NPO法人は、社会のさまざまな課題に取り組む団体です。しかしその活動は非営利で、資金的な課題を抱えている団体も少なくありません。そんなときに支えになるのが、国や法人が設置している助成金です。
一般社団法人セブン-イレブン記念財団では、「環境市民活動助成」として、環境保護や地域の課題解決に取り組む団体に助成しています。今回はそのうち、「NPO基盤強化助成」の内容や申請方法をまとめました。
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この記事の目次
助成金を活用したNPO活動の強化方法
多くのNPO法人は、社会的な認知不足による経営上の課題を抱えています。活動の意義や目的を地域や社会へ効果的に伝えられないことで、長く活動を続けるための支援が得られないケースがあるのです。
この問題を解決するためには、NPO自身が自らの存在意義を明確に理解し、発信していくことが不可欠です。「誰のために何をやるのか」「どんな良い変化を生み出すのか」といった点を、わかりやすく具体的に伝えることで、活動への共感と支援を得やすくなります。
たとえば、助成金を活用して、新たなプロジェクトを開始したり、既存の活動を拡大することで、地域社会におけるNPO法人への理解と参加が促進され、社会問題の解決に向けた更なるステップを踏み出すことができます。地域や社会との良好な関係性を築くNPO法人が増えていけば、非営利活動やボランティア活動に対する社会全体の理解も深まります。そして、より多くの人々が社会貢献活動に参加するきっかけにもなり得ます。こうした循環は、社会的な課題の解決そのものにもつながるのです。
セブンイ-レブン記念財団の助成事業
一般社団法人セブン-イレブン記念財団の「環境市民活動助成」は、地域の環境活動を支援する、市民参加の社会貢献の仕組みです。店頭での募金を通じて集めた資金を元に、以下の4つの助成事業を行っています。
■NPO基盤強化助成
地域の環境課題解決のために行う革新的かつ持続可能な自主事業の構築・確立を目指すNPO法人の活動を原則3年間支援 (本記事で紹介する制度)
■未来へつなごう助成
地域の環境課題解決のため、大学生・大学院生が主体となって取り組む活動を1年間支援
■地域美化助成
ごみのない、緑と花咲く街並みをつくる活動を1年間支援
■活動助成
自然環境保護や生物多様性の保全、気候変動対策、体験型環境学習など、市民が主体となって行う環境活動を1年間支援
この制度は、地域の環境問題を地域の市民が主体的に解決する活動を支え、市民主体の、持続可能な地域社会の実現を目的としています。
事業全体の流れは、以下の図も参照してください。
出典:一般財団法人 セブン-イレブン記念財団 助成の仕組みと考え方
3年間で最大1200万円が助成されるNPO基盤強化助成とは
NPO基盤強化助成では、1団体1年あたり最大400万円、3年間で1200万円の助成が受けられる制度です。助成内容や、申請の方法を確認していきましょう。
募集条件
NPO基盤強化助成の助成を受けるには、「環境の保全を図る活動」で認証を受ける必要があります。また、登記してから3年以上の活動実績も必要です。
主な条件は、以下のとおりです。
国内で環境活動を行っていること |
地域住民が主体的に活動していること |
以下のいずれかにあてはまる活動であること ・自然環境保護、保全活動 ・希少な野生動植物種の保護、保全活動 ・エコ活動の推進(食品ロス削減、3R活動など) ・体験型の環境学習 |
NPO法人として3年以上の実績があること |
「環境の保全を図る活動」が活動分野として認証されていること |
3年後の目指す姿が明確であること |
プレゼンテーション発表による審査を受けること |
外部専門家によるコンサルティング |
1回実施の助成報告会にて活動成果を報告すること |
ただし、以下の団体は対象外です。
- 公益社団法人・公益財団法人・観光協会・商店会・商工会
- 政治、宗教活動を目的としている
- 反社会的な勢力と関わりがある
- 子どもへの性犯罪歴のある会員が含まれる
「環境市民活動助成」の概要は以下のとおりです。
出典:一般財団法人 セブン-イレブン記念財団 パンフレット
なお、NPO基盤強化助成以外の助成は、「環境の保全を図る活動」での認証を受けていなくとも応募が可能です。
助成金額と対象経費
【助成金額】
1団体あたり最大400万円(3年間で最大1200万円)
【対象経費】
カテゴリ | 対象項目 |
---|---|
苗木・花苗代 | 苗木、草花の種苗、球根など |
備品費 | 機械、道具、倉庫、参考図書 |
電子機器備品費 | パーソナルコンピューター、デジタルカメラなど |
消耗品費 | 文具、材料、資材、機械燃料、替刃、ごみ袋など |
