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令和6年度予算概算要求を解読!農林水産省が目指す未来の方向性とは

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近年、気候変動による自然災害の増加や農業施設の老朽化などが農業の持続可能性を脅かすなかで、どのようにして食料の安定供給や国土保全を進めていくかが重要な課題となっています。あわせて、若者や意欲ある農林水産業者が夢を持って農林水産業に取り組めるような環境整備も不可欠です。農林水産省は令和6年度予算でどのような要求をしたのでしょうか。

今回は、農林水産省の令和6年度予算概算要求について概要を紹介します。

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この記事の目次

令和6年度の要求額

農林水産予算総額は2兆7209億円で、対前年度比120.0%となりました。農林水産省は令和6年度予算概算要求で、新しい資本主義のもと、食料安全保障の強化、環境への取り組み、人口減少対策の3つを柱に据えました。これに基づいて、若者や意欲的な農林水産業者が夢をもって業界に参加できるような支援を行い、繁栄する農山漁村を次世代に引き継ぐための方針を打ち出しています。

出典:令和6年度農林水産予算概算要求の骨子

以下の項目は事項要求として提出し、予算編成過程で検討するとしています。

  • 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に係る経費
  • 「総合的なTPP等関連政策大綱」を踏まえた農林水産分野における経費
  • 「食料安全保障強化政策大綱」を踏まえた食料安全保障の強化に向けた対応に係る経費

令和6年度農林水産関係予算の7つのテーマ

農林水産省の概算要求は7つのテーマで構成されています。
ここからは、各テーマの実施予定の事業について、予算の大きい所や新たな予算、予算が増加している所などを抜粋して記載します。(以下、参考・出典:令和6年度農林水産関係予算概算要求の概要

1.食料の安定供給の確保

食料の安定供給の確保に向けた構造転換 ※( )内は令和5年度予算額
水田活用の直接支払交付金等 3050億円 (3050億円) 等
米粉の利用拡大支援対策事業 30億円 (ー) 等
持続的生産強化対策事業 177億円 (160億円) 等
食料・生産資材の安定的なサプライチェーンの確保 2億円の内数 (ー) 等
生産資材の確保・安定供給
国内資源の肥料利用拡大 36億円 (ー) 等
国産飼料の生産・利用拡大 16億円 (ー) 等

【海外依存度の高い品目の生産拡大】
・水田活用の直接支払交付金等(3,050億円):水田を使った麦や大豆、米粉用の米などの戦略的な作物の増産や地域の特色を活かした魅力的な産地作り等をサポートします。

・米粉の利用拡大の推進(30億円):米粉のさらなる普及を目指して、新しい米粉専用の品種の研究や新商品の開発、製粉や食品製造に関する施設や機器の導入を進めていきます。

【農業の生産基盤の強化】
持続的生産強化対策事業(177億円):野菜や果物、茶や薬用植物などの持続的な生産を目指し、農家や農業法人、民間団体の生産や販売の強化、大阪・関西万博への対応など、産地全体の発展を支援します。

【安定的な輸入の確保】
食料・生産資材の安定的なサプライチェーンの確保(2億円の内数):国内での生産だけでは需要を満たせない食材や生産資材の安定的な輸入を確保するため、海外でのサプライチェーン強化に関する取組を行います。

【肥料の国産化・安定供給】
国内資源の肥料利用拡大(36億円):肥料の供給や製造、使用に関わる業者が連携し、国内での肥料の原料供給を強化するための施策を推進します。具体的には、堆肥などの高品質化・ペレット化を進める施設整備、国内の肥料資源の効果的な利用方法の実証や機械導入などを支援し、肥料の価格の急激な上昇に関する調査も行います。

【国産飼料の生産・利用拡大、飼料の安定供給】
国産飼料の生産・利用拡大(16億円):稲わらを中心とする国産飼料の生産や利用の拡大を目的として、耕畜連携等による土地利用の推進や飼料生産組織の強化を通じて、生産者の能力を向上させる取組みを支援します。飼料用とうもろこしの生産増加や収量向上などの施策が予定されています。

