中小企業のデジタル化推進が急務となる中、東京都では令和8年(2026年)度も中小企業のデジタル導入を支援する制度を実施します。令和7年度までの「中小企業デジタルツール導入促進支援事業」は、令和8年度から「中小企業デジタル導入促進補助事業」へ名称変更され、助成上限額が前年度の100万円から最大150万円に引き上げられました。あわせて、環境負荷軽減に資するツール導入に対して助成率3分の2が適用される新しい枠も設けられています。
今回は中小企業デジタル導入促進補助事業の概要や申請方法、活用メリットまで詳しく解説します。
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この記事の目次
中小企業におけるデジタルツール導入の現状
人材不足や働き方の多様化への対策として、中小企業におけるデジタル化は大きく発展してきました。2025年版「中小企業白書・小規模企業白書」では、2023年には30.8%だった非デジタル化の割合は、2024年には12.5%まで減少したことが報告されています。
一方で、まだデジタル化に全く取り組んでいない中小企業も一定数存在します。東京商工会議所が2025年1月に公表した「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」では、デジタルシフトを進める上での課題として「コスト負担」が前回調査の3位から1位へと上昇しました。経営コストの高止まりを背景に、コスト負担を懸念する企業が増加していると考えられます。
限られた人材で最大限の成果を上げるためのデジタル化は、中小企業の業績に大きな影響を及ぼします。しかし予算的な余裕の少ない企業では、新しい設備への投資が難しいのが現状です。こうした課題を抱える都内中小企業を後押しするのが、東京都中小企業振興公社が実施する中小企業デジタル導入促進補助事業です。
中小企業デジタル導入促進補助事業とは
中小企業デジタル導入促進補助事業は、都内中小企業等を対象に、デジタルツールの新たな導入補助と、「専門家によるフォローアップ支援」を行う制度です。事業活動のデジタル化の促進を図り、継続的な成長・発展を支援することを目的としています。なお本事業におけるデジタルツールとは、申請時点で一般に販売されているパッケージ製品のソフトウェア・クラウドサービスを指します。製造元や販売代理店のホームページで価格・仕様・サービス内容が公表され、個別問合せを行うことなく直ちに購入できるものが対象です。
令和8年度第1回の主な変更点は、助成上限額が100万円から150万円へ引き上げられたことと、環境負荷軽減枠(助成率3分の2)が新設されたことの2点です。まずは補助事業の概要をみていきましょう。
助成対象事業
助成の対象となるのは、以下両方に該当するものです。
| ■事業活動のデジタル化のためにデジタルツールを新たに導入し、運用を開始すること |
| ■継続的にデジタルツールを活用し、自社業務の成長・発展を図る取組であること |
たとえば以下のような事業が、対象となります。
- 複数の業務改善ソフトウェアまたはクラウドサービス(財務会計・人事労務・給与計算・税務管理等)を新たに導入することで、バックオフィス業務の工数を削減する
- RPAツールを新たに導入し、バックオフィスにかかる単純作業を自動化することで工数を削減する
- グループウェアやコミュニケーションツールを新たに導入することで、社内コミュニケーションの活性化やナレッジ共有を促進する
- マーケティングオートメーションツールを新たに導入し、営業・マーケティング活動の自動化を促進する 等
ただし、申請要件や助成対象経費に該当しないものは、すべて対象外となります。
主な申請要件
対象となるのは、主に以下の要件を満たす中小企業です。
| (1) 次の両方を満たすこと |
| ・申請時に、東京都内に登記簿上の本店または支店があること ・個人の場合は、都内所在地等が確認できること ・東京都内で実質的に事業を行っていること |
| (2) 取組の実施場所が、以下の両方にも該当すること |
| ・申請者の本社、事業所、工場等であること(賃借の場合を含む) ・完了検査時、新たに導入したデジタルツールを使用し、運用を開始していること |
