近年、後継者不足や客足の減少を背景とした商店街の衰退が大きな問題になっています。東京都では都内商店街の活性化を図るため、商店街起業・承継支援事業を実施しています。これは都内の商店街で新規開業や既存事業の後継を行う企業を支援する制度です。令和6(2024)年度から、3年目の店舗賃借料も補助対象になりました!
今回は商店街起業・承継支援事業の内容や申し込み方法についてまとめました。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
商店街起業・承継支援事業とは?
商店街起業・承継支援事業は中小小売商業者の開業等において、店舗の改装や設備導入等の経費の一部を助成するものです。商店街における開業者や事業後継者の育成、支援を行なうことで、地域経の発展に寄与することを目指します。
助成の内容は、「開業」「多角化」「事業継承」の3つにわかれています。それぞれ要件や助成対象が違いますので、申請の際には対象事業がどこに該当するのかを必ず確認をしてください。
商店街起業・承継支援事業 助成対象事業
商店街起業・承継支援事業の3つの区分、「開業」「多角化」「事業継承」の対象事業や内容は、それぞれ以下のとおりです。
①開業
開業予定者が、都内商店街で新規に実店舗を開設する場合に利用できます。対象となるのは、都内に限らず、申請時点で実店舗を持っていない場合のみです。ただし、実店舗を持たずにネットショップ等で営業活動をしている方が、新たに店舗を開設する場合は対象となります。
なお「実店舗」には、自治体等が運営するチャレンジショップや利用日時が制限されているシェアキッチン等は含まれません。
②多角化
すでに実店舗を持つ中小企業者が、既存事業とは異なる分野へ進出するために都内商店街で新たな店舗を開設する場合に利用できます。
③事業承継
中小企業者の後継者が都内商店街で既存事業を引継ぐ際、店舗改装等をする場合に利用できます。ただし、以下のいずれかに該当することが条件です。
■継承する事業を営んでいる店舗で引き続き事業を行うとき
■都内商店街に店舗を移転し、事業を行うとき
なお被承継者が生存している場合は、第三者の承継でも構いません。
商店街起業・承継支援事業 助成対象者
対象となるのは以下の申請要件のうち、「開業」は①~③、「多角化」は①~④、「事業継承」は①~③と⑤を、それぞれすべて満たすものです。
①次のいずれかに該当すること【共通】 |
---|
■創業予定の個人 ■中小企業者(会社または個人事業者) |
②次のすべてを満たしていること【共通】 |
---|
■交付決定日から1年以内に開業(開店)すること ■都内商店街において開業等する業種が、補助対象業種に該当すること ■申請時点で、当該商店街にある商店街振興組合の代表者等から出店の確認が取れていること ■必要な許認可等を取得すること ■以下のいずれかの方法で経営に関する知識を有していることを、証明書等で証明できること ・申請日までに1年程度の経営実務経験を有している ・経営等に関する資格を有している ・経営知識の習得研修を受講している、もしくは開業までに受講する ■以下のいずれかの方法で申請する事業に関する実務知識を有していることを、証明書等で証明できること ・開業する業種と同業他社で1年程度就業している ・事業に必要な資格を有している ・開業する業種の店舗運営に関わる実務研修を受講している、もしくは開業までに受講する ■大企業、もしくは大企業が参画している企業のフランチャイズ加盟業者やその関連でないこと ■申請者等が助成対象期間中および助成事業終了後も、申請店舗における事業にもっぱら従事すること ■商店街組織に加入し、助成事業終了後も加入を継続すること ■個人事業主として開業する場合は、都内を納税地とした開業届の写しを提出すること ■採択後に法人として開業する場合は、本支店登記等により都内所在地が確認できる登記簿謄本を提出すること |
③次の全てに該当すること 【共通】 |
---|
