「子育て中の社員にもっと柔軟に働いてほしい。でも、フレックスやテレワークの制度をどう設計すればいいのか」「就業規則を整えるだけで助成金がもらえると思っていたら、利用実績まで必要だった」——こうした声を、人事・労務の現場でよく聞きます。
両立支援等助成金の「柔軟な働き方選択制度等支援コース」は、この場面を後押しする制度です。フレックス・テレワーク・短時間勤務など5つの選択肢から3つ以上の制度を導入し、子育て中の労働者に利用してもらった中小企業に対し、1人あたり最大25万円(1事業主5人まで)が支給されます。
令和8年4月8日の改正で「障害児等要配慮支援加算」(20万円)が新設され、医療的ケアを必要とする子を養育する労働者への支援も対象に加わりました。本記事では、令和8年(2026)年度の最新内容に沿って、本コースの要件・申請方法をわかりやすく解説します。
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この記事の目次
柔軟な働き方選択制度等支援コースとは?
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、子育てをしながら働き続ける労働者の雇用継続を支援するコースです。中小企業が育児に関する柔軟な働き方ができる制度を整え、対象労働者に利用してもらうことで、複数の区分から助成金が支給されます。
令和8年4月8日の改正後、本コースは以下5つの区分で構成されています。
| 区分 | 助成額 |
|---|---|
| 柔軟な働き方選択制度 | 20万円(制度3つ導入)/25万円(制度4つ以上導入) ※1事業主あたり5人まで |
| 子の看護等休暇制度有給化支援 | 30万円(1事業主1回限り) |
| 制度利用期間延長加算 | 20万円(1事業主1回限り) |
| 障害児等要配慮支援加算【令和8年4月新設】 | 20万円(1事業主1回限り) |
| 育児休業等に関する情報公表加算 | 2万円(1事業主1回限り) |
各区分は独立しており、要件を満たせば組み合わせて受給できます。次の章から、それぞれの内容を順に解説します。
申請対象となる企業
本コースの対象となるのは、以下の「資本金の額」または「常時雇用する労働者の数」のいずれかに該当する中小企業事業主です。
| 業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
なお、資本金等のない事業主については、常時雇用する労働者の数により判定します。
柔軟な働き方選択制度
柔軟な働き方選択制度は、子が3歳以降小学校就学前までの労働者が利用できる制度を3つ以上導入し、対象労働者に利用してもらった場合に支給されます。
対象となる5つの制度
導入できるのは、以下の5つの制度です。このうち3つ以上を選んで整備します。
| 制度 | 主な要件 | 利用実績の基準 |
|---|---|---|
| 始業時刻等の変更 (フレックスタイム制度または時差出勤制度) |
フレックス:総労働時間を短縮することなく利用可 時差出勤:1日の所定労働時間を変えず、始業・終業時刻を1時間以上繰上/繰下 |
合計20日以上 |
| 育児のためのテレワーク等 | 勤務日の半数以上利用可、所定労働時間を変えずに利用、時間単位で実施可、自宅以外にサテライトオフィス等も対象 | 合計20日以上 |
| 柔軟な働き方を実現するための短時間勤務制度 | 1日の所定労働時間を平均1時間以上短縮(原則6時間とする制度に加え、5時間/7時間/週休3日等の選択肢も用意) | 合計20日以上 |
| 保育サービスの手配及び費用補助 | ベビーシッターや一時預かり保育等、臨時的・一時的な保育サービスを手配し、利用費用の一部または全部を補助(手配と費用補助の両方が必要) | 労働者負担額の5割相当以上(事業主負担3万円以上)、または10万円以上の補助 |
| 養育両立支援休暇制度 | 年休とは別の有給休暇(年休と同等の賃金)、年10日以上付与、時間単位取得可、子の看護等休暇とは別建て | 合計20時間以上 |
「始業時刻等の変更」は、フレックスタイム制度または時差出勤制度のいずれかを設ければ1つの制度として扱われます。両方を導入しても1制度のカウントになる点に注意してください。
利用実績は、いずれも制度利用開始日から6か月以内のものに限られます。また、短時間勤務制度を利用させた場合は、時間あたり基本給等の水準が制度利用前を下回らないこと、無期雇用労働者を他の雇用形態に変更しないこと(本人希望含む)も求められます。
助成額
助成額は、導入した制度の数によって異なります。
| 区分 | 補助額 |
|---|---|
| 制度を3つ導入し、対象労働者が利用 | 20万円 |
| 制度を4つ以上導入し、対象労働者が利用 | 25万円 |
通算で、1事業主あたり通算5人までが対象です。
助成対象となる要件
主な要件は以下のとおりです。
②「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」により、制度の利用や利用後のキャリア形成を支援する方針を社内周知している
③対象労働者と面談を実施し、面談シートに記録の上、面談結果を踏まえて制度利用者ごとのプランを作成している
④対象労働者が、導入した制度のうちいずれかを、利用開始から6か月以内に基準以上利用している
⑤対象労働者を、制度利用期間中および支給申請日において雇用保険被保険者として雇用している
