建設業では技能者の高齢化と若手不足が深刻化しており、国土交通省の統計によれば建設業就業者のうち55歳以上が約36%を占める一方、29歳以下は約12%にとどまっています。2024年4月の時間外労働規制適用や、いわゆる「2024年問題」以降、担い手確保と技能継承は待ったなしの経営課題となりました。
こうした状況で、認定職業訓練の実施費用や訓練受講日の賃金を国が助成する制度が、人材開発支援助成金の「建設労働者認定訓練コース」です。都道府県の補助金や他の助成金と組み合わせて活用でき、訓練コストを大きく圧縮できる点が特徴です。
本記事では、2026年度(令和8年度)の最新情報に基づき、対象となる訓練の種類、経費助成・賃金助成・賃金向上助成の3つの助成区分、金額、申請要件、申請手順までをわかりやすく解説します。
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・【★本記事】建設労働者認定訓練コース
・建設労働者技能実習コース
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この記事の目次
建設労働者認定訓練コースとは?【2026年度・令和8年度】
建設労働者認定訓練コースは、中小建設事業主または中小建設事業主団体が認定職業訓練を実施した場合に、その運営費や受講日の賃金を国が助成する制度です。厚生労働省が所管する人材開発支援助成金の1コースとして位置づけられています。
大きな特徴は、都道府県の「広域団体認定訓練助成金」や「認定訓練助成事業費補助金」、あるいは人材開発支援助成金の他コース(人材育成支援コース)と上乗せで受給できる点です。他の助成・補助を受けたうえで、さらに国が経費の一部と受講日賃金を上乗せ助成する二段構えの仕組みになっています。
・対象:中小建設事業主および中小建設事業主団体(職業訓練法人を含む)
・助成区分:経費助成/賃金助成/賃金向上助成・資格等手当助成の3種類
・支給上限:1事業所あたり1年度で1,000万円(賃金助成+賃金向上助成の合計)
・他制度との併給:都道府県の認定訓練補助金・人材育成支援コースと組み合わせ可
建設労働者認定訓練コースの3つの助成区分
建設労働者認定訓練コースは、2026年度時点で3つの助成区分に分かれています。それぞれ目的と支給要件が異なるため、自社の取り組みがどの助成に該当するかを事前に整理しておくことが重要です。
| 助成区分 | 助成内容 |
|---|---|
| 経費助成 | 認定訓練の運営に要した経費のうち、都道府県の補助対象となった額の1/6を助成 |
| 賃金助成 | 建設労働者が認定訓練を受講した日数分の賃金として、1人1日あたり3,800円を助成 |
| 賃金向上助成・資格等手当助成 | 賃金助成の支給決定を受けた事業主が、訓練修了後に賃金5%以上増額または資格等手当支給で賃金3%以上増額を実現した場合、1人1日あたり1,000円を追加助成 |
「賃金向上助成・資格等手当助成」は、賃金助成に上乗せされる第3の助成として、2024年度以降の制度改正で位置づけが整理されたものです。単なる加算ではなく、独立した支給要件と申請期限が定められている点に注意が必要です。
支給対象となる事業主の要件
支給対象は、雇用保険に加入している中小建設事業主または中小建設事業主団体です。認定訓練を実施する職業訓練法人も、経費助成については支給対象になります。
具体的な要件は次のとおりです。
- 「建設の事業」として雇用保険料率が適用されている建設事業主、または建設業法上の建設業許可を受けた事業主
- 労働者を雇用しており、雇用管理責任者を選任していること
- 中小企業の範囲(資本金・従業員数)に該当すること
一方、労働者を雇用していない「一人親方」や、同居の親族のみで建設業を営んでいる事業主は本コースの対象外です。雇用保険適用事業主であることが前提となります。
建設労働者認定訓練コースはいくらもらえる?助成額と上限
2026年度の建設労働者認定訓練コースの助成額は、区分ごとに算定方法が異なります。年度あたりの支給上限が定められているため、複数の訓練を実施する場合は総額の見込みを立てておく必要があります。
経費助成の助成額
経費助成の金額は、都道府県から補助を受けた認定訓練の運営経費のうち、助成対象となった額の1/6です。消費税相当額も支給対象経費に含めることができます。
対象となる中小建設事業主等は、都道府県の「広域団体認定訓練助成金」または「認定訓練助成事業費補助金」の交付を受けていることが要件です。都道府県の補助+国の1/6上乗せという形で、認定訓練の運営費負担が軽減される仕組みです。
賃金助成の助成額(1人1日3,800円)
賃金助成の金額は、建設労働者1人につき、認定訓練を受講した日数×日額3,800円です。受講日1日あたりの金額が固定されており、受講日数に応じて助成額が積み上がる方式です。
賃金助成の主な要件は次のとおりです。
- 受講者が中小建設事業主に雇用されている雇用保険被保険者であること
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の支給決定を受けていること
- 1日3時間以上の受講が算定対象日となること
