ものづくりは、日本の産業を支える大きな柱のひとつです。東京都と東京都中小企業団体中央会では、「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金」として、受注型中小企業(下請企業)が自社の技術・サービスの高度化・高付加価値化に向けた技術開発等を行う取組を支援しています。
今回は明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金の令和6年度第2回募集の概要や活用例、申請方法をまとめました。
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この記事の目次
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金とは
「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金」は、東京都と東京都中小企業団体中央会が連携して提供する助成金制度です。
東京都内の中小企業が技術やサービスの高度化・高付加価値化を目指して取り組む技術開発等の経費を支援します。都内産業の活性化と中小企業の経営基盤の強化を目的とした制度です。
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金 対象事業者は?
対象となるのは、受注型中小企業または受注型中小企業団体または団体等です。なお、受注型中小企業等とは、以下の要件を満たす事業者を指します。
・主として発注者の仕様・規格に基づいて、製品・サービスを提供していること
・発注者の製品・サービスの一部を構成(提供)するものであること
・最終消費者に対し、自己の名(法人名・個人名)で製品・サービスの提供をしていないこと
その他の要件は、以下のとおりです。
①事業税等の未申告・滞納がないこと |
②東京都および中央会に対する賃料・使用料・会費等の債務の支払いが滞っていないこと |
③同一内容で、国・都道府県・区市町村・中央会等から助成を受けていないこと |
④過去に不正等の事故を起こしていないこと |
⑤必要な許認可等を取得し、関係法令を遵守すること |
⑥事業の継続性について不確実な状況が存在しないこと |
⑦暴力団関係者や風俗関連業、ギャンブル業等の、社会通念上適切でないと判断されるものではないこと |
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金 どんな事業が対象になる?
助成対象となる事業の要件は、以下の①~⑤です。
①発注者の仕様に基づいて、製品・サービスを提供する都内の受注型中小企業者が行う事業であること |
②自社における技術・サービスの高度化や、高付加価値化に向けた技術開発等であること |
➂自社における、技術的課題の解決があること |
④最終消費者に直接提供される製品またはサービスに関する取組でないこと |
⑤実施場所は、自社もしくは以下のいずれかに所在する自社工場であること ・東京都 ・神奈川県 ・埼玉県 ・千葉県 ・群馬県 ・栃木県 ・茨城県 ・山梨県 |
なお、以下のものは助成対象事業となりません。
- 自社での技術的課題の解決要素がない事業
- 営利活動とみなされる原材料や商品の仕入れ等
- 既に事業化され収入を得ている事業であって、取組が製品精度や生産性の向上に寄与しないもの
- 過去の「受注型中小製造業競争力強化支援事業助成金」、「受注型中小企業競争力強化支援事業」及び「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金」に採択された事業者等が、同一類似の事業として本事業に申請した場合
- 同一事業者が、複数件申請した場合
- 公募要領の規定に反するもの、補助事業の趣旨に反するもの等
- 公序良俗に反する事業
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金の助成率・助成限度額
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金は、区分によって上限額が違います。各助成限度額と助成率は、以下のとおりです。
■助成金額
・小規模企業区分:1,000万円
・一般区分:2,000万円
■助成率
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明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金の申請区分と対象経費
申請区分には、業種に関する区分として「ものづくり区分」・「受託サービス区分」があります。また企業規模に関する区分には「小規模企業区分」と「一般区分」の2つがあります。
本助成事業に申請する際には、該当する申請区分を選択してください。
ここからはそれぞれの区分と、補助金の対象経費についてご紹介します。
業種に関する区分
業種に関する区分は、以下のとおりです。
■ものづくり区分
自社の技術の高度化・高付加価値化を図る計画を有し、日本標準産業分類において「大分類E製造業」に該当する事業者
・取組例:薄型化・小型化に向け、加工技術の精度向上を図る取組
■受託サービス区分
自社のサービスの高度化・高付加価値化を図る計画を有し、日本標準産業分類において「大分類E製造業」に該当する以外の事業者
・取組例:受発注を可視化するシステムを構築し、顧客対応力を向上させる取組
企業規模に関する区分
規模に関する区分は、以下のとおりです。
■小規模企業区分
中小企業基本法に規定する小規模企業者
小規模企業者とは、常時使用する従業員の数が以下の範囲内となる事業者です。
①建設業、建設業、運輸業、その他の業種(②~④を除く)
20人以下
②卸売業