| (3) 以下のすべてを満たすこと |
| ・同一の内容で、公益財団法人東京都中小企業振興公社や国などから、重複して助成金や補助金の交付を受けていないこと ・これまでに当助成事業で採択を受けている場合は、令和8年6月11日時点で、助成金額が確定していること ・対象ツールが過去に採択されたツールと同一目的のものではないこと ・事業税等を滞納していないこと ・過去5年間に、不正等の事故を起こしていないこと ・過去5年間、必要な「企業化状況報告書」や「実施結果状況報告書」等を期日までに提出していること ・助成事業終了後も、引き続き自社の継続的な成長・発展を計画していること ・助成事業の継続について不確実な状況が存在しないこと ・必要な許認可を取得し、関係法令を遵守すること ・暴力団関係者等や風俗関連業を営む者でないこと ・その他、公社が公的資金の助成先として適切でないと判断するものではないこと |
なお、一般財団法人・一般社団法人・特定非営利活動法人(NPO法人)・学校法人・宗教法人・医療法人・社会福祉法人・農事組合法人等は、申請できません。
助成対象経費
助成の対象となる主な経費は、以下のとおりです。
| ソフトウェア導入費、クラウド利用費 |
| ・新たに導入し運用を開始するソフトウェアおよび、クラウドサービスの購入、利用に要する経費(ツール本体) |
| 専用ハードウェア導入費(助成上限75万円) |
| ・ソフトウェアと連携して動作する専用ハードウェア(スマートレジ等)に要する経費 ・設備の稼働・故障状況を可視化するソフトウェアを導入する場合の専用接続機器(OBDスキャンツール等)は助成上限20万円 |
| 関連経費(助成上限50万円) |
| ・上記の導入に伴う初期設定、カスタマイズ、運用・保守サポートに要する経費 |
なお、以下のものは、助成対象外です。
- 消費税・収入印紙代・振込手数料などの間接経費
- 広告宣伝費や広告宣伝に類する経費
- 通信費(携帯電話通話料金、Wi-Fi月額料金、インターネット回線・プロバイダー料金等)
- 顧客が実質負担する費用が、ソフトウェア代金に含まれるもの
- 第三者への賃貸、贈呈、販売等を目的としたツール購入等に係る経費
- 自社製品の購入に係る経費、自社で内製する場合の経費
- 最低限の必要性(数量・スペック)を超える部分に係る経費
- カスタマイズ開発を行う場合等の、要件定義に該当する経費
- OS・セキュリティソフトウェア・表計算・文書作成ソフト等の汎用性の高いソフトウェア
- PC・タブレット・スマートフォン・コピー機・読み取り機器等の汎用機器
- LAN・ルーター等の社内通信環境やテレワーク環境の整備
- ホームページ・WEBアプリ・スマホアプリ等のデジタルコンテンツ制作
- 公的資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費
そのほか、中古品やリースの利用、または著しく古い製品の購入は、認められません。
助成率・限度額
| 助成率 | 1/2(小規模企業者または環境負荷軽減に資するツールを導入する場合は2/3) |
| 助成限度額 | 最大150万円 |
なお申請できる助成金の下限額は、5万円です(小規模企業者は7万5,000円相当)。またデジタルツール導入にかかる初期設定・カスタマイズ・運用、保守サポートに要する費用(関連経費)については、助成上限額が50万円となります。
令和8年度から新設された環境負荷軽減枠は、省エネ・紙資源削減・脱炭素・温室効果ガス排出量低減に直接的に寄与する取組を対象とした制度です。電子レシート・電子請求書・電子契約等の紙資源削減ツール、温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)の算定・可視化ツール等が該当し、申請時に環境負荷軽減計画書の添付が必要です。なお、業務効率化を主目的とするツールは、副次的に省エネ効果があっても環境負荷軽減枠の対象外となります。
助成対象期間
助成対象期間は、2年間です。
第1回採択の場合は令和8年8月1日~令和10年7月31日、第2回採択の場合は令和8年9月1日~令和10年8月31日(予定)となります。デジタルツールの導入は、助成対象期間内に必ず完了させてください。また助成対象となるのは、この期間内に契約・取得・実施・支払および運用開始までを完了した経費のみです。
