東京都は、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策に取り組む中小企業向けに、カスハラ奨励金(正式名称:カスタマーハラスメント防止対策推進事業)として40万円を支給する制度を実施しています。
本年度も引き続き実施されており、令和8年度の募集は6月が予定されています。
本記事では、カスハラ奨励金の詳しい内容や、カスハラ対策の必要性について解説します。
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この記事の目次
カスタマーハラスメントとは?
カスハラとは、顧客や取引先による不当な要求や迷惑行為を指します。
第2条第4号 著しい迷惑行為 暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為をいう。
第2条第5号 カスタマー・ハラスメント ①顧客等から就業者に対し、②その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、③就業環境を害するものをいう。
出典:東京都 カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)
具体的には、以下のような行為が該当します。
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・継続的な、執拗な言動
・拘束的な行動(不退去、居直り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃、要求
出典:厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
カスハラは、従業員の精神的・肉体的負担を増大させるだけでなく、職場環境の悪化や企業の生産性低下にもつながる深刻な問題です。そのため、適切な対策を講じることが重要になります。
東京都カスタマー・ハラスメント防止条例とは?
東京都カスタマー・ハラスメント防止条例は、令和7年4月1日に施行された条例で、東京都・事業者・顧客・就業者それぞれの責務を明確化したものです。本条例の施行を契機に、北海道・群馬県など複数の自治体でも同様の条例制定が広がっています。
条例の中核は、「何人も、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならない」という規定です。「あらゆる場」には店舗・窓口での対面対応だけでなく、電話・メール・SNSなど非対面のやり取りも含まれ、企業間取引も対象となります。
事業者には、併せて策定された指針(ガイドライン)のなかで、社内体制の整備・従業員の安全確保・対応マニュアルの策定などが求められています。こうした取組を経済的に後押しする施策が、次に紹介する東京都のカスハラ奨励金(カスタマーハラスメント防止対策推進事業)です。
参考:東京都 「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」を策定しました
東京都カスハラ奨励金の詳しい内容】
東京都カスハラ奨励金の正式名称は「カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金」で、実施主体は公益財団法人 東京しごと財団です。条例が求める対策を実施した都内中小企業に対し、定額40万円が支給されます。
支給対象となるのは、都内の従業員数300人以下の中小企業で、以下の取り組みを行った企業です。
・以下のうち1つの取組
(1) 録音・録画環境の整備
(2) AIを活用したシステム等の導入
(3) 外部人材の活用
カスハラ防止のマニュアルを作成し、防犯カメラの設置などの対策を実施すると、奨励金の支給対象となります。
なお、令和8年度の制度内容はまだ公開されていないため、変更の可能性もあります。最新情報は、公式ページ等でご確認ください。
令和8年度(2026年度)の申請期間について
東京都のカスハラ奨励金は、令和8年度は6月から申請開始される予定です。詳細が決まり次第、特設サイト等で案内されます。
本奨励金は3年間で10,000社への支給を見込んでおり、今後も継続的に募集が行われる見通しです。
これまでの申請受付状況【過去】
令和7年度(2025年度)は、合計3回の申請受付が実施されました。いずれの回も予想を上回る申請があり、早期に受付が終了しています。
| 実施回 | 受付期間 | 受付件数 | 結果 |
| 第1回 | 2025年6月30日開始 (当初8月8日まで予定) | 1,000件 | 7月22日に早期終了 (約3週間で終了) |
| 第2回 | 2025年9月24日開始 (当初10月24日まで予定) | 1,000件 | 9月25日に早期終了 (わずか1日で終了) |
| 第3回 | 2026年3月18日 ※事前エントリー制 (当初2025年12月17日予定が延期) | 2,000件 | 開始から短時間で終了 (約10分程度で終了) |