⑥育児休業制度などを労働協約または就業規則に規定している
⑦次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ている(プラチナくるみん認定事業主は不要)
①〜③は、対象労働者の制度利用開始日の前日までに実施しておく必要があります。事後対応では認められないため、制度利用が始まる前に体制を整えてください。
なお、制度の整備については、育児・介護休業法に準拠する旨の規定を置くだけでは認められず、具体的な制度内容を就業規則等に落とし込む必要があります。もともと要件を満たす制度を導入していた企業も対象となるため、新規導入は必須ではありません。
申請方法
申請期間は、対象労働者の制度利用開始日から6か月を経過する日の翌日から2か月以内です。本社等の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。電子申請も可能です。
申請にあたっては、支給申請書のほか、就業規則等の該当部分、対象労働者の面談シート・育児に係る柔軟な働き方支援プラン、対象労働者に該当の子がいることを確認できる書類などの添付が求められます。最新の様式と詳細は両立支援等助成金の公式サイトで確認してください。
郵送する場合は配達記録の残るものに限り、消印日が申請期間内であっても到達日が期限を過ぎていれば受理されないため、余裕をもった発送が必要です。電子申請も可能です。
子の看護等休暇制度有給化支援
子の看護等休暇制度有給化支援は、育児・介護休業法を上回る有給の子の看護等休暇制度を新たに導入し、対象労働者に利用させた場合に支給されます。
助成額
1事業主あたり30万円(1回限り)です。
対象となる要件
主な要件は以下のとおりです。
・年休とは別の有給休暇(年休と同等の賃金)
・年10労働日以上付与
・時間単位(時間未満単位も可)で取得可能
・1日の所定労働時間を変更せず利用可能
②9歳到達後最初の3月31日までの子について、当該制度を10時間以上利用した雇用保険被保険者が在籍している
③育児休業制度などを労働協約または就業規則に規定している
④次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ている(プラチナくるみん認定事業主は不要)
注意点として、令和8年4月7日以前に有給化を行っていた場合は、原則として本支援の対象になりません。また、令和5年度以前の育児休業等支援コース「職場復帰後支援(子の看護休暇制度)」を受給した事業主、および柔軟な働き方選択制度として有給の子の看護休暇を導入し受給済みの事業主も対象外となります。
子育て世代の労働者が在籍していない事業主は、規定整備のみでは対象になりません。実際に10時間以上の利用実績が必要です。
申請方法
申請期間は、制度を利用した被保険者の利用時間数が10時間に達した日の翌日から起算して2か月以内です。本社等の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。電子申請も可能です。
申請にあたっては、支給申請書、改正前後の労働協約または就業規則、関連する労使協定、対象労働者に該当の子がいることを確認できる書類などの添付が求められます。最新の様式と詳細は両立支援等助成金の公式サイトで確認してください。
制度利用期間延長加算
制度利用期間延長加算は、柔軟な働き方選択制度または有給の子の看護等休暇制度の利用可能期間を延長した場合に、20万円が加算されます。
対象となるのは、以下のいずれかを満たす中小企業事業主です。
| ・柔軟な働き方選択制度のすべて(保育サービスの手配及び費用補助を除く)について、3歳以上中学校修了前の子を養育する労働者が利用できる措置とした場合 |
| ・有給の子の看護等休暇制度を、中学校修了前の子を養育する労働者が利用できる措置とした場合 |
1事業主につき1回のみ申請可能で、本加算のみの申請はできません。柔軟な働き方選択制度または子の看護等休暇制度有給化支援の助成金と同時に申請します。
なお、柔軟な働き方選択制度については、導入したすべての制度(保育サービスを除く)で延長措置をとる必要があります。1種類のみの延長では対象外となる点に注意してください。
【令和8年4月新設】障害児等要配慮支援加算
障害児等要配慮支援加算は、令和8年4月8日改正で新設された加算です。柔軟な働き方選択制度または有給の子の看護等休暇制度を、障害児等を養育する労働者が利用できる措置とした場合に、20万円が加算されます。
対象となる「障害児等」とは
ここでいう「障害児等」とは、以下に該当する子を指します。
・日常生活および社会生活を営むために、恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引、その他の医療行為)を受けることが不可欠である子
「その他の医療行為」には、気管切開の管理、酸素療法、ネブライザーの管理、経管栄養、中心静脈カテーテルの管理、皮下注射、血糖測定、継続的な透析、導尿などが含まれます。
対象となる子の年齢は、18歳に達する日以後の最初の3月31日まで、または高等学校等を修了する年の3月31日までです。
対象となる事業主
加算の対象となるのは、以下のいずれかを満たす中小企業事業主です。
| ・柔軟な働き方選択制度のすべて(保育サービスの手配及び費用補助を除く)について、18歳になる年度末までの障害児等を養育する労働者が利用できる措置とした場合 |