中小企業デジタル導入促進補助事業の申請について
本事業の申請には「Jグランツ」を使用します。Jグランツの利用には、GビズIDプライムが必要です。取得には2週間程度かかりますので、余裕をもって準備してください。
そのほか、申請の流れやスケジュールをみていきましょう。
申請の流れとスケジュール
申請の主な流れとスケジュールは、以下のとおりです。
(1) 申請
令和8年(2026年)6月11日(木)~7月3日(金)
(2) 審査
令和8年6月11日~令和8年8月中旬
(3) 交付決定
・第1回:令和8年7月末日
・第2回:令和8年8月末日
(4) 事業実施
・第1回:令和8年8月1日~最長で令和10年7月31日
・第2回:令和8年9月1日~最長で令和10年8月31日
(5) 実績報告・検査
事業完了後15日以内に実績報告書を提出
(6) 助成金請求
(7) 助成金の支払い
請求書到着から1か月程度
なお、申請受付期間内でも、予算額に達し次第、受付を終了する場合があります。また申請書類は事務局に到着した順に内容を確認し、不備・不足がないものから審査されるため、日程に余裕を持った申請が重要です。
主な提出書類
申請時に提出が必要な書類は、以下のとおりです。
- 申請前確認書
- 交付申請書
- 履歴事項全部証明書または個人事業の開業・廃業等届出書
- 直近1期分の確定申告書
- 事業税納税証明書
- 住民税納税証明書
- 見積書(税抜100万円超は2社以上必要)
- 仕様書等(関連経費を申請する場合)
- ツール導入にあたってのチェックシート
- 小規模企業者関連書類(該当する場合)
- 環境負荷軽減計画書(環境負荷軽減枠で申請する場合)
申請前確認書と交付申請書は、電子システムに直接入力してください。
中小企業デジタル導入促進補助事業活用のメリット
中小企業のデジタル化では、予算以外にも、専門知識の不足が壁になっています。また導入後、必要な機能を使いこなすには、担当者の研修や専門人材の確保が必要です。
中小企業デジタル導入促進補助事業では、デジタルツールの導入費用補助のほか、専門家によるフォローアップ支援も提供されます。採択後は、助成対象期間内に最大5回まで無料で専門家の支援を受けることができ、ツールの使い方から自社にあった機能の選定、さらなるデジタル化に向けた展望まで、専門家にさまざまな相談ができる制度です。
デジタルツールの導入は、企業の競争力と持続可能性を向上させる取組のひとつ。蓄積されるデータを活用した経営判断や、新たなビジネスモデルの構築も可能になります。
さらに働き方の多様化にも対応できるようになれば、優秀な人材の確保や従業員満足度の向上にもつながります。
中小企業デジタル導入促進補助事業を活用し、専門家のアドバイスを受けることで、時代にあった企業への改革が目指せるのです。
中小企業デジタル導入促進補助事業に関するよくある質問
中小企業デジタル導入促進補助事業の助成上限額はいくらですか?
中小企業デジタル導入促進補助事業の助成上限額は最大150万円、下限額は5万円(小規模企業者は7万5,000円相当)です。なお、専用ハードウェアの経費部分は上限75万円、関連経費(初期設定・カスタマイズ・運用保守サポート)は上限50万円、設備接続用の専用機器(OBDスキャンツール等)は上限20万円という細目があります。
中小企業デジタル導入促進補助事業の助成率はどのくらいですか?
通常の助成率は対象経費の2分の1以内です。小規模企業者(製造業・その他は従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下)または環境負荷軽減に資するツールを導入する場合は、助成率が3分の2以内に引き上げられます。
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。東京都内に納税地・主たる事業所等があり、税務署に提出済みの個人事業の開業・廃業等届出書の控えにより都内所在等が確認できる個人事業主が対象です。なお、一般財団法人・一般社団法人・NPO法人・学校法人・宗教法人・医療法人・社会福祉法人等は対象外となります。
申請受付期間はいつまでですか?