- 訓練の実施内容が、支給要領別表3「認定訓練における建設関連の訓練の種類等一覧」に該当すること
賃金向上助成・資格等手当助成の助成額と要件
賃金向上助成・資格等手当助成は、賃金助成の支給決定を受けた事業主が訓練後に賃金水準を引き上げた場合に、1人1日1,000円が追加支給される助成です。訓練が処遇改善につながることを促す仕組みとして設計されています。
支給要件は次の2つを満たすことです。
- 訓練開始日の前日から6か月前の日から支給申請書提出日までの間、事業主都合による解雇者を出していないこと
- 下記のいずれかの賃金要件または資格等手当要件を満たすこと
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 賃金要件 | 訓練終了日の翌日から1年以内に、算定対象労働者全員の毎月決まって支払われる賃金を5%以上増加させ、実際に3か月間支払っていること |
| 資格等手当要件 | 就業規則等に資格等手当の支給を規定したうえで、訓練修了日の翌日から1年以内に算定対象労働者全員に手当を支払い、賃金を3%以上増加させていること |
賃金向上助成・資格等手当助成の申請期間は、要件を満たす賃金または資格等手当を支払った日(3か月目の支払日)の翌日から起算して5か月以内です。賃金助成とは別建てで申請する必要があります。
1事業所あたりの支給上限額
賃金助成と賃金向上助成・資格等手当助成の合計は、1事業所につき1年度あたり1,000万円が上限です。年度は支給申請年月日を基準とした4月1日から翌年3月31日までを指します。
複数コースの訓練を計画する場合は、上限に到達しないよう年間の受給計画を立てておくと安心です。経費助成については、都道府県の補助対象経費の1/6という算定式のため、独立した上限額は設定されていません。
助成対象となる訓練は?普通職業訓練・高度職業訓練・指導員訓練
助成対象となるのは、職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練のうち、建設関連の訓練科です。支給要領の別表3で訓練課程・訓練科が明示されており、大きく3つのカテゴリーに整理されています。
| 区分 | 主な訓練課程・訓練科の例 |
|---|---|
| 普通職業訓練(普通課程) | 造園科、木造建築科、枠組壁建築科、とび科、鉄筋コンクリート施工科、建築塗装科、配管科、建設機械運転科、土木施工科、電気工事科ほか(訓練期間1年) |
| 普通職業訓練(短期課程) | 各技能士コース(一級・二級・単一等級、100〜150時間)、監督者訓練(10〜40時間)、板金・とび・配管・建設機械整備等の6か月訓練など |
| 高度職業訓練(専門課程) | 居住システム系(住居環境科・建築科・建築設備科・インテリア科ほか)、土木システム工学科(訓練期間2年) |
| 指導員訓練(研修課程) | 指導方法、専門学科または実技(12時間以上) |
一方、労働安全衛生法上の特別教育や技能講習といった技能実習は、本コースの対象外です。これらは同じ人材開発支援助成金の「建設労働者技能実習コース」の対象となるため、混同しないよう注意が必要です。
支給要領別表3の完全な訓練科リストは、厚生労働省の建設労働者認定訓練コース支給要領の23ページ以降で確認できます。
建設労働者認定訓練コースの申請方法とスケジュール
建設労働者認定訓練コースは、経費助成・賃金助成・賃金向上助成の3区分でそれぞれ申請期間と必要書類が異なります。提出先は雇用保険適用事業所を管轄する都道府県労働局です。
| 助成区分 | 申請期間 |
|---|---|
| 経費助成 | 認定訓練助成事業費補助金または広域団体認定訓練助成金の精算確定に係る都道府県の通知が発出された日の翌日から2か月以内 |
| 賃金助成 | 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)と同じ支給申請期間 |
| 賃金向上助成・資格等手当助成 | 要件を満たす賃金または資格等手当を支払った日(3か月目の支払日)の翌日から5か月以内 |
主な添付書類は次のとおりです。
| 助成区分 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 経費助成 | 助成金支給申請内訳書、経費区分内訳書、認定訓練助成事業費補助金交付決定通知書の写し、補助事業実績報告書の写し、訓練科ごとの経費内訳、受講者名簿およびカリキュラム ほか |
| 賃金助成 | 「人材開発支援助成金支給申請書」等の写し、電子申請の場合は「対象労働者一覧」 ほか |
| 賃金向上助成・資格等手当助成 | 建設労働者認定訓練コース支給決定通知書の写し、確認シート(建認様式第4号別紙1)、賃金増額改定前後3か月分の賃金台帳、雇用契約書、資格等手当を規定した就業規則 ほか |
各様式は「建設事業主等に対する助成金申請様式ダウンロード」から入手できます。電子申請は雇用関係助成金ポータルからも可能です。
建設労働者認定訓練コースに関するよくある質問
最後に、建設労働者認定訓練コースについて事業主から寄せられることの多い質問と回答をまとめます。一人親方や同居の親族のみで建設業を営んでいる場合は対象になる?
