地球温暖化が深刻化する今日において、CO2排出量の削減は緊急の課題です。国は2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、家庭や企業の脱炭素化を加速させるための支援制度を設置しています。
脱炭素ビルリノベ事業では、商業施設や教育施設といった既存の業務用建物における省エネルギー改修や省エネルギー機器導入を支援しています。
今回は脱炭素ビルリノベ事業の内容や申請方法について、まとめました。
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この記事の目次
脱炭素ビルリノベ事業とは
脱炭素ビルリノベ事業は、2050年のカーボンニュートラル実現に貢献することを目的とする制度です。
業務部門のCO2排出量は、国全体の約2割を占めます。これを削減することは、カーボンニュートラルの実現にとって重要な課題です。
本事業では建築主等が計画した脱炭素化の取組のうち、既存建築物の外皮の高断熱化、高効率設備の導入によって、ZEB基準の水準の省エネ性能を実現するための費用の一部を補助します。
どんな事業が対象になる?補助対象事業は
補助の対象となる事業は、国内の既存業務用建築物において、ZEB基準の水準の達成に必要な断熱窓・断熱材などの設備を導入する取組です。改修後には、以下の要件を全て満たしている必要があります。
【環境性能に関する要件】
環境性能に関する主な要件は、以下のとおりです。
①建物の外皮性能 | 建築物省エネ法における指標によって算出されたBPIが1.0以下であること |
②一次エネルギー消費量 | 改修後の一次エネルギー消費量が、以下のパーセンテージ以上削減されること ■改修前のBPIが1.0超の場合 ・ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等…30% ・事務所等、学校等…40%以上 ■改修前のBPIが1.0以下の場合 ・ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等…40% ・事務所等、学校等…50%以上 |
【対象となる「外皮の高断熱化及び高効率設備の導入」とは】
対象となるのは、「断熱窓」、「断熱材」、「高効率空調」、「制御機能付きLED照明器具」の導入です。
なお、改修前のBPIが1.0超の場合は、少なくとも「断熱窓」・「断熱材」のいずれか一方を導入することが必要です。
【エネルギー利用に関する要件】
以下の要件を満たすエネルギー管理システム(BEMS)を導入してください。
①補助事業完了、事業報告時に建物全体のエネルギー使用量と、設備区分毎のエネルギー使用量を月単位で取りまとめ、年に1度、5年間報告が行えること |
②該当の建築物全体のエネルギー管理ができるシステムであること |
複数用途建築物で申請する場合は、用途区分毎に計測してください。
原則として設備区分毎にエネルギーの計測・計量を行い、データを保存・表示・分析評価できることが必要です。
計測項目は、以下の例を参照してください。
出典:公募要領
【環境性能の表示に関する要件について】
建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において省エネルギー性能評価の認証を取得し、完了実績報告時に、省エネルギー性能表示」およびその表示に関する「評価書」の写しを提出することが要件です。
【その他の要件等】
①補助事業に関する情報開示ができること |
導入設備や工事内容等の情報開示ができることが必要です。 |
②事業完了後、5年間のエネルギー使用状況と設備等の導入効果等について分析・自己評価が可能なエネルギー管理体制とすること |
これらの結果については、事業報告書及び指定の形式で報告してください。 |
③旧耐震基準の建築物については、新耐震基準の耐震性を満たすこと |
なお、補助対象事業と同時に実施する耐震改修工事にて、耐震性を満たす場合は対象となります。 |
④自社で製造する製品を導入する場合や自社施工でないこと |
誰が対象になる?補助事業対象者
補助の対象となる事業者の主な要件は、以下の①~⑥です。
①以下のいずれかであること ■民間企業 ■個人事業主 ■独立行政法人 ■地方独立行政法人 ■国立大学法人、公立大学法人および学校法人 ■社会福祉法人 ■医療法人 ■一般社団法人・一般財団法人および公益社団法人・公益財団法人 ■地方公共団体 ■その他環境大臣の承認を得てSIIが適当と認める者 |
②事業報告時に、建物全体および設備区分毎の年間エネルギー使用量を、5年間に渡って報告できる者 |
➂補助対象設備の所有者であり、該当設備を継続的に使用する者 |
④環境省から、補助金等停止措置または指名停止措置が講じられていない者 |
⑤公的資金の交付先として社会通念上適切と認められない者でないこと |
⑥会計検査院による現地検査等の受検に際し、対応可能な事業者 |
どんな設備が対象?補助対象設備は
SIIが定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、登録・公表している設備が対象です。
