東京都は、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策を実施する中小企業を支援するため、40万円の奨励金の申請受付を開始しました。これは、令和7年(2025年)4月1日に施行された「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」に伴い、企業の対策強化を促進するための施策です。
本記事では、奨励金の概要に加え、カスハラ対策の必要性について解説します。
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この記事の目次
カスタマーハラスメントとは?
カスハラとは、顧客や取引先による不当な要求や迷惑行為を指します。
第2条第4号 著しい迷惑行為 暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為をいう。
第2条第5号 カスタマー・ハラスメント ①顧客等から就業者に対し、②その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、③就業環境を害するものをいう。
出典:東京都 カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)
具体的には、以下のような行為が該当します。
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・継続的な、執拗な言動
・拘束的な行動(不退去、居直り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃、要求
出典:厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
カスハラは、従業員の精神的・肉体的負担を増大させるだけでなく、職場環境の悪化や企業の生産性低下にもつながる深刻な問題です。そのため、適切な対策を講じることが重要になります。
東京都カスタマー・ハラスメント防止条例とは?
東京都は、公正で持続可能な社会の実現を目指し、カスタマー・ハラスメントの防止に関する基本理念を定めるとともに、東京都、顧客、就業者、事業者の責務を明確化する「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を制定しました。本条例は、カスハラ防止に関する施策の基本方針を示し、令和7年4月1日から施行されました。条例には、何人も、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならないと明記されており、企業間取引におけるカスハラも対象となります。「あらゆる場において」とは、店舗や事業所の窓口等における行為だけでなく、電話やインターネット等における行為も含まれます。
また、本指針では、事業者に対し、カスハラ防止のための体制整備や従業員の安全確保、適切な対応マニュアルの策定などを求めています。さらに、東京都は事業者向けの啓発・教育活動や、具体的な対策支援、相談窓口の設置などを実施し、カスハラの防止を社会全体で推進する方針を掲げています。
参考:東京都 「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」を策定しました
全国で広がるカスハラ対策の動き
東京都が令和6年10月に「カスタマー・ハラスメント防止条例」を制定したことをきっかけに、全国でも同様の動きが広がりを見せています。令和7年4月には、東京都に加えて北海道・群馬県でもカスハラ防止条例が施行されました。
これらの条例では、カスタマーハラスメントを「著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と定義し、明確に禁止しています。一方で、正当な要望や意見は業務改善に資する重要な意見として扱われ、顧客の権利が不当に制限されないよう配慮されています。
また、国においても、労働施策総合推進法などの関連法改正に向けた検討が進められており、カスハラ防止に向けた取り組みは、自治体・企業の枠を越えて全国的に広がりつつあります。
東京都カスハラ奨励金の概要【カスタマーハラスメント防止対策推進事業】
東京都は、条例による取組に加え、実践的なカスハラ防止対策を行った中小企業に対し、定額40万円の奨励金を支給する制度を開始しました。支給対象となるのは、都内の従業員数300人以下の中小企業で、以下の取り組みを行った企業です。
・以下のうち1つの取組
(1) 録音・録画環境の整備
(2) AIを活用したシステム等の導入
(3) 外部人材の活用
カスハラ防止のマニュアルを作成し、防犯カメラの設置などの対策を実施すると、奨励金の支給対象となります。
申請方法と期間
「カスタマーハラスメント防止対策推進事業(企業向け奨励金)」について、第3回の申請受付スケジュールが公開されました。
