2025年に育児・介護休業法が改正され、2025年4月から段階的に「男性育休の取得状況公表義務化」「柔軟な働き方を実現する措置」などが企業に求められています。厚生労働省の「令和6年度雇用均等基本調査」では、男性の育児休業取得率が40.5%と過去最高を記録し、育休は「取るのが当たり前」の時代に入りました。
一方で、中小企業の現場からは「育休の取得は歓迎したいが、抜けた人の業務を誰がどう引き継ぐのか」「復帰後の受け入れ態勢まで手が回らない」といった声も少なくありません。こうした課題を国の助成金で後押しする制度が、両立支援等助成金の「育児休業等支援コース」です。
本記事では、令和8年度(2026年度)の最新の支給要領に沿って、育児休業等支援コースの支給額・要件・申請期限・必要書類までを、初めての担当者にもわかりやすく解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
・介護離職防止支援コース
・【★本記事】育児休業等支援コース
・育休中等業務代替支援コース
・柔軟な働き方選択制度等支援コース
・不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
合わせて読みたい:両立支援等助成金とは 各コースを徹底解説
この記事の目次
育児休業等支援コースとは?中小企業が最大62万円もらえる助成金
育児休業等支援コースは、中小企業事業主が「育休復帰支援プラン」を策定し、対象労働者が連続3か月以上の育児休業を取得・職場復帰した場合に、1人あたり最大62万円が支給される助成金です。厚生労働省が令和8年度も引き続き実施しています。
支給は「育休取得時」と「職場復帰時」の2区分に分かれ、それぞれ30万円が支給されます。さらに、自社の育児休業取得状況を厚生労働省の指定サイトで公表した場合には、1事業主あたり1回限り2万円の情報公表加算が加わります。
| 区分 | 支給額 | 申請の可否 |
|---|---|---|
| 育休取得時 | 30万円 | 単独で申請可 |
| 職場復帰時 | 30万円 | 育休取得時の受給が前提 |
| 情報公表加算 | 2万円 | 1事業主あたり1回限り |
対象は中小企業事業主に限定されており、育児休業を取得する労働者は雇用保険の被保険者である必要があります。1事業主につき、有期雇用労働者1名・無期雇用労働者1名の合計2名まで支給を受けられるため、両区分をフル活用すれば最大124万円+情報公表加算2万円=126万円が受給可能です。
両立支援等助成金における「中小企業」の範囲
両立支援等助成金の「中小企業」は、業種ごとに定められた資本金(または出資金)の総額、または常時雇用する労働者数のいずれかが基準以下の企業を指します。
| 業種 | 資本金または出資金 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
いずれか一方を満たしていれば「中小企業事業主」に該当します。自社が中小企業の定義に当てはまるかは、申請前に必ず確認しておきましょう。
育休取得時の助成金30万円をもらう7つの要件
育休取得時の助成金は、育児休業予定者と事前面談を行い、連続3か月以上の育児休業を取得した場合に支給されます。支給額は1回あたり30万円で、有期雇用労働者1名・無期雇用労働者1名の合計2名(最大60万円)まで対象になります。
事前に育児休業の取得と職場復帰を支援する方針を社内へ周知しておく必要があります。詳しい要件は以下の7つです。
| No. | 要件 |
|---|---|
| ① | 育休復帰支援プランにより労働者の育児休業の取得・職場復帰を支援するという方針を周知している |
| ② | 育児休業取得予定者と面談等を行い、「面談シート」に記録した上で、育休復帰支援プランを作成する |
| ③ | 育休復帰支援プランに基づき、業務の引き継ぎを実施する |
| ④ | 対象の労働者が連続3か月以上の育児休業を取得する |
| ⑤ | 育児休業制度等を労働協約または就業規則に定めている |
| ⑥ | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ている |
| ⑦ | 対象労働者を育児休業の開始日において、雇用保険被保険者として雇用している |
上記のうち、①支援プランの周知、②面談、③業務の引き継ぎの3点は、対象労働者の休業開始日の前日までに完了している必要があります。また、⑤育児休業制度は、対象労働者が育児休業を開始する前に就業規則に定めていなければなりません。
なお、同一労働者の同一の育児休業について、出生時両立支援コース(男性労働者の育児休業取得)との併給はできない点にも注意が必要です。
育休取得時の申請期限はいつまで?