対象になりません。本助成金は、建設労働者を雇用して建設事業を行う建設事業主を対象としており、建設労働者を雇用せずに自ら建設業を行う「一人親方」や、同居の親族のみを使用して建設事業を行う事業主は、法律上の建設事業主に該当しないため、支給の対象外です。
外国人技能実習生も助成対象になる?
外国人技能実習生も助成対象となります。ただし、対象労働者の技能実習計画と訓練等の受講内容に齟齬がないよう留意する必要があります。事前に技能実習計画と認定訓練の科目が整合しているかを確認しておくと安心です。
「中小建設事業主」とは具体的にどんな企業を指す?
建設業では、資本金3億円以下または常時雇用する労働者数300人以下の事業主が中小企業事業主の範囲に該当します。加えて、「建設の事業」として雇用保険料率が適用されていることや、雇用管理責任者を選任していることが要件となります。詳細は雇用保険適用事業所ごとに管轄労働局で判断されます。
賃金助成と賃金向上助成・資格等手当助成は同時に受給できる?
同時に受給できます。むしろ賃金向上助成・資格等手当助成は、賃金助成の支給決定を受けていることが前提条件です。ただし申請期間が異なるため、それぞれ別のタイミングで支給申請書を提出する必要があります。両者の合計額が1事業所あたり年間1,000万円までという上限に該当します。
認定訓練を受講したが修了試験に不合格だった場合も助成対象になる?
助成対象となります。算定対象となる建設労働者は、雇用保険被保険者である建設労働者であって、実際に訓練を受けた時間数が受講時間数の7割以上の者と定められており、修了証が発行されなかった場合でも助成対象とすることができます。
認定訓練とは?どんな訓練が対象になる?
認定訓練とは、職業能力開発促進法第24条第1項に基づき都道府県知事の認定を受けた職業訓練または指導員訓練を指します。本コースでは、このうち建設関連の訓練科(普通職業訓練の普通課程・短期課程、高度職業訓練の専門課程、指導員訓練の研修課程)が助成対象です。労働安全衛生法上の特別教育や技能講習は含まれません。
雇用管理責任者にはどんな人を選任すればいい?
法令上、特定の資格は必要ありませんが、建設労働者の雇用管理について責任を持つ性格の役割のため、支店の労務安全部長、総務部長、現場の事務所長など、事業所内で一定程度の地位にある者で、雇用管理に関する相当の実務経験を有する方を、事業場ごとに選任してください。選任方法は辞令交付・口頭など事業主に任されています。
他の助成金や国・地方公共団体の補助金と併給できる?
原則として、同一の事業主による同一の行為を根拠として複数の助成金を同時受給したり、同一の経費や賃金の支出を対象として複数の助成金を受給することはできません。ただし本コースは、都道府県の広域団体認定訓練助成金や認定訓練助成事業費補助金、人材育成支援コースを受給していることが前提の「上乗せ助成」として設計されており、これらとの併給は制度上想定されています。判断に迷う場合は事前に管轄労働局に相談することを推奨します。
賃金向上助成の「賃金5%以上増加」はどう計算する?
算定対象労働者ごとに、賃金改定後3か月間の毎月決まって支払われる賃金の総額と、改定前3か月間の賃金総額を比較し、全ての算定対象労働者について5%以上増加していることで判定します。時給・日給・出来高払い等で月ごとに変動する場合は、「労働日に通常支払われる賃金の額」に「所定労働日数」を乗じた額での比較も可能です。定期昇給による増額分も含めて計算できます。
「建設労働者技能実習コース」との違いは?
建設労働者認定訓練コースは職業能力開発促進法上の「認定職業訓練」を対象とするのに対し、建設労働者技能実習コースは労働安全衛生法上の特別教育・技能講習・登録基幹技能者講習など「技能実習」を対象とします。同一の訓練で両コースを重複して受給することはできず、認定訓練コースの要件を満たす訓練は技能実習コースの対象外となります。
まとめ
建設労働者認定訓練コースは、都道府県の補助金や人材開発支援助成金の他コースに上乗せして受給できる、中小建設事業主向けの助成制度です。経費助成(都道府県補助対象経費の1/6)、賃金助成(1人1日3,800円)、賃金向上助成・資格等手当助成(1人1日1,000円)の3区分で構成され、1事業所あたり年間1,000万円まで受給できます。
対象となる訓練は、普通職業訓練の普通課程・短期課程、高度職業訓練の専門課程、指導員訓練の研修課程で、建設関連の幅広い訓練科がカバーされています。建設業の担い手不足や技能継承への対応として、計画的に活用したい制度です。
申請にあたっては、区分ごとに申請期間や必要書類が異なるため、都道府県の補助金交付状況や人材育成支援コースの支給決定タイミングを踏まえ、早めにスケジュールを立てておくことが大切です。
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