第3回の申請受付期間は、令和7年12月17日(水)14時から12月24日(水)17時までです。
今回は受付件数を1,000件から2,000件に増加し、当初の予定より一部前倒しで実施されます。受付件数の増加に伴い申請処理に時間を要する見込みとなっているので、支給決定までには3~6か月程度を要するとされています。
【早期受付終了の可能性も】
申請件数が2,000件に達した場合は、12月24日(水)17時を待たずに受付を終了するため、申請開始直後から申請が集中する可能性があります。早めの準備を心がけましょう。
申請から振込までの流れ
申請はデジタル庁が提供する電子申請システム「jGrants」を通じて行います。

出典:第1回 募集要項
| 申請の流れ |
| (1) 令和7年4月1日以降に、カスハラ防止の取り組みを実施 ※マニュアル作成と実践的な取組(録音機器の導入など)を行う必要があります。 |
| (2) 支給申請書類を作成 |
| (3) 申請を提出 ※申請には事前に「GビズID」の取得が必要です。 |
| (4) 書類審査 ※申請から決定通知まで約3か月程度。 審査結果により、「支給」または「不支給」の通知が届きます。 |
| (5) 支給決定の場合は、奨励金請求書兼口座振替依頼書を提出 |
| (6) 奨励金が指定口座に振り込まれる(提出から約1か月程度) |
業界団体向けの補助制度も
東京都では、カスハラ防止に向けた取組を広げるため、個別企業向けの奨励金とは異なる「団体向け補助金」も実施しています。
「団体連携によるカスタマーハラスメント防止条例普及促進事業補助金」では、業種別の中小企業等で構成される業界団体が実施するカスタマーハラスメント防止対策と条例の理念等の普及啓発活動を対象に、最大5,000万円を補助します。
【主な補助要件】
構成員の中小企業等を通じて実施する、下記を満たした広報に要する経費を支援します。
・顧客等との接点を効果的に活用した取組であること
・カスタマーハラスメント防止対策と条例の理念等の普及啓発に資する取組であること
・条例の理念等を十分に理解した内容の取組であること
【補助率・上限】
補助率:1/2
補助上限額:1団体当たり5,000万円
この補助は、令和7年度に新設されたもので、業界全体での対策促進を目的としています。詳細は「団体連携によるカスタマーハラスメント防止条例普及促進事業補助金」公式ページをご確認ください。
カスタマーハラスメント対策の必要性
最後に、カスタマーハラスメント対策の必要性について、確認しておきましょう。
カスハラは、単なるクレーム対応ではなく、企業の健全な運営や従業員の安全に深刻な影響を及ぼす問題です。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラによる影響として、以下の点を挙げています。
・業務のパフォーマンスの低下
・頭痛、睡眠不足、精神疾患、耳鳴り等の健康不良
・現場対応への恐怖や苦痛による従業員の配置転換、休職、退職
・時間の浪費、業務上の支障
・商品、サービスの値下げ、慰謝料要求への対応、代替品の提供等の金銭的損失
・来店するほかの顧客の利用環境、雰囲気の悪化
従業員への影響としては、精神的な負担が大きく、業務のパフォーマンスが低下することをはじめ、深刻な場合には健康不良や精神疾患を招き、休職や退職につながるケースもあります。一方、企業にとっても、顧客対応にかかる時間的コストが大きく、1時間以上の直接対応に加え、社内での対応方針の検討や、場合によっては弁護士・警察への相談対応が必要となるケースもあります。
こうしたリスクを軽減するためには、企業がカスハラ対策を講じ、従業員が迷惑行為を迅速に認識し適切に対応できる環境を整えることが不可欠です。適切な対策を実施することで、カスハラの被害を防ぐだけでなく、従業員の負担を軽減し、安心して業務に取り組める職場環境の構築にもつながります。
まとめ
東京都では、令和7年4月1日に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行し、企業による対策強化を支援するため、実践的なカスハラ防止策に取り組む中小企業に対して40万円の奨励金を支給する制度を開始しました。第2回公募は当初10月24日までの予定でしたが、申請が多数寄せられ、予定件数を超過したため、受付開始翌日の9月25日には受付が終了しました。第3回の申請受付については、決まり次第、特設サイト等で案内される予定です。
従業員の安心・安全な労働環境づくりと企業の信頼性向上のためにも、今後の募集情報を確認しつつ、この制度を活用してカスハラ対策を一歩進めてみてはいかがでしょうか。短期間で締め切られる可能性があるため、申請を希望する場合は早めに準備を進めておきましょう。
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