従業員
- 就労継続支援A型事業所の利用者
- 過去3年以内に当該事業主で正規雇用されていた者
主な支給要件と注意点
正社員化コースの支給要件は、「就業規則への転換制度の規定」「実際の正社員転換」「転換後6か月間の賃金3%以上増額」の3点が最も重要です。これらのうち1つでも欠けると不支給となるため、事前準備が肝心です。
賃金3%以上増額の要件と計算方法(賃金上昇要件確認ツール)
正社員化コースの支給要件で最もつまずきやすいのが「転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間と比較して3%以上増額」させることです。単純な時給アップだけでは達成できないケースもあり、基本給や固定的な手当の設計まで含めて計画する必要があります。
比較の対象となる賃金と、対象外の賃金は次のとおりです。
| 区分 | 対象となる賃金 | 対象外の賃金 |
|---|---|---|
| 基本給 | 時給・日給・月給 | ー |
| 固定手当 | 職務手当・役職手当・資格手当など固定支給される手当 | 通勤手当・住宅手当 |
| 変動手当 | ー | 時間外労働手当・深夜手当・休日出勤手当・賞与・退職金 |
| 企業年金の掛金 | ー | 選択制企業型DC・DBの掛金(生涯設計手当等を原資とするもの)のうち、社会保険料の算定基礎に含まれないもの【令和8年10月1日以降の転換から】 |
令和8年10月1日以降の正社員転換等から、生涯設計手当などを原資とする選択制の企業型確定拠出年金(DC)・確定給付年金(DB)の掛金は、社会保険料の算定基礎(標準報酬)に含まれない場合、3%増額の算定対象外となりました。掛金は退職金の前払い的な性質が強く、労働基準法・雇用保険法上の「賃金」に該当しないという考え方によるものです。
これまで「基本給+掛金」の合計で3%増額を満たしていた企業は、掛金を除いた賃金のみで3%以上の増額が必要になります。選択制DC・DBを導入している企業は、転換前に必ず試算し直してください(詳細は厚生労働省Q&Aの「①-4 Q-6 生涯設計手当・選択制企業年金の取扱い」をご確認ください)。
厚生労働省が提供している「賃金上昇要件確認ツール」を利用すれば、3%増額を満たしているかを事前にシミュレーションできます。申請前に必ず試算しておきましょう。
就業規則への転換規定の記載例
正社員化コースは、正社員転換制度を就業規則または労働協約に規定していることが必須要件です。転換規定がない状態で正社員化を進めても、支給申請時に対象外となります。就業規則への記載例は以下のようなイメージです。
第○条(正社員への転換)
1. 会社は、次の各号のすべてに該当する有期雇用契約社員・パートタイム社員のうち、正社員への転換を希望する者について、正社員登用試験を実施するものとする。
(1)勤続6か月以上の者
(2)人事考課において一定の評価を得た者
(3)所属長の推薦を受けた者
2. 前項の試験に合格した者は、次期を基準日として正社員に転換する。
3. 正社員転換の時期は、原則として毎年4月1日および10月1日とする。
上記はあくまで一例で、実際の就業規則は事業所の実態に応じて調整が必要です。就業規則の変更後は、事業所所在地を管轄する労働基準監督署への届出も忘れずに行いましょう。
正社員化コースで不支給になりやすい5つのポイント
正社員化コースは要件が細かく、書類の不備や順序の誤りで不支給・差戻しとなるケースが多い助成金です。特に以下の5点は不支給の典型例なので、事前チェックが欠かせません。
- キャリアアップ計画書を正社員転換日の前日までに提出していない
- 就業規則に正社員転換制度が規定されていない状態で転換を実施
- 転換後6か月間の賃金増額が3%未満(時間外手当や賞与を含めて計算してしまい実質2.8%等。令和8年10月1日以降の転換では、選択制企業年金の掛金を含めて計算してしまうケースにも注意)
- 正社員転換日の6か月前から1年経過日までの間に、事業主都合の離職者を発生させている
- 正社員化した労働者が事業主の3親等以内の親族に該当
なお、正社員転換後に「試用期間」を設けた場合は注意が必要です。試用期間中は正社員とみなされず、「有期→正規」で申請しても「無期→正規」の区分として受理・審査され、支給額が半減する可能性があります。原則として、正社員転換前の見極めで対応し、外部採用時のような試用期間は設けないことが推奨されています。
正社員化コースに関するよくある質問
選択制の企業型確定拠出年金(DC)の掛金は、賃金3%増額の計算に含められる?
