2025年4月から段階的に「男性の育休取得状況の公表義務の対象拡大」「柔軟な働き方を実現するための措置」などが企業に求められています。厚生労働省の「令和7年度雇用均等基本調査」では、男性の育児休業取得率が50.9%と初めて5割を超え、育休は「取るのが当たり前」の時代に入りました。
一方で、中小企業の現場からは「育休の取得は歓迎したいが、抜けた人の業務を誰がどう引き継ぐのか」「復帰後の受け入れ態勢まで手が回らない」といった声も少なくありません。こうした課題を国の助成金で後押しする制度が、両立支援等助成金の「育児休業等支援コース」です。
本記事では、令和8年度(2026年度)の最新の支給要領に沿って、育児休業等支援コースの支給額・要件・申請期限・必要書類までを、初めての担当者にもわかりやすく解説します。
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・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
・介護離職防止支援コース
・【★本記事】育児休業等支援コース
・育休中等業務代替支援コース
・柔軟な働き方選択制度等支援コース
・不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
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この記事の目次
育児休業等支援コースとは?中小企業が最大122万円もらえる助成金
育児休業等支援コースは、中小企業事業主が「育休復帰支援プラン」を策定し、対象労働者が連続3か月以上の育児休業を取得・職場復帰した場合に、1人あたり60万円が支給される助成金です。厚生労働省が令和8年度も引き続き実施しています。
支給は「育休取得時」と「職場復帰時」の2区分に分かれ、それぞれ30万円が支給されます。さらに、自社の育児休業取得状況を厚生労働省の指定サイトで公表した場合には、1事業主あたり1回限り2万円の情報公表加算が加わります。
| 区分 | 支給額 | 申請の可否 |
|---|---|---|
| 育休取得時 | 30万円 | 単独で申請可 |
| 職場復帰時 | 30万円 | 育休取得時の受給が前提 |
| 情報公表加算 | 2万円 | 1事業主あたり1回限り 加算のみの申請は不可 |
対象は中小企業事業主に限定されており、育児休業を取得する労働者は雇用保険の被保険者である必要があります。1事業主につき、無期雇用労働者1名・有期雇用労働者1名の合計2名まで支給を受けられるため、両区分をフル活用すれば120万円、情報公表加算2万円を加えて最大122万円が受給可能です。
無期雇用か有期雇用かは、育休復帰支援プランの策定日時点で判定します。
両立支援等助成金における「中小企業」の範囲
両立支援等助成金の「中小企業」は、業種ごとに定められた資本金(または出資金)の総額、または常時雇用する労働者数のいずれかが基準以下の企業を指します。
| 業種 | 資本金または出資金 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
いずれか一方を満たしていれば「中小企業事業主」に該当します。自社が中小企業の定義に当てはまるかは、申請前に必ず確認しておきましょう。
育休取得時の助成金30万円をもらう7つの要件
育休取得時の助成金は、育児休業予定者と事前面談を行い、連続3か月以上の育児休業を取得した場合に支給されます。支給額は1回あたり30万円で、無期雇用労働者1名・有期雇用労働者1名の合計2名(最大60万円)まで対象になります。
事前に育児休業の取得と職場復帰を支援する方針を社内へ周知しておく必要があります。詳しい要件は以下の7つです。
| No. | 要件 |
|---|---|
| ① | 育休復帰支援プランにより労働者の育児休業の取得・職場復帰を支援するという方針を周知している |
| ② | 育児休業取得予定者と面談等を行い、「面談シート」に記録した上で、育休復帰支援プランを作成する |
| ③ | 育休復帰支援プランに基づき、業務の引き継ぎを実施する |
| ④ | 対象の労働者が連続3か月以上の育児休業を取得する |
| ⑤ | 育児休業制度と育児のための短時間勤務制度を労働協約または就業規則に定めている |
| ⑥ | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ている |
| ⑦ | 対象労働者を育児休業の開始日において、雇用保険被保険者として雇用している |
上記のうち、①方針の周知、②面談とプランの作成、③業務の引き継ぎの3点は、対象労働者の休業開始日の前日までに完了している必要があります。ここでいう休業開始日は、休業の取り方によって次のように変わります。
| 休業の取り方 | ①〜③の期限 |
|---|---|
| 産前休業から続けて産後休業・育児休業を取得する場合 | 産前休業開始日の前日まで |
| 産後休業から続けて育児休業を取得する場合 | 産後休業開始日の前日まで |
| それ以外の場合(父親の育休など) | 育児休業開始日の前日まで |
育休復帰支援プランには、「育児休業取得予定者の業務の整理、引き継ぎに関する事項」と「育児休業中の職務や業務内容に関する情報及び資料の提供に関する事項」のいずれも盛り込む必要があります。プランによらずに引き継ぎを終えている場合は、支給対象外です。
なお、同一労働者の同一の育児休業について、出生時両立支援コース(男性労働者の育児休業取得)との併給はできない点にも注意が必要です。
育休取得時の申請期限はいつまで?
