今年度の最低賃金引き上げに向け、賃上げ環境を整えるための支援策が出始めているのをご存じでしょうか。
最低賃金を引き上げた中小企業の雇用調整助成金の要件緩和や、賃上げの土台となる生産性向上を図るための取り組みを支援する助成金・補助金の拡充などが行われています。
現段階では、最低賃金引き上げに関する新たな支援策が打ち出された、というより、既存の助成金・補助金の拡充等が行われているところです。そこで今回は、最低賃金引き上げに関連した、支援の拡充および要件緩和についてご紹介します。
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この記事の目次
最賃引き上げで拡充や要件緩和があった助成金・補助金
まず、最低賃金引き上げを図る中小企業等の生産性向上の取り組みを支援する「業務改善助成金」において、労働者数枠の拡大や助成上限額の引き上げ、コースの新設がありました。
また、コロナ禍での雇用維持を支援する「雇用調整助成金」では、特に業況の厳しい企業への配慮を継続するとともに、年末までは助成率を現行水準以上維持すること、最低賃金が引き上がる10月から12月の3か月間の休業規模要件の緩和等についての方針が示されています。
このほか、先日第3回公募がスタートした「事業再構築補助金」では、最低賃金枠や大規模賃金引上枠の創設、補助上限額の見直しなどがなされています。
業務改善助成金の特例的な要件緩和・拡充
それでは、拡充等の内容を詳しくみていきましょう。
「業務改善助成金」は、賃上げを行うためのベースとなる生産性の向上に取り組んで、事業場内で最も低い賃金の引き上げを図る中小企業・小規模事業者を支援する制度で、設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などにかかる費用の一部が助成されます。これまでは助成額上限は450万円でしたが8月1日から、上限が600万円になりました。
出典:令和3年8月から「業務改善助成金」が使いやすくなります
【対象人数の拡大・助成上限額引き上げ】
新型コロナウイルスの影響により事業の縮小を余儀なくされた事業者などを対象に、「引き上げる労働者数」10人以上の区分ができたことにより、上限額が最大600万円まで拡充されています。
10人以上の上限額区分は、以下のいずれかに該当する事業場が対象となります。
(1)事業場内最低賃金が900円未満の事業場
(2)売上高や生産量などの指標の直近3か月間の月平均値が、前年または前々年の同じ月に比べて30%以上減少している事業者
【45円コースの新設】
現行で最も活用されている30円と60円の中間に、45円コースが増設されたことで、賃金引き上げ額の選択肢が増えました。
このほか設備投資の範囲の拡充も行われ、PC、スマホ、タブレットの新規購入、貨物自動車なども、要件を満たし生産性向上の効果が認められる場合は助成対象になります。
雇用調整助成金等の要件緩和
現在、雇用調整助成金は、緊急事態宣言の実施地域とまん延防止等重点措置の対象地域で1人あたりの日額上限額を15,000円、助成率を最大10/10とする特例が設けられています。対象となる地域以外では、原則として、日額上限が13,500円、助成率が最大9/10となっています。これに関して、年末までは助成率の現行水準以上を確保する方針が示されています。上限額については、感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減していく方針です。
雇用調整助成金等の要件緩和としては、業況特例または地域特例の対象となる中小企業が、事業場内で最も低い時給を一定以上引き上げる場合、10月から12月までの3か月間の休業について休業規模要件が問われなくなります。休業等規模要件とは、休業ののべ日数が所定労働日数の1/40(中小企業の場合)以上であるものとする、支給対象要件の1つです。この要件がなくなることにより、規模の小さい休業も助成金の対象になります。
参考:コロナ禍における最低賃金引上げを踏まえた雇用維持への支援について(雇用調整助成金等による対応)
事業再構築補助金で最低賃金枠等の創設
中小企業等の思い切った事業再構築を支援する「事業再構築補助金」では、最低賃金の引き上げの影響を受け、原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等を対象に「最低賃金枠」を設けて補助率の引き上げを行います。中小企業の場合、通常の補助率2/3のところ、最低賃金枠では3/4になっています。
【要件】
最低賃金枠の要件は、通常枠の要件に加えて、次の2つを満たす必要があります。
・2020年4月以降いずれかの月の売上高が対前年または対前々年比で30%以上減少
・2020年10月から2021年6月の間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いる
【補助額】
補助額は、従業員数規模に応じて最大で1,500万円です。
・従業員数5人以下 :100万円~500万円
・従業員数6~20人 :100万円~1,000万円
・従業員数21人以上:100万円~1,500万円
また、従業員数の多い事業者は最低賃金の引上げの負担が大きいことから、通常枠において、従業員数が51人以上の場合に補助上限が最大8,000万円まで引き上げられます。
このほか、多くの従業員を雇用しながら継続的な賃金引上げに取り組み、従業員を増やして生産性を向上させる中小企業等を対象とした「大規模賃金引上枠」も創設されます。こちらは、最大1億円まで補助されます。
まとめ
今回は、最低賃金の引き上げに関する支援策についてご紹介しました。
支援策として業務改善助成金の拡充や雇用調整助成金の要件緩和、事業再構築補助金における最低賃金枠等の創設等が行われていますが、今年度の最低賃金は過去最大の28円の引き上げ目安が示され、多くの事業者にとっては頭の痛い問題です。
コロナ禍の影響によって経営環境は依然として厳しい状況にあるため、支援策の強化が求められるでしょう。今後、どのような支援策が打ち出されるのか注目されます。
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