「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」は、令和3年度より「先進的省エネルギー投資促進支援事業」に変更になりました。これは事業現場で使用する設備を、よりエネルギー消費効率のよいものに更新する際に活用できる補助金です。令和4年度もまもなく公募が開始されます。5月19日時点で公募要領は公表されていませんが、現段階で明らかになっている先進的省エネルギー投資促進支援事業の内容をまとめました。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
エネルギー消費量減少も課題は残る
2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、各企業でもさまざまな取り組みが行われています。経済産業省資源エネルギー省が公表している令和2年度エネルギー消費統計では、令和2年度のエネルギー消費量は3,660PJで、前年度より3.1%減ったことが報告されました。
出典:経済産業省資源エネルギー省 令和2年度エネルギー消費統計結果概要
2011年から比べてもエネルギー消費量は緩やかに減少していますが、前年の消費量を上回る年もあります。また燃料種別割合では電力が51.9%、石油・石炭製品が21.9%であるのに対し、再生可能エネルギーはわずか1.7%です。
地球を取り巻く環境は刻一刻と変化しています。エネルギー消費量をはじめとした環境問題への対応は、早急に対処すべき課題として世界中で注目を集めています。
令和4年度先進的省エネルギー投資促進支援事業
先進的省エネルギー投資促進支援事業は、5月19日に公表された令和4年度のパンフレットによると、事業区分によって対象経費や補助率等に変更がみられました。
本記事では、公表のない部分に関しては参考までに令和3年度の要件等を紹介します。
出典:事業概要パンフレット
【概要】
工場・事業場において、エネルギー消費効率の高い設備への更新等を支援する制度です。対象となる事業は以下の4つの区分に分類されます。
(A)先進事業
高い技術力や省エネ性能を有し、今後、導入ポテンシャルの拡大等が見込める先進的な省エネ設備等の更新等を行う投資を重点的に支援します。
(B)オーダーメイド型事業
個別設計が必要な特注設備等の導入を含む設備更新や、プロセス改修等を行う省エネ取組を支援します。
(C)指定設備導入事業
省エネ性能の高いユーティリティ設備、生産設備等への更新を支援します。
(D)エネマネ事業
エネマネ事業者と共同で作成した計画に基づくEMS制御と運用改善を行う省エネの取組について支援を行います。
※エネマネ事業者とは、エネルギー管理支援サービスを通じて工場・事業場等の省エネを支援する事業者のことです。
それぞれ要件や補助率が違いますので、項目ごとに見ていきましょう。
対象事業者
いずれの分類でも、全業種の法人及び個人事業主が補助の対象となります。令和3年度の対象事業者の要件は以下のとおりです。
【参考】令和3年度対象事業者要件
①法人及び個人事業主である
②本事業を実施するために必要な経営基盤を有し、事業の継続性が認められる
③所有する補助対象設備を、その処分制限期間、継続的に使用する
④取得した補助対象設備を管理し、補助金の交付の目的に従った運用を図る
⑤補助金等停止措置または指名停止措置が講じられていない
⑥社会通念上、公的資金の交付先として不適切でない
⑦風俗営業を営む事業所等でない
⑧補助対象設備の1年間のエネルギー使用量と省エネルギー効果を成果報告書で提出する
⑨会計検査院による現地検査等の受検に際し、誠実に対応する
対象事業
対象となる事業には共通要件のほか、区分ごとに事業要件と省エネルギー効果の要件があります。
【参考】令和3年度共通要件
・投資回収年数が5年以上である
・省エネ法に基づき作成した中長期計画等に記載されている事業
・経費当たり計画省エネルギー量が、補助対象経費1,000万円当たり1kl以上の事業
・補助対象設備の1年間のエネルギー使用量と省エネルギー効果を報告する
・トップランナー制度対象機器を導入する場合は、その基準を満たす機器である
(A)先進事業
【事業要件】
外部審査委員会で審査・採択した先進設備・システムへ更新等する事業
【省エネルギー効果の要件】
①省エネ率 : 30%以上
②省エネ量 : 1,000kl以上
③エネルギー消費原単位改善率:15%以上
(B)オーダーメイド型事業
【事業要件】
機械設計を伴う設備等のオーダーメイド型設備へ更新等する事業
【省エネルギー効果の要件】
①省エネ率 : 10%以上
②省エネ量 : 700kl以上
③エネルギー消費原単位改善率:7%以上
(C)指定設備導入事業
【事業要件】
予め定められたエネルギー消費効率等の基準を満たし、補助対象設備として登録した指定設備へ更新する事業
【省エネルギー効果の要件】
