生活様式の変化や労働人口の減少を背景に、働き方にはさまざまな選択肢が提示されてきました。すべての人が自分らしく、生活環境や価値観にあった働き方をするためには、企業側の改革が必要です。
それぞれの事情にあわせ、労働者がより柔軟な働き方が選択できる環境を整えるために、令和6(2024)年「両立支援等助成金」では見直しが行われました。今回は両立支援等助成金に新設された「柔軟な働き方選択制度等支援コース」の内容や申請方法についてお伝えします。
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この記事の目次
両立支援等助成金とは【令和6(2024)年】
両立支援等助成金は、仕事と育児・介護等が両立できる職場環境づくりを行う中小企業事業主を支援する制度です。令和6年度は「育児休業等支援コース」の職場復帰後支援が廃止(※)され、「柔軟な働き方選択制度等支援コース」として再編されました。
まずは両立支援等助成金について、確認していきましょう。
両立支援等助成金の6つのコース
令和6年度両立支援等助成金では、6つのコースが設置されました。それぞれの概要を見ていきましょう。
出生時両立支援コース
男性労働者が、育児休業を取得しやすい雇用環境や業務体制の整備を支援するコースです。子の出生後、8週間以内に男性労働者が育児休業を取得した中小企業事業主や、男性の育児休業取得率が上昇した中小企業事業主が対象となります。
介護離職防止支援コース
「介護支援プラン」を策定し、労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主を助成します。就業と介護の両立に資する制度を導入し、実際に労働者の利用があった中小企業事業主等が対象です。
育児休業等支援コース
「育休復帰支援プラン」を策定し、育児休業の円滑な取得・職場復帰の取組を行った中小企業事業主を助成するコースです。
育休中等業務代替支援コース
育児休業取得者や育児のために短時間勤務制度を利用した者の、業務を代替する労働者への手当支給等などが支援されます。育児休業取得者の代替要員の新規雇用を行った中小企業事業主が対象です。
柔軟な働き方選択制度等支援コース
「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を策定し、育児を行う労働者の柔軟な働き方に関する制度を導入して利用者を支援した中小企業主等が助成されます。
不妊治療両立支援コース
不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度の導入を支援します。実際に労働者に制度を利用させた中小企業事業主が対象です。
そのほか、両立支援等助成金の全体像は以下の図も参照してください。
出典:両立支援等助成金(令和6年度)
柔軟な働き方選択制度等支援コースとは
新設された柔軟な働き方選択制度等支援コースでは、子が3歳以降小学校就学前の間に労働者が柔軟な働き方ができる制度を複数導入することが要件です。働き続けながら子の養育を行う労働者の雇用の継続を図り、職業生活と家庭生活の両立を支援することで、雇用の安定に資することを目的としています。
対象の事業者が育児休業取得率等に関する情報を公表した場合には、さらに「育児休業等に関する情報公表加算」が受けられます。
誰が対象になる?対象となる事業主要件と加算要件
助成の対象となる事業主の主な要件は、以下の①~⑤です。
主な要件 |
①育児を行う労働者が柔軟な働き方を選択できる制度を、複数導入する |
②「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」により、柔軟な働き方に関する制度の利用や利用後のキャリア形成を支援する方針を社内周知する |
③対象労働者との面談を実施する |
④面談結果を踏まえ、制度利用者の「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成する |
⑤開始から6か月間で、該当の制度が指定の「利用実績の基準」以上利用されている |
また、育児休業等に関する情報公表加算の主な要件は、以下のとおりです。
「両立支援のひろば」の「一般事業主行動計画サイト」において、支給申請日までに以下の情報を記載し、公表していること |
---|
■男性労働者の育児休業等の取得割合 支給申請の前事業年度における次のいずれかの割合 ・配偶者が出産した男性労働者数に対する、育児休業をした男性労働者数の割合 ・配偶者が出産した男性労働者数に対する、育児休に業をした男性労働者数および育児目的休暇を利用した男性労働者 ■雇用する女性労働者の育児休業の取得割合 ・支給申請の前事業年度に出産した女性労働者に対する、育児休業をした女性労働者数の割合 ・雇用する労働者(男女別)の育児休業の平均取得日数 |
公表内容については、支給申請日から支給決定日までの間、当該サイト上で公表していることが必要です。また、支給決定後も、少なくとも公表事業年度の終了までは、公表を継続してください。
なお、支給決定日より前に公表事業年度が終了した場合において、公表内容を次年度のものに更新することは差し支えありません。
対象となる取り組みは?