5人以下
➂サービス業
5人以下
④小売業
5人以下
中小企業者の定義に関しては、以下の図も参照してください。
出典:明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金
【公募要領】
■一般区分
小規模企業者以外の事業者および①の事業者のうち一般区分での申請を希望する事業者
対象経費
対象となる経費は、以下のとおりです。
原材料・副資材費 | 技術開発等の実施に直接使用し消費される原料、材料および副資材の購入に要する経費 |
機械装置・工具器具費 | 技術開発等に必要な機械装置、工具器具類のリース、レンタル、購入、据付けに要する経費 |
委託・外注加工費 | 自社内で不可能な技術開発等の一部を専門事業者、大学等に委託する場合に要する経費 |
産業財産権出願・導入費 | 開発した製品等の特許・実用新案等の出願に要する経費や、特許・実用新案等を他の事業者等から譲渡された場合等の経費 |
技術指導受入れ費 | 謝金等、外部の専門家から技術指導を受ける場合に要する経費 |
展示会出展・広告費 | 開発等を実施した技術・製品・サービスを展示会に出展するために要する経費 |
直接人件費 | 自社でのソフトウェアの開発に従事する者の、技術開発に要する時間に対応する人件費 |
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金の活用例
東京都中小企業団体中央会では、実際に助成を活用して課題を解決した事業事例を公開しています。ここではその事例のいくつかをご紹介します。
■課題
書籍製本工程において「くるみ加工」と「仕上げ工程」の作業が分断されているため、作業効率が悪くなっていた。また、分断部分を連結するたに人の手による作業が入るため、要因不足に加えて品質が不安定になることも課題となっていた。
■取組と成果
課題を解決し、生産効率の改善・品質の安定化・作業員の作業量軽減等を図るため、一貫生産ラインを構築した。その結果、2名以上は必要だった作業者が不要となり、オペレーターは品質管理に専念できるようになった。
また、作業の連結により、生産効率は10%程度改善した。労働環境の改善により、離職率も低下した。
■課題
対象事業者は皮革・織物の縫製専門加工業者で、自動車内装品をはじめ、幅広い用途の生産を手掛ける。
課題としては、「自動車内装品において精密縫製への要求度が高まっていること」「作業員の熟練度によって縫製技術にばらつきがあること」「労働集約的な製造工程の比重が高く、自動化が求められること」の3つがあった。
■取組と成果
超精密加工が可能なCNCミシンを導入し、縫製制度の向上を図った。また、縫製データ作成により生産工程の自動化を行った。
その結果、精密縫製の要求度が高い商品の量産要請にもスムーズな対応が可能となった。また、製品のロス率改善にもつながった。
作業の一部を自動化したことにより、熟練作業員をより適した部分に配置することも可能となった。
参考:明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業 事例集 令和4年度
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金の申請スケジュール
それでは、申請のスケジュールや方法、必要書類を見ていきましょう。
スケジュール
申請のスケジュールは、以下のとおりです。
■申請書類提出
令和6年6月3日(月)~7月5日(金)当日消印有効
■書類審査(技術・経営)
9月中旬
■面接審査
10月上旬
■交付決定
10月1日(予定)
■事務手続説明会
10月上旬
■遂行状況報告
随時
■現地調査
随時
■実績報告
随時
■完了検査
随時
■助成金交付
随時
申請方法と必要書類
申請書類は、締め切りまでに下記提出先まで郵送してください。
東京都中小企業団体中央会支援事務局
〒104-0061
中央区銀座2-10-18
東京都中小企業会館6階
【必要書類】
申請に必要な書類は、以下の①~⑩です。
①申請書 |
②説明資料 ・補足説明が必要な場合に適宜提出 |
➂登記事項証明書または開業届の写し |
④社歴(経歴)書 |
⑤納税証明書 ・法人の場合:直近の法人事業税及び法人都民税の納税証明書 ・個人事業主の場合:直近の事業税の納税証明書 |
⑥事業税が非課税の個人事業主は住民税の納税証明書 |
⑦確定申告書の写し |
⑧開発実施場所の地図 |
⑨返信用封筒 |
➉中小企業活力向上プロジェクトネクストアシストコースまたは中小企業活力向上プロジェクトアドバンスアシストコースの事業計画書 ・対象企業のみ |
【申請時の注意点】
申請時には、以下の点に注意点してください。
■助成対象となるのは、令和6年10月1日から令和7年12月31日までに契約、取得、支払いが完了した経費のみです。
■申請書類は簡易書留で郵送してください。持参、普通郵便、FAX、電子メールでの提出は認められません。
■申請区分は、業種によって「ものづくり区分」か「受託サービス区分」を選択し、規模によって「小規模企業区分」か「一般区分」を選択してください。
まとめ
受注型中小企業において、生産性の向上などの業務上の課題の解決は、企業の成長に大きく関わります。
明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金では最大2,000万円が助成されます。また、多様な取組が対象となるなど、大規模な設備導入や思い切った改革に取り組む事業にとって使いやすい助成金のひとつです。
社会が大きく変わりつつある昨今、明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金をはじめとする支援を上手に活用し、新しい時代の事業としての成長を目指しましょう。