| ・有給の子の看護等休暇制度を、18歳になる年度末までの障害児等を養育する労働者が利用できる措置とした場合 |
柔軟な働き方選択制度については、導入したすべての制度(保育サービスを除く)で障害児等への対応をとる必要があります。1種類のみの対応では対象外です。
助成額
1事業主あたり20万円(1回限り)です。本加算は制度利用期間延長加算と併給可能で、両方の要件を満たせば合計40万円の加算が受けられます。
育児休業等に関する情報公表加算
育児休業等に関する情報公表加算は、自社の育児休業等の利用状況を公開した場合に2万円が加算される加算です。
「両立支援のひろば」の「一般事業主行動計画公表サイト」において、支給申請日までに以下の3項目を記載・公表する必要があります。
②雇用する女性労働者の育児休業の取得割合
③雇用する労働者(男女別)の育児休業の平均取得日数
公表内容は、支給申請日から支給決定日までサイト上で継続して公表する必要があります。さらに、支給決定後も少なくとも申請事業年度の終了までは公表を継続することへの同意が求められます。
1事業主につき1回のみ申請可能で、加算のみの申請はできません。柔軟な働き方選択制度または子の看護等休暇制度有給化支援の助成金と同時に申請します。なお、出生時両立支援コース、育児休業等支援コース、育休中等業務代替支援コースで本加算を受給済の事業主も、本コースで1回支給を受けることが可能です。
よくある質問
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、最大いくらもらえますか?
柔軟な働き方選択制度で最大25万円(1事業主5人まで・最大125万円)、子の看護等休暇制度有給化支援で30万円、制度利用期間延長加算で20万円、障害児等要配慮支援加算で20万円、育児休業等に関する情報公表加算で2万円が受けられます。すべての要件を満たした場合、1事業主あたり最大197万円の受給が可能です。
もともと柔軟な働き方の制度を導入していた企業も対象になりますか?
対象になります。本コースは制度を新規に導入することを支給要件としていないため、すでに要件を満たす制度を整備している企業も申請可能です。ただし、その制度を対象労働者が利用開始から6か月以内に基準以上利用することなど、利用実績の要件は別途満たす必要があります。
同じ従業員が、別の子どもの育児で同じ制度をもう一度利用した場合、再度申請できますか?
対象の子ごとに対象制度利用者と面談を実施し、プランを作成すれば再度の申請が可能です。ただし、それぞれの制度利用開始日から起算した6か月の期間が重複しない場合に限られます。複数の子の取得実績を合算する場合は、支給対象となる制度利用者は1人としてカウントされます。
パートタイム労働者を一律に柔軟な働き方選択制度の対象から除外しても問題ありませんか?
問題があります。パートタイム労働者を一律に除外する規定は、一般的に合理的な理由があるとは認められないため支給対象外と判断されます。ただし、運転手に対するテレワークなど、職種や配置から制度を利用できないことがあらかじめ想定できる場合は、導入した制度の数としてカウントできない扱いとなります。
育児以外の理由でも利用できるフレックスタイム制度やテレワークの利用実績はカウントできますか?
利用申出書等において、育児のために利用したことが確認できる場合に限り、助成金の対象となる利用実績としてカウントされます。育児以外の目的で利用した日は実績に含められません。
通常保育所の延長保育は、保育サービスの手配・費用補助の対象になりますか?
対象になりません。本コースで支給対象となる保育サービスは、ベビーシッターや一時預かり保育サービスなどの臨時的・一時的なものに限られます。延長保育は恒常的な保育であるため、対象外となります。
子の看護等休暇制度有給化支援について、令和8年4月8日以前から有給の制度を導入していた場合は対象になりますか?
すでに令和8年4月8日改正後の支給要件(年10日以上の有給休暇付与、時間単位取得可能など)に合致する制度であった場合は対象となりません。一方、有給ではあっても付与日数が少ないなど現在の要件を満たしていない制度であり、それを新たに要件に合致するよう改正する場合は対象となり得ます。なお、令和5年度以前の育児休業等支援コース「職場復帰後支援(子の看護休暇制度)」を受給した事業主、および柔軟な働き方選択制度として法を上回る子の看護休暇を導入し受給済みの事業主は対象外です。
障害児等要配慮支援加算と制度利用期間延長加算は同時に受けられますか?
それぞれの支給要件を満たした場合に併給可能です。両方の加算が認められれば、合計40万円の加算が受けられます。
参考:両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)Q&A(2026年度)
まとめ
柔軟な働き方選択制度等支援コースでは、フレックスやテレワークなど3つ以上の制度導入で最大25万円の助成が受けられます。働き方改革が進む中、子育て世代が働きやすい環境づくりを進める中小企業にとって有効な支援策といえます。
両立支援等助成金をはじめとする支援制度も活用しながら、労働者にとっても、企業にとっても「よい職場」を目指しましょう。
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