対象となる取り組みと利用実績の基準は、以下のとおりです。
対象となる取り組み | 説明 | 利用実績の基準 |
---|---|---|
フレックスタイム制 | 日々の始業・終業時刻や労働時間を、労働者が決定できる | 合計20日以上利用 |
時差出勤制度 | 始業・終業時刻の1時間以上の繰り上げまたは繰り下げ | 合計20日以上利用 |
育児のためのテレワーク等 | 自宅等での勤務を可能とし、勤務日の半数以上利用可能とし、時間単位で利用を可能とする | 合計20日以上利用 |
短時間勤務制度 | 所定労働時間を1日1時間以上短縮する (「就労時間を6時間」とする以外の短縮時間も利用可にする) | 合計20日以上利用 |
保育サービスの手配・費用補助制度 | 労働者の子に対する一時的な保育サービスを手配し、当該サービスの利用に係る費用の全部または一部の補助 | 負担額の5割以上かつ、3万円以上または10万円以上の補助 |
子の養育のための有給休暇 | 有給・年10日以上取得可能・時間単位取得可能な休暇制度と、法定の子の看護休暇制度を上回るものとして同条件の休暇制度を設ける | 合計20時間以上取得 |
これらの中から2つ以上を選び、整備したうえで、労働者がそのうち1つの制度を利用した場合に助成金が支給されます。
いくらもらえる?助成金額
助成金額は、導入した制度の数によって異なります。それぞれの助成金額は、以下のとおりです。
・柔軟な働き方選択制度等を2つ導入し、対象労働者が制度を利用:20万円
・柔軟な働き方選択制度等を3つ以上導入し、対象労働者が制度を利用:25万円
なお、1年度あたり1事業主5人までが対象となります。また、育児休業等に関する情報公表加算は2万円(1回限り)です。
申し込みはどうする?申請方法は
申請には、都道府県労働局長へ支給申請書類を提出します。受付期間は、以下のとおりです。
制度利用開始日から6か月を経過する日の、翌日から2か月以内
【必要書類】
また、申請に必要な主な書類は、以下の①~⑩です。
①両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)支給申請書 |
②対象制度利用者に係る面談シート |
➂対象制度利用者に係るプラン |
④実施要領、通達、マニュアル等、労働者へ必要な周知を行った日付等が分かる書類 |
⑤労働協約または就業規則、関連する労使協定 |
⑥対象制度利用者の制度利用申出書 |
⑦対象制度利用者に、該当の子がいることを確認できる書類 |
⑧対象制度利用者が、定められたとおりに就労または制度利用したことが確認できる書類 |
⑨対象制度利用者の所定労働日および所定労働時間が確認できる書類 |
⑩制度利用後のキャリア形成を円滑にするための措置等を講じていることが確認できる書類(プラチナくるみん認定を受けた事業主を除く) |
なお、育児休業等に関する情報公表加算を受ける際には、別途申請書類が必要です。
まとめ
少子高齢化を背景に、介護や子育てと仕事の両立は、ますます重要性を増しています。フレックス制度やテレワークなど、新しい働き方を選択できれば「もっと働ける」という人も多いはずです。
労働者の雇用を守り、企業にとって必要な労働力を確保するために、労働環境は時代にあった変化を求められています。両立支援等助成金をはじめとする支援制度も活用しながら、労働者にとっても、企業にとっても「よい職場」を目指しましょう。