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意識改善助成金と所定労働時間
どんな業界でも、限られた時間の中で効率良く働き、業務時間を減らしながら成果を残していく業務態度が経営層からも働く従業員からも望まれます。このような改革を行っていくための経費を補助するのが、厚生労働省が実施している職場意識改善助成金・所定労働時間短縮コースです。労働基準法の一つである、法定労働時間は原則週40時間と定められていますが、特例として44時間を認められている企業が40時間に削減する場合に用いられます。
受給の対象企業は?
こちらの助成金はどの企業も受けられるわけではなく、労働基準法の特例として法定労働時間が週44時間とされている企業(特例措置対応事業場)で且つ下記のいずれかに該当する企業が対象となります。これらの企業で週所定労働時間が40時間を超えているものにおいて、週所定労働時間を2時間以上短縮して40時間以下とする措置をとる場合に助成されます。
※業種
特例措置対応事業場とは
特例措置対応事業場として示されているのは下記の4項目です。
①商業(物販の販売、配給、保管もしくは賃貸または理容の事業)
②映画・演劇場(映写、演劇その他興行の事業。※映画の制作を除く)
③保険衛生業(病者または虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業)
④接客娯楽業(旅館、料理店、飲食店、接客業または娯楽場の事業)
サービスや接客、医療系が主で、勤務時間が長くなりがちな職業ですね。
受給の対象となる内容は?
ではどのような取り組みが助成の対象になるのか見ていきましょう。
まず、助成を受けるには下記1つ以上を実施することが求められます。
○労務管理担当者に対する研修
○労働者に対する研修、周知・啓発
○外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
○就業規則・労使協定等の作成・変更(所定労働時間に関する規定の整備など)
○労務管理用ソフトウェアの導入・更新
○労務管理用機器の導入・更新
○デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
○テレワーク用通信機器の導入・更新
○労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、飲食店の自動食器洗い乾燥機など)
具体的な取り組み例を調べてみた
では具体的な受給例をいくつか見て見ましょう。
外部の専門家によるコンサルティング費用
外部の専門家に、業務体制の現状の把握や、問題点や原因の解明、対策の検討といったコンサルタント業務を委託した場合などです。外部の専門家とは、社労士、中小企業診断士、経営コンサルタントなどがあたるほか、長時間労働などによる健康面の専門家である、医師や保健師、労働衛生コンサルタントなども該当します。
労務管理担当者に対する研修
管理職等に対して、労働時間や年次有給休暇について、労働者の生活と健康に配慮したり、多様な働き方について理解を深め、改善に向けて取り組むために、外部講師を招いた研修を実施したりする場合が該当します。外部で開催されるセミナーに参加する場合なども該当します。
労働者に対する研修、周知・啓発
例えば外部の講師を招いた研修の実施や、ノー残業デー、ノー残業ウィークの実施、2週間程度の長期休暇制度の導入など、取得しやすい雰囲気づくりにかかる啓発活動などが該当します。
受給金額とルール
受給の金額ですが、取り組みの実施に要した経費の一部を目標達成した場合に支給され、目標達成の場合の補助率は3/4(支給上限額は50万円)となります。
しかし、未達の場合は0となります。
申請方法を調べてみた
受給手続きは次のような流れになります。
①必要書類の提出
②事業の実施
③支給の申請
※③は、実施計画に沿って計画を実施し、事業を完了してから1カ月以内、もしくは2月末日の早い段階で、申請に必要な書類を提出すること。
受給の手続きには下記の申請書をそろえる必要があります。
①必要書類の提出で必要になるのが下記の書類です。
<事業実施承認申請用>
・事業実施承認申請書の原本
・事業実施計画の原本
・労働災害補償保険の適用事業主であることを確認するための書類
・中小企業事業主であることを確認するための書類
・労働基準法施行規則第25条の2の規定により法定労働時間が週44時間とされている事業場を有する事業主であることを確認するための書類
・見積書(事業を実施するために必要な経費の算出根拠となるもの)
・事業に取り組む前の週所定労働時間を確認するための書類
<事業実施計画の変更用>
・事業実施変更申請書の原本
・事業実施計画
・見積書(変更後の事業を実施するために必要な経費の算出根拠となるもの)※複数必要
次に③支給の申請で必要になるのが下記の書類です。
・支給申請書
・事業実施計画の写し
・前年度および前々年度の労働保険料の納付・領収書写し
・事業実施結果報告書
・労働時間等設定改善委員会の設置等労使の話し合いに機会について、客観的に話し合いが行われたことがわかる資料
・労働時間等に関する個々の苦情、意見及び要望を受け付けるための担当者の選任について、どのように周知したかがわかる資料
・労働者に対する事業実施計画の周知についてどのように周知したかがわかる資料
・費用を支出したことが確認できる資料
・事業を実施したことが客観的にわかる資料
・成果目標の達成状況に関する証拠資料
と、揃えるものが多いのでよく確認しておきましょう。
まとめ
職場意識改善助成金・所定労働時間短縮コースは審査が厳しく、助成金額も他の制度に比べて少なめとも言われている制度です。特例措置対応事業場は、職場の抜本的改革に検討してみるのも良いと思います。審査は厳しい上に時間がかかったりもするので、申請を検討する際にはコンサルタントに相談してみるのが良いでしょう。
※参考:[5訂版]雇用関係助成金 申請・手続きマニュアル/日本法令
都道府県労働局労働基準部監督課
http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/
職場意識改善助成金(所定労働時間短縮コース)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082311.html