政府は、新型コロナの感染拡大により大きな影響を受けている中小企業への支援を拡充するため、新たな経営支援策を盛り込んだ「中小企業成長促進法」を10月1日より施行します。
この法律に基づいて実施される施策には下記の4種類がありますが、政府は2018年1月1日から2023年3月31日までの期間を「事業承継の集中実施期間」と位置づけていることもあり、事業承継の促進については「経営承継借換関連保証」の創設等により特に大幅な支援の拡充が行われることになります。
★中小企業成長促進法の主な施策
1.経営承継借換関連保証による事業承継時の経営者保証解除【経営承継円滑化法】
2.経営革新・経営力向上企業における成長促進など【経営強化法】
3.地域経済を牽引する企業における成長促進等【地域未来法】
4.事業承継等支援体制の整備【産業競争力強化法】
そこで、今回の記事では「事業承継の促進に向けた支援策」をテーマに、これまで政府が実施してきた取り組みと、新たに創設される「事業承継時の経営者保証解除(経営承継借換関連保証)」について紹介したいと思います。
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この記事の目次
事業承継の促進が求められる背景と、政府のこれまでの支援策
国内には現在およそ381万人の中小企業経営者が存在し、2025年までにはそのうちの6割を超える経営者(245万人)が経営者の平均引退年齢といわれる70歳を超える事が分かっています。
少子高齢化が進む日本では中小企業の後継者不足は年々深刻化しており、政府はこれまで国内経済の活性化に向けて中小企業の若返りを実現すべく「承継希望者と後継者のマッチング」「事業承継に係る相続税・贈与税の負担ゼロ」など、様々な施策による事業承継の促進を図って来ました。
令和二年度には政府が新たな事業承継支援策として「事業承継特別保証」という信用保証協会による融資保証制度を創設し、事業承継を予定する法人等を対象に最大8千万円までの無担保・無保証融資(2.8億円まで無保証融資)も可能にしています。
事業引継ぎ支援センターによるマッチングの支援など
「事業引継ぎ支援センター」は、中小企業経営者が取り組む第三者への事業承継(M&A)の支援を目的に設立された、国が運営する公的相談窓口です。
センターは全国47都道府県に開設されており、事業承継とくにM&Aにまつわる相談を中心に受け付けています。
【支援内容(一部)】
・事業承継、M&Aについての基本的な知識についての相談
・事業承継の相手先候補の紹介
・事業承継の具体的な方法についての相談(株式譲渡、事業譲渡など)
・譲渡契約書の作成や株価評価を支援してくれる専門家の紹介
事業引継ぎ支援センター
https://www.jigyo-hikitsugi.jp/
中小企業再生支援協議会による再生支援
「中小企業再生支援協議会」は、中小企業の再生に向けた取り組みを支援するため全国の都道府県に設置されている公的な支援機関です。
中小企業等では事業の収益性はあるものの財務上で問題を抱えているケースも多くみられるため、事業承継後の後継者が事業内容の整理などに取り組む際には専門家によるきめ細かいアドバイスや、再生支援が役に立ちます。
【支援内容】
・面談や提出資料の分析を通して経営上の問題点や具体的な課題を抽出
・必要に応じて関係支援機関や支援施策を紹介
・専門家(中小企業診断士、弁護士、税理士等)による再生計画の策定支援
・計画策定後の定期的なフォローアップ、アドバイス
中小企業再生支援協議会について ※中小企業庁HPhttps://www.smrj.go.jp/supporter/revitalization/index.html
事業承継税制による、相続税・贈与税ゼロの措置
「事業承継税制」は、経営承継円滑化法による認定を受けた後継者が非上場会社の株式(法人)又は事業用資産(個人)を先代経営者等から受け継ぐ場合に、贈与税・相続税の納税が猶予又は免除される制度です。
経営承継円滑化法による認定を受けることで贈与税等が一定期間猶予される一般措置と、更に事業承継後に一定期間経営を継続することで全額の免除が受けられる特例措置の二つが設けられています。
制度の詳しい利用方法等については下記のリンクをご参照ください。
事業承継税制について ※中小企業庁HP
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zeisei.htm
信用保証協会による信用補完制度「事業承継特別保証」
事業承継時に大きな障壁となる「経営者保証」の問題を解決するため令和2年4月から開始された制度で、信用保証の一般枠の範囲(2.8億円)内で事業承継時に必要な経営者保証を不要とするものです。
既に保証付きの融資を受けている経営者の方も、借換によって現在の経営者保証を解除する事が可能です。
事業承継時の経営者保障解除に向けた総合的な対策
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/hosyoukaijo/index.htm
中小企業成長促進法によって追加される新たな支援策は?
新たな信用保証制度「経営承継借換関連保証」とは?
「経営承継借換関連保証」とは、これまでの「事業承継特別保証」の信用保証枠である2.8億円に加え、「経営円滑化法」に基づく経済産業大臣の認定を条件に、特別枠として更に2.8億円の信用保証枠(経営者保証なし)が利用できる制度です。
実質的に令和2年4月1日より実施されている「事業承継特別保証」の拡充にあたる制度で、承継に合わせた保証債務の借り換えに利用することができるため、経営者保証(個人保証)が障壁となり事業承継を断念していた方などにとって魅力的なものとなっているのではないでしょうか。
【開始時期】
令和2年10月1日
【対象者】
3年以内に事業承継を予定する法人
【資格要件】
①資産超過であること
純資産がプラスであること
②返済緩和中ではないこと
ただし、新型コロナの影響により条件変更を行った事業者に限り除外
③EBITDA有利子負債倍率が10倍以内であること
=(借入金・社債ー現預金)÷(営業利益+減価償却費)×10以内
④法人・個人の分離がなされていること
法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されており、法人のみの資産・収益力で借入返済が可能であると判断されること
【対象資金】
事業承継時までに必要な事業資金
・事業承継前の経営者保証付き融資の借換資金※プロパー融資の借換も可
【保証期間】
10年以内
【保証額】
2億8千万円(うち無担保8千万円)
【保証利率】
0.45%~1.90%
※経営者保証コーディネーターによる確認を受けた場合は0.20%~1.15%
【制度の利用方法】
信用保証協会が受付窓口となるため、お近くの信用保証協会にて制度利用について直接ご相談いただく必要があります。
事業承継特別保証と経営承継借換関連保証の関係
まとめ
今回は政府が実施している中小企業の事業承継支援策について、これまで実施されてきた様々な制度と、新たに施行される「中小企業成長促進法」に基づいて実施される新たな信用保証制度「経営承継借換関連保証」について紹介いたしました。
少子高齢化が進む国内では親族間での事業承継等も難しくなってきているため、円滑に事業承継を成功させ事業を後世に残すためには政府の支援制度を有効に活用することが重要です。
事業承継の際に活用できる補助金・助成金、融資制度、マッチング支援など、詳しい情報が知りたい場合にはお気軽に補助金ポータルまでお問合せください。
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