今回紹介するのは平成31年度(平成31年4月1日)より、東京都によって実施される「新製品・新技術開発助成事業」という助成事業です。前回ご紹介した経済産業省の”戦略的基盤技術高度化支援事業”に比べると、エリアが限定されてしまったり補助上限額が低かったりもするのですが、その分、比較的多くの方に使いやすいものとなっているのではないでしょうか。
この記事の目次
1.はじめに
東京都の「新製品・新技術開発助成事業」は東京都に事業所を置く中小企業等が、新製品・新技術などの開発を行う為の試作開発(研究開発)を行う場合、東京都がその経費を対象に助成金(以下:補助金)の交付などの支援を行う事業で、東京都における産業の技術力強化及び新分野の開拓を促進し、産業の活性化を図る事を目的としています。
研究開発分野への支援を目的としている点において、経産省の「ものづくり補助金」の”試作品開発”と似ている部分も多い制度ですが、ものづくり補助金の支援が特定分野における研究開発の達成、事業化及び収益化による生産性の向上を目的としているのに対し、新製品・新技術開発助成事業では産業分野に関わらず、研究開発の達成のみが支援対象となっている為、事業化・収益化などに向けた緻密な事業計画が求められない点では、ものづくり補助金と比べ申請時の負担も少なくなっています。
また新製品・新技術開発助成事業では、対象となる産業分野がものづくり補助金のように特定分野に限定されていない為、幅広い分野で活用を検討することが可能です。
※公益財団法人東京都中小企業振興公社HPより
(公社とは国の全額出資によって設立され、直接監督を受ける公法人です)
2.『ものづくり補助金』と『新製品・新技術開発助成事業』の比較
【ものづくり補助金】”試作品開発”
〇要件を満たす事によって、補助率を最大2/3まで引き上げることが可能
〇共同開発等を行う連携企業(協力者)に対しても補助金の交付が行われる
△補助額の上限は500万~1000万円
△補助金申請の他に、ものづくり高度化法による法認定の申請が必要
△競争的資金の側面が強く、採択率が例年で30%~50%前後と過半を下回る事も多い
△特定基盤技術に定められている分野以外での研究開発は助成対象外
【新製品・新技術開発助成金事業】
〇助成額の上限は1500万円まで
〇新製品・新技術の開発であれば、産業分野に関わらず助成金の交付申請が可能。
〇研究開発のみが助成対象の為、提出が必要な報告書などが少ない
△補助率は最大で1/2まで
△東京都内で実質的な事業活動を行っている中小企業者等でなければ対象外
ものづくり補助金では、やはり補助率の高さが大きな魅力となっているものの、申請作業の負担の大きさや不採択のリスクを考えた場合、個人事業主や小規模企業者などにはややハードルが高い印象もあります。
3.”新製品・新技術開発助成事業”の概要
対象者の範囲
都内の事業所で実質的な事業活動を行う中小企業などが対象で、大企業等の出資により実質的にその支配下にある中小企業(みなし大企業)などは助成の対象外です。
※これから都内で具体的に創業を計画している個人も対象となります。
助成対象となる事業
1.新製品・新技術の研究開発
新機能を付加した製品や、新しい製造技術に関するハード面の研究開発で、試作品の設計、製作、試験評価や改良に関するもの
(事例)
・次世代照明の開発
・高性能計測器の開発
・高機能性塗料の開発
2.新たなソフトウェアの研究開発
システム設計等ソフト面の新たな研究開発で、データ処理装置・情報処理プログラムの開発、改良に関するもので、特定の顧客を対象としていないもの
(事例)
・遠隔ロボット操作システムの開発
・無人店舗運営システムの開発
・ブロックチェーン型アプリの開発
※ブロックチェーンとは、クラウドサービスを利用したデータベースの一種で、情報を分散共有し、その変更を時系列で記録することによって、高い改ざん耐性やシステム全体としての情報損失の回避を実現したシステムです。
3.新たなサービス創出のための研究開発
サービス関連業等において、生産性の向上、高付加価値化を目的に、外部の技術を活用して行う研究開発などで、一定の新規性があり相当程度市場で普及していないもの
※技術的な開発要素を含む必要があります。
助成内容
対象経費
・試作開発の開始から試験評価完了までの期間に係る経費
・原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注費、産業財産権出願
・導入費、専門家指導費、人件費など
※生産、量産については助成対象外となっています。
助成率
・助成対象と認められた経費の1/2以内(限度額は1500万円)
審査について
応募要件の審査とは別に、実際に申請した計画を実行できる事業基盤があるのかについても慎重に審査が行われます。
【資格審査】
・応募要件を満たしているか
・書類に不備がないことの確認
【経理審査】
・財務内容
・事業予算等
【技術審査】
・新規性
・優秀性
・市場性
・実現性
・妥当性
【2次審査】
・公社が定める日時で面接を行い、申請書や補足資料に基づいて申請内容を説明します。
※基本的に日時の変更は出来ないそうです!
事業スケジュール
助成期間は2019年4月1日(月)~2020年12月31(木)
※東京都中小企業振興公社HPより
公募期間
2019年4月5日(金)迄 当日消印有効
4.おわりに
今回は東京都の開発助成金について調べてみました。数ある研究・開発に活用できる補助金の中でも、比較的使いやすい補助金ではないでしょうか。
研究・開発に活用できる補助金は、その目的によって使える補助金が変わってきます。例えば、研究開発・試作品開発の完了を目的としている場合と、その後の量産化・販促までを考えているかで使える補助金は変わってきます。
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