ごみ運搬・処理費 | ごみ運搬用レンタカー、ごみ運搬時ガソリン費、ごみ処理費、マニフェスト費 |
保険料 | ボランティア保険、レクリエーション保険など |
広告費 | 参加者募集用チラシ・ポスター、ホームページ作成・リニューアル費 |
通信費 | 切手、ハガキ、レターパック、封筒、宅配便 |
賃借料 | 会場、機械、倉庫年間使用料 |
旅費交通費 | 公共交通機関・有料道路利用費、車両ガソリン費、レンタカー代、宿泊費 |
資料作成費 | 参加者配布資料、テキストブック、報告資料 |
外部講師謝金 | 外部講師・専門家への謝金 |
調査費 | 専門家によるデータ収集・分析 |
建築工事費 | 専門業者による建築設備工事 |
事務所家賃 | 団体事務所家賃および共益費 |
人件費 | 常勤専従職員1名の基本給 |
なお、以下の項目には金額の上限があります。
■刈払機:5万円以下
■倉庫:10万円以下
■デジタルカメラ:5万円以下
■パーソナルコンピューター:10万円以下
■タブレット:8万円以下
■プリンター:5万円以下
■ガソリン代:走行距離㎞×20円
■宿泊費:1泊9,000円以下
■外部講師謝金:1日2万円以下
■事務所家賃:1月あたり10万円以下
■人件費:1月あたり20万円以下
また、以下の経費は対象外です。
- 飲食代、食材、飲料の購入費
- 日用品など団体事務所の経費
- レンタル機材の補償、オプション保険
- 個人に帰属する物品
- 化学肥料、除草剤、殺虫剤、農薬
- 保守修繕費
- その他、当財団が不適当と判断した経費 など
申請方法と必要書類
申請はWebで行います。募集期間と申請の流れは、以下のとおりです。
【募集期間】
2024年10月7日(月)~10月31日(木)
【申請の流れ】
①Web申請システムに団体情報を登録する
②募集期間中に、Web申請システムにて必要書類を提出する
【必要書類】
■団体概要 ①定款または規約、会則 ②役員名簿 ③設立経緯や活動理念、概要などがわかる資料 ④活動場所がわかる写真 ⑤活動中の様子がわかる写真 ⑥活動場所の使用許可書 ⑦団体として定めている学習要領、マニュアル ⑧2024年度の団体定期刊行物 ⑨直近1年以内の取材記事 |
■団体全体の活動状況 ①2024年度事業計画書 ②2023年度事業報告書 |
■団体全体の財務状況 ①2024年度収支計画書または活動予算書 ②2023年度収支報告書または活動計算書 ③2023年度賃借対照表 ④2023年度財産目録 |
■法人登記の履歴事項全部証明書(任意団体は不要) 2024年9月1日以降に発行されたもの |
申請書提出時の注意点
申請時の注意点は、以下のとおりです。
■複数購入によって合計金額が1万円以上になる場合、もしくは単価が1万円以上の場合は、見積書の提出が必要です。また、ホームページ作成・リニューアル費と助成金額上限の50%以上の物品では、2社以上の見積書を提出してください。
■旅費交通費の公共交通機関・有料道路利用料、ガソリン代の見積書は、インターネットの経路検索結果をもとに、計算根拠を示してください。
■過去の領収書や、自身で作成した経費一覧表は見積書と認められません。
■購入物品は、可能な限り安価な物を選定してください。
自然の中で育む環境教育など NPO基盤強化助成の決定団体の紹介
2023年度のNPO基盤強化助成では、30件の応募がありました。申請金額の総計は97,936,803円です。ここでは、助成が決定した団体や事業内容をいくつか紹介します。
①いぶり自然学校 |
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■内容:森のようちえん運営と、生きづらさを感じている若者による里山畜養 ■助成金額:400万円 ■分野:環境学習 |
②森のようちえん全国ネットワーク連盟 |
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■内容:自然の中で育む環境教育、保育指導者養成活動 ■助成金額:400万円 ■分野:環境学習 |
➂F.O.P |
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■内容:里山森林と永続的に関わる場所づくり・育成 ■助成金額:400万円 ■分野:環境学習 |
まとめ
地域の課題解決に取り組む団体を地域の力で支えるセブンイ-レブン財団の「環境市民活動助成」は、市民主体の地域社会の実現を目指す取組です。特にNPO基盤強化助成では、3年間で400万円と、大きな支援を受けることができます。
予算的な支援に加え、「市民の募金が助成制度を支える」という循環は、NPO法人と社会とのコミュニケーションの発展にもつながるはずです。本制度を上手に活用して、環境問題の解決を目指しましょう。