令和8年10月1日以降の正社員転換等からは、原則として含められません。生涯設計手当などを原資とする選択制の企業型確定拠出年金(DC)・確定給付年金(DB)の掛金は、社会保険料の算定基礎(標準報酬)に含まれない場合、助成金上の「賃金」に該当しないものとして3%増額の算定対象外となります。従業員が掛金を選択したことで給与の見かけの額が増えていても、その分は増額としてカウントされないため、掛金を除いた基本給・固定手当のみで3%以上の増額を満たす必要があります。選択制DC・DBを導入している企業は、転換前に賃金上昇要件確認ツールで試算し直してください。
契約社員・パート・派遣社員を正社員にしたらいくらもらえる?
雇用形態と企業規模によって異なります。中小企業の場合、有期雇用の契約社員・パートを正社員化した場合は40万円(重点支援対象者は80万円)、無期雇用の場合は20万円(重点支援対象者は40万円)です。派遣社員は全員が重点支援対象者③に該当するため、中小企業が有期派遣社員を正社員として直接雇用した場合は80万円、無期派遣社員の場合は40万円を受給できます。
正社員化コースの必要書類・提出書類は何?
支給申請時に必要な主な書類は、支給申請書(様式第3号)、正社員化コース内訳(別添様式1)、支給要件確認申立書、キャリアアップ計画書の写し、就業規則(転換前・転換制度規定後の両方)、雇用契約書、賃金台帳(転換前6か月・転換後6か月)、出勤簿またはタイムカード、賃金上昇要件確認ツール等です。重点支援対象者や加算適用時は追加書類が必要です。最新様式は厚生労働省の「申請様式ダウンロード(キャリアアップ助成金)」ページから入手してください。
就業規則にはどんな正社員転換規定を書けばいい?
就業規則には、①転換の対象者、②転換の要件(勤続期間・人事考課・所属長の推薦等)、③転換の手続き(試験・面接等)、④転換の時期を明記します。既存の就業規則に転換規定がない場合は、支給申請前に必ず追加する必要があります。就業規則の変更後は、事業所所在地を管轄する労働基準監督署への届出も忘れずに行いましょう。
正社員転換後に「試用期間」を設けることはできる?
正社員待遇の適用の有無にかかわらず、正社員転換後に試用期間を設けている場合、当該期間は正社員とみなされません。試用期間中は非正規雇用(無期)とみなされるため、「有期→正規」の申請であっても「無期→正規」の申請として受理・審査され、支給額が半減する場合があります。正社員転換を希望する者の見極めは原則として転換前および転換時に行い、外部採用時に設けるような試用期間は設けないことが推奨されています。
新卒採用者(新規学卒者)はキャリアアップ助成金の対象になる?
新規学卒者で、事業主に雇い入れられた日から起算して1年未満の者は支給対象外となります。ただし、新規学卒者であっても、雇入れから1年以上が経過した後に正社員転換を行った場合は支給対象になり得ます。この規定は、既卒でない新規学卒者の初期的な雇用形態変更を助成対象から除外することで、真に困難な状況にある非正規雇用労働者への支援を重点化する目的で設けられています。
キャリアアップ助成金でいう「正社員」の定義は?
キャリアアップ助成金における「正社員」とは、就業規則または労働協約に基づき、「賞与または退職金の制度」のいずれか1制度以上が設けられており、かつ「昇給」の制度が正規雇用労働者に適用されていることが要件です。単に「正社員」と名称を変えるだけでは対象になりません。「賞与または退職金」と「昇給」の両方が転換時点で適用される正社員への転換でなければ、支給対象外となります。
派遣社員を正社員にする場合の費用負担・助成額は?