■同じ内容で、他の助成等を受けていないこと ・「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」と「商店街起業・承継支援事業」に併願申請した場合、2事業とも採択基準に達したときは「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」での採択となります。 ■本助成事業の申請は、一個人につき一申請、一店舗に限る ■過去に「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」もしくは「商店街起業・承継支援事業」に採択され、助成金を受給していないこと ■事業税等の滞納や分納をしていないこと ■東京都および公社に対する賃料・使用料等の債務の支払いが滞っていないこと ■過去5年間、国等が実施する助成事業等に関して不正等の事故を起こしていないこと ■過去に公社から助成金の交付を受けている者は、過去5年間に「企業化状況報告書」や「実施結果状況報告書」等の提出に遅延がないこと ■助成事業の継続性について不確実な状況が存在しないこと ■必要な許認可を取得し、関係法令を遵守すること ■事業完了後は関係法令に基づき、必要な手続を遅滞なく行うこと ■暴力団関係者や風俗業関連業等でないこと ■申請に必要な書類を全て提出すること ■その他、公社が公的資金の助成先として適切でないと判断するものではないこと |
④以下の条件を全て満たすこと【多角化】 |
---|
■申請日以前から、申請予定の新規事業を行っていないこと ■既存事業と新規事業は、「業種確認表」で異なる小分類に属していること ■新規事業の業種が、公社の指定業種に該当すること ■「2号店」出店等、単なる事業の事業拡大ではないこと ■既存店舗のリニューアルオープンではないこと |
⑤以下の条件を全て満たすこと【事業承継】 |
---|
被承継者(現経営者)が生存している場合 ■被承継者は基準日の時点で、都内で1 年以上事業を行っていること ■承継者は創業予定の個人または個人事業主であること ■事業承継の手続きは交付決定後に行うこと 被承継者が死亡している場合 ■被承継者は承継者の三親等以内であること ■承継者は創業予定の個人または個人事業主であること。 ■被承継者が死亡日から遡って1年以上前から、都内で事業を行っていたことが確認できること ■被承継者が死亡してから、申請日時点で1年以内であること ■除籍謄本などの写しで、被承継者の死亡日が確認できること ■実績報告書提出の際に、承継者が店舗財産を承継したことが書類の写しを提出すること |
なお、③については助成期間終了時まで、要件を引き続き満たしている必要があります。
助成対象経費と対象外経費
補助の対象となる経費は、以下の2つです。
助成対象経費 | |
①事業所整備費 | 店舗新装・ 改装工事費 設備・備品購入費 宣伝・広告費(上限100万円) |
②店舗賃借料(交付決定日から3年間) |
なお、事業所整備費の「店舗新装 ・改装工事費 」または「設備 ・備品購入費 」の申請は必須です。これら2つの経費が最終的にゼロとなった場合、他の経費も助成対象となりません。
さらに店舗新装・改装工事や賃借料には契約時期等に規定があります。有効期間は募集時期によって違いますので、事前に確認してください。
また、以下の経費は助成の対象ではありません。
- 所有権が申請者に帰属しない店舗新装・改装工事や設備・備品の購入費用
- 契約から支払までの手続きが、助成対象期間内に行われない経費(店舗新装・改装工事費と店舗賃借料を除く)
- 見積書や納品書、請求書等に不備がある場合
- 助成対象事業以外の取引と相殺して支払が行われている場合
- 開業等をした後に発生した経費
- グループ企業、申請者本人や親族の関連会社等との取引による経費
- 自社内製に係る経費
- 一般的な市場価格、工事内容等に対して著しく高額な経費
- 発注する業務を生業としていない事業者との取引の場合
- 商店街の会費
- 振込手数料や交通費などの間接経費
- 租税公課
- 商品の生産費用等、本助成事業の目的にそぐわない経費
- ポイントカード等によるポイントを取得・利用した場合のポイント分
- クレジットカードによる支払いで、助成対象期間中に銀行口座からの引き落しが確認できない場合
- クレジットカードの支払方法のうち、リボ払い、分割払いでの決済によるもの
- 交際費