これらの取り組みを通じて、どんな社会環境でも日本の食卓を支えること、さらに、国産の肥料や飼料の供給を安定させ、生産の基盤を強化することを目指します。

農産物・食品の輸出の促進
輸出産地・事業者の育成・展開 12億円 (9億円) 等
適正な価格形成
適正な価格形成 2億円 (1億円)
円滑な食品アクセスの確保
持続可能な食品流通総合対策事業 31億円 (ー) 等
食品産業(食品製造業、外食産業、食品関連流通業)の持続的な発展
食品産業における国産原材料の活用を促進する産地との連携強化 20億円 (1億円) 等

【農産物・食品の輸出の促進】
輸出産地・事業者の育成・展開(12億円):海外の規制やニーズに対応するための国内生産や流通体制の転換、及び輸出産地の形成を強化します。また、GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)を通じた伴走支援や、輸出に関する人材の育成・確保を支援します。

【適正な価格形成】
適正な価格形成(2億円):生産コストの指標作成・検証、価格転嫁の実態調査、及び消費者への情報提供や理解醸成のための広報活動等を実施します。

【円滑な食品アクセスの確保】
物流2024年問題への対応 (持続可能な食品流通総合対策事業(31億円)):物流の標準化やデジタル化・省力化、モーダルシフトを推進するための設備・機器導入、そして中継物流拠点であるストックポイントの整備をサポートします。

【食品産業(食品製造業、外食産業、食品関連流通業)の持続的な発展】
食品産業における国産原材料の活用を促進する産地との連携強化(20億円):食品産業の持続的な発展を目指し、国産原材料の活用を推進する産地との連携を強化します。新商品の開発や、AI・ロボット・IoTなどの技術の普及を推進して、人手に依存しない生産能力を確保します。

これらの施策により、農産物や食品の価値を高め、国内外での競争力を強化することを目指します。

2.農業の持続的な発展

多様な農業人材の育成・確保
地域受け皿経営体育成協力金交付事業 27億円 (ー) 等
新規就農者の育成 221億円 (192億円) 等
経営安定対策の充実
収入保険制度の実施 399億円 (306億円)
農業生産基盤の整備・保全
農業農村整備事業 3980億円(3323億円)等
生産性の向上に資するスマート農業の実用化等
スマート農業技術の開発、スタートアップへの総合的支援 100億円(40億円)等

【地域計画の策定とその実現に向けた取組の推進】
地域受け皿経営体育成協力金交付事業(27億円):農地中間管理機構を介して、農地の貸し付けを促進する地域に対する協力金を提供します。

【多様な農業人材の育成・確保】
新規就農者の育成(221億円):就農の為の研修資金や経営開始資金、雇用就農促進資金の提供、機械・施設の導入支援、そして有機農業等の教育強化を行います。

【経営安定対策の充実】
収入保険制度の実施(399億円):収入保険制度の加入者に対し、収入が基準の9割を下回った場合、その差額の9割までを補填するほか、収入保険への加入や事務の推進を支援します。

【農業生産基盤の整備・保全】
農業農村整備事業<公共>(3980億円):農地の大区画化、水利施設の更新・長寿命化、省エネ・再エネ利用、ため池の防災・減災対策、農道・排水施設整備等を推進します。

【生産性の向上に資するスマート農業の実用化等】
スマート農業技術の開発・スタートアップへの総合的支援(100億円):スマート農業技術の開発・改良、新品種の開発、データの連携整備を行うサービス事業体のサービス向上、農研機構の機能強化を推進します。さらに、アグリテックの未来を担う若手人材の育成や、創発的な研究を行う若手研究者を支援します。

新しい農業人材の確保や育成、経営の安定化、農業基盤の強化、そして農業の生産性や効率性を向上させるためのスマート技術の普及等に取り組むことで、若者や意欲ある農業者が夢を持って農業に取り組める環境整備を進めて行きます。

