電動車(EV)の時代が加速しています。その中で、経済産業省は電動車の普及をさらに後押しするための「充電インフラ整備促進に向けた指針」を10月に発表しました。
この指針は2035年までに新車販売の100%を電動車にするという政府の目標達成に資するものです。指針では、2030年までの充電器の設置目標を倍増し、急速充電器においては充電時間の短縮を図る方針が示されました。また、滞在時間が長い施設や集合住宅での充電インフラの拡大も予定されています。補助金の有効活用や新たな課金制度の導入も示された中、今後の動向が業界やユーザーにとって大きな注目点となります。本記事では、電動車普及のカギとなる充電インフラの新方針についてお伝えします。
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この記事の目次
充電インフラ整備の加速:2030年目標とその実現への道筋
政府は2030年までに、急速充電器を含む15万基の電動車用充電インフラの整備を目指しています。この目標は、グリーン成長戦略の一環として設定され、既に3万基の充電器設置が進んでいます。電動車のさらなる普及と充電インフラの拡張に向けて、関係各方面との連携を強化し、一層の取り組みを促進するために「充電インフラ整備促進に向けた指針」が策定されました。この指針により、将来の電動化社会に向けた充電インフラの体系的な拡充を進めていくとしています。
指針のポイントとその詳細
充電インフラ整備において、ユーザー、充電事業者、社会全体、それぞれの立場で求めるものが異なっています。そこで指針では、「ユーザーの利便性の向上」、「充電事業の自立化・高度化」、「社会全体の負担の低減」の3つの原則をバランスよく取り入れて、使いやすく長続きする充電インフラ社会の構築を目指していくとしています。
出典:充電インフラ整備促進に向けた指針
ここからはそのポイントを4つご紹介します。
1.世界に比肩する目標の設定
前述のとおり、国が電動車(EV)普及を後押しする背景には、持続可能な環境エネルギー戦略としての取り組みがあります。充電インフラの拡充には、社会の負担を最小限に抑えつつ、使いやすく持続可能な充電環境を作ることが求められます。この目的のために、集合住宅などにおける普通充電器の整備と、高速道路などにおける急速充電器の整備の両方を同時に進めていく方針です。例えば、公共の目的地である施設や長時間滞在する場所においては、普通充電器の設置を拡充し、2030年までに10万から15万口を目標としています。マンションなどの集合住宅に関しては、既存の建物において住人の合意を得て充電器を設置する取り組みを進めるとともに、新築される集合住宅にも充電設備の整備を推進していきます。
2.高出力化の促進
利用者の利便性という観点からは、充電器の高出力化を進め、質を確保していくことが重要です。高速道路などの充電需要が多いエリアでは、基本として1つの充電口につき90kW以上の高出力急速充電器を用意し、さらに利用者が多い場所では、より高速な150kWの充電器の設置も行う計画です。高速以外でも公共用の急速充電器については50kW以上を目安とし、2030年に向けて、平均的な出力を現在の約40kWから2倍の80kWまで引き上げるとしています。
これらの数字はあくまで目安ですが、まずはこれを基にして、充電事業者や施設、道路の管理者と連携しながら、効率的に充電設備を設置することを目標にしています。そして、技術が進歩し、電気自動車や充電器がどれだけ普及するかに応じて、必要な充電口の数や出力の大きさを更新していく予定です。
3.効率的な充電器の設置
今後は、限られた補助金で効果的に設置を進めるため、費用対効果の高い案件を優先的に選んで設置を進めていきます。民間の投資を促進し、充電設備を整備していく過程で、電気自動車やプラグインハイブリッド車、充電器の普及具合を見極め、充電設備事業が自分たちで自立して運営できるようにしていきます。そのために補助対象の範囲や優先度、設置費用や申請額を低減させる仕組みを考慮し、その際、執行手続きの簡素化・効率化にも努めて、スムーズな実行を目指します。
4.規制・制度等における対応
充電インフラの将来に向けて、2025年度から、充電した電力量(kWh)に応じた従量制課金の導入を目標に掲げています。特に、充電器の性能向上に伴う高出力化を考慮し、充電器の出力や使用状況に応じた課金体系の構築を目指しています。場所によっては時間制課金、あるいは従量制課金と時間制課金の組み合わせの方が適しているケースもあるため、課金方法は充電事業者の方針に基づいて柔軟に対応するとしています。
商用車における充電インフラの整備には、EVバスやEVトラックなどの特性を考慮した計画的なアプローチが重要です。これらの車両は多くの場合、乗用車と比べて大きな電池容量を持ち、同一の場所で多数の車両が夜間などの非稼働時間に集中して充電を行う傾向があります。このような状況は、ピーク時の電力需要の増大を招き、電力供給に関する課題を生じさせる可能性があります。そのため、車両導入の際には、日々の運行距離や停車場所、充電する車両の台数を考慮に入れた運行計画とエネルギーマネジメントの検討が不可欠です。これにより、充電コストを低減しながらも効率的な充電インフラの構築が進むことが期待されています。また、実際の車両使用状況も踏まえて、基礎充電以外も含めた充電のあり方も検討するとしています。
まとめ
電動車の普及が進む中、充電インフラの整備はますますその重要性を増しています。経済産業省の新しい指針は、充電インフラのさらなる発展を目指すものとなっています。ユーザーの利便性や充電事業の自立化・高度化、社会全体の負担の低減を考慮しながら、多様な利用形態やビジネスモデルの実現に向けての取り組みが進められています。今後の動向に注目しつつ、電動車の普及とともに充電インフラの整備促進と更なる発展に期待しましょう。