第3回は、当初2025年12月17日(水)14時から12月24日(水)17時までの期間で受付が予定されていましたが、申請システム「Jグランツ」で障害が発生したことにより延期となり、2026年3月18日10時から事前エントリー方式で実施されました。受付件数も1,000件から2,000件に増加しましたが、開始から短時間(約10分程度)で受付終了となりました。
申請から振込までの流れ
申請はデジタル庁が提供する電子申請システム「jGrants」を通じて行います。

出典:第1回 募集要項
| 申請の流れ |
| (1) 令和7年4月1日以降に、カスハラ防止の取り組みを実施 ※マニュアル作成と実践的な取組(録音機器の導入など)を行う必要があります。 |
| (2) 支給申請書類を作成 |
| (3) 事前エントリーを実施(第3回から導入) ※事前エントリーには「GビズID」の取得が必要です。 |
| (4) エントリー完了後、Jグランツの申請用URLが送付される |
| (5) 書類審査 ※申請から決定通知まで約3~6か月程度。 審査結果により、「支給」または「不支給」の通知が届きます。 |
| (6) 支給決定の場合は、奨励金請求書兼口座振替依頼書を提出 |
| (7) 奨励金が指定口座に振り込まれる(提出から約1か月程度) |
業界団体向けの補助制度も
東京都では、カスハラ防止に向けた取組を広げるため、個別企業向けの奨励金とは異なる「団体向け補助金」も実施しています。
「団体連携によるカスタマーハラスメント防止条例普及促進事業補助金」では、業種別の中小企業等で構成される業界団体が実施するカスタマーハラスメント防止対策と条例の理念等の普及啓発活動を対象に、最大5,000万円を補助します。
| 【主な補助要件】 |
|---|
| 構成員の中小企業等を通じて実施する、下記を満たした広報に要する経費を支援します。 ・顧客等との接点を効果的に活用した取組であること ・カスタマーハラスメント防止対策と条例の理念等の普及啓発に資する取組であること ・条例の理念等を十分に理解した内容の取組であること |
| 【補助率・上限】 |
| 補助率:1/2 補助上限額:1団体当たり5,000万円 |
この補助は、令和7年度に新設されたもので、業界全体での対策促進を目的としています。詳細は「団体連携によるカスタマーハラスメント防止条例普及促進事業補助金」公式ページをご確認ください。
カスタマーハラスメント対策の必要性
最後に、カスタマーハラスメント対策の必要性について、確認しておきましょう。
カスハラは、単なるクレーム対応ではなく、企業の健全な運営や従業員の安全に深刻な影響を及ぼす問題です。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラによる影響として、以下の点を挙げています。
・頭痛、睡眠不足、精神疾患、耳鳴り等の健康不良
・現場対応への恐怖や苦痛による従業員の配置転換、休職、退職
・時間の浪費、業務上の支障
・商品、サービスの値下げ、慰謝料要求への対応、代替品の提供等の金銭的損失
・来店するほかの顧客の利用環境、雰囲気の悪化
従業員への影響としては、精神的な負担が大きく、業務のパフォーマンスが低下することをはじめ、深刻な場合には健康不良や精神疾患を招き、休職や退職につながるケースもあります。一方、企業にとっても、顧客対応にかかる時間的コストが大きく、1時間以上の直接対応に加え、社内での対応方針の検討や、場合によっては弁護士・警察への相談対応が必要となるケースもあります。
こうしたリスクを軽減するためには、企業がカスハラ対策を講じ、従業員が迷惑行為を迅速に認識し適切に対応できる環境を整えることが不可欠です。適切な対策を実施することで、カスハラの被害を防ぐだけでなく、従業員の負担を軽減し、安心して業務に取り組める職場環境の構築にもつながります。
まとめ
東京都では、企業による対策強化を支援するため、実践的なカスハラ防止策に取り組む中小企業に対して40万円の奨励金を支給する制度を実施しています。
令和7年度(2025年度)は第1回~第3回の申請受付が実施されましたが、いずれも予想を上回る申請があり、早期に受付が終了しました。特に第2回は受付開始からわずか1日で終了、第3回は受付件数を2,000件に増やしたものの、開始から約10分程度で終了するなど、非常に高い関心が寄せられています。
令和8年度(2026年度)は、6月から申請受付が開始される予定です。
従業員の安心・安全な労働環境づくりと企業の信頼性向上のためにも、今後の募集情報を確認しつつ、この制度を活用してカスハラ対策を一歩進めてみてはいかがでしょうか。過去の実績から短期間で締め切られる可能性が高いため、申請を希望する場合は事前の準備を進めておくことが重要です。
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