育休取得時の助成金の申請期限は、育児休業の開始日から3か月を経過する日の翌日から2か月以内です。産後休業から続けて育児休業を取得する場合は、産後休業の開始日を起算日としてカウントします。
| ケース | 起算日 | 申請期限 |
|---|---|---|
| 産後休業から続けて育休を取得する場合 | 産後休業の開始日 | 起算日から3か月経過日の翌日〜2か月以内 |
| それ以外の場合(父親の育休など) | 育児休業の開始日 | 起算日から3か月経過日の翌日〜2か月以内 |
育児休業が終わる前に申請期限を迎えることもあるため、休業開始の時点で期限を確認しておきましょう。
申請タイミングのイメージは以下のとおりです。

出典:両立支援等助成金支給申請の手引き(2026(令和8)年度版)
申請時は、支給申請書や策定した育休復帰支援プランの提出が求められます。詳しい様式は両立支援等助成金の公式サイトで確認し、本社等(人事労務管理の機能を有する部署が属する事業所)の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出してください。
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職場復帰時の助成金30万円をもらう5つの要件
職場復帰時の助成金は、育休取得時と同一の対象労働者・同一の育児休業について、育休取得時の助成金を受給していることが前提となります。職場復帰時だけを単独で申請することはできません。
支給額は育休取得時と同じ30万円で、無期雇用労働者1名・有期雇用労働者1名の合計2名(最大60万円)まで対象となります。詳しい要件は以下の5つです。
| No. | 要件 |
|---|---|
| ① | 育休復帰支援プランに基づき、対象の労働者の復帰までに職務や業務内容に関する情報及び資料の提供を行う |
| ② | 職場復帰前に育児休業取得者と面談等を行い、「面談シート」に記録する |
| ③ | 育児休業取得者が職場復帰後、原則として、休業前に就いていた職務(原職等)に復帰させる |
| ④ | 対象労働者を職場復帰した日から6か月以上、かつ支給申請日まで、雇用保険被保険者として継続して雇用する |
| ⑤ | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ている |
③の原職等への復帰は、本人の希望で原職等以外に復帰する場合でも、その希望が面談で確認できれば支給対象になります。ただし、育児休業前に無期雇用だった労働者と、復帰後に有期雇用として新たに契約を結んだ場合は対象外です。
対象労働者の復帰後6か月間に、育児休業を取得したことや育児のための時短勤務を理由に、本人が希望しない雇用形態や給与形態の変更を強要した場合などは、「不合理な変更」に該当し支給対象外となります。
また、復帰後の6か月間を通じて、就業を予定していた日数の5割以上を実際に就業している必要があります。育休取得時の助成金と同様、同一労働者の同一の育児休業について、出生時両立支援コース(男性労働者の育児休業取得)との併給はできません。
職場復帰時の申請期限はいつまで?