育休取得時の助成金の申請期限は、育児休業の開始日から3か月を経過した日の翌日から2か月以内です。産後休業から続けて育児休業を取得する場合は、産後休業の開始日を起算日としてカウントします。
| ケース | 起算日 | 申請期限 |
|---|---|---|
| 産後休業から続けて育休を取得する場合 | 産後休業の開始日 | 起算日から3か月経過日の翌日〜2か月以内 |
| それ以外の場合(父親の育休など) | 育児休業の開始日 | 起算日から3か月経過日の翌日〜2か月以内 |
申請タイミングのイメージは以下のとおりです。

出典:両立支援等助成金支給申請の手引き(2026(令和8)年度版)
申請時は、支給申請書や策定した育休復帰支援プランの提出が求められます。詳しい様式は両立支援等助成金の公式サイトで確認し、本社の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出してください。
関連記事
職場復帰時の助成金30万円をもらう5つの要件
職場復帰時の助成金は、育休取得時と同一の対象労働者・同一の育児休業について、育休取得時の助成金を受給していることが前提となります。職場復帰時だけを単独で申請することはできません。
支給額は育休取得時と同じ30万円で、有期雇用労働者1名・無期雇用労働者1名の合計2名(最大60万円)まで対象となります。詳しい要件は以下の5つです。
| No. | 要件 |
|---|---|
| ① | 育休復帰支援プランに基づき、対象の労働者の復帰までに職務や業務内容に関する情報及び資料の提供を行う |
| ② | 職場復帰前に育児休業取得者と面談等を行い、「面談シート」に記録する |
| ③ | 育児休業取得者が職場復帰後、原則として、休業前に就いていた職務(原職等)に復帰させる |
| ④ | 対象労働者を職場復帰した日から6か月以上、かつ支給申請日まで、雇用保険被保険者として継続して雇用する |
| ⑤ | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ている |
対象労働者の復帰後6か月間に、育児休業を取得したことや育児のための時短勤務を理由に、本人が希望しない雇用形態や給与形態の変更を強要した場合などは、「不合理な変更」に該当し支給対象外となります。また、復帰後の6か月間は、月あたりの所定労働日の5割以上就業している必要があります。
育休取得時の助成金と同様、同一労働者の同一の育児休業について、出生時両立支援コース(男性労働者の育児休業取得)との併給はできません。
職場復帰時の申請期限はいつまで?
職場復帰時の助成金の申請期限は、育児休業の終了後6か月経った翌日から2か月以内です。育休期間や復帰時期によって申請時期が変わるため、対象労働者ごとに期限を管理しましょう。
申請タイミングのイメージは以下のとおりです。

出典:両立支援等助成金支給申請の手引き(2026(令和8)年度版)
申請時は、支給申請書や育児休業取得者に提供した業務内容に関する資料等の提出が求められます。書類様式は両立支援等助成金の公式サイトで入手できます。
育児休業等に関する情報公表加算で2万円を上乗せする方法
情報公表加算は、育児休業等支援コースの申請者が自社の育児休業等の利用状況を厚生労働省の指定サイトで公表した場合に、2万円が上乗せ支給される制度です。取り組みの労力に対して支給額のインパクトが小さいと感じるかもしれませんが、令和7年4月からは常時雇用労働者300人超の企業に男性育休取得状況の公表が義務化されており、指定サイトへの掲載は義務対応のきっかけにもなります。
申請する場合は、支給申請日までに「両立支援のひろば」の「一般事業主行動計画公表サイト」で、以下①〜③の情報を公表してください。
② 雇用する女性労働者の育児休業の取得割合
③ 雇用する労働者(男女別)の育児休業の平均取得日数