3.農村の振興(農村の活性化)

元気で豊かな農村を次世代へ継承
農山漁村振興交付金 117億円 (91億円) 等
鳥獣被害防止対策とジビエ利活用の推進 122億円 (97億円) 等

【農村の振興】
農山漁村振興交付金(117億円):都市と農山漁村の交流の促進や農村の定住を目的として、四つの要点「しごと」「くらし」「活力」「土地利用」から農村振興を総合的に推進します。これにより、農山漁村の活性化や関係人口の創出・拡大を目指します。

【鳥獣被害防止対策等】
鳥獣被害防止対策とジビエ利活用の推進(122億円)
鳥獣被害防止:侵入防止柵の設置、既存柵の広域的再編、狩猟組織の強化、シカの集中捕獲などの特別対策を実施します。さらに、鳥獣被害対策の専門家の育成や確保、森林におけるシカ捕獲体制の構築等を支援します。

ジビエ利活用の推進:捕獲した鳥獣をジビエとして有効活用するため、広域搬入体制の整備や、皮革利用の促進、情報発信を強化して需要を拡大する取り組みを支援します。

これらの取り組みは、農村の活性化を図ると同時に、農村での生活や仕事の魅力を向上させること、そして農村における鳥獣の被害を減少させることを目的としています。

4.みどりの食料システム戦略による環境負荷低減に向けた取組強化

SDGsの世界的浸透を踏まえた農業者等のチャレンジを全力で応援
みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業 68億円 (32億円) 等
みどりの食料システム戦略推進総合対策 30億円の内数 (7億円の内数) 等

【環境負荷低減と高い生産性を両立する新品種・技術の開発】
みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業 (68億円): 気候変動やスマート農業技術に対応した新品種や育種素材の開発、有機農業の拡大、シャインマスカットの品質低下などの問題解決技術の開発、そして化学農薬の使用量低減技術の開発を支援します。技術開発の結果、社会実装に向けての環境整備も進めます。

【農林水産業・食品産業における環境負荷低減の取組の推進】
みどりの食料システム構築に向けた地域の事業活動支援 (30億円の内数):「みどりの食料システム戦略」の実現に向けて、調達から生産、流通、消費までの各段階に取り組むモデル的先進地区の創出とそれに向けた環境整備を支援します。

この取り組みは、持続可能な食料生産と消費を目指し、環境にやさしい農業と食品産業の推進を中心に据えています。SDGsの目標を踏まえ、農業者や関連産業のチャレンジを強力にサポートすることで、日本の食料生産が環境に優しい形で進化していくことを目指します。

5.多面的機能の発揮

食料供給・農業生産活動の前提となる基盤をしっかりと下支え
多面的機能支払交付金 488億円 (487億円) 等

【農業・農村の多面的機能の維持・発揮を支える】
多面的機能支払交付金 (488億円): 農業・農村の多面的機能を維持・発揮し、地域全体で関わる人々を支えることを目的として、農家や関連する人々が協力して取り組む活動を支援します。また、都道府県などが行う活動組織への伴走支援のサポートも行います。

この取り組みは、農業と農村の持つ多面的な価値や機能を理解し、それを維持・強化するための支援策として位置付けられています。食料供給や農業生産だけでなく、農業の持つ社会的・文化的・環境的価値を守り、次世代へと引き継ぐための重要な取り組みといえます。

6.新たな花粉症対策の展開と森林・林業・木材産業によるグリーン成長

花粉症対策、生産基盤の強化
花粉削減・グリーン成長総合対策 222億円 (161億円) 等
森林整備・治山対策
森林整備事業 1500億円 (1252億円) 等

【花粉症対策、生産基盤の強化】
花粉削減・グリーン成長総合対策 (222億円): 今後30年で花粉発生量を半減させることを目指し、そのためのスギ人工林の伐採や植替えなどの対策を進めます。そして、花粉発生対策と並行して、カーボンニュートラルを達成するための森林、林業、木材産業の総合的な政策も支援します。具体的には、川上から川下までの一貫した取り組みを通じて、新たな交付金の創設などの施策を推進することを計画しています。