職場復帰時の助成金の申請期限は、育児休業終了日の翌日から6か月を経過する日の翌日から2か月以内です。育休期間や復帰時期によって申請時期が変わるため、対象労働者ごとに期限を管理しましょう。
育児休業中に次の子の産前・産後休業が始まった場合は、その産前・産後休業の開始日から起算して6か月を経過する日の翌日から2か月以内が申請期限になります。
申請タイミングのイメージは以下のとおりです。

出典:両立支援等助成金支給申請の手引き(2026(令和8)年度版)
申請時は、支給申請書や育児休業取得者に提供した業務内容に関する資料等の提出が求められます。書類様式は両立支援等助成金の公式サイトで入手できます。
育児休業等に関する情報公表加算で2万円を上乗せする方法
情報公表加算は、育児休業等支援コースの申請者が自社の育児休業等の利用状況を厚生労働省の指定サイトで公表した場合に、2万円が上乗せ支給される制度です。取り組みの労力に対して支給額のインパクトが小さいと感じるかもしれませんが、令和7年4月からは常時雇用労働者300人超の企業に男性育休取得状況の公表が義務化されており、指定サイトへの掲載は義務対応のきっかけにもなります。
申請する場合は、支給申請日までに「両立支援のひろば」の「一般事業主行動計画公表サイト」で、以下①〜③の情報を公表してください。
② 雇用する女性労働者の育児休業の取得割合
③ 雇用する労働者(男女別)の育児休業の平均取得日数
公表するのは、原則として支給申請日の属する事業年度の直前の事業年度の情報です。公表した内容は、支給申請日から支給決定日まで掲載を続ける必要があります。
加算を受けられるのは1事業主あたり1回限りで、育休取得時・職場復帰時のいずれかの申請時に加算して支給されます。自社サイトなど「両立支援のひろば」以外の場で公表した場合は加算の対象外となる点に注意しましょう。
なお、加算のみの受給はできません。育休取得時または職場復帰時の助成金の申請と併せて情報公表加算の支給申請書(【育】様式第4号)を提出し、公表したページを印刷して添付する必要があります。
育児休業等支援コースの申請書類と手続きの流れ
育児休業等支援コースの申請には、支給申請書に加えて育休復帰支援プラン・面談シート・就業規則など複数の書類が必要です。書類の準備は労働者の育休開始前から始まるため、早めのスケジュール管理が受給の鍵となります。
育休取得時に必要な主な書類
育休取得時の申請では、次の書類を提出します。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 支給申請書 | 【育】様式第1〜5号の一式 育休取得時の申請内容は様式第2号に記入 |
| 支給要件確認申立書 | 共通要領様式第1号 |
| 育休復帰支援面談シート | 休業前の面談内容を記録した書類 |
| 育休復帰支援プラン | 業務の整理・引き継ぎ、休業中の情報提供に関する事項を記載 |
| 方針を周知したことと日付がわかる書類 | 社内報、イントラネットの掲示板の画面を印刷したもの、実施要領、就業規則など |
| 労働協約または就業規則、関連する労使協定 | 育児休業制度と育児のための短時間勤務制度が確認できる部分 |
| 雇用期間の定めがわかる書類 | プラン策定日時点の雇用契約書、労働条件通知書など |
| 育児休業申出書 | 期間を変更した場合は育児休業期間変更申出書も提出 |
| 出勤簿またはタイムカード、賃金台帳 | 育児休業(産後休業から続く場合は産後休業を含む)3か月分の休業状況を確認 |
| 子がいることと出生日がわかる書類 | 母子手帳の出生を証明する部分、住民票など |
| 一般事業主行動計画策定届 | プラチナくるみん認定事業主は不要 |
写しで提出する書類もあるため、詳細は手引きで確認してください。雇用関係助成金を初めて申請する場合は、支払方法・受取人住所届と通帳等の写しも必要です。
職場復帰時に必要な主な書類
職場復帰時の申請では、次の書類を提出します。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 支給申請書 | 【育】様式第1〜5号の一式 職場復帰時の申請内容は様式第3号に記入 |
| 支給要件確認申立書 | 共通要領様式第1号 |
| 育休復帰支援面談シート | 職場復帰前の面談内容を記録した書類 |
| 育児休業中の情報・資料提供がわかる書類 | 提供した業務内容に関する資料、イントラネットの掲示板の画面など 日付が確認できるもの |
| 出勤簿またはタイムカード、賃金台帳 | 育児休業終了前3か月分の休業状況と、職場復帰後6か月分の就業実績を確認 在宅勤務の場合は業務日報等も提出 |
| 労働協約または就業規則、関連する労使協定 | 育児休業制度と育児のための短時間勤務制度が確認できる部分 |
| 一般事業主行動計画策定届 | プラチナくるみん認定事業主は不要 |
| 育児短時間勤務の申出書、賃金計算方法がわかる書類 | 職場復帰後に育児短時間勤務を利用した場合 |
申請から支給までのスケジュール
申請から支給までの標準的な流れは以下のとおりです。
| ステップ | 実施内容 |
|---|---|
| ①休業前 | 就業規則・一般事業主行動計画の整備/方針の社内周知/面談・育休復帰支援プラン策定/業務の引継ぎ |
| ②休業中 | 職務・業務内容に関する情報や資料を提供 |
| ③育休取得時申請 | 育休開始(産後休業から続く場合は産後休業開始)から3か月経過日の翌日〜2か月以内に申請 |
| ④復帰前 | 職場復帰前面談の実施 |
| ⑤復帰後6か月 | 原職等に復帰させ、雇用保険被保険者として継続雇用 |
| ⑥職場復帰時申請 | 育休終了日の翌日から6か月経過日の翌日〜2か月以内に申請 |
| ⑦支給決定・振込 | 労働局の審査を経て支給決定通知が届き、指定口座に振込 |
なお、令和5年6月26日以降、両立支援等助成金は電子申請の対象になっています。雇用関係助成金ポータルから電子申請を利用すれば、労働局への持参・郵送の手間を省けます。郵送する場合は、消印ではなく労働局への到達日で判断されるため、配達記録が残る方法で余裕をもって送りましょう。
育児休業等支援コースに関するよくある質問
1事業主あたり最大いくらもらえる?