加算を受けられるのは1事業主あたり1回限りで、育休取得時・職場復帰時のいずれかの申請時に加算して支給されます。自社サイトなど「両立支援のひろば」以外の場で公表した場合は加算の対象外となる点に注意しましょう。
なお、加算のみの受給はできません。育休取得時または職場復帰時の助成金の申請と併せて情報公表加算の支給申請書を提出し、公表したページを印刷して添付する必要があります。
育児休業等支援コースの申請書類と手続きの流れ
育児休業等支援コースの申請には、支給申請書に加えて育休復帰支援プラン・面談シート・就業規則など複数の書類が必要です。書類の準備は労働者の育休開始前から始まるため、早めのスケジュール管理が受給の鍵となります。
育休取得時に必要な主な書類
育休取得時の申請では、次のような書類の提出が求められます。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 支給申請書(様式第1号) | 厚労省指定の様式 |
| 育休復帰支援プラン | 業務の整理・引継ぎ、休業中の情報提供に関する事項を記載 |
| 育休復帰支援面談シート | 休業前の面談内容を記録した書類 |
| 就業規則・労働協約 | 育児休業制度が定められていることを確認するため |
| 一般事業主行動計画届出書の写し | 次世代育成支援対策推進法に基づくもの |
| 労働者名簿・出勤簿・賃金台帳 | 雇用保険被保険者としての雇用実績を証明 |
| 育児休業申出書 | 対象労働者が休業を申し出た事実を確認 |
職場復帰時に必要な主な書類
職場復帰時の申請では、育休取得時の書類に加えて、次のような書類が必要です。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 支給申請書(様式第2号) | 職場復帰時用の申請書 |
| 育児休業中の情報・資料提供の記録 | 復帰までに提供した業務内容に関する資料 |
| 職場復帰前の面談シート | 復帰前面談の記録 |
| 復帰後6か月分の労働者名簿・出勤簿・賃金台帳 | 継続雇用と5割以上の就業を証明 |
申請から支給までのスケジュール
申請から支給までの標準的な流れは以下のとおりです。
| ステップ | 実施内容 |
|---|---|
| ①休業前 | 就業規則・一般事業主行動計画の整備/方針の社内周知/面談・育休復帰支援プラン策定/業務の引継ぎ |
| ②休業中 | 職務・業務内容に関する情報や資料を提供 |
| ③育休取得時申請 | 育休開始から3か月経過日の翌日〜2か月以内に申請 |
| ④復帰前 | 職場復帰前面談の実施 |
| ⑤復帰後6か月 | 原職等に復帰させ、雇用保険被保険者として継続雇用 |
| ⑥職場復帰時申請 | 育休終了から6か月経過日の翌日〜2か月以内に申請 |
| ⑦支給決定・振込 | 労働局の審査を経て支給決定通知が届き、指定口座に振込 |
なお、令和5年6月26日以降、両立支援等助成金は電子申請の対象になっています。雇用関係助成金ポータルから電子申請を利用すれば、労働局への持参・郵送の手間を省けます。
育児休業等支援コースに関するよくある質問
育児休業等支援コースは1事業主あたり最大いくらもらえますか?
育休取得時30万円・職場復帰時30万円を、有期雇用労働者1名・無期雇用労働者1名の合計2名まで受給でき、上限は120万円です。これに情報公表加算2万円(1事業主1回限り)を加えると、最大122万円まで受給できます。1人あたりの最大額は、育休取得時30万円+職場復帰時30万円+情報公表加算2万円=62万円です。
育休取得時の助成金を受給していなくても、職場復帰時だけ受給できますか?
できません。職場復帰時の助成金は、育休取得時と同一の対象労働者・同一の育児休業について、育休取得時の助成金を受給していることが前提となります。育休取得時の申請を忘れないよう、休業開始から3か月を経過した日の翌日から2か月以内の期限を必ず管理してください。
同じ子どもについて、父母それぞれが育児休業を取得した場合も申請できますか?