【森林整備・治山対策】
森林整備事業<公共> (1500億円):花粉の原因となるスギの人工林の伐採・植替え等を推進し、森林吸収源の機能強化と国土をより耐久性のあるものとするために、間伐、主伐後の再造林、主要な林道の作成や改善を進めていきます。

この取り組みは花粉症の原因となる花粉の発生を削減すると同時に、グリーン成長を促進し、環境に対する影響を減少させるという二つの目的を持っています。花粉症対策としての具体的な活動と、森林・林業の持続可能性向上を目指す施策が、これらの予算を通じて実施される予定です。

7.水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化

水産資源管理の着実な実施
漁業経営安定対策の着実な実施 602億円 (348億円) 等
水産業の競争力強化等
漁業構造改革総合対策事業 100億円 (13億円) 等
漁村の活性化
浜の再生・活性化 50億円(24億円)
水産基盤の整備等
水産基盤整備事業 873億円(729億円)等

【水産資源管理の実施】
漁業経営安定対策 (602億円)
漁業収入安定対策事業: 資源管理に計画的に取り組む漁業者を対象に、漁獲の変動等による減収を補填する制度「積立ぷらす」を実施します。

漁業経営セーフティーネット構築事業: 燃油や飼料の価格上昇等のコストに対する対策や経営改善のための金融支援を行います。

【水産業の成長産業化の実現】
養殖業の成長産業化 (100億円):大規模な沖合養殖システムやマーケットイン型養殖の実証を通じて、養殖業の収益性の向上を目指します。

【漁村の活性化の推進】
浜の再生・活性化 (50億円):漁業者が異なる漁業種類への転換を目指す際の共同利用施設の整備、デジタル技術の活用、デジタル人材の育成、密漁防止策などを推進します。また、遊漁船業法の改正を受けて、遊漁船業者の安全性向上策や、地域の水産業と調和した遊漁船業を推進します。

【水産基盤と漁港機能の再編・強化】
水産基盤整備事業 (873億円):拠点となる漁港の流通機能を強化し、養殖拠点を整備して水産業の成長をサポートします。あわせて、環境変化、CO2排出抑制、藻場や干潟の保全、漁港施設の耐震・耐津波化などの防災・減災対策、環境整備に取り組みます。

ここでは、漁業者の経営の安定、養殖業の収益性向上、漁村のデジタル化と活性化、漁港の安全性や機能強化といった、水産業の持続可能な成長と、関連する地域や施設の強化・活性化を目指す多面的な取り組みに予算が計上されています。

まとめ

令和6年度の農林水産関係予算概算要求では、食料安全保障の強化、環境対応、そして人口減少への対応が中心的なテーマになっていました。

食料安全保障の強化では、国内外の不確実性を乗り越え、国民が安心して食を楽しむための取り組みが進められます。環境への対応としては、みどりの食料システム戦略や新たな花粉症対策の展開、森林・林業・木材産業によるグリーン成長など、カーボンニュートラルを目指す動きや、環境負荷の低減が重要視されています。人口減少への対応では、デジタル技術の活用や地域一体での取組みを通じて、農村の振興や漁村の活性化など、地方の人口減少や高齢化に対する対策が講じられる見込みです。

加えて、予算の大きな部分を占めている森林整備や水産基盤整備なども注目すべきポイントと言えるでしょう。これらの領域に投資することで、持続可能な産業の基盤としての農林水産業の強化を目指す動きが伺えます。

全体として、来年度の農林水産省の予算は、より良い未来のための活動が強化されています。これらの予算の使い方や、どれくらい上記に関連する補助金等があるかなど、引き続き注目していきましょう。

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