令和8年度第1回の申請受付期間は令和8年6月11日(木)から7月3日(金)までです。ただし、申請受付期間内でも予算額に達し次第、受付を終了する場合があります。また、申請書類は事務局に到着した順に内容を確認し、不備・不足がないものから審査されるため、日程に余裕を持って提出することが重要です。
PCやタブレットの購入は助成対象になりますか?
PC・タブレット・スマートフォン・固定電話・ネットワーク機器・コピー機・読み取り機器等の汎用機器は助成対象外です。ただし、導入するソフトウェアと連携して動作する専用ハードウェア(特定用途で使用するものに限る、例:スマートレジ)は助成対象となります。この場合の助成上限額は75万円です。レンタル利用の場合は対象外です。
クラウドサービスのサブスクリプション利用料も対象になりますか?
対象になります。ただし、助成対象期間内に契約を締結し、使用し、支払いを完了した分に限ります。例えば助成対象期間が令和8年8月1日から令和10年7月31日までの場合、月利用料を翌月払いする契約では、最長で令和10年6月使用分(7月中に口座引き落としが完了する分)までが対象となります。3年契約の場合でも、助成対象期間内に使用した最長2年分のみが対象です。
既に導入済みのソフトウェアのライセンス追加は対象になりますか?
対象外です。既に導入済みのデジタルツールに係るライセンス・ユーザー数等の増台や追加購入、リビジョンアップは助成対象になりません。本事業はあくまで「新たに導入する」デジタルツールを対象とした制度です。ただし、既存のツールに新規機能を追加する場合(例:販売管理ソフトに新たにインボイス制度対応機能を追加)は、新規機能にかかる費用については助成対象となります。
スクラッチ開発のシステム構築費用は対象になりますか?
対象外です。本事業の対象となるデジタルツールは、申請時点で製造元・販売代理店のホームページで価格・仕様・サービス内容が公表され、個別問合せなく直ちに購入できる「市販のパッケージ製品」に限られます。ゼロから開発するスクラッチ開発や、過去の開発実績を再利用して追加開発を行うシステムは対象外となります。
国の補助金との併用はできますか?
同一の内容(経費)で、東京都中小企業振興公社・国・都道府県・区市町村等から重複して助成金・補助金の交付を受けることはできません。また、過去に受けたことがある場合や、本事業の申請時点から交付決定までの間に他の助成金・補助金等に併願申請を行い両方で交付決定を受けた場合は、いずれか一方を取り下げる必要があります。
採択後にどのようなサポートが受けられますか?
採択後は、助成対象期間内に「専門家によるフォローアップ支援」を最大5回まで無料で利用できます。デジタルツールの活用に知見のある専門家が事業実施場所等を訪問し、ヒアリングや現場確認を行ったうえで、デジタルツールの円滑な導入・活用・運用改善・次なるデジタル化に向けた助言を行います。1回あたりの支援時間は2時間以内で、平日9時~17時に利用可能です。
まとめ
中小企業デジタル導入促進補助事業は、都内中小企業のデジタル化を支援する制度です。最大150万円の補助のほか、専門家によるフォローアップ支援によって、デジタル化に対する課題解決を目指します。
令和8年度から助成上限額が前年度の100万円から150万円へ引き上げられ、環境負荷軽減枠(助成率3分の2)も新設されました。申請受付期間は令和8年6月11日(木)から7月3日(金)までで、予算額に達し次第受付終了となるため、早めの準備が重要です。
現代においては、デジタル化は企業の成長力に大きな影響を与えます。中小企業デジタル導入促進補助事業を活用し、初期投資の負担軽減と専門家サポートを受けて、新しい時代の企業改革を目指しましょう。
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