- 公的資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費
補助率・上限額
補助率は2/3以内で、上限額は、経費区分によって異なります。それぞれの上限額は以下の通りです。
上限額 | |
①事業所整備費 | 250万円 |
②店舗賃借料 | 1年目…180万円・月額15万円 2年目…144万円・月額12万円 3年目…120万円・月額10万円 |
商店街起業・承継支援事業 申請方法
続いて、申請の方法について見ていきましょう。申請は「jGrants」による電子受付または郵送で行います。申請期間は3回に分かれています。該当する事業が対象となる期間を確認しましょう。
申請手続きの流れ
申請書は、ホームページからダウンロードすることができます。記載例も掲載されていますので、参考にしてください。
申請書類はjGrantsか、郵送で提出します。申請から助成金の受給までの流れは、以下のとおりです。太字の部分が、申請者が行う手続きです。
①申請
②審査
③交付決定
④事前支援
⑤事業実施
⑥実績報告書の提出
➆完了検査
⑧請求書の提出
⑨助成金支払い
事業のイメージは、以下の図も参考にしてください。
出典:若手・女性リーダー応援プログラム助成事業 商店街起業・承継支援事業
スケジュール※9月24日更新
申請期間や交付対象者決定等のスケジュールは、それぞれ以下のとおりです。
第1回
■申請書類提出:令和6(2024)年4月15日(月)~5月8日(水)終了
■一次審査(資格・書類審査):5月中旬~6月上旬
■二次審査(面接審査):6月下旬
■助成対象者決定(交付決定日):8月1日(予定)
第2回
■申請書類提出:6月24日(月)~7月17日(水)終了
■一次審査(資格・書類審査):5月中旬~6月上旬
■一次審査(資格・書類審査):7月下旬~9月上旬
■二次審査(面接審査):9月下旬
■助成対象者決定(交付決定日):11月1日(予定)
第3回
■申請書類提出:9月20日(金)~10月11日(金)
■一次審査(資格・書類審査):10月中旬~11月下旬
■二次審査(面接審査):12月中旬
■助成対象者決定(交付決定日):令和7(2025)年 2月1日(予定)
なお、書類提出の締め切りは、いずれも最終日の17時必着です。申請費用には、それぞれ根拠となる資料の提出が必要なものもあります。経費ごとに確認をし、必要な書類申請を準備しましょう。
地域の商店街が抱える問題
経済産業省が発表した「2022年版中小企業白書・小規模企業白書」では、来街者数が「減った」と回答した商店街は全体の約7割を占めました。3年前の前回調査と比べ、10ポイント以上増加しています。その要因については、「集客イベント等の未実施」と回答した割合が大きく増加しました。いっぽうで「魅力ある店舗の減少」や「地域の人口減少」など、そのほかの項目の占める割合は減少しています。
出典:2022年版中小企業白書・小規模企業白書
この年は、新型コロナウイルス流行拡大防止策としてイベントの開催等が制限されたことが来街者数の減少に影響を及ぼしたと考えられます。また、同白書では中小企業の経営者が高齢化していることも指摘されました。中小企業の経営者年齢の分布では2020年の時点で、50代から70代がもっとも多くなっています。さらに経営者の年齢が若い企業では「試行錯誤を許容する組織風土」を有する割合が高くなるなど、新しいチャレンジに意欲的であるという傾向も示されました。
集客イベントの実施にも、地域の担い手となる若い力が必要不可欠です。新規事業者や次世代の担い手を増やすことは、商店街の課題解決のための急務となっています。
まとめ
近年、店舗の閉店による「シャッター街」が全国的に増加しています。後継者不足や客足の減少に加え、不安定な社会情勢や物価高が中小企業の大きな負担です。
しかし空き店舗が増えると、治安が悪化することも指摘されています。空き店舗の多い商店街にはさらに客足が遠のき、地域の観光価値が下がるということにもなりかねません。
商店街を活性化させ、時代にあった形に変えていくためには、設備導入等の資金が必要です。そんなときにはぜひ、商店街起業・承継支援事業を利用しましょう。
商店街起業・承継支援事業は、未来に向けた商店街の発展を目指す企業にこそ活用してほしい助成金です。