申請できます。同一事業主の事業所に勤務する父母が、同一の子の育児を理由に育児休業を取得する場合、父母それぞれについて支給申請が可能です。有期雇用労働者1名・無期雇用労働者1名の合計2名という上限は事業主ごとに設定されているため、要件を満たせば同一の子どもに対して2件の申請が成立し得ます。
復帰せずに第2子の産休・育休に入った場合、第1子の職場復帰時は受給できますか?
受給できる可能性があります。厚生労働省のQ&Aでは、職場復帰後6か月以上の継続就業の確認において、産前産後休業および育児休業は就労したものとみなされるとされています。第2子の産前休業開始日を起算日として6か月以上継続雇用されていれば、第1子に係る職場復帰時の助成金の支給対象となり得ます。
育児休業取得者が入院等で対面での面談ができない場合はどうすればよいですか?
対面での面談実施が難しい場合は、労働者の希望やニーズを踏まえ、メールや電話等、労働者にとって負担のない方法で実施しても差し支えないとされています。実施した内容は「育休復帰支援面談シート」に必ず記録してください。
大企業でも育児休業等支援コースを申請できますか?
申請できません。育児休業等支援コースは中小企業事業主に限定された助成金です。中小企業の範囲は業種ごとに定められた資本金または常時雇用する労働者数のいずれかを満たす必要があります。大企業に該当する場合は、両立支援等助成金の他コースや、育児休業給付金など他の制度の活用を検討しましょう。
育休復帰支援プランはいつまでに作成すればよいですか?
対象労働者の育児休業開始日の前日までに作成しておく必要があります。プランには「育児休業取得予定者の業務の整理・引き継ぎに関する事項」と「休業期間中の職務や業務内容に関する情報・資料の提供に関する事項」の双方を盛り込むことが望ましいとされています。プラン作成前に引き継ぎを完了させた場合は助成対象外となるため、必ずプランの作成が先です。
産後休業から続けて育休を取得する場合、いつから3か月をカウントしますか?
産後休業の開始日から起算します。産後休業から育児休業までの期間を通算して、連続3か月以上の休業を取得している必要があります。申請期限も産後休業の開始日を起算日として、3か月経過日の翌日から2か月以内となる点に注意してください。
職場復帰後に時短勤務や短時間正社員制度を利用する場合、助成金は受給できますか?
受給できます。育児のための時短勤務や短時間正社員制度の利用そのものは支給の妨げになりません。ただし、育休を取得したことや時短勤務をしていることを理由に、本人が希望しない雇用形態や給与形態への変更を強要した場合は「不合理な変更」に該当し、支給対象外となります。また、復帰後6か月間で所定労働日の5割以上の就業が必要です。
育児休業給付金と両立支援等助成金は併用できますか?
併用できます。育児休業給付金は労働者本人に支給される給付金で、財源は雇用保険料です。一方、両立支援等助成金の育児休業等支援コースは事業主に支給される助成金で、対象や趣旨が異なります。労働者は育児休業給付金を、事業主は育児休業等支援コースを、それぞれ要件を満たせば同時に受給できます。
参考:両立支援等助成金(育児休業等支援コース)Q&A(2026年度)
まとめ
育児休業等支援コースは、中小企業が「育休復帰支援プラン」に沿って従業員の育休取得と職場復帰を支援した場合に、1人あたり最大62万円が支給される助成金です。令和8年度も引き続き実施されており、支給額は据え置き、電子申請にも対応しています。
制度整備や書類準備の負担は決して小さくありませんが、育休の受け入れ体制が整えば、離職リスクの低減や採用力の強化にも直結します。特に男性育休の取得が広がる今、社内の環境整備は将来の投資と捉えるべき局面です。計画的に本助成金を活用し、従業員が安心して働き続けられる職場づくりを進めましょう。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
・介護離職防止支援コース
・【★本記事】育児休業等支援コース
・育休中等業務代替支援コース
・柔軟な働き方選択制度等支援コース
・不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
合わせて読みたい:両立支援等助成金とは 各コースを徹底解説