予め定められたエネルギー消費効率等の基準を満たす設備へ更新すること
(D)エネマネ事業
【事業要件】
予め登録されたエネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、より効果的に省エネルギー化を図る事業
【省エネルギー効果の要件】
省エネルギー率2%以上を達成する事業
省エネルギー効果の要件はいずれも原油換算量ベースです。また、令和3年度までに採択を行った複数年度継続事業は令和4年度も対象となります。
補助対象設備
補助の対象となる主な設備は、以下のとおりです。
◆登録された先進設備
◆機械設計を伴う設備(オーダーメイド型設備)
◆EMS(エネルギーマネジメントシステム)
◆指定設備
・ユーティリティ設備
①高効率空調
②業務用給湯器
③高性能ボイラ
④変圧器
⑤高効率コージェネレーション
⑥低炭素工業炉
⑦冷凍冷蔵設備
⑧産業用モータ
⑨調光制御設備
・生産設備
①プラスチック加工機械
②工作機械
③プレス機
④印刷機械
⑤ダイカストマシン
対象経費
(A)先進事業と(B)オーダーメイド型事業は、前回は設計費、設備費、工事費が対象経費でしたが、今年度は設備費のみ対象となります。
(A)先進事業
設備費のみ(設計費、工事費は対象外)
(B)オーダーメイド型事業
設備費のみ(設計費、工事費は対象外)
(C)指定設備導入事業
設備費
(D)エネマネ事業
設計費、設備費、工事費
補助率、限度額
(A)先進事業と(B)オーダーメイド型事業は対象経費が変わったこともあり、前年度の補助率と比べて大きな変更がありました。
【補助率】
(A)先進事業
中小企業等…10/10以内 ※前年度:2/3以内
大企業等…3/4以内 ※前年度:1/2以内
(B)オーダーメイド型事業
中小企業等…10/10以内 ※前年度:1/2以内
大企業等…3/4以内 ※前年度:1/3以内
ただし、投資回収年数が5年以上7年未満の場合は、中小企業等1/3以内、大企業等1/4以内
(C)指定設備導入事業
指定設備ごとに算出・設定(定額)
(D)エネマネ事業
中小企業等…1/2以内
大企業等…1/3以内
【限度額】
(A)先進事業
上限額…15億円/年度
下限額…事業実施年数×100万円
※複数年事業の1事業あたりの上限額は30億円
(B)オーダーメイド型事業
上限額…15億円/年度
下限額…事業実施年数×100万円
※複数年事業の1事業あたりの上限額は20億円(連携事業は30億円)
(C)指定設備導入事業
上限額…1億円/年度
下限額…20万円/事業全体 ※前年度:30万円
※複数年度事業は認められません
(D)エネマネ事業
上限額…1億円/年度
下限額…100万円/事業全体
※複数年度事業の1事業あたりの上限額は1億円
公募期間
令和4年度公募期間
2022年5月25日(水)~6月30日(木)予定
申請方法
令和4年度の申請方法の詳細は、まだ公表されていません。参考までに、令和3年の申請の流れ等をみておきましょう。
【参考】令和3年度申請の流れ
①計画立案・書類作成
②アカウントの登録
③ポータルにログイン
④ポータルに入力
⑤書類郵送
必要書類
【参考】令和3年度必要書類
事業区分によって必要な書類は違いますが、いずれの場合も提出必須または組み合わせ申請時に提出する必要のある書類は以下のとおりです。
①交付申請書(2枚)
②補助事業に要する経費、補助対象経費及び補助金の配分額
③補助事業に要する経費の四半期別発生予定額
④役員名簿
⑤申請総括表
⑥事業者情報
⑦手続担当申請書
⑧資金調達計画
⑨事業実施に関連する事項
⑩所要資金計画
⑪発注区分表
⑫導入前後の比較図
⑬新設備の配置図
⑭事業場の全体図
⑮事業スケジュール
先進的省エネルギー投資促進支援事業活用のメリット
環境に配慮したクリーンなエネルギー設備は今後、新しい常識として定着していくことが予想されます。環境に対する企業の姿勢は、従業員の宗教意欲や若い労働者への求心力にも大きく影響するでしょう。
しかし、新しい設備の導入には費用が必要です。特に中小企業にとって、予算の捻出は簡単ではないかもしれません。そんなときは返済義務のない補助金制度を利用することで、予算的な問題を軽減することができます。
未来に向けての継続的な改革を目指す企業にとって、先進的省エネルギー投資促進支援事業の活用は助けとなるはずです。
まとめ
企業の規模に関わらず、環境問題は正面から向き合わねばならない課題のひとつとなっています。とはいえ予算的な余裕の少ない企業ほど、そうした改革に伴う痛みは大きくなるものです。
規模が大きくないということは、未来への可能性を秘めている企業であるということでもあります。将来的な規模拡大を目指している企業にとって、技術の更新は必要不可欠です。先進的省エネルギー投資促進支援事業を活用して費用的な支援を受け、未来へ向かって環境とともに歩んでいきましょう。