派遣社員を直接雇用(正社員化)する場合、派遣会社との派遣契約に定められた紹介手数料が発生することがあります。ただし、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を活用すれば、正社員化後の助成として中小企業なら最大80万円(有期派遣→正規の場合)を受給できます。派遣労働者は重点支援対象者③に該当するため、通常の有期雇用転換より優遇された金額が適用されます。派遣先で6か月以上継続して同一の組織単位で業務に従事していることが要件です。
正社員化コースはいつまで使える?申請期限は?
正社員化コースに定められた終了期日はなく、令和8年度(2026年度)も引き続き実施中です。ただし、各取組の支給申請には「取組後6か月の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内」という期限があります。この期間を過ぎると申請できません。重点支援対象者の2期目申請は、正社員化後12か月分の賃金支払日の翌日から2か月以内が期限となります。
正社員化コースの重点支援対象者と重点支援対象者以外の違いは?
重点支援対象者を有期雇用から正規雇用に転換した場合、中小企業なら80万円(40万円×2期)が支給されるのに対し、重点支援対象者以外の場合は40万円(1期のみ)に半減します。重点支援対象者に該当するのは、①雇用期間3年以上の有期雇用労働者、②雇用期間3年未満で過去5年間の正規雇用期間が1年以下かつ過去1年間正規雇用の経験がない者、③派遣労働者・母子家庭の母等・人材開発支援助成金の特定訓練修了者のいずれかです。
正社員化コースで不正受給するとどうなる?
不正受給が発覚した場合、助成金の返還に加えて、受給日の翌日から返還終了までの期間に年3%の延滞金と、返還額の20%が違約金として課せられます。さらに5年間は他の助成金も受給できなくなり、事業所名の公表対象となります。申請代理人にも返還の連帯責務が科せられるため、社労士に依頼した場合も申請者は責任を免れません。詳細は「キャリアアップ助成金の不正受給はなぜバレる?罰則・返還額と実際の事例を紹介」の記事もご参照ください。
参考:キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A 目次
関連記事:キャリアアップ助成金の不正受給はなぜバレる?罰則・返還額と実際の事例
まとめ|正社員化コースで人材確保と処遇改善を同時に実現
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、非正規雇用労働者を正社員化することで、1人あたり最大80万円に加え、1事業所あたり最大80万円の加算も受けられる、中小企業にとって非常に活用価値の高い助成金制度です。
令和8年度のポイントを整理します。
- 受け取るのは事業主:契約社員・パート・派遣社員などを正社員に転換した事業主が対象。従業員本人ではない
- 金額の目安:中小企業で有期雇用→正規雇用なら最大40万円(重点支援対象者は80万円)。派遣社員は重点支援対象者に該当するため最大80万円
- 3つの加算措置を活用:正社員転換等制度規定+多様な正社員制度規定+情報公表加算で、最大80万円(大企業60万円)が上乗せ可能
- 令和8年10月からの算定ルール変更:令和8年10月1日以降の転換では、選択制企業型DC・DBの掛金(社会保険料の算定基礎に含まれないもの)は賃金3%増額の計算に含められない。導入企業は事前に再試算を
- 不支給ポイントに注意:計画書の事前提出漏れ、就業規則への転換規定なし、賃金3%増額未達、事業主都合の離職者発生、3親等以内の親族への適用は不支給の典型例
厚生労働省の雇用関係助成金は、経済産業省系の補助金と異なり、要件を満たせば事後の申請により受給できるのが大きな特徴です。ただし正社員化コースは要件が細かく、書類の不備や順序の誤りで不支給となるケースが多いため、社労士などの専門家に相談することも検討しましょう。申請サポートをご希望の方は、地域別に専門家を探せる「士業ポータル」もぜひご活用ください。
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