なお2024(令和6)年7月1日以降、断熱窓・断熱材・空調設備・照明設備については、GX推進の取り組みに関する表明を行った者により製品登録された製品に限られます。
各補助対象設備とその範囲は、以下のとおりです。
①設備費 | |
建築外皮 | 断熱窓、断熱材 |
空調設備 | ・電気式パッケージエアコン(EHP) 室外機、室内機、リモコン、パネル ・ガスヒートポンプエアコン(GHP) 室外機、室内機、リモコン、パネル ・チリングユニット チリングユニット本体 ・吸収式冷凍機 吸収式冷凍機本体、リモコン ・ターボ冷凍機 ターボ冷凍機本体、リモコン |
照明設備 | ・制御機能付きLED照明器具 LED照明器具本体、それらの制御機器 (管球のみの場合は補助対象外です) |
BEMS | ・BEMS本体 中央監視装置、伝送装置、通信装置、制御配線、 制御機器、盤類、計測計量装置と制御配線 |
②工事費 | |
工事費 | 搬入・据付・試運転調整等 |
なお、各設備にはそれぞれ性能要件・制御要件があります。詳細は、公募要領をご確認ください。
いくら補助される?補助金額
補助金額は対象設備の種別(性能区分)または能力に基づいて定額となります。
製品区分毎に、補助金額を算出してください。算出方法は、以下のとおりです。
・断熱窓 | 製品の種別当たりの補助金額[円/㎡]×窓面積[㎡] |
・断熱材 | 製品の種別当たりの補助金額[円/㎡]×施工面積[㎡] |
・高効率空調 | 設備の種別当たりの補助金額[円/kW]×設備能力[kW] |
・制御機能付きLED照明器具 | 設備の種別当たりの補助金額[円/台]×導入台数[台] |
・BEMS | 延べ床面積区分毎に定める金額 |
【補助金限度額】
原則、建築基準法で定める一の建築物の単位を1事業として申請してください。補助金額の上限額および下限額は、以下のとおりです。
上限額 | 下限額 |
---|---|
10億円 | 500万円 |
複数年度事業の場合
本事業では国庫債務負担行為を活用し、年度を越えて複数年事業として実施することが可能です。要件は、以下のとおりです。
■各年度の補助金上限額は、交付申請書に記載された補助金申請額とする |
■支払いは、各年度中に完了させること |
■各年度事業完了の時点で、設備、工事等の項目毎に成果品があること |
ただし、各年度の予算は以下のように定められています。
■2024年度(1年度目)
約101億円
■2025年度(2年度目)
約144億円
■2026年度(3年度目)
約71億円
各年度の上限額を超えての採択はされませんので注意してください。
ZEBプランナーについて
本事業への申請にあたっては、ZEBプランナー等の専門家の関与が推奨されています。
ZEBプランナーとは、SIIが公募する「ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」を計画・設計する専門家のことです。ZEB実証事業の趣旨に基づいて業務支援を行い、その活動を公表します。https://sii.or.jp/zeb05/planner/
どうやって申し込む?申請方法と交付申請の手順
それでは、申請方法について見ていきましょう。申請は補助事業ポータル(Web)にて行います。
単年度事業の場合の全体のスケジュールは、以下のとおりです。
①公募
2024年3月29日~11月29日
②審査・採択
➂交付決定
2024年5月下旬頃から随時
④事業開始
⑤事業完了
2025年1月31日まで
⑥完了実績報告
事業完了日から30日以内または2025年2月5日のいずれか早い日
⑦補助金の支払い
2025年1月末~2025年3月末まで
⑧事業報告
提出期日は事業完了の翌々年度の毎年4月末日です。
出典:公募要領
【交付申請の手順】
交付申請の手順は、以下のとおりです。
①計画立案
公募要領を確認のうえ、ZEBプランナー等と相談しながら、建築物の改修計画を立案します。
②アカウントの登録
脱炭素ビルリノベ事業ホームページでアカウントを登録してください。登録から数日以内に、SIIからユーザ名等のメールが届きます。
➂補助事業ポータルにログイン
送付されたURLからログインが可能です。
④補助事業ポータルに入力
申請に必要な情報を入力してください。
⑤電子申請
必要な添付書類等を添付し、申請を行います。
【公募期間】
公募期間は、以下のとおりです。
2024年3月29日(金)~2024年11月29日(金)
なお、交付決定額の合計が予算額に達した場合、公募期間内であっても交付申請の受付は終了します。
まとめ
世界各国で自然災害が頻発するなど、環境問題は社会的にも多大な影響を及ぼしています。CO2削減をはじめとした環境対策に対する姿勢は、企業の評価にも直結するようになってきました。
しかし、予算的な余裕の少ない企業にとっては、新しい設備の導入は大きな負担です。脱炭素ビルリノベ事業をはじめとした支援事事業は、こうした企業の力となるはずです。補助制度を上手に活用して、持続可能な企業として、未来に向けての成長を目指していきましょう。
参考:脱炭素ビルリノベ事業