最大122万円です。育休取得時30万円と職場復帰時30万円を、無期雇用労働者1名・有期雇用労働者1名の合計2名まで受給でき、ここまでで120万円になります。情報公表加算2万円は1事業主1回限りのため、1人あたりの額は60万円です。
職場復帰時だけ受給できる?
できません。同じ労働者の同じ育児休業について、育休取得時の助成金を受給していることが前提です。育休取得時の申請期限を逃さないよう管理してください。
育休復帰支援プランはいつまでに作る?
対象労働者の休業開始日の前日までです。産前休業から続けて休む場合は産前休業開始日の前日、産後休業から続く場合は産後休業開始日の前日が期限になります。プランによらずに引き継ぎを終えていると対象外になるため、プランの作成を先に済ませてください。
産後休業から続けて育休を取る場合、3か月はいつから数える?
産後休業の開始日から数えます。申請期限も同じ起算日で、3か月を経過する日の翌日から2か月以内です。
父母それぞれが育休を取った場合も申請できる?
できます。同じ事業主に雇用される父母が同じ子について育児休業を取得する場合、それぞれ支給申請が可能です。ただし、無期雇用・有期雇用各1名という事業主ごとの上限は変わりません。
復帰せず第2子の産休・育休に入った場合は?
第1子に係る職場復帰時の助成金を受給できる可能性があります。厚生労働省のQ&Aでは、第2子の産前休業開始日を起算日として6か月以上継続雇用されていれば、支給対象になり得るとされています。
対面で面談できないときはどうする?
電話やメールなどによる相談・調整でも構いません。実施した内容は、育休復帰支援面談シートに必ず記録してください。
復帰後に時短勤務を利用しても受給できる?
受給できます。育児短時間勤務など、法律や就業規則に基づく制度による所定労働時間の短縮であれば対象です。ただし、育休や時短勤務を理由に本人が希望しない雇用形態・給与形態へ変更した場合は対象外になります。
大企業でも申請できる?
できません。育児休業等支援コースは中小企業事業主に限られます。両立支援等助成金のうち、育休中等業務代替支援コースの手当支給等は企業規模を問わず対象です。
育児休業給付金と併用できる?
併用できます。育児休業給付金は労働者本人に、育児休業等支援コースは事業主に支給される別の制度です。
参考:両立支援等助成金(育児休業等支援コース)Q&A(2026年度)
まとめ
育児休業等支援コースは、中小企業が「育休復帰支援プラン」に沿って従業員の育休取得と職場復帰を支援した場合に、1人あたり60万円、1事業主あたり最大122万円が支給される助成金です。令和8年度も引き続き実施されており、支給額は据え置き、電子申請にも対応しています。
受給のポイントは、方針の周知・面談とプラン作成・引き継ぎを休業開始日の前日までに済ませることです。産前休業から続けて休業に入る場合は、産前休業開始日の前日が期限になる点に注意してください。
制度整備や書類準備の負担は決して小さくありませんが、育休の受け入れ体制が整えば、離職リスクの低減や採用力の強化にも直結します。特に男性育休の取得が広がる今、社内の環境整備は将来の投資と捉えるべき局面です。計画的に本助成金を活用し、従業員が安心して働き続けられる職場づくりを進めましょう。
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